魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第16話 それはあいつの考えだ

「ふう・・・・怪我は治ったようだな」

 

朝目がさめてシモンは、布団の中から体だけ出しわき腹をさする。

本来はもっと重症のはずだったが・・・・・気合で治した。

 

「さて・・・・・ごはん食べなきゃいけないんだよな~」

 

朝食は一人一人に配られ、全員で大広間で食べる。

食事は好きではないが行かないわけにもいかないし、残すのも気が引ける。

シモンは少し気を重くしながら大広間へ向かおうと準備した。

部屋を出ようと扉を開けると見知った顔がいた。ネギとアスナである。

 

「シモンさ~ん昨日刹那さんに聞きました、大丈夫ですか?」

 

心配そうに聞いてくるネギ、

 

「そうよ、私もビックリしたわよ、シモンさんが別の場所でひとりで戦ったって聞いて・・・・」

 

アスナは昨夜、木乃香の誘拐事件にシモンがやって来なかった事に憤慨していた。

ネギに無茶と無謀を押し付けて自分は何をやっているんだと、

しかしそれが自分の勘違いであったことを刹那に聞かされて、今は心底シモンを心配している。

するともう一人声がした。

 

「本当です、一人の無茶はやめてくださいね」

 

刹那だった、刹那もシモンの様子が気になって朝早くに様子を見に来たようだ。

 

「あっ・・・桜咲・・・」

 

シモンに言われて少し気まずそうに目をそらす。

昨夜自分の弱さをさらけ出してしまったことに、少し恥ずかしさを感じているようだ。

 

(ふ~落ち着け私・・・・まずはこれまでの暴言に謝罪をしなければ・・・・)

 

刹那が自問自答している中、シモンが口を開いた。

 

 

「おまえたち、俺の心配するなんて少し早すぎるんじゃないか?」

 

「「「えっ?」」」

 

「俺を誰だと思っている」

 

 

シモンは自信満々に笑みを浮かべて答えた。

するとシモンはネギの頭をくしゃくしゃ撫でながら、

 

「さあいくぞ!メシだ!」

 

そういってシモンは先に歩いて向かった。

 

「・・・・シモンさん!」

 

刹那が叫んだ。

シモンはその声に振り返らずに足だけ止めて聞いた。

 

「・・・あの・・・・・ありがとうございました!私・・・・・がんばります!!」

 

あやまろうとしたが、お礼を言った刹那。

しかし言い終わった後の刹那は少し清々しい顔をしていた。

 

「ああ!いい度胸だ!」

 

シモンはそう言って再び歩き出した。

 

「ちょっと刹那さん?シモンさんと他に何かあったの?」

「あの~、昨日シモンさんは刹那さんに・・・・嫌われているって・・・聞いたんですけど・・・・・」

 

シモンが昨日言った言葉を信じたネギとアスナ。

しかし今の様子に二人にそんなにわだかまりがあるとは思えなかった、

すると刹那は少し笑って、

 

「いいえ・・・・・多分・・・・あこがれているんだと思います・・・」

 

その言葉にネギは身を乗り出して賛同した。

 

 

「そうですよね!!シモンさんは、やっぱりかっこいいですよねー!」

「ちょっと・・・・桜咲さんまで・・・・エヴァちゃんのときといいやっぱりシモンさんってスゴイの?」

 

ネギは自分のあこがれる人物が、他の人にも認められたのがすごくうれしかった。

アスナもこれまでシモンを口だけの男だと思っていたが、徐々に自分の考えが変化していった。

 

「ネギく~ん、シモンさ~ん、おはよ~」

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

シモンたちが大広間に向かったら、すでに生徒たちは制服に身を包み、全員そっていた。

シモンたちはあわてて食事を受け取り、場所を探す。

 

「おっはよ!シモンさん」

「おっ!?おはよう、ここいいか?」

「ん、いーよ、はい座って座って」

 

女子だけの中どこに座ろうか迷ったが、シモンのよく知る人物の美空が、シモンに手を上げ挨拶をした。

シモンもそれなりに付き合いの長い美空を見て、美空の班を選んで座った。

 

「おまえたちもよろしく、え~と・・・・」

 

美空の班のメンバーを見るが、どうしてもまだ名前を覚えられず、口ごもるシモン、

シモンの様子を察して、美空が皆に自己紹介を促した。

 

 

「では、拙者から、長瀬楓でござる、シモンさん」

 

「ワタシは古菲アルよ、新幹線での蛙との戦いは楽しかったアルね」

 

「四葉さつきです」

 

「超鈴音ネ、ヨロシクネ」

 

「葉加瀬です、ハカセでいいです」

 

「・・・・・・・・とりあえず・・・ハカセだけ覚えた!」

 

「むっ!?それはひどいアルよシモンさん!」

 

「う~む拙者らの名前はイマイチ特徴がないでござるからな~」

 

 

さすがに全員の名前は覚えるのがしんどく、不満が生徒たちからこぼれるが、

 

「安心しろ、名前は気合でスグに覚える!俺を誰だと思っている!」

 

シモンが親指を上に突きたて、笑顔で言う

 

「ほ~う、キマッテルでござるな~」

「いいアルネ、ワタシも一度言ってみたいアルね~」

「う~ん茶々丸に気合を内蔵するとしたらシモンさんをモデルに・・・・・ブツブツ」

 

この世界に来てから、シモンの口癖はあまり好評ではなかったが、美空の班員には意外と好評だった。

 

「このちゃん!!」

 

突如大広間に声が響き渡る。

談笑していた生徒たちは皆黙り、声のほうを向いた。

するとそこには、いつもクールに振舞うクラスメートが、顔を真っ赤にして立っていた。

 

「せっちゃん・・・・・・」

 

刹那に名前を呼ばれた木乃香が、刹那に向き合った。

 

―――そこにあるものが、おまえの本心だろ!!その思いを我慢することなんて無い!

 

(私も・・・・・シモンさんのように・・・・・・)

 

しばらくその場に立ち尽くし、昨夜のシモンの言葉を思い出す刹那がオズオズと口を開く。

 

「・・・あんな・・・・一緒に・・・・・ごはん食べよ・・・・・・」

「っ!?うん!!!」

「うわっ!?・・・・お嬢様!?」

「あ~ん、お嬢様いわんといて~」

 

刹那の誘いに木乃香は満面の笑みで答え、思わず刹那に抱きついた。

刹那は驚き離れようとするが、木乃香は決して離そうとしなかった。

 

「ちょっと、ちょっと、どうなってんのー!?」

「桜咲さんのあんな姿初めて見たー」

「あ~ん、昨日何があったのよー!」

 

二人の様子をクラス中が一部始終を見ていて、刹那の様子に皆驚きを隠せなかった。

離れてみていたシモンは小さく笑みを浮かべた。

そうか、おまえも踏み出したんだな・・・・と。

 

「ふん、キサマの影響か?」

 

シモンが刹那に感心していると後ろから声を掛けられた。

 

「おはようございますシモンさん」

「エヴァ、茶々丸、おはよう」

 

エヴァンジェリンと茶々丸がシモンのもとへ話しかけてきた。

 

「刹那のあれに、キサマも絡んでいるのか?」

「いや、俺は説教しただけ、変わろうと踏み出したのはアイツのほうだ」

「は~、説教か・・・・まさか一日で変わるとは・・・」

「マスターの予想通り、彼女はデレたのかもしれません」

「ん?出れた?・・・狭い世界からってことか?」

「キサマの世界にはない、知る必要のない単語だ・・・・・もっともまだデレていないと思うが」

 

刹那は変わった、おそらく昨晩シモンと何かあったのだろう。

シモンを知れば変わる。エヴァの予想は見事的中し、少しあきれた様子だった。

しばらくしてエヴァが本題に入った。

 

「シモンよ、今日の自由行動にキサマも来い」

「!?」

「むっ!?」

「!?」

 

エヴァの言葉に今度はこっちに生徒たちが注目した。

 

「ちょっとーエヴァちゃん!抜け駆けはズルイぞー!」

「そうそう!昨日も独り占めしようとしたし、卑怯だよねー!」

「シモンさ~ん、今日は私たちと行こうよ~」

「キサマら!私が先だぞ!そんなに誰かと行きたいなら担任のぼーやと・・・・・」

「ネギ先生!!よ・よろしければ今日の自由行動・・・私達と一緒に回りませんかーー!?」

 

「「「「「えっ!?」」」」

 

 

し~~~~~ん

 

「わかりました宮崎さん!今日は僕、宮崎さんの5班と回ることにします!」

 

「「「「おお~~~~!」」」」

 

ネギのところでも争奪戦が繰り広げられていたが、意外と勇気のある、のどかが戦いに勝利していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか面白かったっしょ、シモンさん」

「ああ、ネギって女の子に人気あるんだな」

 

奈良公園にて鹿に餌をやるシモンは、美空と並んで朝の出来事を思い返していた。

 

「あの、宮崎って子のことはよく知らないけど、桜咲とか、ネギとか、エヴァとか、みんな少しずつ変わろうとしてるんだよ」

「そだね。まあ、桜咲さんに関しては、いつの間に? って感じだったけど」

「そうでもないさ。人間なんて一分あれば前へ進む。ドリルが一回転すれば少しだけだけど前に進むのと同じ。それが成長するってことなんだと思うよ」

「ドリルねえ~・・・・・・・」

 

そう言ってシモンは持っていた餌を全て鹿にあげ、日本の文化を堪能しようと、立ち上がった。

すると後ろから声を掛けられた。

 

「美空ばかりズルイヨ、シモンさん私ともデートするネ」

「おまえは・・・・たしか・・・・超?」

「ウム、名前覚えられて光栄ネ」

 

美空の班の、麻帆良の完璧超人、超鈴音がシモンをデートに誘った。

 

「ははは、そう見えたか~、エヴァンジェリンさんたちにぶっ殺されたくないし、じゃあ私は行くよシモンさん、また後で」

「ああ」

 

 

超鈴音の登場により、あまりシモンと親しいのがバレるのも嫌だったため、美空は超にシモンを預け他の班員のもとへ行った。

 

「さてシモンさん、デートに行く前にお話ししようネ」

「なんのだ?」

 

デートに誘ったにもかかわらず超は近くのベンチに腰を下ろした。

シモンもそれを見て超の隣に腰を下ろした。

 

「うむ!シモンさんには是非恋人になってほしいネ!」

「・・・・・・・・・・・・」

 

あまりにも冗談めいた口調で喋る超、シモンにも冗談だとわかったが、どう突っ込みを入れたらいいかわからず、沈黙してしまった。

 

「シモンさんの存在は、私の計画に障害ネ」

「計画っ・・・・・て?」

 

その時、シモンはこの少女から何かを感じた。

それは、美空たちと変わらない年齢の少女であるはずのこの娘が、何か異様な雰囲気を発していることに、

また、少女の先ほどと違い、少し真剣な声に、シモンを何かを察した。

 

「・・・・シモンさんはもう自分の道を決めた男ヨ、それは多くの道がこれから先にあるネギ坊主とは違うネ?」

「それってどういう意味なんだ」

「ネギ坊主は今から何にでもなれる。だから人の意見に流される。自分ではまだ道がわからないからシモンさんのように、かっこいい言葉に惹かれるネ。でもシモンさんは違うヨ」

 

シモンは超の本題がわからず、ただ黙って聞いていた。

 

「シモンさんは自分の道をすでに持っているネ。だからこの先何があろうと道は変わらない。つまり説得や交渉は無意味、自分の思った通りの答えしか出さない」

「つまりおまえの計画には・・・・・俺が敵対するってことなのか?いや・・・・わかった」

 

シモンは超の意図にようやく気づいた。

 

「ネギが俺に触発され、おまえと敵対するのを恐れているのか?」

 

「フフフ、どうかネ・・・だがシモンさんは誰でもない自分自身になるよう生きてきたハズが、窮地に陥ると心の中にいる人に意見を聞いたりしないか?」

 

言われた言葉にシモンは目を見開いた。

自分は確かに自分を信じて生きてきた。

でも、窮地に陥った時、確かにいつも思っていた。

こんな時にあの男なら・・・・アニキならどうするかって・・・・

 

「ネギ坊主がそうならないか心配ネ」

 

だが、それでもシモンは否定した。

 

 

「違う!俺は自分の意志で決めたんだ!あのでっかい背中に笑われない男になるって。別にその人になろうと思ったわけじゃない。だからきっとネギも同じだ。自分の道は自分で見つけるさ。もしアイツがおまえに敵対する時は、俺の意見ではなく、それはアイツの考えだ!」

 

「ナルホド・・・それでも私には障害ネ」

 

「だったら戦えばいい。自分を欺かずに選んだ行動はおまえにとっての真実だ。それを通すか通さないかは、おまえの気合次第だ」

 

 

シモンの言葉を聞き、超は少しすっきりしたような顔をし、ベンチから立ち上がりシモンに振り返る。

 

「またデートするネ、シモンさん、修学旅行中は色々気をつけるネ」

「ああ」

 

超はそのままシモンの下から離れ、班員の下へ行った。

 

「今わかったヨ・・・・強いのはグレンラガンではなく、それに乗っていたシモンさんのほうネ・・・・・」

 

超の呟きはシモンには聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・本当にこの世界も色々な事があるんだな・・・」

 

 

超が離れていくのを見てシモンはベンチに座ったまま呟いた。

この世界に来てから、それほどまだ経っていない、しかしこれまでに自分は多くのものに出会った。

 

シャークティ、美空、ココネとの出会いから始まった。

この世界の常識も知らない自分は、これまでにこの世界の非常識ばかりに出会った。

普通に暮らしていたらおそらく絶対にめぐり合わないことだろう。

おそらく今の超鈴音も只者ではないのだろう。

昨日の白髪の少年も強かった

刹那は自分を足手まといと言った。

魔法使いから見たらそうなのかもしれない。昨日もひょっとしたら死んでいたかもしれない。でも不安をまったく感じない

そんな自分を周りの人間はおかしいと言う。

それは自分が彼らと違う世界の人間だという証明なのかもしれない。

螺旋族の姿なのかもしれない。

 

「・・・・・・・・・・・・はあ」

 

普段はあまり考え込まないシモンだが、今の超との会話で気づいてしまった。

自分はこの世界の常識的な人間ではない。

だから理解されない。別に拗ねているわけではない、ただこの世界で自分と同じように無茶と無謀を気合で乗り切ろうとする奴がいない。

いつもそばにいた大グレン団たちはここにはいない。

自分と同じ価値観を共有できる仲間がいない。それを少し寂しく思った。

 

「会いたいな・・・・・・みんなに・・・・・」

 

それは、決して人前では見せないシモンの弱音だった。

一年前までは、そんなことは決して思わなかったのに・・・・・

するとシモンの服の中がごそごそ動き出した。

 

「ぶひっ!」

「・・・・・・ブータ・・・・・・・そうだよな・・・・おまえは一緒だったよな・・・・・・」

 

この世界で唯一自分とともに、大グレン団として生きてくれる仲間。

この小さな存在がシモンの今を支えてくれていた。

シモンはブータを肩に乗せ立ち上がった。

 

「そろそろ行こう・・・・そしたらいつもの俺に戻る」

 

そしてシモンは再び美空たちの下へ合流した。

 

 

 

 

 

一方別の班では一人の少女が勇気を振り絞っていた。

 

 

「ネギ先生・・・・・私、ネギ先生のこと出会った日からずっと好きでした!! 私…、私、ネギ先生のことが大好きです!!」

 

シモンの知らないところで、またおもしろいことがおこった。

普通に人を好きになり告白する。これはどこの世界でも共通の出来事だ。まさに生物の本能。

生まれてはじめての告白に混乱するネギはただただ呆然としていた。

 


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