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「よし!行くぞ神童!俺達二人で勝利を―――――――神童?」
「・・・・・・・・・」
「おい起きろ神童!始まったぞ!約束しただろ!俺と一緒に優勝し、遊園地へ行くと!」
「・・・・・・・・・」
「しんどぉ!しんどぉおおおおぉーーーーーっ!!!!・・・・・まて・・・まさか神童・・・俺を誘っているっ・・!?・・・寝ている間に何でもしろということか・・・?・・・ふふふ・・・ははは・・・」
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「やっぱり神童さんは再起不能になってたか」
「目に魂が宿ってなかったやんね」
背負われてた時の神童さんは、もう生きる気力を失ったような顔をしてたし、今日一日は動かないだろう。ライバルが開始直後に潰れたのは好都合だ、このまま優勝を目指す。
前の方では何チームかが走っている、俺達は体力も考慮して6番目辺りをキープして走るつもりだ。サッカーで鍛えた持久力で周りより分があるといっても、油断は禁物。
「剣城ー!もっと前行かないのー?」
「慌てるな、最初に飛ばしても後が辛くなる。今はペース配分が大事だ」
決められたルートを走るだけなら、優勝は簡単だ。だがこのレースは走るだけじゃない、道中にさまざまな仕掛けがある、それなら体力は残しておいて損はない。
と、しばらく走ると、試練だろうか、先頭集団が立ち止まった。
「ついたか・・・ここは・・・ストラックアウトか」
置いてあったのはストラックアウト。しかもボールを投げるのではなく蹴るタイプだ、恐らく雷門中でサッカーが有名だから、町の特色を出したのだろが、俺達の得意分野で勝負できるのは運がいい。
ボールは5個置いてある、縦横斜めのうち何処でもいいからビンゴさせればクリア。
「サッカーはうち達の十八番やんね!やるよ剣城!」
「あぁ、でも気は抜くなよ。ボールは5個、3回ミスしたら」
「終ったやんねー♪」
「って早・・・」
流石黄名子だ、ボール3個を連続で蹴り、真ん中の横列を打ち抜いた。
ここは俺達が圧倒的に有利だったのか、他の組は脱落者も出ていた。この状況で井吹、神童さんがいないのは本当に良かった。
「行くぞ黄名子、アドバンテージを無駄にするな」
「はいはーい!」
周りとの差を保てるうちに、俺達は走り出した。今のはサッカー関係であったからクリアできたものの、次は何があるか分からないからな。
~~~~~~~~~~~~
「おい神童!起きろ!」
「う・・・井吹・・・?何故俺はこんな所に・・・?」
「起きたならいいんだ、今はレースの最中だからな、早く行くぞ」
「おいちょっと待て、俺が寝ている間に何をした」
「何って神童が誘ってたから靴下を脱がせて生足を楽し」
「井吹ぃいいいいいぃーーーーっ!!!!!いぃーーー・・・・・(バタッ)」
「あ、おい神童!何故気絶する!もう剣城達は先に行ってるぞ!神童!しんどぉおおおおぉーーーーっ!!!!!」
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ストラックアウトを終え、先頭を走る俺達。後ろからはクリアしたチームが走ってきているが、まだ距離はある。慌てず行けばきっと大丈夫だ。
「次はなにがあるんかな~」
「もうさっきのようなサッカー関係のものはでないかもな、これからが本番だ」
「剣城ありがとね、うちのために頑張ってくれて」
「べっ別にお前の為って訳じゃないが・・・やるからには勝つだけだ」
ジョギング程度のスピードで走る、この速度が体力を維持させるのにはもってこいだ。黄名子も息切れしている様子はない、雷門のメンバーであるだけ流石の体力だ。
「見えたぞ黄名子、次のポイントだ」
俺達の場所からちょっと先に、ひらけた場所が見える。恐らくあそこが第二の試練とやらだ。
試練場へたどり着き、辺りを見る。そこにあったのは、椅子と机、机の上にはボタンのような物が置いてある。
「ここはなんだ?」
「ようこそ、ここが第二の試練。試練内容はクイズです」
「レース関係あるかそれ・・・?」
「試練は試練ですので」
出題者であろう人間が席を勧めるので、俺達はそこに腰を下ろした。
「クイズは得意やんね~、さくっと正解しちゃうやんね!」
「ではルール説明をしますね。今から3問の問題を出題します、それら3問中2問正解できればクリア、2問間違えてしまった場合は失格となります。答える際にはお手元のボタンを押してください。それでは始めます」
説明を終え、問題用紙を手にとる司会者。これは実力と共に運も入りそうだな、自分の知っている問題が出るかどうかが鍵だ。
「『10年前、フットボールフロンティア全国大会で、雷門中学が優勝しました。その時取った両チームの得点を答えなさい』」
「難易度高すぎじゃないか!?」
10年前の出来事を話に出すか普通!確かに稲妻町だと有名な話だが、得点まではあまり知らないだろう。
「(ピンポン!)ん~・・・雷門3点、相手チームは2点やんね!」
「残念、正解は雷門4点、相手チームは3点でした。あと一回で失格ですよ~」
黄名子も知らなかったので、勘で答えるのは仕方ない。あと一回で失格・・・次の問題にかけるしかない・・・っ!
「では次です。『稲妻町の店で、ネットランキング1位の店は何処でしょう』」
「っ!・・・駄目だ・・・分からない・・・」
運が絡んでくる試練は想像していなかった、しかし知識が無かったのはこちらだ。諦めるしかないだろう。黄名子には悪いが、ここは後で何か奢るくらいで手を打って
「はいはい!(ピンポン!)雷雷軒!」
「正解っ!」
「なっ!?」
黄名子の答えがあてずっぽうだったのか知らないが、正解。これで次の問題をクリアすれば突破。黄名子のファインプレーだ。
「よく分かったな黄名子、知ってたのか?」
「ふふん、稲妻町のおいしいお店なら全部回ったやんね!その中でも雷雷軒の雷雷丼が絶品なんよ~。女の子は常においしい物を求めて生きてるやんね!」
「お前は単に食い意地張ってるだけだろ・・・」
「では最後の問題ですよ」
出題者の声に集中する。これで最後、ここを正解すれば・・・突破できる!
「『雷門の勇気のシンボルと言えば?』」
「「イナズママーク」」
あっさり突破できた。
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「はぁっ、はぁっ。1個目の試練がサッカーで助かった。これなら神童を抱えたままでも追いつけそうだな」
「お、到着しましたか。ここはクイズが試練となっております。そこの席にお座りください」
「ここか。このボタンを押して答えればいいんだな?」
「はい。で、そのパートナーの方大丈夫ですか?上を着ていないのが気になるのですが」
「気にするな、上は俺が脱がせたから自主的に脱いだわけじゃない、誤解しないでやってくれ」
「・・・・・・」
「ん?どうした、早く進めてくれ。だから何故後ろへ下がる、元から3メートルは離れてるのに」
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「この調子なら優勝いけるな」
「ペアチケペアチケ~♪」
もう後ろにも人の姿が見えない、先ほどのクイズで殆ど落ちたのかと思ったが、今思うと制限時間が設けられてなかったし、長考している可能性もある。といってもここまで差が開き尚俺達の体力なら、もう追いつかれはしないだろう。
「黄名子、まだまだへばるなよ?」
「剣城こそー、少し息切れしてるように見えるのは気のせいやんね?」
「ふっ、言ってろ」
軽口を叩く余裕さを持ちながらジョギング程度で走り、3つ目の試練場が見えてきた。あそこは・・・山?ってことは結構長い距離を走ってたのか、自分たちでも気づかないうちに遠くに来たんだな。
「お疲れさまです。早いですねー、他のチームはまだ誰も来てませんよ」
「えぇ、体力には自信がありますから」
係員のような人に声をかけられ、足を止める。
「ここで何すればいいやんね?もしかして登山?」
「はい、ここは最後の試練場です。この山を登った先にあるチェックポイントに、景品の引換券が置いてありますので、お二人にはそれを取ってここまで降りてきてもらいます。そうすれば後は、あちらの道を進んでもらえればゴールがありますので、そこで景品を選んでください」
山道を登るのは体力を使う、やはり序盤で残しておいて正解だった。
「でも危なくないんですか?もうそろそろ暗くなりますし、山道となると危険もあるんじゃ」
気になるのは安全面、レースとは言え、山の中を暗闇で進むのは流石に危険な気がする。
「ご安心ください、明かりを付け、走るルートはテープで仕切ってありますし、道中係員を配備してあり、事前に確認した危険な場所も仕切りがあります」
「そうでしたか、分かりました」
しかしそこはちゃんと考えられているようだ。なら俺達は安心してゴールを目指せる。
「いくやんね剣城ー!優勝するまでがうちらの目的やんね!」
「分かったから一人で行こうとするな」
せかす黄名子を追いかけて、俺達は山を登り始めた。この時点で俺達の勝利は決まったも同然と、そう、勝手に決めつけていた。
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もう日は沈みかけ、暗闇が存在を主張している、少し走る足を止め、歩きに切り替え山道を進む、暗くなって足元が見えないままの全力疾走は少し危険だ。
「ねーねー剣城ー。ほんとに一緒に行かないのー遊園地ー?」
「だからそれは・・・まぁ、考えておくが」
「素直じゃないやんねー♪ほんとは遊園地で遊びたいくせにー♪」
「別にそういうわけじゃないが・・・」
ただの散歩程度にしか思えない時間だ、他のチームも追ってはきていそうだが、歩いていても追い抜かれるより俺達がゴールするほうが先だろう。
「にしても全然こないやんねー、他の人たち。皆失格かなー?」
「時間がかかってるだけだろ、でも大丈夫だ。唯一追い抜いてきそうなチームは序盤で消えたし、この距離ならもし復帰しても追いついたりは―――――――――」
「優勝は俺達だぁあああああぁーーーーーーっ!!!!!!!」
「なんだと!?!?」
後方から聞こえる怒声、聞き覚えのある声だ。これは・・・
「井吹達・・・もう追いついたのか!早すぎる・・・」
「剣城!早く走るやんね!」
「分かってる!行くぞ黄名子!」
井吹達が来る速さには驚いたが、まだきっと距離はあるはず、温存していた体力を使えば追いつかれることは・・・!
「追いついたぞ剣城!」
「なにぃ!?」
さっきは遠くから聞こえた声がもうすぐ後ろから聞こえている。何故だ!?何故こんな早い!
「はぁっ、はぁっ!」
いや、よく聞くと井吹は息切れしている?まさか神童さんを背負ってここまでやってきたのか?だとしたら、井吹の体力はもうないはず、これなら勝てる!
「ふっ、どうした井吹、息切れしてるじゃないか。さすがに神童さんを背負ったままじゃ体力がも持たなかったらしいな」
「いや、これは神童の太ももが腕に当たって興奮してるだけだ」
「聞くんじゃなかった!」
ちらと井吹のほうを見ると、神童さんを背負っているのではなく、上半身裸の神童さんを前側で抱えている。・・・その、姫様だっこと呼ばれる形で・・・。
「井吹!その持ち方は問題なんじゃないのか!」
「気にするな!神童が起きる前にゴールすれば俺は幸せのまま更に幸せになれる!」
「負けるか!黄名子スピードをあげるぞ!」
「さっきから上げてるやんね!」
くそっ!井吹が速い・・・このままではマズい・・・何か打開策は・・・!
「・・・・・・っ・・う・・・なんだ・・・騒がしい・・・」
「あ、神童さん。おはようございます」
「ん・・・?剣城か、おはよう。ここは何処だ?かなり揺れているが」
「神童さん、そのまま右上を見てください」
「右上?何かあるのか」
神童さんが俺に言われるがままに右上を見る。そうして、神童さんは井吹と目が合った。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・おはよう神童、いい天気だな」
「井吹ぃいいいいいいぃーーーーーーーっ!!!!!!!」
神童さんが井吹の腕の中から抜け出し、井吹と向かい合う。
「行くぞ黄名子!今のうちだ!」
「剣城って以外と手段を選ばないんやね!」
これは井吹の自業自得だろう、俺に非はないからいい。このまま頂上を目指す!今はただ走るしかない!
「井吹・・・お前俺が気絶している間に・・・許さない・・・上着を返せ変態が!」
「頼む神童!今だけは黙って俺に抱っこされてくれ!」
「誰がされるか!!!」
「くそっ!やるしかないのか・・・分かった、神童を強引にでも姫様抱っこし、ゴールしてみせる!」
「「うぉおおおおおおおおおおーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!」」
どうやら始まったらしい、これで足止め成功だ。前から係員が数人走ってくるのが見える、恐らく井吹たちの決闘を止める為だろう、人に邪魔されまいと井吹達が暴れれば暴れるほどいい、これで更に時間が稼げそうだ。
1分ほど全力で走ると、黄名子のペースが落ちてきた。
「行くぞ黄名子!」
「ちょ・・・ちょっと待って・・・やんね・・・」
恐らく井吹の登場により、猛ダッシュをしたからだろう。体力が余っていたとはいえ、坂道を全力で走り続ければ疲れる。それは避けられなかった。それに今走っているところの地形も問題だ。さっきより急勾配のせいで、余計体力を持っていかれる、しかしここでペースを落とせば後々追いつかれる可能性も・・・。
「黄名子!ここが頑張り所だ!走るぞ!」
「はぁっ・・・はぁっ・・・よ、し・・・頑張―――――――っ!?」
次に起きた事故は、本当に、不幸としかいいようが無かったかもしれない物だった。
「黄名子っ!?」
下に落ちていた缶だ。何故落ちていたのかは分からない、たまたま落ちていたものかも知れない、係員が井吹を止めに向かっている途中、落としたのかも知れない。ただ問題は、そこに缶があり、黄名子がそれを踏んずけ、転び、急勾配の坂を転がる事で、仕切りのテープの向こう側、安全が保障されなかった坂に落ちる事だ。
不幸が重なった結果。本来なら止められたことだ、井吹たちを止めるための係員が、緊急でその場を離れた、缶が落ちていた、黄名子が疲れていた、それらの全てがあったから起きた事。
そんな状況で俺が取れた行動はひとつ、黄名子の手を掴み引き寄せようとすること。しかし、ここでもまた不幸とでも呼ぶべきか、黄名子が疲れているのは急に走ったから。それは俺も同じ、なら、当然俺も・・・。
黄名子の手を掴み静止しようとする足は、思うように動かなかった。そのまま、俺達は坂を転がり、仕切りの向こうの坂を更に転がり落ちていく。
~~~~~~~~~~~~~~
どれほど気を失っていただろうか、いや、そこまで長い時間じゃない。落ちた直後の記憶がはっきりしていると言う事は、せいぜい1分程度だろう。
「くっ・・・っ!黄名子!大丈夫か!」
自分の身を確認するより、腕の中にいる黄名子に声をかける。幸い、落ちる直前に抱え込めたので、目立った外傷はなさそうだが、万一の場合があるかも知れない。
「うぅん・・・大丈夫やんね・・・ありがと・・・」
黄名子が腕から抜け、座り込む。
「良かった・・・幸いにも落ちた地点がはっきりしてるのは助かったな」
俺達が落ちてきたと思う場所は、草木が折れたり潰れたりしているし、ちょっと上の方には明るい場所も見える、ここを上がれば元の道に戻れるだろう。
「でも剣城大丈夫・・・?うちのこと庇って・・・」
「大丈夫だ、別に何処も怪我なんか・・・っつ」
平気であることをアピールする為立ち上がろうと足に力を入れると、左足に鈍い痛みが走った。
「剣城!?足・・・痛めたやんね・・・?」
「こんなの大した事じゃない、少し休めば治る」
黄名子が動揺しているのか、落ち着きがない。ここは俺が冷静にならなければいけないだろう。
「ごめん剣城・・・うちが注意してなかったから・・・」
「だからもう気にするな、遭難したわけでもないし、足の怪我も軽い。俺の足で済んでむしろ良かった」
黄名子に何かあったら俺が冷静でいられなかっただろう。その意味では、この結果が一番いい。携帯は置いてきたので、自力で帰る為にここでしばらく休憩だ。
「剣城、顔汚れてるやんね」
「まぁ転がり落ちたしな、砂や泥はつく」
「・・・!、そうやんね、これ」
と、黄名子が何か思い出したのか、自分のポケットを探る。
出てきたのは、ポケットティッシュだ。5日前、福引で貰ったものだろうか。
なんの為に入っていたかは分からない、大方黄名子のことだから、使い道があるのではと所持していたのだろう、どんなものにでも優しい奴だからな。
「剣城顔寄せて、拭いてあげるやんね」
「拭くって・・・別に落とさなくても」
「駄目やんね!もしかしたら擦り傷とかあって、そこからばい菌が入ったら大変やんね」
一枚を取り出し、俺の顔の泥をふき取る。俺はそれ以上何も言わずに、黄名子に任せた。
「やっぱりティッシュにも、貰った意味があったやんね」
「・・・・・・悪いな、優勝させてやれなくて」
「ううん、気にしなくていいやんね。剣城が大きな怪我しなかっただけ本当良かった」
お互いがお互いを心配し合って、収集がつかない。そんな状況が、おかしく思えたのか、不覚にも笑ってしまった。
「・・・・・・・さて、行くか。俺の足も大丈夫そうだ」
「ほんと?うち支えるよ?」
「大丈夫だ、雷門のエースストライカーの脚を舐めるなよ」
そのまま俺達は、坂を上り、レースを再開した。こうなった以上、優勝は無理だ。でも、走る、やるからには最後まで全力だ。
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「・・・剣城達・・・一体どうしたんだ・・・俺達より先にいったはずなのに、まだ着いていないのか」
「落ち着け井吹、あいつらなら大丈夫だ。きっとくる」
「・・・だな、で、どうする神童。先にゴールするのか?」
「お前はどうなんだ。剣城達がいない今、ゴールしてチケットを手に入れるチャンスじゃないのか?」
「はっ、そんなことで手に入れたチケットなんか破り捨ててやる」
「言うと思ったさ・・・ほら見ろ、来たぞ」
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黄名子と並走し、ゴールまでの道を目指す。引換券は手に入れた、後は、ゴールのアーチをくぐるだけ。長い、それでいて、中々楽しいレースだった。参加して良かったと、少しは思えたらしい。
「おーい、剣城、遅いぞ。何やってたんだ」
井吹の声が聞こえる。ゴール付近でゴールせずに待ってくれたみたいだ。ほんと、イカれてるのに、妙なところでまじめだからなこいつは。
「井吹達なんでゴールしないやんね?うち達に気を使うことないやんね」
「誰が気なんか使うか。単にこのまま手に入れてもすっきりしないだけだ」
「ふっ、いいから行ってこい井吹。先に着いたのはお前たち、俺達は後だ」
「だ、そうだ井吹。行くぞ」
俺の言葉通り、神童さんが井吹を連れ、ゴールのアーチをくぐった。他にゴールした人がいないらしく、正真正銘の優勝。そりゃあの難易度は鬼畜だな・・・きっと来年からはレベルが格段に下がるだろう、2チーム以外全滅するイベントとか盛り上がるわけがない。
「おめでとうございます!最初の到達者ですよ!ではお好きな景品をお選びください!」
「神童、お前が決めてくれ」
「・・・そうか。なら、この商品券でも貰うか。これで肉を買って、今度焼肉でもしよう」
「くくっ、そりゃ楽しみだ」
そういって二人は、どこかで行ってしまった。
「あいつらめ・・・」
「もったいないことするやんねー」
二人で呆れる。間違いなく手に入れられるのに、手に入れないなんて。本当におかしいとしか思えない。
そういいながら、俺達も、ゴールのアーチをくぐった。これで俺の目標は達成だ。あとは、黄名子の目標を果たせば終わり。
さっきも言ったとおり、手に入るのに、手に入れないなんておかしい、本当におかしい、そう
「はい!引換券ですね、ではどうぞ、お好きなのを選んでください」
「ほら黄名子、選べ。好きなものをな」
「うん、じゃうちは・・・この、ハート型のストラップを貰うやんね♪」
つまるところ、俺達もおかしいのだ。
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「なんでそれ選んだんだ?てっきりあいつらと同じ商品券だと思ったが」
黄名子が手に持っているストラップを指差す。
「実はこれ、半分に分かれるやんね」
そういうと黄名子は、ハートマークの両端を持ち、そのストラップを半分に分裂させた。なるほど、こんなギミックがあったのか。どおりでハートマークの両側に紐がついてる訳だ。
「この半分、剣城に上げるやんね。うちは左側のハート~♪」
そういって、俺には右側のハートを差し出した。俺にハートなんて、似合わなさ過ぎる。
「しかし・・・ハートを真ん中から半分に分けるって・・・縁起悪くないか・・・?」
「そう?」
「そうだろ・・・」
「んー、あっ!じゃあこうするやんね!」
何か閃いたららしく黄名子は、俺の左側に立ち、
「うちと剣城、半分ずつ持ってるハート、こうすれば、ね?ひとつのハートになったやんね♪」
俺の左手を握った。手の平から、黄名子のぬくもりが伝わる、温かい。
左右にあるハートの両辺、これが俺達を通じて、繋がったとでもいいたいのか。黄名子は、鼻歌でも歌わんばかりの笑顔になっている。
「・・・そうか、確かにな」
これを分け合った二人がずっと一緒にいる限り、このハートは形を保ち続ける。このストラップは、これを手にした二人の行く末、それを見守る、小さなお守りなのかも知れない。
まぁ、俺達にとってはただの景品でしかないこれは、そんな意味など持ち合わせてなどいない。
街灯が照らす夜道を二人、歩く。不思議な夜だ、夏であるのに肌寒い、夜であるのに、暖かい、そんな夜だ。
~~~~~~~~~~~~~~
まだ夏は終らない、始まったばかりなのだから当たり前だが。
人で賑わう商店街を、買い物袋をぶら下げて歩く。親から頼まれた品は全部買ったので、後は家に帰るだけだ。
「また福引券貰ったが、1枚だけじゃ回せないしな」
買い物をして貰った福引券片手に家を目指す。回すには3枚必要なので、後2枚足りない。元よりやりたいわけでもないので、気にはしてないが。
ちらと福引の会場を見る、折りたたみテーブルにカラカラが置いてあり、商品一覧の板が立ててある至って普通の会場には、長蛇の列が出来ていた。もしかしたら知り合いでもいるのかも知れないと思ったが、知り合いはチームメンバー程度しかいないので、その可能性も
『おじさん!うち福引券2枚あるから、片方を半分にして3枚にならないやんね!?』
『前にも言ったけど、それ結局福引券2枚だから・・・』
いた・・・知り合い・・・・。
おじさん相手にまた何か取引みたいなことをしているバカを見つけて、ため息をつく。
前にもこんなことがあった気がするな。まぁいい、バカが暴走しないうちに止めるか。
「おい黄名子」
「?。剣城!どしたの?」
「店の人に迷惑かけるな。ほら、俺の福引券やるから、それで早く引け」
手に持っていた一枚の福引券を黄名子に向ける。
「おおー!ありがとー・・・って言いたいけど、いいやんね。うちのあげるから、剣城が引いてほしいやんね」
しかし黄名子は受け取らず、逆に自分の2枚を俺に差し出した。
「俺が?いや俺は別に」
「ほらほら!後がつかえてるし、早く早く!」
「・・・仕方ない、何が出ても文句いうなよ?」
黄名子から券を受け取り、ガラガラの取っ手を握り、かき回す。どうせこういったものはティッシュとか言うものがでるのがオチだ。
思ったとおり、ガラガラが吐き出したのはよく見かける水色の玉・・・・・・水色?
「おぉ!おめでとうございます!4等の『イナズマパークランド、ペアチケット』です!」
「・・・・・・えっ?」
鳴り響くベルの音、そして景品は、俺に渡される代わりに、隣にいた黄名子に渡されていた。
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読んでいただきありがとうございました。感想お待ちしてます