魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第102話 決闘突破

「コレット~、そろそろ行こうよ。旧世界の魔法使い、もう着いてるってさ~」

「うん、今行くよ! 楽しみだな~~」

 

魔法学術都市アリアドネーにある騎士団候補生の生徒たちが行き交う校舎の中で、制服と魔法使いのローブに身を包んだ眼鏡を掛けた亜人の少女コレットはウキウキしながら校舎内を走っていた。

 

「随分興奮してるね。何で? 交流って言っても、旧世界とこっちは、あんまり関係ないじゃん?」

「そうだよね~、なのに何でコレット、そんなに興奮してるの?」

 

コレットと共に走る同級生はコレットの態度が分らずに首を傾げるとコレットはニヤリと笑って答えた。

 

 

「だって旧世界はあのナギのいた世界だよ! それに今回旧世界から来た生徒の所属する麻帆良学園って、たしかナギの息子がいるって情報があるのだ!」

 

「「ええ~~~!?」」

 

「ふふ~ん、ここで仲良くなっておけば、サインもらえるかもしれないよ?」

 

 

魔法世界にはサウザンドマスターのファンは多い。

その人数は星の数ほどである。コレットもそのうちの一人である。

熱狂的なナギファンとして、是非ともナギの息子の話を聞きたい彼女は、走って交流生徒たちの場所へと向かっていた。

駆け足で向かった広場には、既に大勢の人だかりが居た。

 

「うわあ~~、もうこんなにいるよ~。中に入れないかな~~」

 

人ごみの外側でピョンピョンと飛び跳ねて中の様子を見ようとするコレット。

 

「あっ、委員長がいる!? 抜け駆け・・・・・ってあれ? ・・・・・・何、この空気?」

 

するとその視界には、少し青ざめた表情で円の中心を見る人々と、黒い空気と火花が飛び散る二人の少女が引きつった笑みで握手をしている光景が見えた。

 

「ねえねえ、何があったの?」

 

自分たちより先にこの場に居た生徒たちに尋ねると、一人の生徒が小声でコレットの耳に近づいていく。

 

「なんか、向こうの代表者の一人が委員長の幼馴染だったんだって」

「ええ~~~!?」

 

意外な繋がりに驚くコレット。

しかし円の中心で握手を交わす委員長ことエミリィと高音の二人の雰囲気は、とても懐かしの友達に再会したようには見えなかった。

 

「ふっふっふ、久しぶりですね高音さん。皺が増えたのではないですか?」

「ふっふっふ、元気そうですねエミリィ。相変わらず幼児体系なのに背伸びをしているのですね」

 

メキメキと女とは思えないほどの握力で互いの手を引きつった笑顔で握り締め、両者の背後に龍と虎の姿が見物人には見えた。

 

「これから成長する若さがうらやましいのですか?」

「あら、私は中学生の頃からあなたよりずっと大人っぽかったですわ?」

「ふっ、成長が早いと垂れるのも早いのですよ?」

「あら、成長も魔法の上達も遅いアナタに言われたくはありませんわ」

「ふふ、一体いつの話をしているのですか? にわかナギ様ファンの癖に」

「ほう、そう言えば貴方は・・・・・・・ふふふ、私は彼の息子とこの間の学園祭で仕事をしましたわ」

「なっ、ナギ様の息子ォ!?」

 

勝ち誇った笑みでエミリィを見下す高音を、エミリィは顔を真っ赤にして睨み返す。

鳴り止まない両者のいがみ合いを込めた再会の挨拶。周りの生徒たちも心配そうに見つめるが、とても口出しできぬ空間が二人の間から流れていた。

 

「お姉さま・・・・」

「お嬢様・・・・・」

 

愛衣とベアトリクスも二人を止めたいが、二人から溢れ出す覇気に気圧されて一歩も踏み出せないで居た。

 

「い、委員長~~」

「と、止めなくていいの、コレット?」

「無~理~だ~よ~~。それにしても数日前からやけに委員長が気合入っていると思ってたらこ~ゆうことだったの?」

 

雷が鳴り響くほど険悪した雰囲気にコレットたち騎士団候補生はガタガタ震えていた。

高音は意外と優秀な魔法使いの上に、エミリィもなんだかんだで騎士団候補生の中でもトップクラスの実力者である。

生半可な力と覚悟ではこの二人の間に入ることすら出来ず、両者の間に落ちる雷鳴だけを黙って聞いていることしか出来なかった。

しかしそんな二人の仲裁に入る実力者が現れた。

 

「随分と物騒な空気が漂っているわね。この友好の証でもある交流の場を乱すことは、誇りある任務と己の名を汚す行為にしかならないわ」

「「「「!?」」」」

 

人込みの輪で溢れる広場が突如二つに分断されて、その道から一人の亜人の女性が歩み寄ってきた。

年はそれほど若くは無い。

しかしその身にまとう空気は、幾多の戦場を乗り越えてきた完成された実力者だと人目で分った。

 

「なっ、あ・・・貴方は!?」

 

どうやら高音もこの女性を知っているのだろう。

急に背筋をピンと伸ばし、冷や汗を全身から流した。

それはエミリィも同じである。

高音との争いを急にやめ、肩膝をついて深々と女性に頭を下げた。

 

「こ、これは総長(グランドマスター)!? お、お見苦しいところをお見せしてしまい・・・」

「も、申し訳ありません。このような神聖なる交流の場を汚すような軽率な行動を・・・・」

 

グランドマスターと呼ばれた女性にプライドの高い二人が先ほどの争いから一変して態度を変えた。

すると女性はニッコリと柔らかい笑みで二人の肩に手を置き、それ以上二人を咎めることはしなかった。

 

 

「ふふ、久しぶりにあったライバル同士では色々とあるでしょう。しかしまずは喧嘩ではなく、精一杯の歓迎で貴方たちを迎えるわ。遠路はるばるよく来たわね、旧世界の魔法使いたちよ」

 

「はっ! 身に余る光栄です!」

 

 

女性はやんわりと高音に笑みを送り、その直ぐ後に愛衣、美空、ココネに振り返り一礼をした。

 

「すご~い、さすが校長! 簡単に場を終わらせちゃったよ!」

「ほんと、やっぱ貫禄が違うよね~」

 

女性のカリスマに生徒たちは関心の声を上げた。

しかし一人だけ首を傾げているものが居た。

 

(誰だろ、このおばさん・・・・)

 

それは美空だった。

プライドの高い二人を一瞬で頭を下げさせ、場の争いを一瞬で収めた。

その僅かな仕草ですら心を揺さぶられてしまいそうになる、女性の完成された空気からだけでも只者ではないと感じた美空は、近くに居た学園の生徒に尋ねてみた。

 

「・・・・ねえ、あのおばさんって誰すか?」

「へっ、おばさ・・・・」

「美空・・・・・・・・」

「み、美空さん・・・・あなたって人は・・・・」

 

美空の近くに居たコレットは質問の内容に固まってしまった。

そしてその声が聞こえたのか、ココネや高音、そしてエミリィまでもが信じられないかのような目で、首を傾げるシスター服の少女を見つめている。

 

 

「ちょちょちょ、あなた、セラス校長に向けておばさんって!?」

 

「えっ、・・・・だっておばさんじゃん?」

 

「何言ってるの!? セラス校長はかつての大戦のときにアリアドネー魔法騎士団のリーダーで、あのサウザンドマスターたち『紅き翼』と共に『完全なる世界』と戦った大英雄の一人だよ!?」

 

「へ~~、ネギ君のお父さんの仲間か~~」

 

「へ、へ~~って!?」

 

 

大して興味なさそうな美空のマイペースな態度にコレットは目を見開いて驚いてしまった。

それはセラスを見た瞬間激しい緊張に襲われた高音も例外ではない。

 

「た、高音さん・・・・・」

「・・・・・・何です?」

「・・・・あ、あんな無知な方も代表者なのですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

魔法世界の住人にとってかつての大戦の英雄の名など聞いたことが無いほうがおかしいぐらいである。

それを当の本人を目の前に、まったくの天然で返す美空が信じられなかった。

元々魔法世界の知識を知らないのは知っていたが、高音もこれほどまでの美空の知識の無さには本当に驚いてしまったようだ。

 

「お、おばさん・・・・ふふ、そう呼ばれたのは初めてよ。随分と愉快な子ね」

 

そして当の本人は一瞬ポカンとしてしまったものの、美空の怖いもの知らずな発言に怒るよりもむしろ面白くてクスクス笑ってしまった。

 

「い、いや~、ごめんなさいっす。何分勉強不足なもんで~」

「いいえ、頭の固い魔法使いが多い中で、貴方のような方はむしろ貴重よ。私のかつての仲間も、そんな些細なことなど気にしない者達だったわ」

 

セラスはそう言って少し懐かしいものを見るような目をした。

頭をポリポリ掻きながら苦笑する美空を見ていると、かつての仲間だった赤い髪の魔法使いや、少々野蛮だが最高の仲間たちをふと思い出して、少しうれしそうだった。

 

「貴方、名前は?」

「おっ、よくぞ聞いてくれたっす!」

 

すると美空はセラスの問いに、ニヤリと笑って名乗りを上げる。

 

 

「では諸君! 耳の穴かっぽじって聞いてくださいっす!」

 

 

それは魔法使いとしての礼節など何も無い。

美空はサングラスをつけた燃えるドクロのマークを背中に背負い、なんの躊躇いも無く叫んだ。

 

 

「壊した壁は数知れず! 一度突き抜きゃ天まで昇る! 無茶と無謀の大バカ軍団! 新生大グレン団の特攻女神、春日美空とは私のことっすよ!!」

 

 

異界の地でグレン団の名を先に口にしたのはシモンたちではなかった。

麻帆良学園同様、この世界ではまったくの無名のグレン団の名を先に出したのは美空だった。

その堂々とした姿に感心したセラスと、相棒のココネを除いた一同の反応はまったく同じだった。

 

 

 

「「「「「「(バカだ・・・・・・)」」」」」」

 

 

 

呆れ顔で見つめる生徒たちの視線は冷たかったが、美空は気にせずにまっすぐな瞳でセラスを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

アリアドネーの学園の中庭、大勢の生徒が集まっても余裕があるほどの広さである。

現実世界で言えば運動場ぐらいの広さである。

 

やがてその広場にいくつものテーブルや食事が運び込まれてきた。

それは麻帆良の生徒を歓迎する立食パーティーのようなものである。

 

普段は授業などでしか使わない広場だが、今日は生徒たちが自由に動き回れるようにこのような形式をとった。

やがて堅さの取れた生徒たちが、皿の上に料理を乗せ美空たちを囲んで談笑を始めた。

 

「え~、美空ってナギの息子のネギ・スプリングフィールドのクラスの生徒なの!?」

「そだよ~。それにしてもやっぱネギ君のお父さんって人気者だったんだ~」

「サイン欲しい!!」

「私も!!」

「はは、コレットたちもファンなんだ~」

 

只のバカだと思いきや、そのバカはなんと自分たちの憧れの息子のクラスの生徒だと知り、コレットを始めとする生徒たちは一気に美空に群がってネギの話を聞こうとしている。

 

「ナナ・・・ナギ様の息子・・・う、うらやましい」

「あなたのサウザンドマスター好きも相変わらずですね」

「お姉さまもそうなのでは?」

 

美空たちの話題を少し離れたところで聞き耳を立ててうらやましがっているエミリィを高音たちは苦笑して眺めていた。

どうやら話の中心はネギの話題で溢れていた。

その話は、ネギの父親とも盟友のセラスも当然気になった。

 

「彼の息子は立派に成長しているの?」

「ん? あ~、・・・・まあ、立派になってるんじゃないっすかね~。私から見たらクソ真面目なとこが心配っすけどね~」

 

セラスに尋ねられて、美空はあごに手を置いてネギについて考えてみた。

才能溢れる天才少年で、女に人気がある純粋少年。

しかし純粋ゆえに色々な人間の意見に思い悩むところもある。超鈴音とシモンの時がいい例だった。

シモンと出会い、多少思考が柔軟になったが、本来のネギの性格はいつだって細かいことを気にする性格である。それはいつだって単純な美空には無いことだった。

 

(挙句の果てに、これからの生き方まで聞かれちゃったしね~)

 

学園祭が終わった直後の教会で、事故(悪戯)で神父に成りすまして懺悔室で遊んでいた時に、尋ねてきたネギは美空に今後の生き方の悩みを聞いてきたのである。

美空はその時を思い出して軽くため息をついた。

 

「まあ、私には関係ないことっすけどね~。でもネギ君はどうも魔法使いがどうのとか深く考えすぎなんっすよね~」

 

軽口で他人事のように語る美空。だが、旧友の息子ゆえにセラスはネギの現状が少し気になった。

 

「考え・・・すぎ?」

「そうっすよ、10歳なんだからもっとブワ~っと遊んじゃえば良いのに、修行修行っすからね~、ほんと良くがんばりますよ、あの坊ちゃんは」

「ふむ・・・・・・」

 

少し何かを考える仕草を見せるセラス。そして顔を上げて美空に尋ねる。

 

「では、・・・貴方はどうなの?」

「はっ? 私っすか?」

「ええ、たしかに貴方の言うとおり、真面目に考えすぎるのも時にはマイナスになる。でもそれはある意味で魔法使いとしてはスタンダードなタイプよ」

 

魔法使いとは、どちらかといえば頭が固く正義感の強いものが多い。

高音やエミリィのように誇りや義務などを大切にする者はその典型だろう。

 

「貴方の世界に住む魔法使いは表に出られなくても影ながら世の為、人の為にその力を使うのが使命よね?」

「う~ん、まあ・・・建前上は・・・・」

「建前ではありませんわ!?」

「あ~、もう高音さんは堅いっすね~」

 

しかし中には型破りで力任せの単純なタイプも居る。それがネギの父親だった。

だからセラスは美空を頭の堅いほうではなく、単純なネギの父親寄りの魔法使いだと判断した。

しかしただの単純な魔法使いだとは感じなかった。

 

「あなたは柔軟な思考の魔法使いかもしれない。でも・・・何か譲れないものも持っている。そしてそれは、魔法使いという仕事や使命などとあまり関係ないことなのでは?」

 

セラスの読みは当たっていた。

 

(するどいな~、このおばさん)

 

美空はポリポリと頬を掻きながら自分を見透かしたセラスに苦笑いを浮かべた。

 

 

「ん~、まあそうっすね~、ぶっちゃけ世の為、人の為とかメンドイことは考えてないっすね」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

目の前の女性に虚偽は不可能と判断した美空は観念して己の心を白状する。

その発言に少し広場がざわめき出した。

 

 

「・・・・・メンドイ?」

 

「ん~、私が魔法を覚えたのは両親の意向っすからね~。ネギ君や高音さんたちみたいに立派な志はないっすね~。どっちかっていうと卒業までいい子にして大学では遊びたいって感じ・・・・・ってのが最初の私『だった』かな~」

 

 

『だった』という言葉をつけて美空は少し遠くを見つめた。

それは、それほど昔の話ではない。数ヶ月前の話である。実際美空の表面上の性格は大して変わっていない。

だが、以前までの彼女とは明らかに違うことは背中に背負った誇りが証明していた。

 

 

「でも・・・」

 

「お待ちなさい!!」

 

「!?」

 

 

『でも今は違う』そう言いかけた時に誰かが口を挟んできた。

美空が何なのかと振り返るとそこには腕を組んで美空を真剣な瞳で睨み付けるエミリィがいた。

 

「・・・・なんすか?」

「先ほどから聞いていれば・・・あなた・・・」

 

エミリィの態度は明らかに美空に対する敵意を感じた。

それは先ほどの高音との言い合いで見せた敵意とは違う。

仲がいいのか悪いのか分らない幼馴染に見せる、心を開いた気持ちのいい敵意ではなく、明らかに侮蔑を込めた敵意だった。

 

「あなた、・・・本当に魔法使いですか? それとも旧世界の魔法使いはその程度のものなのですか?」

「・・・・・はっ?」

「エミリィ!? 美空さんには私が後で言っておきます。ですからここは・・・・」

「いいえ、貴方も私の気持ちが分るはずです、高音さん!」

 

険悪な空気に流石の高音も見過ごせずに仲裁に入ろうとするが、エミリィは首を縦には振らずに止まらない。

そして周りの生徒たちも不穏な空気にハラハラとしているが、エミリィの気持ちが分ってか、止めようとはしない。

 

「かつてこの世界は、混乱の中にありました・・・それを救ってくださったのがサウザンドマスターを始め、総長(グランドマスター)などの幾多の英雄たちの活躍や犠牲があり、我々は今の平和を生きています・・・」

「・・・・・・はあ・・・」

「今日の平和を生きることに我々は彼らに対する感謝と尊敬の念を常に忘れてはならないのです。それを・・・貴方は・・・・」

 

そこにいたのは、先ほどまでのようなサウザンドマスターの熱狂的ファンの女の子ではない。

己の信念と誇りを持った一人の少女だった。

美空は黙ってエミリィの話を聞いていた。

そしてエミリィの言葉はもっともで、反論することは出来ない。

 

「私は総長(グランドマスター)のような戦乙女に憧れ、そしてかつての英雄達の守った世界を未来永劫繁栄させるために、私はここにいます。それは高音さんも同じです。立派な魔法使いを目指して力無きもの達を救う、それが我々の義務です!」

 

受け継がれてきたものを受け取るために、彼女はこの道を選んだ。

仕切り屋で、口うるさい優等生。

しかしそれは全て彼女が真剣だからこその言葉だった。

ナギだけでなく、かつての英雄たちへの心の底からの尊敬の念。

そして何より同じ魔法使いとして美空の軽はずみな言動を看過できなかった。

 

 

「・・・・んで、それと私のことと、何の関係があるんすか?」

 

「!?」

 

 

美空が全てを言い終える前に口を挟んできたエミリィは、今の美空の想いを知らない。

魔法使いであることに誇りを持つ彼女が、同じ魔法使いとして美空を非難するのは無理も無い。

きっと高音だって同じことを言うだろう。

そう、エミリィの意見は正しい。

現時点での自分の態度と無知は非難されても仕方の無いことだった。

しかし先ほど言いかけた言葉の続きを言えば全ては丸く収まったはずである。

今の自分は以前までとは違う。自分は本気になったのだと言えば、エミリィの勘違いで場は収まったはず。

だが、美空は言わなかった。

言い訳しているみたいで嫌だったのかは分からない。

しかし代わりにエミリィを睨み返した。

 

「私が魔法を覚えたのは両親の意向、でも・・・この道を選んだのは・・・今ここにいるのは、全部自分の意思っすよ。そこに、魔法使いの義務も英雄も関係ない!」

 

全ては自分の意思だと主張する美空。

しかしその言葉を聞いてエミリィは再びため息をついた。

 

「・・・・ふう、とんだ自己中心的な方ですわ。これが・・・・旧世界の代表者ですか? 高音さん・・・・やはり貴方はとんだぬるま湯の世界に居ましたね。こんな志も持たない方たちの世界で何を学んだのです?」

 

エミリィは美空の態度に失望して深くため息をついた。

 

 

「一から勉強しなおしなさい。あなたは魔法使いの心得を家族にも師にも習わなかったのですか?」

 

「!?」

 

 

その言葉に美空は肩を大きく揺らした。

エミリィの言葉が魔法使いとして正しい言葉なのかどうかは分からない。

しかし、仮に魔法使いとしては正しくとも、今のエミリィの言葉を聞き流す理由にはならなかった。

 

 

「習ってねえーーーーーーッ!!!!」

 

 

学園の広場にて響き渡る美空の声。

その声に皆が目を見開いて呆然とした。

 

「なっ!?」

「!?」

「み・・・・美空さん?」

 

すると美空は闘志を全面にむき出して、エミリィに向けて叫んだ。

 

 

「私が師匠と兄貴に習ったのは、無理を通す魂の在り方だ!!」

 

「!?」

 

 

その言葉の意味を何人が理解できただろうか。

いや、おそらく殆どの者がその言葉の意味が分からないだろう。

だがそれでも構わない。

自分で決めたことを、自分のやり方で通す。

それが美空の、そしてグレン団のやり方だ。

 

 

「魔法使いとしての資質が劣っても、胸に秘めた気合と魂、そして背負った誇りのデカさじゃ負けねえっすよ!!」

 

「な、なんなのです?」

 

 

これほどまでこの少女は熱く叫ぶ女だっただろうか。

少なくとも高音も愛衣もこんな美空は知らなかった。

根性の無い面倒くさがり屋の頭の軽いバカ。そんな評価だった。

しかしエミリィが家族と師匠の話題に触れた瞬間、美空は大衆の前で、背中に燃えるグレン団のマークと共に想いをブチまける。

そして次の瞬間、美空はエミリィに向けて構えた。

 

 

「そんなに言うなら、ぬるま湯の世界に居た私の心を紅蓮の炎で変えてくれた気合ってもんを、アンタに見せてやるっすよ!!」

 

 

これは美空からの挑戦状だった。

なぜなら自分の居た世界と家族を見下されてしまったのである。

自分のことなら我慢できる。

しかしこのことには我慢できなかった。

家族への不評を取り下げさせるために、美空は魔法騎士団候補生の中でもトップクラスの実力を持つエリート相手に喧嘩を売る。

 




お世話になっております。

私事ですが、本サイトでも掲載しております、オリジナル作品『異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと―3巻』が、発売されました。

二次創作小説を書いて培われたものが、こうして世に出ることになりました。
色々な作品で皆さまが応援してくださったおかげです。ありがとうございました。

そして、この三巻には作者にとって特別な想いがあります。

当方が初めて二次創作小説を書いたのは、今から八年前のことです。
魔法先生ネギまと天元突破グレンラガンの世界に魅了されて、両作品のクロスオーバー小説を書き始めました。

それが、本作『魔法はお前の魂だ』、です。

当時別サイトで掲載していた頃からお世話になっている方々はご存知かもしれませんが、本作は、後に『チコ☆タン』というキャラが登場します。

この『チコ☆タン』とはネギまに登場するキャラで、早い話、主人公ネギに瞬殺されるだけのキャラです。私はこのチコ☆タンを小説内のオリジナル設定で、「キレると変身してとにかく凶暴になって大暴れする」という魔改造を施し、世界最強キャラになって、グレン団相手に大活躍するキャラにしました。当時は「グリニデ閣下や!」「ユピーじゃねえか!」と反響があったもので、私もすっかりこのキャラがお気に入りになりました。

現在、こちらに掲載している完結済みの別作品、『ミックス・アップ(ネギま×グレンラガン)』にもちゃっかりと、同じ設定のチコ☆タンが登場します。

なぜ、このような話をするかというと、この『魔改造チコ☆タン』をオリジナル小説の中にも組み込めないかと思った私は、『魔王チロタン』というキャラを小説内に登場させました。そう、そして今回発売の三巻にはその『魔王チロタン』が登場します。気分としては、八年前にイメージしていた変身後のチコ☆タンを、プロの絵師様に書いていただいたということです。

かつて、このネギまとグレンラガンの異色のクロスを書き続けたあの日々は、決して無駄でなかったという気持ちになりました。

関係ないことを長々と申し訳ございませんが、八年前からお世話になっている方も多かったので、改めて報告したくこの場に記させていただきました。

『魔法はお前の魂だ』もまだまだ続きますので、今後ともよろしくお願い致します。

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