魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
第13話 俺はその子にかなり嫌われている
「998!・・・999!・・・1000!!・・・ふ~~~」
朝早く、麻帆良学園の敷地内で剣の鍛錬をしている一人の女がいた。
毎朝の日課、基本の素振りを終えてから自分の一日が始まる。
汗にまみれた自分を手ぬぐいで拭く女の姿はとても凛々しかった。
彼女にとっては毎朝の日課、しかし今日の彼女はあまり集中できず、
どこか顔も浮かない。
「・・・・・・・・・・・・・・・はあ、」
学園でも優秀な剣士刹那は、集中しきれない自分にため息をついた。
集中できない理由は自分でも分かっている、
「結局・・・・あの男は何者だったんだ・・・・・・」
クラスメートのエヴァンジェリンと担任のネギ、二人の決闘に現れた謎の男
(確か・・・・シモンという名前だったな・・・・・・・)
それほどか関わり無かったが、常にクールな立ち振る舞いをする魔法教師の一人シャークティが口にした名前。
(あの後、学園長と高畑先生が事情を聞き、心配要らないと聞かされたが・・・・・)
魔法使いでも学園の関係者でもないシモンがなぜこの学園にいてエヴァンジェリンと知り合いだったのか、
その事情を聞くため、学園長と高畑が代表でシャークティの立会いの下、事情聴取をし、その結果シモンが危険な人物ではない事は、その日のうちに伝えられた。
しかしそれでシモンへの関心が無くなるわけではない。
自分を含み昨晩の戦いに関わったものにとってシモンの存在はそれほどインパクトがあった。
ボロボロになった子供に向かい、あきらめずに戦えと言った。
魔力もまったく無い一般人が、魔力を開放したエヴァンジェリンの前に気圧されずに堂々と立った。
そしてその熱い言葉で、少年と真祖の吸血鬼の心を動かした。
そして刹那もその一人であった。
自分にではなくエヴァンジェリンへ向けて言ったシモンの言葉。
戦いの後シモンはエヴァンジェリンに向かってこう言った。
そしてその言葉は離れた場所で見ていた刹那の耳にも聞こえた。
―――自分を偽ったりしないで本当のお前になったらどうだ?心の狭い人間に何を言われたって気にするな!!
彼はエヴァンジェリンの正体を知ってもまったく驚かなかったばかりか、そんなことを言った。
結局エヴァンジェリンは声を荒げ、その場を立ち去った。
自分はエヴァンジェリンが怒った理由がよく分かった。
人外であるゆえの差別、孤独、その気持ちは一般人のシモンには到底理解できるはずが無い。そう思っていた。
だからこそ事情も知らないシモンに分かったようなことを言われたくは無かったはずだ。刹那はそう思っていた。
自分も同じだ。だからこそ自分も大切だった友達と相容れないようにし、影から見守る。それだけしか出来ない。
もしその子に自分の正体がバレ、拒絶されたら、自分は二度と立ち直れなくなるような気がした。
(バケモノにバケモノと言うのはあたりまえ・・・・・心の狭い人間?・・・そんなものは関係ない・・・・・バケモノは所詮バケモノだ・・・・)
刹那はシモンの言葉を否定した。
(しっかりするんだ、あんなわけもわからない男の言葉など忘れろ!私はお嬢様を守れればそれでいい)
自分は今のままで十分なんだと言い聞かせた。
「修学旅行は京都、・・・・・・より一層気を引き締めねば!」
「ちょっと~ネギ、生徒の集合時間はまだ余裕があるのよ、何で私たちもこんな早くに出なくちゃいけないのよ~」
「まあ、ええやないかアスナ~、でもネギ君どうしたん?」
まだ少し眠そうに言うのはアスナと木乃香。今3人は駅に向かっている。
「えへへー、実は今日の修学旅行にアシスタントの人が来てくれるので、その人を紹介します」
ネギは修学旅行前の興奮も合わせてはしゃぎながら言った。
「はあ!?なによそれー!まったく聞いてないわよ?」
「うちもやー、ネギ君その人どういう人なん?」
まったく聞いてなかった情報に、二人は首をかしげてネギを見た。
「アスナさんは一度会ったことのある人です、すごくかっこいいお兄さんです」
「私が・・・・・ネギひょっとして・・・」
「えっ!?何でアスナは知ってるん?ネギ君うちにも教えてや~」
「待っててください、え~と、あっ!いました、シモンさ~ん!!」
「うそっ!?なんでシモンさんが・・・・・?」
「えっ・・・・・・あの人・・・・」
ネギは駅の集合場所に待つ男に向かって叫んだ。
一方でアスナは以前一度会ったシモンがどうして一緒に行くのかわからなかった。
そして木乃香は、シモンを見て自分がある夜に出会った男だとすぐに気づいた。
「おはようネギ!意外とまた早く会えたな!」
ネギの声にシモンも気づき、いつものようにニッとは笑い答えた。
シモンは今日はお気に入りのグレン団のマークの入ったコートではなく、シャークティたちに言われ、スーツを着用している。
あまりスーツは好きではなかったが、元いた世界でもたまに仕事で着たりしていたので、違和感はなかった。
アスナはシモンに早足で詰め寄り木乃香に聞こえないように、シモンに小声で事情を聞いた。
「ちょっとシモンさん、なんで?」
「学園長に頼まれてさ、ネギのサポートをしてくれって」
「でも・・・・・あっ!?ちょっとまずいわよ。エヴァちゃんも今回来るのよ!」
「あっ、アスナさん実はシモンさんとエヴァンジェリンさん、すでに仲直りしているんですよ」
「ああ、そうだぞ」
「なによー!あんなにエヴァちゃん泣かしたのになんでー!?」
二人が小声で話し合っているところに、木乃香が声をはさんできた。
「なあ~」
「あっ!?木乃香には紹介してなかったわね、この人は「ウチのこと覚えてるん?」えっ?」
「お前は確か、この前の夜の!」
「せや!また会えるなんて思っとらんかったんよ!なんでネギ君とアスナの知り合いなん?」
シモンも木乃香のことを覚えていた。
「木乃香さん、シモンさんの知り合いなんですか!?僕たちは以前シモンさんに危ないところを助けてもらったんですよ」
「えっ!?じゃあ、あの時の約束護ってくれたん!?ありがとな~、あっウチは近衛木乃香、よろしゅうな、シモンさん!」
木乃香はうれしかった。
あの夜自分の無茶なお願いを目の前の男は聞いてくれた。
―――よし、まかせろ!君の仲間は必ず助ける、だから安心しろ!!俺を誰だと思っている!
あの時、シモンはこう言った。
そしてその言葉どおりアスナとネギを助けてくれたのだ。
それが木乃香には何よりうれしかった。
「約束・・・・いや、あの約束は別に・・・・・まっいいか・・・・ああ、よろしくな!」
木乃香の言っていた友達と先生とは、ネギとアスナのことだった、
たしかにシモンは二人を助けたがそれはまったく別の夜の話、
しかし、うれしそうに笑う木乃香を見るとなんとも言えず、ネギたちも助けてもらったと認めてることだし、何も言わないことにした。
「ちょっと木乃香まで・・・なにがどうなってるのよ!?それに約束って何よ?」
すると木乃香はニタッと笑って
「ん~これはウチとシモンさんだけの秘密や~」
「はあ!?なんでよ!?」
「せやかてアスナもシモンさんのことウチに教えてくれへんかったやないか~だからウチもおかえしや~」
「え~木乃香さん、僕も気になります」
本当は隠すほどのことでもなかった。でもなんとなく気が引けた。
あの夜に出会ったシモンのことをアスナとネギはすでに知っていたのだから。
自分はあの日の男の名前すら知らなかったのに、それが少し嫌だった、
「でもシモンさんがなんで修学旅行に来るん?」
「ああそれは・・・・・・・・・・・」
「というわけで、お前たちのネギ先生の補佐として一緒に今回同行することになったシモンだ!」
高らかに自己紹介をするシモン、
「「「「「「嘘ーー!」」」」」
「私の情報にもまったく入ってないよー!」
「ちょっとネギく~ん聞いてないよ~」
「でも少しかっこよくない?」
「うん、やさしそうだよね~」
クラスの生徒たちは皆驚いていた。
まさか当日になって年齢の若そうな、しかも男がついてくるとは思わなかったからだ。
だがそれほど皆嫌そうな顔はしていなかった。
(あはは、みんな驚いてるね~、そりゃそうだよね~)
(くくく、これでようやく楽しくなりそうだ)
一方シモンを知るエヴァと美空は口にはしないが、シモンの様子を見ながら笑っていた。
そして・・・・
(ば・・・・ばかな・・なぜあの男がここに・・・・)
(驚いたね・・・・学園長は、彼は問題ないと言っていたが・・・・・)
面識はないが、シモンのことをエヴァとネギの戦い以来、知ることになった刹那と龍宮も、予想もしなかった展開に驚いていた。
「この旅行中はよろしくな!何か質問ある奴はいるか?」
「「「はいはいは~い!」」」」
いきよいよく、20名近くの生徒が手を上げる。
「よしネギ!一人ずつ当てていけ!先生らしくビシッと指せ!」
「えっ!?僕が当てるんですか?・・・じゃあ・・朝倉さん」
「は~い、じゃあまず定番でシモンさん年齢は?」
「22歳だ!」
それを始めにどんどん質問がされていく、
趣味、特技、など当たり障りのないものを聞いていくが
徐々に思春期の女子ならでわの質問が出てくる
「付き合ったことのある人数は?」
「えっ・・・・一人だけだけど」
――――ッ!
(!?こいつめ私に黙っていたが、恋人が以前いたのか?)
(それってまさか・・・ニアって人のこと・・・)
エヴァと美空がシモンの言葉に何かを気づいた。
「じゃあその人と今も付き合ってるの?」
「えっ・・・・・」
シモンが少し黙った。
(むっ、いい仕事してるぞ小娘ども・・・・さあ、どうなんだシモン?)
話に参加してないようで、聞き耳をしっかり立てているエヴァ
一方美空は、
(ちょっとまずいよ!・・・・ニアさんって人はもうこの世には・・・・・)
と、質問に対してドキッとしたが、シモンは顔色を変えずに答えた。
「一年前に別れちまった・・・・」
こんなとこで、みんなにニアのことを教えて、雰囲気を暗くするわけにはいかない。
シモンは気をきかせて、そう言った。
「じゃあシモンさん今フリーなんだー」
「う~ん年下のネギ君の先物買いか、大人の男か・・・・・・悩む」
生徒たちがキャアキャア騒ぐ中、エヴァは見えないところで静かにガッツポーズをしていた。
美空はシモンの今の気持ちを考え、少し寂しそうにシモンを見ていた。
「よお!来れてよかったな」
「ああ、少しジジイは渋っていたがな」
「シモンさんのおかげです」
「くくく、向こうでは色々あるかもしれんがせいぜい私を失望させるなよ?」
「ああ、魔法とか呪術とかよく分からないが、恐れるに足らずだ!安心しろ!」
新幹線の席で、シモンはエヴァンジェリンと茶々丸に話しかけてきた。
ただのあいさつ程度の普通の会話だった。
しかし、そんなシモンたちに、一人の生徒が声をかけてきた。
「シモンさん」
ネギのクラスの生徒。振り返ったシモンはそれだけは分かった。
だが、名前は知らなかった。
「お前は・・・・」
「桜咲刹那です、シモンさんあなたに話があります」
突如話しかけてきたのは修学旅行中エヴァと同じ班で行動する、刹那
「あなたの目的はなんですか?」
「目的って・・・」
「安心しろシモン、この女は我々側の者だ。学園長の依頼内容を話しても問題ない」
エヴァの言葉に刹那は眉をしかめ、
「学園長の?まさかお嬢様の護衛ですか!?」
「お嬢様?・・・良くわかんないけど俺はネギの補佐を言われただけだ」
「刹那よ、信用できないという目だな」
エヴァの言葉に少しドキッとした刹那だが、静かにうなずいた。
「私は・・・・・あなたを信用しない」
「えっ!?なんでだ?」
「この間のネギ先生とエヴァンジェリンさんの戦い、学園長同様私も見ていました。あなたは手を貸すどころか、ボロボロのネギ先生にあれ以上戦えなどと・・・・・運良く無事ですみましたが」
「違う!」
シモンは刹那の言葉を否定した。
「あれは男の魂を賭けた喧嘩だ!それを理解できないやつは逆に俺も信用できない!」
「私は女なんだが・・・・」
エヴァがぼそっと呟く、
「ふざけないでください!あんなのはただの無謀です、それをあなたは!」
「無茶と無謀が男の道だ、お前は信じなかったのは俺じゃない、ネギだ!でも俺はお前の信じなかったネギが勝つと信じた!」
「なぜネギ先生をそれほど信じたのです・・・・?」
「ネギが俺に無理を通すと約束したからだ、だから俺は信じた」
刹那は押し黙った。
だがしかしシモンの意見を認めるわけにはいかない。
死んだら終わりなんだ。
魂も何もない、ましてや何の裏付けもない言葉
(ふざけるな・・・・そんな根拠のない意見が戦場で通用するものか!)
刹那は認めることは出来なかった。
「随分とシモンを嫌っているなあ」
エヴァが口を挟んだ。
「当然です!根拠のない言葉だけを並べる人と、仕事を共に出来ません」
「仕事?」
「ああ、こいつは学園長の孫娘のお嬢様の護衛だ、この修学旅行中も何かと問題になるかも知れんのでな」
「孫?」
「木乃香さんのことですシモンさん」
「ぶーーーーーーーーー!?」
茶々丸の言葉にシモンは驚愕した。
「えっ・・・・木乃香ってさっきの近衛って子のことだよな?・・・あの子が学園長の孫?じゃあ近衛もいずれあんな、頭に・・・・・」
「キサマ、お嬢様に何かしたら許さんからな!そして余計なことはしないでもらいます、修学旅行中の問題は私と、担任のネギ先生で対処します・・・・・って、お嬢様があんなとんでもない頭になるはずがないです!」
「おい、刹那。貴様、さりげにジジイをディスッているな」
刹那の言葉。それは完全にシモンの拒絶の意思だった。
(そうだ・・・・こんな男は信用するな・・・・・)
刹那がシモンを嫌う理由はシモンの根拠のない言葉だった。
エヴァンジェリンの境遇を知らずに軽はずみな意見を言った。
(・・・・こんな男の言葉を鵜呑みにして・・・・甘い夢を見るな・・・・私はお嬢様さえ護れれば・・・・)
自分にはエヴァンジェリンの気持ちがよく分かる。
なぜエヴァンジェリンがシモンと普通に話していたかは気になるが、信用できない。そう思った。
「キャー!!」
「カ、カエルーー!?」
電車の中に生徒たちの声が響き渡る。
「な、なんだ!?」
「私が行きます!あなたはここにいてください!」
「おい、桜咲きとか言うの!そんなこと言ってる場合じゃ「邪魔しないでください!」!?」
「・・・これは関西呪術協会の妨害行為です。魔法も使えないあなたは・・・・邪魔です」
そう言って刹那は生徒たちのもとへ行った。
(邪魔か・・・・そんなこと言われたの初めてだ・・・でも)
シモンは少し呆然としてた。
確かにシモンは魔法も呪術も使えない、しかし自分が邪魔と言われたのは、初めての経験かもしれない、でも、
「なんだ行くのか?」
「ああ、俺は俺の出来ることをしに行くよ!」
そういってシモンはカエルまみれの生徒たちのもとへ走った。
「マスターは、いいんですか?」
「今回は私は何もせんと言ったからなあ。まあぼーやとシモンに任せるさ」
「桜咲さんの方は?」
「ふん、なぜシモンを嫌っているか・・・・いや、嫌いになろうとしているのだな。素直じゃない女だ」
きっと刹那はエヴァがシモンに言われた言葉に引っかかっているのだろう。
それがエヴァにはなんとなく分かった。
「素直・・・・マスターは素直になりましたね」
「くくく、まあ、刹那のほうも問題ないさ、シモンのそばにいればアイツの言葉が薄っぺらかどうか分かるさ。そうなればデレるのも時間の問題さ」
エヴァがニヤリと先のことを予想して、少し似つかわしくない用語を口にした。
「刹那さんがシモンさんにデレたらマスターが困るのでは?」
「ハハハ言うようになったなあ茶々丸!なあに心配いらんさ、小娘に負ける気などせん!」
「みんなー!!」
「シモンさ~ん、カエルがこんなに!」
「いや~!気持ち悪い~!」
生徒たちはパニックになっていた。
そしてネギも、
「シモンさーん!大変です!新書が変な鳥に奪われちゃいました!!
「うろたえるな!ここは俺に任せろ!お前は新書を追え!」
「で・・でも」
「お前はお前のなすべきことをしろ!」
ネギは少し迷ったが、シモンの言葉に従い新書の後を追った。
「よーし!カエルがなんだ!人間の力を見せてやろうぜ!気持ち悪くたって、気合と度胸でカエルを掴め!!」
「むっ、いいこと言うアルねシモンさん、じゃあ私も手伝うアルよ」
シモンの掛け声に、真っ先に立ち上がる古菲。
「いい度胸だ!よしっ!カエルども!おとなしくしろー!!」
何人か怖がる生徒たちもいたが、シモンは協力した生徒たちとともにカエルに立ち向かっていった。
「ふう・・・これも魔法ってやつなのかな?」
なんとか大量のカエルを全て捕まえることが出来た。
しかしその瞬間カエルは突如霧のように突然消えてしまった。
「シモンさーん!新書は取り返しました!」
「こっちもなんとか、それより犯人は分かったのか?」
「それが・・・・・」
ネギが言い渋るとネギの肩に載っていたカモが話しかけてきた。
「シモンの旦那、とりあえず容疑者は見つかったぜ」
「容疑者?」
「桜咲刹那だ」
「桜咲、さっきの子か・・・・」
「知ってるのシモンさん?」
「ああ、どうやら俺、かなりその子に嫌われているらしい」
シモンの言葉を聴いて、刹那への疑いが強まった。