魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第10話 これから少しずつ話していくよ

「少し言い過ぎたかな・・・・・」

 

 

エヴァが去った後、殴られた箇所をさすりながらシモンが呟いた。

 

「いいえ、シモンさんの言っていることは間違っていなかったと思います。ホントは先生である僕が話すことだったかもしれませんが・・・・・」

「なによ!二人して暗くなっちゃて」

 

シモンの言葉にネギも少し俯いたが、そんな二人に対してアスナが声を上げる。

 

「シモンさんの言う通りよ!光とか闇とか、学校ってそういうとこじゃないでしょ!エヴァンジェリンさんは過去を理由に輪の中に入ろうとすることから逃げてるだけよ!」

「でもエヴァンジェリンさんは15年も封印の所為で学校に通っていると聞きました・・・・・せっかく誰かと仲良くなっても、その人たちとはいつか別れなくてはいけません・・・・・」

「そんなこと考えてたら友達なんて出来ないでしょ!別れを恐れて出会いを拒むなんて間違ってるわ!!」

 

アスナの言っていることは正論であり否定は出来ない。

しかし、そう簡単にはいかないということはネギもエヴァの事情を理解している。

だが、そんな考えに対してシモンは、

 

「だったらお前たちの方から友達になってやれ」

 

アスナの主張にシモンが口を挟んだ。

 

「俺もお前の意見に賛成だよ。でもあいつの方から勇気を出せないならお前たちから歩み寄ってやれ!友達なんて作り方を考えるほどのものじゃないさ」

 

そう、それでいいんだ。

友達とか仲間ってのは、もっと気安く出来るものだ。その繋がりに細い太いはあるかもしれないけど、ソレになるのに、そこまでウダウダ考える必要なんてない。

それがシモンの想いであり、アスナが言った意見が正にそれだった。

アスナとネギはお互い見合ってからシモンに向き合い、うなずいた。

 

「そういえば自己紹介がまだだったわね、私は神楽坂明日菜、よろしくね!」

「俺はシモンだ、よろしくな!」

「シモンさん今日はありがとうございました。あの~また会えますよね・・・・・」

 

ネギが不安そうに聞く、

 

「大丈夫、俺はしばらくこの近くの教会にいるから、また会おうな!」

「はいシモンさん!」

 

こうしてネギ達はそれぞれの帰る場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜道を歩くシモン。シモンはまた抜け出したことがシャークティに気づかれるのを恐れた。

今回はかなりきつく注意されていたからまずいだろう、そう思い少しビクビクしていた。

しかし彼の不安は的中した。なんと教会の入り口の前にシャークティが立っていたからだ。

 

「あっ!?・・・・・あ・・・・・はははは・・・・・シャークティ・・・・」

 

シモンは顔を引きつらせて思わず笑ってごまかそうとした。

するとあることに気づいた。

そこにいたのはシャークティだけではなかった。そこにはメガネを掛け、口にタバコをくわえている男と・・・・・

 

「・・・・・獣人か?」

 

と思われる老人がいたからだ。

 

「・・・・・人類じゃ・・・・」

 

老人が口を開いた。どうやら人間のようだ。

そしてシャークティが口を開いた。

 

「シモンさん、こちらがこの学園の責任者の学園長です。そしてこちらの方がこの学園の教員の一人の高畑先生です」

 

てっきり怒られるのかと思ってたシモンは不思議そうに首をかしげた。

すると首をかしげるシモンにシャークティは告げた。

 

「シモンさん・・・・我々は魔法使いです」

「えっ!?」

「この学園で起きる魔法使い同士の争いは全てこちらで把握しています。ですからエヴァンジェリンとネギ先生の戦いの場にあなたが現れたのも、一部始終を見ていました」

「・・・・・シャークティもマホウ使い・・・・ネギ達と同じ・・・・」

 

シモンは驚いた。特殊だと思っていた魔法使いという存在は、この世界に来て一番世話になった人もその一人だったのだから。

 

「何故魔法使いでないあなたが魔法を知っているのか・・・いえ・・今日はあなたのことを全て我々の話してください!」

「でも・・・・医者には・・・・」

 

医者に不名誉な診断を下され、シモンは頭のおかしい人だと思われていた。自分が何を言っても信じてもらえないことへの不安があった。

しかし、シャークティは食い下がった。もう、誤魔化されたりしないと。シモンの意見を「馬鹿」「頭がおかしい」で切り捨てたりしないと。

 

「私はこれからあなたの言葉の全てを信じます!!それがどんなに信じられないようなことでもです!これまで一緒に暮らしてきてあなたが信頼と信用の置ける人物だということは分かっています」

「僕にも聞かせて欲しい。さっきの戦いの中の君の言葉は全て聞かせてもらった・・・・・・・君が不審者だなんて思っていない

 

それは、シャークティの隣にいた高畑からもだった。

 

「・・・・・・わかった・・・・・全部話すよ」

「うむ・・・・では中で聞かせてもらおうか」

 

そうして4人は教会の中に入っていった。

しかし4人は気づいていなかった。4人の様子を3人の女が伺っていたことを、

 

美空とココネ。彼女たちも実はエヴァとネギの戦いを離れたところから見ていた。

 

しかしクラスメートの刹那や龍宮に自分が魔法関係者だと知られたくなかったため別行動していたのだ。

 

もう一人はエヴァ。シモンから預かっていたコートを教会の前に置いていこうかと思った瞬間に、学園長たちを見つけ、美空達とは別の場所で様子を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「質問は後にして、まずは俺の話を聞いてくれ、信じる信じないは任せる」

 

「わかりました」

 

「うむ、では聞かせてくれい」

 

 

礼拝堂の椅子に座り通路に立つシモンにみんな注目した。

 

 

「俺は・・・この世界の人間じゃない」

 

 

「「「!?」」」

 

 

初めから、驚愕の内容だった。

 

 

「理由は分からないけど俺はこことはまったく別の地球の人間だ」

 

「いきなりだね・・・・・」

 

「・・・・うむ、続けてくれ」

 

「ああ、俺の世界の人間は最初人類の全ては地上にいる獣人によって地下に閉じ込められていた。俺も最初の頃は地下の世界が全てで、地上の存在は知らなかった」

 

「以前一度聞きましたね・・・」

 

 

始めて出会った頃。シモンは医者の前で同じことを言っていた。しかしその時は自分も医者もまったく相手にしなかった、

シャークティは今回はシモンの話を最後まで信じることにした。

 

「だけど俺たちは地上に飛び出した。地上の存在を知ったんだ!俺のアニキと一緒に天井を突き破り・・・・でもそれから俺たちの戦いは始まった」

 

アニキ。シモンが酔っ払ったときに言った大切な人間の一人、シャークティは確信した。

 

「地上にいる獣人は俺たちに容赦なく襲い掛かった・・・・そして俺たちは生きるために戦った。それはつらくて長い戦いだった・・・・アニキもその中で死んだ・・・・でも俺たちは勝った!自由を勝ち取ったんだ!・・・・・それが今から8年前の話、今では人間も獣人も共に地上に生きている」

 

なるほど。医者が信じないのも無理は無い。

一般人がそんなことを言えば誰も信じないだろう。

しかし彼らは違う。魔法使いだ。

この世界にも妖怪や獣人の類も存在する。

そしてシモンを一般人ではないと認識して話を聞けば、これだけの話も信じられなくはなかった。

 

 

「俺も最初はその世界の英雄みたいな扱いを受けていた、王様の真似事もやった。でも俺は穴掘りしか能のない奴だったから、その立場も捨てて旅に出た。見知らぬ土地で穴掘りシモンとして生きることを決めた。それでその旅の途中、穴を掘っていたら俺のこのドリルが途中で光って・・・・」

 

「気づいたらこの学園にいたわけか・・・・」

 

「なるほど・・・・・そういうことだったのですか・・・・・」

 

「う~むこことは違う世界からの~、何か証拠のようなものはないかのう?」

 

 

学園長も異なる世界を行き来する魔法は知らない。シモンの話を信じるとは言ったが、さすがに話が壮大すぎた。

何かこの世界にはないシモンの居た世界の物でも見せられれば、少しは信用できた。

 

 

「しょ・・・証拠か・・・・俺ドリルしか持ってなかったし・・・・・・あっ!!」

 

「そうだシモンさんあの子を・・・・・」

 

 

シモンとシャークティが何かを思いついた。

 

 

「「ブータ!!」」

 

「ぶいっ!」

 

 

二人の言葉と共にシモンの服の中で隠れていたブータが飛び出してきた。

高畑と学園長はその小動物を見入る。

 

 

「なっ・・・・こ・・・これは」

 

「むう・・・ブタ?いやしかしモグラでもない・・・・長生きしてるが、こんな生物は初めてみるのう・・・」

 

「こいつはブタモグラのブータ。俺の世界にいる動物で、俺の仲間だ!」

 

「ブタモグラ・・・・そんな直球な種類だったのですねブータは」

 

 

「う~~~む。少し微妙ではあるが・・・・まあ良い・・・おぬしの話を全て信じよう」

 

 

高畑もシャークティも苦笑しながらうなずく。

学園長の言葉はシモンにとってうれしかった。

なぜなら誰も自分の話を信じてくれなかったからだ。

 

「ありがとう、学園長さん!」

 

だが、信じるとは言ったものの、重要なのはこれからである。

 

「さて!それで聞いておきたいんじゃが・・・・」

 

学園長が少し真剣に聞いてきた。

 

 

「おぬしこれからどうするのじゃ?」

 

「えっ!?」

 

「元の世界に帰る方法がないのじゃろう?いまだにこの世界にいるのじゃから、これからどうするつもりじゃ?」

 

「んー別に特に考えてなかったなー。確かにこのままシャークティに頼りっぱなしはまずいよなー」

 

 

 

シャークティは少し嫌な予感がした。

別にそれほど迷惑は・・・・・かかってはいるかもしれないが、それでもシモンとの生活は悪くないと思う自分がいた。

まさか学園で雇うのか?学園長ならあっさり認めるような気がした

 

そして学園長の言葉は、

 

 

「では少しアルバイトをしてみんか?」

 

「「「アルバイト」」」

 

 

学園長の言葉に3人はハモッた。

 

 

「今度ネギ君のクラスが京都に修学旅行に行くのじゃ」

 

「キョウト?シュウガクリョコウ?」

 

「この国にある地名じゃ、修学旅行はその地に行って、その土地の文化や歴史を学びに行くことじゃ」

 

「へー、楽しそうだな」

 

「学園長・・・まさか・・・」

 

 

高畑とシャークティに不安がよぎった。そしてその不安は絶対的中すると確信した。

 

「しかしじゃ、今回魔法使いのネギ君が行くことにより、少し厄介なことがあるのじゃ」

 

ああ、もう絶対当たっている。

高畑とシャークティは自分たちの予想が当たっていることを確信した。

 

 

「実は魔法使いにも色々組織があっての~今わしが管理している組織と向こうの土地の組織は昔から仲が悪くて、今回何かちょっかいを出してくるかもしれんのじゃ」

 

「ふーん」

 

「しかしワシもいい加減仲直りをしたくてのう、今回そのための使者としてネギ君に頼むつもりなのじゃが・・・・・おぬしも手伝ってやってはくれんかの~」

 

「「やっぱり!!」」

 

 

予想は当たっていた。

 

「手伝うって何をだ?俺マホウとか言うのつかえないぞ」

「戦ってくれといってるわけではない。しかし今回は大人の色々と汚い思想や考えが裏ではある。子供のネギ君がその事実に飲まれ自分を見失わないよう、支えてやってはくれんかのう?先ほどの戦いのときのように」

 

シモンの言葉があったからこそネギは立ち上がり、戦った。

それは高畑たちも知っていた。だからこそネギの成長のためにシモンに頼むのだ。

 

シモンは別に対して考えることもなく了承した。

 

 

「ああいいぜ!俺も違う土地を見てみたいし、ネギともっと話してみたいしな!シャークティもそれでいいだろ!」

 

「・・・・・・・・はい、シモンさんがそうしたいのなら。でも気をつけてくださいね・・・・・あまり無茶をしないでください・・・ちゃんと帰ってきてくださいね・・・」

 

 

シャークティは本当は反対だった。

魔法の使えないシモンに関わらせることに。

しかし目の前の男が頼んで止まる男ではないことは十分知っていた。だから仕方なく了解するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タカミチは反対か?」

 

 

教会からの帰り道、学園長は隣に歩く高畑に聞いた。

 

「はい、確かに今回ネギ君は勝ちました・・・しかし一歩間違えればどうなっていたことか・・・・彼の言葉には根拠がありません」

 

シモンの言葉でネギは立ち上がったが、もし駄目だったらと思うと怖かった。

ネギは自分の憧れた男の残した子。ネギがまた無茶をしたら今度は怪我では済まないかもしれない、

だからシモンをネギのそばに置くことを納得しなかった。

 

 

「確かに根拠は無かった・・・・・しかしじゃ!彼の無茶な言葉には中身があった!それは分かっているじゃろう」

 

「・・・・・ですが」

 

「それにじゃ」

 

「もしナギがネギ君と一緒に暮らしていたら・・・「違います!」」

 

「彼はナギじゃありません!」

 

「無理を通して、道理を蹴っ飛ばせ、まさにナギにピッタリじゃのう」

 

 

本当は高畑も気づいていた。シモンにナギを重ねてしまったことを。

そしてそれが自分だけでないことも。

学園長も、そしてエヴァンジェリンもシモンにナギを重ねてしまったことを。

 

 

「・・・しかしもう一つ気になることがあります」

 

「うむ、彼はおそらく嘘は言ってはいないじゃろう。ブータくんのこともあるしのう。じゃが彼の世界の話は、あれだけではなかったはずじゃ」

 

「やはり気づいていましたか。そもそも何故彼の世界の人類は地下に閉じ込められていたのかなど、少し気になります」

 

「無理に聞き出すのも悪いと思っての~」

 

 

シモンは詳しく話さなかった。

しかしそれは意図したものではなく、一度話したら一晩あっても語りつくせぬことになってしまうため、省いただけだった。

 

それはシャークティにも、そしてこっそり話を聞いていた美空やエヴァにも分かっていた。

だからシャークティは学園長が帰りシモンと二人になったことが分かり、聞いた。

 

「シモンさん・・・・もっと詳しく教えてください」

「えっ!?詳しくって・・・・」

 

もう今から寝ようとしていたシモンは聞き返した

 

「まだ全てを聞いてません・・・・あなたのアニキという方のこと・・・以前言っていたダイグレンダンという名前・・・・そして二アという方も・・・・・」

「二ア!?!?」

 

ニア。一度も名前を出したことはなかったはずだと、シモンは驚愕した。

 

 

「以前美空があなたにお酒を飲ませたとき・・・・あなたは酔ってその方の名前を出しました・・・・そしてその方がもう・・・・」

 

「そうだったのか・・・・・覚えてなかった・・・・・」

 

 

シモンは酒を飲んだことは覚えていたが、その後の記憶がまったくなかったため覚えていなかったのだ。

 

 

「シャークティ、別に俺は隠してるわけじゃない。ただ、さっきは俺の今の状況を説明するために簡単に説明しただけだ。話せば、すっごく長くなるからな」

 

「それでも!・・・私は・・・・」

 

「これから少しずつ話していくよ。俺のこと、大グレン団のこと、アニキや二アのこと、俺たちがぶち破ってきた壁のこと・・・・だから楽しみにしていてくれ!」

 

「・・・・ふう、わかりました今日はこれまでにしましょう、明日からお願いします」

 

「ああ!」

 

 

シモンはそう言ってニッと笑った。

いつもの笑顔。それでシャークティも納得してしまった。

少なくとも話してくれることを約束してくれた、今はそれだけで満足だった。

  


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