ペルソナ3 招かれし者   作:パステルいろ

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※今回はオリ主視点では無いため、文章がくどくなってます。


3.a magician/ペルソナ

不意に聞こえてきた大きな物音。

何事かと思い部屋を出ようとすれば、同級生が飛び込んできていきなり連れ出される。

「とにかく急いでっ!!」

慌てた様子の彼女に続き一階まで下りれば、再び大きな物音。

その後は音に追われて階段をひたすら上り、終には屋上まで逃げ込んだ。

ここまで来れば、自分がどういう状況かは流石にわかる。

何者かに追われているのだ。それを察したとき、彼女の日常は手の届かぬところに去ってしまった。

息を荒げて怯えるクラスメイトの少女に状況を聞こうとしたとき、既にソイツは近くに来ていた。

不快な粘性の水音が耳に入り、音の方へと振り向いたその時。

蒼褪めた仮面にぽっかり空いた眼窩と、目があってしまった。

途端に仮面の周囲には無数の手が現れ、それぞれが短剣を握ってこちらへと迫りくる。

明確な殺意を持って迫る敵に対し、腰のホルスターから拳銃を抜くクラスメイトの少女。

先ほどから怯えた様子だった彼女は、何をとち狂ったのか、自身の額に銃口を向けた。

拳銃自殺の如き構えをとったその少女は、しかし、敵から発せられた火の玉のようなものに煽られ、大きく態勢を崩した。その拍子に手から零れ落ちた拳銃が、足元へと滑ってくる。

その瞬間、彼女の中ではここ数日の記憶が走馬灯の如く廻り始めていた。

ぞっとするほどに冷たい空気、巨大な満月、醜悪な怪物。

その全てが視覚を通して危険を感じさせているが、肥大した感覚はそれらを悉く意識の外へと追いやった。

頭蓋の裏をチェス盤の様な配色、クラシックな映画の如くモノクロな記憶が断続的に流れる。

 

駅。

 

並び立つ棺桶。

 

血溜まり。

 

謎の少年。

 

契約。

 

銃。

 

少女。

 

学校。

 

友達。

 

先輩。

 

不審。

 

猜疑心。

 

それら全ては過去のことだ。合致しない不快感は今この場で消し去られた。

彼ら彼女らの怪しげな態度も、今日ここで対峙しているコイツを隠すためだったというなら、納得できる。

もっとも、納得は出来なくとも放置することにしていたが。

賢しらな態度は誰からも歓迎はされない。隠している秘密を暴き立てる者を、誰が気に入るというのだ。

故に彼女は口を噤む。世渡りは適度な嘘と迎合によってスムーズに進む。

そのための容姿、そのための性格。万人に当たり障りのない私の仮面。

しかし、今この時に至っては、その仮面が役に立つのか?

右手が銀の凶器を拾い上げる。

コレの持ち主は状況に悲観でもしたのか、自身の頭にコレを突き付けていたが、さて。

どうしたものか。思考にその一言が過ぎる寸前、感覚的ななにかが彼女を突き動かした。

高鳴る心音を感じながら、彼女は銀色の武器、拳銃を頭部に突き付ける。

……なるほど、少女は間違ってはいなかったのかと、彼女は心中で呟く。

コレは、こういう使い方をするものなのだ。不思議とそう、理解できた。

その時、脳裏には一人の少年が浮かんだ。

彼は側頭に人差し指を押し当てると、一言だけの問いを投げた。

「君には、できる?」

出来るとも。脈打つ心臓のリズムに合わせて、一言づつ確実に。

 

「ぺ、」

 

しかし、拳銃を頭に突き付けるなんて、まったくもって正気じゃない。

 

「ル、」

 

そもそも状況が状況だ。こんなの、ゲームや小説の中でしかありえない。

 

「ソ、」

 

嗚呼、これで死んだらどうしようか。まぁ、

 

「ナ……!!」

 

……そんなこと、どうでもいいけど。

 

引き金を、引く。

瞬間、その場に破砕音が響き渡った。ガラスの砕けるような、高い音階。

音の発生源、結城理の周囲を青い光の渦が囲み、収束し、一つの姿を形創る。

我は汝、汝は我。力ある影は、己が名を高らかに謳いあげた。

オルフェウス。死者さえも魅了した、幽玄の奏者の名を。

しかし、オルフェウスの召喚者である結城は、その名乗りを悠長に聞いていられる状況ではなかった。

引き金を引いてからずっと、昂揚感と共に湧き出てきていた感覚。

何かが、自身の内側から出てこようとしている……!

腹部に手を当てたままくの字に折れて、必死にその感覚を抑える。

何故かは分からないが、彼女はその感覚を堪えなければならないと感じたのだ。

しかし抵抗は無駄に終わり、彼女が膝を折ると同時に、彼女の背後で変化が起こった。

オルフェウスの頬に罅が入るやいなや、それを皮切りにして全身に罅が広がり、やがてそれは亀裂と化した。

人形が砕けるように破片が散り、オルフェウスの中からソレが現れた。

無数の棺桶を引き連れ、右手に鋭い剣を握った黒い死神。

獣骨のような仮面を被った死の権化は、満月を背に闇夜へと吼えた。

それに触発されたかの如く、無数の手が折り重なった姿を持つ怪物が彼女へと迫る。

それぞれに握られた短剣を振りかざし、地を這って接近していく。

しかし、その行動は愚かの一言に尽きた。

死神は跳躍し、一挙動で怪物へと到達。

荒々しく剣を振るい、無数の手を中心にある仮面ごと斬って捨てた。

草を刈るかの如く命を刈り取られ、沈黙する怪物。

その未だに這い回る残滓を掴み取ると、死神はあっさりとそれを握り潰して咆哮した。

月に向かって吠えたてる獣。そのあまりの恐ろしさに、岳羽ゆかりは目を見開いた。

自分にも素質があると教えられていたその能力、〝ペルソナ〟

しかし岳羽は、自分にこんなものが眠っているとは到底思えなかった。否、思いたくはなかった。

……恐ろしい。が、彼女は思い直す。恐ろしいのは確かだが、その矛先が自分に向くわけではない。

寧ろその逆、彼女は自分を守ってくれたのだ。

彼女を守れと言われておきながら、恐怖に震えて何もできなかった、私を。

「ねえ、大丈夫!?」

微かに震えた声で、岳羽は結城に声を掛けた。それに対し、結城は軽く手を上げて応える。

どうやら無事のようだ。岳羽は安堵を感じたが、それも一時のものに過ぎなかった。

「なっ……!?」

不意に、結城の顔が驚愕に染まる。何事かと振り返ってみれば。

「え、嘘!?まだ動いてる……!!」

死神によって確かに倒されたはずの怪物、シャドウ。

その残滓が、形を成してこちらに向かってきていたのだ。

岳羽は咄嗟に腰元を探ったが、そこに召喚器は無い。

慌てて結城の方を見れば、彼女は立ち上がるだけで精一杯の様子。

彼女のペルソナは既に姿を消しており、迫る脅威に対抗する手段は皆無。

……今度こそ、万事休すか。岳羽が思わず膝を折ったその瞬間。

「よし、間に合ったか!!」

闇夜を切り裂いて、青い光が舞った。

聞こえてきた声の方へと顔を向ければ、そこには屋上の縁を乗り越えて来る少年が一人。

その背後から一拍遅れて、何かが飛び出してきた。

それは少女二人とシャドウの間に入り込むと、仁王立ちでその場に立ちはだかった。

乳白色の液体を入れた桶を両肩に担ぎ、金色の首飾りと無数の腕輪をした褐色の人影。

ゆっくりと屋上の縁を乗り越えてきた少年は、その人影、ペルソナに向かって命令を下した。

「〝タンムズ〟っ、マハムドォ!!」

口に出すが早いか否か、タンムズはその召喚者の意に従い、敵を呪いの方陣へと閉じ込めた。

足掻くシャドウを意に介さず、紫炎が瞬くと同時に勝負は決した。

あまりの急展開に唖然とする少女たちに振り返ると、少年、春日郁人は大きく息を吐いた。

「っ、はあぁ~、良かったー!間一髪ってとこ?」

そのまま腰を落としその場へと座り込んだ春日に、岳羽は何故ここに居るのかを問おうとした、が。

「っ……!!」

「ねえ、ちょっと!……って、ええッ!?」

何かを堪えるかのような声が聞こえたかと思うと、鈍い音がそれに続く。

思わず向かわせた視線の先にには、倒れこんだ結城の姿があった。

「え、ちょっと大丈夫!?嘘、こんな……ねぇ、目ぇ開けてよ、起きてったらー!!」

目を閉じたままピクリとも動かない結城に焦る岳羽。何度も彼女を揺り動かすが、まったく反応はない。

「ちょっ、岳羽さん!?倒れてる人、あんま動かしちゃダメだって!それに、良く耳澄ませてみなよ!」

「えっ……?」

慌てた様子で自分を諌める春日に、岳羽は混乱しつつも耳を澄ませてみる。すると。

「……すー、……ふー……。」

「ね、寝てる……。」

岳羽は安堵に胸を撫で下ろした。どうやら彼女は、疲労で眠ってしまったらしい。

そういえば、寝てるときに起こしちゃったんだっけ。岳羽は結城の寝顔を眺めて微かに微笑んだ。

彼女の寝顔に緊張感が拭い去られたのか、岳羽は少し冷静になった。そして、重要なことに気付く。

「あー!!!!」

「え、何!?」

唐突に叫んだ岳羽に驚く春日は、慌てながら周囲を警戒する。

残存する敵を警戒する春日に向けて、岳羽は叫んだ。

「あんた、何でここにいんのよ!!てか、さっきのペルソナ何!?」

「へ?」

間の抜けた顔で見返してくる春日に、岳羽は毒気を抜かれしまい、力なく項垂れた。

「……あぁもう、なんでもいいや……。」

一度出鼻を挫かれてしまえば、厳しい追及を続ける気力なぞ残っていようはずもなく。

疲れた顔で佇む岳羽の背後に、駆けつけてきたであろう先輩、桐条と真田の声がする。

おい岳羽、無事か!?もう敵はいない、鍵を開けろ!などと響く声。

返事を返すのはもう少し待って欲しいと、岳羽は切実に願った。

そうこうしている内に影時間が明け、再び夜が来る。

すぐさま呼ばれた救急車によって搬送されていく結城を見送りつつ、桐条は春日に尋ねた。

「さあ、そろそろ聞かせてもらおうじゃないか。」

鋭い視線に射竦められ、春日は怯みながら口を開く。

「……ええと、どこから話せば?」

その言葉に桐条は薄い笑みを浮かべ、しかし全く笑っていない目で告げた。

「無論、すべてだ。君の能力、何故ここに居たのか、我々を助けた理由、その他にもいくつか。」

「ああ。知ってることは全部、洗いざらい聞かせてもらおうじゃないか?」

追い打ちをかけるように真田が畳み掛ける。すると、それをとりなすように幾月が間に入った。

「まぁまぁ、僕としても聞かせてほしいことが山ほどあるけど、こんな路上で聞くことでもないだろう?ほら、春先とはいえ外は寒いし、みんな寮のなかで話あおうじゃないか。君も、ね?」

その言葉で場の緊張状態が解けたのか、全員が幾月に続き寮へと入っていく。

その中の最後尾、春日は俯くと表情を引き締めた。

……さあ、これからが本番だ。

 

 

 




読了、ありがとうございます。以下、解説的なもの。










・タンムズ
古代シュメールの王、タンムズ。またの名をドゥムジ。生と死を司る神であり、農耕の神でもあるとか。たぶんこんな感じであってると思いますが、正しい情報が知りたい方はウィキで検索していただければと思います。ペルソナとしての能力は、闇耐性、光弱点、力が伸びにくく魔力などが伸びる魔法タイプ。スキルは、マハムド、ムドブースター、ディア、????。以降はレベルに応じて解禁。という感じでしょうか。燃費悪し、使い勝手悪しの一撃決戦型ですね。闇耐性のある敵と当たれば苦戦必至のペルソナです。次の段階に変化すれば、かなり強くなる予定ですが……。そう段取り良く成長できるわけでも無し、暫くはこのままですね。

・オリ主は寮のカメラとか、美鶴の索敵に引っかからなかったの?
このことについては、次回に書く予定となっております。

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