魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第19話 お前の名前は?

ネギたちが小太郎と戦っている頃、刹那たちと木乃香の班はシネマ村にいた。

 

「ほらせっちゃん~どや!」

 

和服を身にまといその場でクルっと回り、その姿を披露する木乃香

 

「はいっ!とても似合っております」

「刹那さんもいいね~、新選組の男装がここまで似合うとは思ってなかったよ!」

「やはりシネマ村といったらこれだろう」

「マスターもよくお似合いです」

 

刹那たちはシネマ村の貸衣装に身を包み修学旅行を満喫していた。

刹那、エヴァ、茶々丸も最低限の警戒をしつつ楽しんでいた。

色々あったが今回の旅行で木乃香とのわだかまりも解消しつつあった刹那は、木乃香の笑顔を見て暖かいまなざしを向ける。

 

(お嬢様とまたこうやって過ごせる日が来るなんて・・・・・・シモンさんに言われたとおり踏み出してよかった・・・・)

 

刹那の様子を見てエヴァが刹那に話しかけた。

 

「随分腑抜けた面になったじゃないか?やはりキサマもガキだな」

 

エヴァの発言に少しムッとする刹那

 

「警戒は怠っていません、ご心配には及びません」

「くくく、お嬢様と仲良くなれてよかったじゃないか刹那よ、シモンの言葉を信じてよかったか?」

 

エヴァが挑発するように言う。

刹那は反論しようとしたが顔を少し赤らめ静かにうなずいてエヴァの言葉を認めた。

 

「・・・・・・反論しません、きっかけはシモンさんでしたから・・・・」

「ちっ、反応がつまらん・・・・・こんなに早く変わるとは・・・・・」

 

てっきりムキになって否定すると思っていたため、素直な刹那の反応に少し舌打ちをするエヴァ、

それが恋かどうかは分からないが刹那はシモンに惹かれている。

それが確信できエヴァは少しつまらなそうな表情を浮かべた。

新幹線の中でエヴァは茶々丸に、刹那がシモンに惹かれても別に自分は負けないからいいと言ったが、刹那が予想より早く変わってしまったため、少しあきれた。

刹那とエヴァが軽く睨み合う中、それを打ち破るかのごとく木乃香達は変わらず騒いでいた。

 

「いや~それにしてもやっぱ木乃香が一番似合ってるね~」

「はい、とてもキレイです」

 

和服を普段から着慣れているため、木乃香の姿は見ているものを感嘆させた。

木乃香自身は着慣れていても、その姿を初めて見るハルナと夕映は目を輝かせて賞賛した。

その姿に通行人もチラチラ木乃香のことを見ている。

 

「ほ~かな~?」

「もちろん!今の木乃香を見たらどんな男もイチコロよ!」

 

ハルナのその発言に木乃香が食いついた。

 

「えっホンマ?」

 

その言葉にハルナの頭の中のセンサーが反応した。

 

「むっ!?恋愛話にまったく噂のない木乃香のこの反応・・・・・・そういえば修学旅行に来てから・・・・・・キラーン☆」

「ハルナの目がヤバイです」

 

するとハルナの目がいやらしく光、その様子に夕映も何かを感じ取った。口元をにやけさせながら口を開いた。

 

 

「そうだよ~、た・と・えばシモンさんもそうだと思うよ~」

 

「「「なっ!?」」」

 

「えっ・・・・え~・・・シモンさん?」

 

 

睨み合いを続けていたエヴァと刹那も驚愕した。

一方で木乃香は顔を赤らめ少し驚いた様子で、

 

「う~でも・・・ウチとシモンさんちょっと歳が離れてへんか?」

「おい刹那よ・・・・これはどういうことだ?」

「こここ・・・このちゃん?・・・う・・・・嘘やろ・・・」

 

目を合わせる刹那とエヴァンジェリン。二人にとっても木乃香のこの反応は予想外だった。

逆にハルナは「ビンゴ」と目を光らせた。

 

「な~に言ってんのよ木乃香!のどかとネギ君だってそうでしょ!惚れた男に年齢なんて関係ないよ!」

 

さ~、どうでる木乃香?

表面上さわやかに言うハルナだが、腹の中では悪魔の笑みを浮かべていた。

木乃香もハルナの言葉に少し考える仕草を見せたが、すぐに顔を上げた。

 

 

「うん!・・・・ハルナの言うとおりやな!」

 

「そうそう!のどかのように木乃香もがんばりな!」

 

「う・・・・うん!」

 

「「「「(認めたーーーー!?)」」」」

 

「そ・・・・そんな!?お・・・・お嬢様も・・・・そんな・・・」

 

「ちょっとまてー!キサマ一体いつの間にシモンに惚れた!?」

 

 

驚愕の表情を浮かべる刹那。

そしてまったく予想しなかった展開にエヴァは慌てて口を挟む。

そして

 

(うっひょ~!やっぱりエヴァンジェリンさんと桜咲さんもそうだったか!く~ドロドロしてきたー!)

(ハ・・・・・ハルナ)

 

この事態に興奮するハルナ。それを見て夕映はあきれた目で見ていた。

 

「惚れたって・・・・・う~はずかしいな~・・・せやけど前からシモンさん気になっとったゆうのはホンマや・・・・」

「な・・・何ー!?キサマこの間会ったばかりだろうが!」

 

そう木乃香とシモンは修学旅行で初めて会った。

しかも刹那や自分と違い、それほど関わりもなかったはず。

そうエヴァは思っていた、しかし

 

「実は以前シモンさんの一回会ったことあるんよ」

 

その言葉に驚きを隠せないエヴァたち。すると木乃香はシモンとの出会いを語り始めた。

 

「前になー桜通りの吸血鬼にのどかが教われた時なんよ」

「え・・・・エヴァンジェリンさん?」

「そういえば・・・あの夜・・初めてシモンと会ったんだったな・・・・」

「のどかを襲った犯人をネギ君とアスナが追いかけたんやけど、ウチ二人が心配でなー・・・その時シモンさんが現れたんや」

 

木乃香の説明を皆黙って聞く、

 

 

「ウチはパニックになってもーて、シモンさんに犯人追いかけてゆーてもうたんや・・・・そしたらシモンさん、こう親指をグッと突き出してな~笑ってこうゆーたんよ」

 

―――よし、まかせろ!君の仲間は必ず助ける、だから安心しろ!!

 

―――当然だ!俺を・・・俺を誰だと思っている!

 

「そう言ってシモンさん名前も言わんと行ってもうたんや」

 

 

木乃香はあの夜のシモンのことを自慢気に話した。

 

 

「だから出発の日にシモンさん見て驚いたな~、それでネギ君たちはシモンさんに助けてもらったゆ~てた。ウチとの約束守ってくれたんよ」

 

「そういえばあの夜シモンは誰かに頼まれたと・・・・・・・そういうことかー!・・・」

 

「あんなにうれしそうに・・・・・・そうか・・・・このちゃんは・・・・・シモンさんのこと・・」

 

「なーるほど!いやーネギ君の話を聞いてて思ったけど、シモンさんって熱いね~!」

 

 

刹那とエヴァの反応を無視してハルナはバンバンと木乃香の背中をたたいて、

 

「よしっ!私達でのどか同様、木乃香の恋も応援するよ!ねーゆえっち?」

「ええ、昨夜の話を聞く限りシモンさんはネギ先生同様すばらしい方です、木乃香さんがんばってください!」

「せ・・・せやな、ウチものどかのようにがんばる!」

 

ハルナたちに諭され、自分の気持ちに向き合った木乃香、そんな木乃香を刹那は寂しそうに見ている。

 

(私も・・・・・応援しなければ・・・・・シモンさんは信頼できる方・・・でも・・・・)

 

刹那の葛藤を遮るように、自分に素直になると決めたエヴァが口を挟んだ。

 

「キサマらシモンは私の「おーいアッチなんかスゲーぞ!」何の騒ぎだ!?」

 

エヴァが口を挟もうとしたら、周りの客が騒ぎ出した。そして皆同じ方向に走っていく。

不審に思った夕映が一人の客に尋ねる

 

「何かあったんですか?」

「ああ、なんかドリル持った男が橋の上で誰かと戦ってるらしいぜ」

 

 

その言葉に皆首を傾げた。

しかし刹那、エヴァ、茶々丸はその言葉に一人の男を思い浮かべた、

 

 

「マスター・・・・」

 

「まさか・・・・・」

 

「あのバカ・・・・・」

 

 

三人は顔を見合わせて一人の男の名前を呟いた、

 

 

「「「シモン(さん)!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし月詠、台本どおり動いてお嬢様をココにおびき寄せてきぃ」

「うふふ~、また刹那センパイと戦えてうれしいです~」

「・・・・・・・・・」

 

木乃香たちを離れたところで監視する3人。

彼らは密かに計画の実行に移そうとしていた。

彼らはシネマ村という場所を利用し、囚人観衆の中、客を巻き込んだ劇に見せかけ木乃香を攫おうとしていた。

その伝言係として、女剣士月詠に合図を送り計画スタートと思ったその矢先、彼らの目の前で魔方陣が光った。

 

「!?」

「なんや小太郎か、思ったよりはやかったな~」

 

魔方陣が光りだしたことに、小太郎の任務達成後の合流と思い込んだ3人。

しかし姿を現したのは小太郎だけでなくもう一人いた、

 

「ちょっ!?小太郎どうゆーことや!?」

「堪忍や千草のねーちゃん!この兄ちゃんが勝手に魔方陣に引っかかってもうて・・・・」

「ふぅ・・・・また君か・・・・・」

 

シモンの登場にあせる千草。

しかしこの場にいた白髪の少年の一言に皆注目した。

シモンもその声の方向へ向き、自分の今の状況を理解した。

 

 

「おまえ!?・・・・・近衛たちは?」

 

「ちょうど今計画を実行しようとしたところだけど・・・・・君は最後までこの争いの舞台に残る気かい?」

 

「・・・・ああ」

 

 

白髪の少年とシモンは他の人間を無視し、二人で会話を始めた。

しかし周りの客も、突如出現したドリルを持った男にざわつき始めていた。

 

「騒がしくなってきた・・・・・・・天ヶ崎千草、彼は僕が相手をする、君たちは計画を実行してくれ」

「おい!その兄ちゃん意外にやるで」

「知ってるよ、だから僕がやるんだ」

「ってアンタらここで始める気かい!?」

 

小太郎の忠告に相変わらず少年は顔色一つ変えずに答えた。

そしてシモンに向かって身構えた。

シモンも少年に向かってドリルを向け、螺旋力を開放した。

 

「覚悟しろよ、俺は一昨日の夜よりも強くなる!」

「大して変わってないと思うけど?」

 

二人がにらみ合い・・・・・・そして

 

「行くぞッ!」

 

先に仕掛けたのはシモン。ドリルの突きを少年に向ける、

しかし少年はその攻撃が届く寸前に、すでにシモンの背後に回りこみ、上段の蹴りをシモンに打ち込もうとした、

しかし

 

 

「フルドリライズ !!!!」

 

「!?」

 

 

突如シモンの体を覆う螺旋力から無数のドリルが伸び、少年を襲った。

少年は寸前のところで蹴りを止め、防御に切り替えたため致命的なダメージは逃れたが、少し驚いている様子だった。

 

「なんや!?あんな魔法聞いたことないえ!?」

「あんなんさっきの戦いで見せへんかったで!?」

 

 

声に出さない少年にかわり、千草と小太郎は驚きの声を上げる。

一方少年は顔色を変えないが、睨んだようにシモンを見る。

 

 

「この男・・・・」

 

「やっぱりだ・・・・・魔法使いとの戦いに慣れてきた・・・・俺の螺旋力が新たに進化している」

 

 

以前乗っていたグレンラガンで出来た技を、威力は比べ物にならないほど弱いが形だけでも真似できるようになってきた。

魔法という未知の力に抗おうとするシモンの螺旋力がシモンを更に強くしていく。

シモンの螺旋力がグレンラガンの技を具現化した。

 

「「「「「シモーーーン(さん)!!」」」」」

 

突如複数の女の声がした。そこを見ると

 

「エヴァ!みんな!無事だっ・・・・・・なんだその格好?」

 

今のエヴァたちはシネマ村の衣装に身を包んでいる。

しかしシモンには今この場所がどこなのかもわかっていなかったため、少し目を丸くした。

 

「月詠!どうゆーことや!?」

「なんか呼びに行こうとしたら向こうから来たみたいです~」

 

千草の指示通り木乃香たちをおびき寄せようとした月詠みだったが、騒ぎを聞きつけ向こうからやってきようだ。

 

「シモンさん!ネギ先生たちは!」

「大丈夫だ桜咲、俺だけ罠に嵌まってここに来ちまったが、みんな無事だ!」

「マスター・・・・シモンさんはおそらく転移魔法に引っかかったのだと・・・・・」

「それで敵のど真ん中に来たわけか・・・・・・・むっ!? あの面子の中で・・・・・あの白髪のガキ・・・格が違うぞ」

 

シモンの言葉にほっとする刹那。

しかしエヴァンジェリンは敵の白髪の少年のレベルを瞬時に察して顔をしかめた。

 

「なあなあ、なんでシモンさんあそこで戦ってるん?」

「しかもドリルとはまたスンバらしい武器持ってるねー!」

 

木乃香たちはわけも分からず首をかしげていた。更に、

 

「みなさん一体なにをしていますの?」

「あらあら、すごいにぎわっているわね」

 

「「「「いいんちょ達!」」」」

 

 

仮装した委員長たちの班まで姿を現した、

 

「ねえねえ桜咲さん、これって魔法関連」

 

朝倉が刹那に耳打ちする

 

「朝倉さん!なぜあなたたちの班までここに?」

「ウチらも来てたんだよね~、それに周りを見てみなよ」

「え・・・・・・・・ッ!?」

 

朝倉に言われた通り、刹那は周りを見ると、いつの間にかシモンと敵のいる橋の周りには大勢の客が囲んでいた。

どうやら皆イベントだと思い込んでいるようだ。

 

「騒ぎを聞きつけたのですが・・・・シモンさんですよねあれは・・・・」

 

委員長が口を開く、

 

「どうします~ギャラリー増えてますよ~?」

「くっ・・・・・お嬢様もいることやしこのままいくえ! ホーホホホホ!そこの男、後ろのお嬢さんがウチらの目的や!死ぬのがいやなら下がっとき!」

「えっ!?ウチ?」

「あの女!お嬢様を劇に見立てて堂々と攫うつもりか!」

 

千草はこれが劇であることを認識させようと大声で木乃香に向かって指差した。

木乃香は突然自分に振られて何がなんだか分からず首をかしげた。

するとシモンは、

 

「やはり近衛が目的か・・・・・でも!」

 

シモンはドリルを千草たちに向かって指し叫んだ、

 

 

「ふざけんな!逃げねぇ、退かねぇ、そして渡さねぇ!それが俺の背負った心意気だ!」

 

 

そしてドリルを天に掲げ

 

 

「俺の背負った魂に賭けて、近衛はテメエらに渡さねえ!」

 

「ふん、死んでも知らんで」

 

「俺を誰だと思っている」

 

 

シネマ村にシモンの声が響き渡る。シモンは周りの人間などお構いなしに叫んだ。

そして

 

―――パチパチパチパチ!!!

 

「「「「「「ワーーーー!!」」」」」」

 

「いいぞー兄ちゃん!」

 

「ひゅーひゅー!」

 

「シモンさんかっこいいわねーあやか」

 

「なぜあのバカは恥ずかしがらずにあんなことを人前で言えるんだ?」

 

「録画完了・・・・。マスター顔が赤いです」

 

大好評のシモン、周りの客は絶賛する。

 

 

「まったくあの人は・・・・・・・はっ!?」

 

 

刹那もシモンに見惚れていたら、急にハッとした。

今のは敵とそして木乃香に向けられた言葉。言われた本人は・・・・・、

そう思い刹那はあわてて木乃香を見る。

するとそこには顔を真っ赤にして、とても幸せそうな笑顔をする親友がいた。

刹那はその笑顔を見ると、無性に胸が痛くなった。

 

(あんな笑顔で・・・・・・・・そうか・・・・やっぱりお嬢様はシモンさんのこと・・・・・・)

 

確信してしまった親友の気持ち。そして素直に応援できない自分の気持ち。

しかし彼女たちはまだ知らなかった、シモンの思いを。

そしてそのことを知っているのはこの場にいないシャークティと美空だけだろう。

木乃香やエヴァがどれほど自分の思いに気づこうと、今でもシモンの中にはニアがいる。

その思いの強さを彼女たちが知るのはもう少し後の話、

 

今のシモンは目の前の少年と戦うことに集中する、

 

「演説は終わりかい?そろそろいくよ」

 

少年はいつの間にかシモンの目の前まで来ていた。

 

「!?」

 

シモンが天に掲げたドリルを少年に向かって振り下ろすが、少年には当たらずそのまま地面に突いた。

ドリルを回避した少年は横に回りこみシモンに蹴りを打ち込んだ、

 

「ぐっ!?」

 

「「「「シモン(さん)!?」」」」

 

「攻撃が大振りすぎる・・・・・もう僕には当たらない」

 

シモンが蹴り飛ばされ悲鳴が上がる。

周りの客も劇だと思い込んでいるが、あまりにもリアルなため、息を呑む、

吹き飛ばされたシモンに少年が追撃する。シモンもカウンター気味にドリルを振り下ろすが再び少年は避け、誰もいない地面に突き刺してしまった。

 

「くそっ!」

 

「君の一撃は認める、けど避けることは造作もないことだ」

 

少年の拳がシモンの顔を殴り飛ばし、シモンは地面に打ち付けられた。

シモンのドリルの一撃はそれなりの破壊力を持つが、剣や拳と違って攻撃の型が決まってしまう。

攻撃方法は突く。それしかないシモンのドリルは槍のような形になってはいるが、性質上連打が出来ない、

一撃を警戒されて回避されれば、一定のレベル以上の動きをするものに当てることは出来ない、

 

シモンを侮っていたため茶々丸や前回の少年との戦いも、一撃を当てることが出来たが、一撃に警戒した少年には普通にやっても当たらない。シモンもそのことに気づいていた。

 

しかしシモンの狙いは別だった、

 

 

「くっ・・・・・・もう少しだ・・・・」

 

「「「「「おーーーーー!!」」」」」

 

 

殴り倒されたシモンだが、体をすぐに起こし立ち上がった。

立ち上がったシモンに興奮する観客と生徒たち。しかし数人の女子たちの心は穏やかではなかった。

本当は刹那もシモンの助太刀に入りたいのだが、自分も入れば静観している天ヶ崎千草も動くだろう。

こっちの戦える者は刹那と茶々丸の二人、今のエヴァンジェリンは魔力が封じられている。

千草に加えて小太郎、月詠、さらに鬼を召喚されればこちらが不利になるのは明らかだった。

ましてや敵の前で隣にいる木乃香から離れるわけには行かない、

そのため今動くことが出来なかった。

エヴァンジェリンも同じだった、シモンと戦う少年はまだ本気を出していない。

今の時点でもシモンは適わない。

シモンは口だけではないと思っているが、シモンがここからどうするのかが気になっていた。

木乃香、そしてクラスの中でも常識人の夕映は目の前の戦いがとても劇だとは思えなかった。

なぜなら殴られたシモンは確実に怪我をしているからだ。

しかし少年は容赦しない、

 

 

「もう少し?何がだい?もう少しで君が負けるということかい?」

 

「もう少しでまた何かを掴めるってことだ、俺はさっきまでの俺よりも進化する!」

 

 

シモンは少年にドリルを向け走り出した。

 

 

「もう当たらないよ、君の攻撃は」

正面から襲い掛かるシモンの背後に少年は高速で回りこんだ。

 

「フルドリライズ!!」

 

シモンが再び覆ったオーラから大量のドリルを360度全体に伸ばす、

しかし

 

「一度見た技は通用しないよ」

 

少年はシモンの伸ばしたドリルとギリギリの間合いでバックステップで回避していた。

螺旋力で具現化したドリルが消えていく。それと同時に再び少年が間合いを詰めようと身構えた、しかし

 

「おまえをそのポイントにおびき寄せたかったんだ」

「?」

 

突然のシモンの言葉に少年はシモンの考えを読めなかった。

その言葉とともにシモンはドリルを地面に突き刺す。

 

 

「本当はもっとたくさんのドリルを打ち込む技だが、こんな橋ならこれで十分!」

 

「!?」

 

「あっアカン!?」

 

「へっ!?」

 

 

少年の立っていたポイントの周りには、シモンのドリルの攻撃を回避して出来た穴があった。

そして今シモンがドリルを打ち込んだことによって、橋全体にひびが入る、

 

そしてもう一度シモンがドリルを振り上げる、

 

 

「これが穴掘りシモンの戦い方だ!くらえ!トロイデルバースト!!」

 

「これは!?」

 

 

シモンの打ち込んだドリルにより、橋に入ったひびが広がり、少年の立っている位置を中心に崩れだした。

 

 

「「「「橋が壊れたー!?!?」」」」

 

「やってくれる」

 

「おわっ!?千草の姉ちゃん上に飛ぶんや!」

 

「わかっとる!!」

 

 

ギャラリーが悲鳴を上げる。

本来そのまま下に落ちるはずだが少年や小太郎たちは寸前のとこで上空に飛び落下を回避したが、

 

「そのまま吹き飛べ!!」

「まずい!?」

 

シモンはすでに次の動きをしていた。

上空に舞い上がった千草たちに向けて、螺旋力を込めた一撃を突く!

西洋魔術師でない千草たちは空中で身動きは取れない

 

 

「シモーンインパクト!!」

 

「よけられへん!?」

 

「ちょっまっ!?」

 

「・・・・やれやれ」

 

 

シモンの衝撃波の一撃が千草たちを吹き飛ばした。

その中で白髪の少年だけは空中で回避した。

しかしシモンの衝撃波をモロに受けた千草たちは地面に落ち、ダメージであまり動くことは出来ない。

シモンは千草たちを一度見てから再び少年に顔を向けた。

 

「すごいなおまえ!これでもダメだったか!」

 

千草たちを吹き飛ばしたが少年だけは無傷。シモンはそのことに笑みを浮かべて宙に浮いている少年に感嘆した。

 

「それで?この先はまだ何か策があるのかい?」

「いや、そんなものは無い、でも、気合でまた何か出すか」

「そうか・・・・」

 

まるで見下したかのような言い方だが、シモンは挑発に乗ったりはしなかった。

その様子を見て、少年は溜息をついた。

周りを見渡せば、ギャラリーが思いのほか集まってしまったこともあり、更には仲間たちの負傷状態を見て、これ以上は無理だと判断した。

 

「ふう・・・・今日はこれまでか・・・・」

 

すると少年はあきらめたかのように言葉をつぶやいた。

逆にシモンは、相手が退散してくれるなら深追いをする気はなかった。

だが、それでも逃げられる前に聞かなければならないことがあった。

 

「一回目も二回目もイーブンだ!だから三度目は・・・・」

「ああ、今度は最後まで相手をするよ」

 

少年の言葉にシモンはニッと笑い

 

「もう一度言う、俺の名前はシモンだ!おまえの名前は?」

 

最初の戦いで少年は自分の名前を明かさなかった。

それはシモンに対して興味を持たなかったため、わざわざ名前を教えるまでも無いと思っていたからだ。

しかし今は違う。すると少年はシモンの問いに答えた。

 

 

「フェイト・アーウェルンクス、それが僕の名だ・・・・シモン」

 

「フェイト覚悟しろよ、三度目の俺はもっと強くなっている!だからまたな!」

 

 

そう言ってシモンはフェイトに背を向け走り出した。

自分たちも早々からこの場から立ち去ろうと。

 

「いいのですかシモンさん?」

「ああ、あそこでこれ以上戦ったらごまかせないだろ。フェイトとかいう奴もそれを気にして手を抜いてたみたいだしな」

「なあなあ、シモンさんあれ劇やなかったん?」

「う~ん・・・・・・劇だ!」

 

走るシモンに刹那と木乃香、すると後二人彼らを追いかけるものが来た。

 

 

「シモンさん、お怪我は?」

「茶々丸!?ああ問題ない、手加減されてたしな」

「見抜いていたか、たしかにあのコゾウは一人レベルが違っていた」

「ああ、魔法使いの強さを教えてもらったよ」

「しかし随分さわやかに終わらせたなあ」

「ああ、でも今度は決着をつける!」

 

後を追いかけてきたのは茶々丸とその肩に乗っているエヴァンジェリンだった。

 

「エヴァンジェリンさん、あなたまで来たら他の方々が・・・」

「一般人を人質に取るのなら最初からしているさ。それほどせこい奴らでもない」

 

刹那の懸念もエヴァンジェリンの一言で納得する。

 

「ではシモンさん、これからネギ先生たちと合流しましょう、その後にお嬢様の御実家へ参りましょう」

「ん?なあなあウチ何が何だかさっぱりやねんけど・・・・・」

 

 

状況をまったく理解できない木乃香への説明は後にして今は皆、ネギとの合流を急いだ。

 


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