魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「そ、そんな!? 総長(グランドマスター)が負けた!?」
「う、ウソだろ!!? あの英雄セラスが!? かつては紅き翼と肩を並べて世界を救ったあの方が!?」
「なんだ・・・・なんなんだこいつらはァ!?」
セラスの敗北は、アリアドネーの戦乙女たちだけに止まらず、その動揺はメガロメセンブリア、ヘラス帝国の戦士たちにまで伝わっていく。
その動揺の隙を突き、もはや誰にも彼等を止めることは出来ない。
「セラスが負けたァ!? くっそが、どうなってやがる!!」
自分が認める戦友の敗北は、流石のリカードも冷静ではいられなかった。
そしてリカードは忘れていた。
一瞬の油断が戦況を大きく左右することを。
特に目の前の男のレベルを相手に、余所見など持ってのほか。
長らく実戦を離れていたリカードにとっての敗因だった。
「ワンインチパンチ連打!!」
「ッ!? テ、テメ・・・・うぐおおおおおおおおおお!?」
「驚くのも無理は無いよ。でもね、あれが彼なんだ。一々驚いていたら限が無いよ」
一瞬の隙を突いた瀬田の連撃が全てリカードに命中する。
苦痛で歪むリカード。しかし彼も大戦期の英雄として、簡単に引き下がらない。
「や・・・・やりやがったなァ!!」
「いいや・・・・やるのはこれからだよ!!」
「上等だァ!! ふっとびやがれェ!!」
戦友がやられた事への動揺。隙を突かれたことへの油断。状況が悪くなることへの焦り。
いかにかつての英雄とはいえ、久々の実践でこれだけの要素が付きまとえば、この男の相手をするには分が悪かった。
「奥義・・・・」
正面からバカ正直に向かってくるリカードに対して、瀬田は正々堂々迎え打つ。
「―――――――ッ!!」
何度でも言おう。
いかに世界の英雄たちが立ちはだかろうと、彼らの歩みを誰も止めることはできない。
「浦島流・地獄極楽カメ縛り!!」
「な、なんじゃあ!? 妾の体がロープなんぞに・・・というかなんじゃこの縛り方は!?」
ハルカがロープを使い、恐れ多くも皇女相手に亀甲縛りを行う暴挙に出た。
「で、殿下ァァ!?」
「あ、あの女・・・殿下になんてことを!?」
「うおおおおーーーッ!! お、皇女様がエロい!!」
体中にロープが食い込み、思わず艶かしい声を出しながらテオドラは喘いだ。
「む、むう~~油断した~、しかしなんじゃ・・・ロープが・・・・ぬう・・・体に・・・食い込み・・・うぬう~~・・・ん・・・ち、力が入らぬ~~」
唯でさえ身軽な服装で中々のスタイルを誇るテオドラがSM顔負けに縛られ艶っぽい声を出した瞬間、罰当たりなことに一瞬男の兵士たちは顔を赤らめ固まってしまった。
「さっすがハルカ! よっしゃあ、もう少しでゴールだ!!」
「ぶみゅうう!!」
「あのメガネのおっさんも、お姉さんも、お嬢ちゃんもやるじゃねえか!! 流石はリーダーが目を掛けるだけはある!」
「僕たちグレン団も負けてられないね!」
「おうよ!!」
「無論!」
セラスに続き、テオドラの動きが封じ込められては、動揺するなと言うほうが無理な話である。
逆に敵の主力をことごとく撃破していくグレン団の勢いは更に高まる。
「た、大変です副隊長!」
「こ、これ以上なにがある!?」
「リ、・・・リカード元老院議員が、・・・たった今、冒険王に敗れました!!!」
「な、何だとォ!?」
「こ、このままでは・・・・このままでは市街に逃げ込まれます! 今年の祭りの参加者の人数は例年より大幅に増し・・・・逃げ込まれれば手出しできません!」
「ま、まずい・・・一般市民の多い市街地に、しかも祭りの最中に軍を投入できん・・・・この場で・・・この場で逃してしまえば・・・・くっ、ほ、本艦に援軍の要請を! 今すぐ兵の増員・・・・い、いや・・・・戦艦の出動要請を・・・」
「し、しかしオスティア総督からの許可が無ければ・・・・それに他の仲間は例の黒い猟犬(カニス・ニゲル)の監視に回されており・・・」
「うぬぬぬぬ・・・・・なんということだ・・・・」
ゴールが・・・いや、壁の向こうがようやく見えてきた。
立ちはだかる三国の壁も、必死に開けられた穴を塞ごうと最後の足掻きを見せるが、一度決壊した壁が蘇ることはない。
「と、捕らえられぬのなら・・・・し、始末しろォ!! 全魔導兵団、一斉砲撃をしろ!! 平和は我等が守るのだァ!!」
たった数名を捕らえることが出来ない首都の兵士は最終手段として、殲滅作戦を投げ掛ける。
「団長・・・・首都側はあのように言っていますが、戦乙女団はどうします?」
「や、・・・やむを得まい! 大戦期以来の歴史的な三国共同作戦を失敗などという大失態だけは避けねば! 戦乙女団! 詠唱用意! 構え!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
「我等も続くぞ! 帝国兵、構え!!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
これが三国共同作戦、最後の一手だった。
それぞれの国家の上官の指示に従い、全ての魔法使いたちは、己が砲台になり、魔法という弾丸で一斉砲撃しようとする。
「おいおい・・・・あの数じゃあ、俺のフィールドで防ぐのは難しいぞ?」
「う~む、ここに来て大胆な作戦だね・・・・だが、何とかするしかないね!」
兵士たちの最後の攻撃への対処が思いつかず、シモンと瀬田が思わず舌打ちをする。
だが、この窮地をこいつが救った。
「心配無用! エンキ! 今こそあなたの新兵器の力を見せちゃいなさい!」
「了解シマシタ」
ハカセとエンキが自信満々な態度で歩み出た。
「何をするつもりですか?」
「ふっふっふ、シャークティ先生。この夏私はロボットの真髄をエンキに備えました。学園祭では危なくて出来ませんでしたが、ドリルとは別のロボットの真髄・・・・」
「おいおいおいおい、何かよく分からないけど、時間が無いから早くしてくれ!」
「む~、せっかちですね~シモンさん。では・・・エンキ!」
「了解!」
ハカセの合図と共にエンキは口を開いた。
「エネルギー充電完了、射出シマス」
するとエンキの口の中が急激に光だし、急速に高まる熱量をエンキは四方の兵士たち目掛けて一気に解き放つ。
「エンキ・サン・アタック!!!!」
「なっ!? こ、これは――――」
「ぜ、全員逃げ――――」
その口が全てを言い終わる前に、彼等は爆音と共に吹き飛ばされてしまった。
目にも留まらぬ光のレーザー光線。
超高速の破壊光線が熱を帯びて、魔法を放とうと詠唱最中の兵士たちを吹き飛ばした。
「ビ・・・・ビ・・・・」
この出来事に豪徳寺たちグレン団は童心に返ったかのように興奮して目を輝かせた。
「「「「レーザービームだァ!!!」」」」
細長い光の粒子の集合体が直線に突き進んで相手を吹き飛ばしたその技は、漢達の心を刺激した。
「スゲーなエンキ! 学園祭じゃあ只の脱げビームだったのによォ!」
「流石ハカセちゃんだぜ! 俺たちのツボを理解している!」
「僕としたことが・・・・ゾクゾクしてきた・・・・」
「浪漫だ・・・」
「はは、すごいな」
「ホントホント、シモン君の仲間は皆すごいね~」
「む~、やるな~。まっ、メカタマのビームほどじゃないけどな!」
エンキのビームは一直線に並ぶ魔導兵達をなぎ払い、辺りに粉塵が舞う。その混乱に乗じて、こちらも最後の一手を放つ。
「サラ! 兵士がパニックになってる。仕上げはアレで頼むよ!」
「任せろハルカ! そりゃあ!! 煙幕弾の大サービスだァ!」
ハルカの言葉に従って、メカタマが無数の煙幕弾を兵士たちに投げつける。
すると広場全体を包むように煙が舞い上がり、兵士たちの混乱が最高潮に達した。
「クソォ・・・構わん撃てええ!!! 逃がすなあ!!」
「ダ、ダメです! 煙幕が邪魔で・・・・このまま撃っては同士撃ちです!」
「う、うわああああ!? こっ、こっちから・・・・じ、陣形が・・崩壊・・・ほ、・・・包囲網・・・・が・・・」
「どうしたァァァ!!!!」
「くっ、団長、奴等が・・・・奴等の位置が特定できません!」
「な、なんてこと・・・・くっ、巡洋艦に連絡するのだ! 探知魔法で奴等を・・・」
「だ、ダメです。変なノイズが邪魔して・・・た、探知が不可能! 念話も妨害されています!」
もはや煙の中で正常なものたちなど誰も居なかった。
「ふ、副隊長! 指示をお願いします! 副隊長!」
「団長! 我々はどうすれば・・・・」
「しょ、・・・・将軍に連絡しろ! い、いや・・・まずは殿下の救出を・・・、くっ、・・・まだこの煙幕は晴れんのかァ!!」
常に冷静であることを義務付けられている軍人たちがこれほど取り乱し、状況判断すら出来なくなっていた。
「バカな・・・・三国の戦力集め・・・三人の英雄が駆けつけて・・・・・何故・・・何故たった数名の突破を・・・何故止められない!?」
巻き上がる粉塵と煙の中で、一人の兵士が呟いた。しかしその言葉には誰も答えられない。
突如現れた謎の集団は燃えるようにこの場に居る者たちの前に現れ、目の前の光景のごとく、煙のように消えていった。
「お、追えええ!! この世紀の大失態を演じたまま終わるわけにはいかん!!」
辛うじて誰かがその言葉を叫び、まだ足掻こうと兵士たちが動き出す。
しかし時は既に遅い。
壁を突き破った彼等の行方は、誰にも止められないのだから。
煙の中で右往左往して、焦りの声が次々と飛び交っている。
その光景を少しはなれた場所で、建物の屋上から見下ろす一人の男が居た。
「ふむ・・・・随分と面白い連中を引き連れていますね。あれが冒険王ですか。いくら各国の主力艦隊などがオスティア周辺に待機中の為、戦士たちの白兵戦のみの戦いになったとはいえ、百を超える強靭な戦士たちを翻弄するとは、やりますね」
まるで瀬田たちを値踏みするようにこの戦いを見下ろしながら男は呟く。
立ち込める煙幕と、その中から飛び出して駆け出す一集団。その光景を一部始終眺めていながら、彼は何もしようともせず、ただこの状況を面白そうに笑みを浮かべて眺めていた。
そんな彼の傍らに一人の少年が居た。
身に合わぬほど長い刀を携えながら男の傍に付き従っていた。
「総督・・・」
少年の言葉に男は広場から視線を変えて、別の方角を見る。そこにはオスティアの中心街がある。
少し目を凝らしながら街の中心を見続けると、途端に男は再び笑みを浮かべた。
「おや、あちらも終わったようですね。どうやらネギ君も逃げ切ったようですねえ。それにしても結局誰一人検挙出来ないとは、困りましたねえ。さて、どうしましょうか・・・。まあ、これ以上の恥の上塗りをするわけにはいかないでしょう。冒険王にもネギ君たちにも、街の中に逃げ込まれては、祭りの最中に軍を入れるわけにはいきませんからねえ。一応平和の祭典ですしね。だからとりあえずこの場は我々の・・・いや・・・」
一呼吸をおいて、男は言う。
「この場は・・・魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の完敗ということにしておきましょう」
男がその言葉を本心で言っているかどうかは分からない。
しかしネギや瀬田たちが戦っていたそれぞれの舞台からは見えない場所で、何かが動き始めていた。
だが、今はその事は誰にも分からないし、どうでもいいことであった。
「へへ、よーやく逃げ切ったな」
「まだ油断は禁物だよ、サラ。まあ、・・・・うれしい気持ちは僕も分かるけどね」
広場から遠ざかり、後ろを振り返りながらうれしそうに走るサラを瀬田が嗜める。しかし瀬田自身も表情に笑みがこぼれていた。
それは皆も同じだった。
これだけの事態を起こしておきながら、その表情は事態を把握することよりも、今の状況に得意気になっているようだった。
「しかしシモンといい、お前等といい、私たちに付き合ってとんでもない事したな。明日から表を堂々と歩けないんじゃないかい?」
そんな彼等をうれしく、そして頼もしく思う反面、巻き込んでしまった事に少し申し訳なさがあるのか、ハルカが尋ねる。
しかし彼等の返答は・・・
「おうおう姉さん、そいつはヤボってもんだぜ?」
「薫ちんの言う通りだぜ! それにしても、こりゃあ俺たちも明日からは高額の賞金首かな? 大物ルーキーの登場ってか!」
まるで事態を楽しむかのような豪徳寺と達也。その考えは不謹慎かもしれないが、誰もがハルカや瀬田たちの後ろめたさは、ヤボだという顔で笑っていた。
「ははは、とにかく今は少しでも走りましょう。連中がいつ追いかけてくるかは分かりませんからね」
「そうですね~。一応私が機械で念話妨害をしていますが、どうなるかは分かりませんからね~」
「市街地ナラ、祭リノ最中ハ軍ヲ投入出来マセン。数日ハ大丈夫ダト思イマス」
「それより・・・どこまで走るのだ?」
「ふふ、ポチさん、決まっているでしょう? そうですよね、シモンさん」
「ああ・・・当然・・・」
ポチも気づいたのか、走りながら口元に笑みを浮かべた。
そして誰が合図を出したわけでもないが、皆が同じ言葉を同時に叫んだ。
「「「「「「「「どこまでもだ!!」」」」」」」」
彼等は壁を突きぬけどこまでも走った。
今後、・・・いや・・・明日にはどうなるのかは分からない。
三国と喧嘩するなどというとんでもない事をしてしまったのだから。
しかし彼等は誰一人後悔していない。
「何も手に入らない、何も生み出さない・・・・それでも俺たちは成し遂げた! この満たされた胸ん中がその証拠だ! だからこの喧嘩、俺たちの・・・・」
走りながらシモンは満たされた心を素直に述べる。
そしてその気持ちを抑えきれず、そしてシモンと同じ気持ちの仲間たちは、そしてこの時は瀬田もサラも、そして苦笑しながらもハルカでさえ一緒になって、逃げている状況でありながら、オスティア中に聞こえても良いくらいに叫んだ。
「「「「「「「「「「「俺(私)たちの勝ちだァ(ぶみゅうう)!!!!」」」」」」」」」」」
全員揃った仲間と共に拳を天に向って突き上げて、盛大に喜びを叫んだのだった。
だが・・・
全員?
仲間が揃った?
それを言うにはまだ足りなかった。
平和を祝う民たちの知らない舞台の裏側で、シモンやネギたちが、それぞれの戦いを繰り広げていた頃・・・
シモンたちが勝利の余韻に浸っていた頃・・・・
そのまた別の場所で新たなる脅威が産声を上げていた。
かつて英雄たちが命懸けで救った世界を破壊すべく・・・・
単純な本能と悪意を養分に成長し続け、平和という鎖で繋がれていた野獣たちが一斉に解き放たれる。
歴史を左右させる運命の日は、シモンたちのすぐ傍にまで接近していた。