魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第1部第3章:伯爵悪魔襲来
第24話 誰も不幸になってないからいいじゃないか


シモンが京都から帰ってきた頃、次元の異なる世界では、数十名の者たちがある墓を囲んでいた。

 

「結局あいつ来なかったわね・・・・・」

 

長い赤い髪をなびかせて一人の女が呟いた。

 

「別に待ち合わせたわけでもないけど、今日ここに来ればみんなに会えると思っていた・・・・・あいつともね・・・・・」

「僕もそう思っていましたよ、ヨーコさん。だからこの日のために僕もキノンも仕事を片付けてここに来たのですから」

 

そう告げるのはこの星を代表する総司令官。

かつてはシモンの片腕として地上に住み始めた人類のために尽力を尽くし、この星で最も市民に信頼されている男ロシウ。

この星で一番多忙な彼もこの日だけはどうしても外せなかったのである。

 

今ここにいるのはヨーコとロシウだけではない。

 

シモンのライバルでもあったヴィラル。

 

黒の兄弟キヨウ。そしてロシウの側近でもあるキノン、末っ子のキャル、キヨウの夫ダヤッカと娘のアンネ。

 

さらに政府の防衛隊のギミーとダリー、科学局長官リーロンを始め多くの大グレン団のメンバーが集まっていた。

 

 

「早いものねえ・・ニアが死ん・・・いいえシモンとニアが結婚してもう一年たったのねえ」

 

 

オカマ口調で喋るのはリーロン。彼も今日この日が何の日が理解していた。

今日はシモンとニアの結婚記念日である。つまりニアが死んで丁度一年になるのである。

ここはニアの他にもカミナの墓、そして他のグレン団たちの共同墓地となっている。

誰かが提案したわけではないが、二アやカミナたちの墓参りとしてこの日が一番いいと皆が判断し、皆忙しいスケジュールの合間を縫って今日ここに集まったのである。

 

「しかし解せんな・・・俺ですらここに来たんだ。奴が来ないなんてありえん話しだ」

「ヴィラル、アンタも義理堅いわねワザワザ来るなんてさ。でも確かにシモンが今日ここに来ないなんて何かあったのかしら・・・」

 

シモンと別れ丁度一年。今日この日にシモンがここに来ないということが彼らには考えられなかったのだ、

 

「リーロン、アンタなら何か知ってんじゃない?」

 

ヨーコの声に皆が反応しリーロンを見るが、リーロンは首を横に振った。

 

「残念ながら・・・・・でもシモンに何かあったんじゃないかしら?もう彼にはグレンラガンが無いんだし・・・」

「あの男は生身でもこの俺と渡り合ったぞ。それに残存するガンメンによる被害はグラパール隊が全て把握している、政府へのレジスタンスの行動もだ。大体シモンに何かあったのならもっと世界中が・・・いや宇宙中が大騒ぎのはずだ」

 

生身のシモンには戦う術が無い。もしシモンに恨みをもつ獣人などに襲われでもしたらという考えだったが、獣人であるヴィラルの意見に皆納得した。

 

「じゃあどうしたって言うんですか!?あのシモンさんがニアさんとの記念日に来ないなんて考えられないじゃないか!」

「ギミー、少し落ち着いて」

「ダリーだっておかしいと思っているだろ!」

 

そう叫ぶのはギミー。

大グレン団の象徴とも言えるシモンのコアドリルを託された張本人である。

ギミーもシモンに今日は会えると信じていた。

シモンに託されたコアドリル、それに少しでもふさわしい男になれたのかシモンに見て欲しかったのだ。

 

「まあギミーの言う通り考えられないことが起きたってことでしょうね~」

 

リローンの意見に皆押し黙る。もしかしてシモンに何かあったのでは?そんな不安がよぎる。

死ぬなんて考えられない人間もあっさり死んでしまうこともある。彼らにはそれが十二分に分かっていた。

 

 

「我々政府も少し調べてみます、螺旋族が解放された途端に彼までいなくなってしまったなんて考えたくありません」

 

「シモンの居場所がわからなくても行けなくはないわよ~」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「そうか・・・螺旋界認識転移システムか・・・・」

 

「あっ!?」

 

「その通~り、それを使えば簡単にシモンの所へ行けちゃうってわ~け~」

 

 

リーロンの提案に一同が安堵する。

まさに盲点だったと言うしかないがグレンラガンの力を使えばシモンに会える。それが分かっただけで皆安心した。

 

「よっし!それじゃあカミナシティに戻ったら早速試してみましょうよ!」

 

ギミーの言葉に皆頷いた。シモンとの再会方法が分かっただけでも収穫だった。

皆が帰路につく中、ヨーコはニアの墓を一度振り返り呟いた。

 

 

「二ア、まだ私たちはアンタたちのいる天国にシモンを連れて行きたくないの・・・・・でも今度ここに来るときは絶対シモンを連れて来るから待っててね」

 

 

そして今度はもう一つの墓へ向いた。

 

 

「カミナ・・・ニアはアンタの妹分になるんだからよろしくね・・・・・キタン・・・・ゾーシィ、キッド、アイラック、マッケン、ジョーガン、バリンボー、あんたたちもそっちでニアを寂しがらせないでよね。シモンは私たちに任せてね!」

 

 

ヨーコはそう呟き、その場を後にした。

ようやく彼らはシモンとの再会へ向けて動く。

 

 

 

 

 

 

 

そして再び次元を超える。

 

「今日で一年か・・・・・・皆怒ってるかな・・・・・」

 

修学旅行から学園に帰った日にシモンはシャークティに迎えられそのまま学園長の元へ向かった。

学園長は詠春からシモンの働き振りを聞いていたため、労いと感謝の言葉、そしてバイト料を支払った。

その際に今後はどうするのかと聞かれたが、しばらくは教会で考えると告げた。

幸いなことに命を懸けたバイトなだけあって、それなりのお金を貰えたため、しばらくはシャークティたちに世話になりっぱなしのヒモのような生活をしなくてもよくなったのである。

元の世界へ帰る方法も今は試す気にもなれず、しばらくは生活費をシャークティに支払い続け、ゆっくり今後の身の振り方を考えることにしたのだ。

 

修学旅行であれほど共に戦ったネギたちとはずいぶんアッサリ別れた。

ネギたちはサウザンドマスターについて京都で知ってきたようだが、ネギたちの態度が余所余所しかったため無理に聞こうとはせず、同じ学園内にいるのだからまた会おうという形で別れたのである。

ネギたちはシモンの過去を盗み聞きした内容が内容なだけあって、どう声がかけていいか分からないまま別れてしまったのである。

 

「何が一年なんですか?」

 

教会で黄昏ていたシモンに話しかけてきたのはシャークティ。

彼女は京都での出来事の報告を聞いた時かなり慌てたが、シモンや美空が無事に帰ってきたことに安堵した。

その際、美空が正体がバレタことを話したが、緊急事態のうえに知られた相手もこちら側の世界の住人のため、大したお咎めは無かった。

 

「今日は記念日なんだ・・・・・何の記念日かはまだ教えられない、だってネタバレになるからな」

 

まだシモンはシャークティたちに自分の物語の序章しか話していなかったため今それを言うわけにはいかなかった。

シモンはニッと笑ってシャークティを見た。

 

「じゃあ約束どおり教えてよねっ♪私もココネも楽しみにしてたんだからさ~ねっ兄貴!」

「コクコク」

 

シャークティの後ろから教会着に身を包んだ美空とココネが現れた。

シャークティは美空が修学旅行から帰ってきた日にシモンのことを兄貴と呼んでいることに驚いたが、ココネもそれにつられてシモンをうれしそうに兄貴と呼んだため苦笑して何も言わなかった。

 

「・・・でもシモンさん、帰らなくてもいいんですか?美空から帰る方法があると聞きましたが・・・・・・・グレン団の方々に会いたかったのでは?」

 

修学旅行中のシモンの電話からそのことを察したシャークティは心配そうに尋ねた。

本当はシモンにはまだここにいて欲しいが、美空からシモンは自分たちの約束を優先していることを聞き、それが本当なら少し申し訳なく思っていた。

 

「たしかにそうだったけど・・・・・シャークティたちとの約束だけじゃないんだ・・・・・ここにいるのは」

「どういうことですか?」

「この世界は螺旋の力やガンメンの力に囚われることなく進化している、さらに魔法を初め多くの未知なる力もある・・・・・俺はこの世界をもっと知りたくなったんだ」

 

その言葉に偽りは無かった。

 

「新たな家族、友、種族を超えた出会い、更にライバル。この世界に来てわずかな間にこれだけのものと出会った。この世界をもっと知り、そして穴掘りシモンが何を出来るのかをもっと知りたいんだ。帰るときは溢れんばかりの思い出を抱え、皆に会いに行く!シャークティ、俺もっとここに居たいんだ」

 

帰れないのではなく、ここに居たい。

シモンのその言葉がシャークティたちはうれしかった。美空も照れくさそうに頬を掻いていた。

本当ならニアとの結婚記念日に墓に行かないなんて考えられなかったが、シモンは新たな世界をもう少し見ることを選んだ。

帰るときはもっとたくさんの思い出を持ち帰りニアに会いに行くことを誓い。

 

「まあそういうわけだからもう少し世話になるよ、それじゃあさっそく俺やブータの戦いを教えるよ!今日はヴィラルとの出会いからだ!」

 

新たな決意を告げ、シモンは約束通りもとの世界の話を始めた。

シモン達が地上に来て最初に出会った強敵の話だ。

人間掃討軍極東方面部隊長ヴィラル。自分たちの前に何度も立ちはだかった強敵だ。

 

 

「人間掃討軍なんて名乗ってたけど、アイツは本当に強かった。ヴィラルのガンメン・エンキから俺は何度も逃げようとしたよ」

「兄貴~、それってどんなガンメン?」

「顔がふたつある変なガンメンだったよ、アニキも顔がふたつたぁ生意気だ!なんて言って対抗しようとしてたよ」

「対抗?ふたつの顔にどうやってですか?」

 

 

シャークティの疑問にシモンはくすくす笑いながら答える。

 

 

「アニキはこう言ったんだ・・・・シモン!合体だっ!ってさ。するとアニキは俺のラガンを無理やりグレンの頭に捻じ込んで、これでこっちも顔が二つだー!なんて言ってたよ、あの時ヴィラルも含めてみんな呆然としてたっけ」

 

 

カミナのとんでも行動に聞いてた美空たちもおかしくなり笑ってしまった。

 

「でもそしたらラガンとグレンが急に変形して本当に合体しちゃったんだよ!」

「変形~?本当に何でもありだね~」

 

シモンは急にのりだして興奮気味に話す。なぜならこの合体こそが今後の大きな希望となったからだ。

 

「そう、合体という気合と気合のぶつかり合いで生まれた人類の希望、それこそがグレンラガンだ!!」

 

シモンの話にシャークティたちは真面目に聞く。

時折カミナの行動に笑みを浮かべたりしていたが、シモンの話を精一杯頭の中で場面を想像していく。

 

シモンも出来るだけ分かりやすいようにグレンラガンについて話していく。しかしこの時シモンは知らなかった、かつての仲間が再び動き始めたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方次元を超えずに同じ学園の敷地内では、

 

「・・・・・・・・・・・はあ・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

 

少年少女が無言で一つの部屋に集まっていた。

 

「・・・・・・キサマら・・・・・・」

 

一人の少女が口を開く

 

「いきなりやって来て、いつまで黙って座ってる気だーー!!!!」

「う~、すすみませんエヴァンジェリンさん・・・でも僕・・・」

 

ここはエヴァンジェリンの家。

今ここにエヴァと茶々丸以外にネギ、アスナ、カモ、刹那、木乃香が訪問し、うな垂れていた。

 

「結局あれからシモンさんとも何も話さないまま別れちゃったしさ~、私たちもどうしていいかわかんないのよ」

 

アスナたちは未だにシモンの過去の衝撃から抜け出せないでいた。

そしてそれはエヴァンジェリンも例外ではなかったが、アスナたちの手前そういう態度は取らないようにしていた。

 

「どうするも何も、ぼーやは親父を探すんだろ。そしてそのために強くなる。やることは決まっているだろうが!」

「そうなんです・・・・でも先にシモンさんとのことをどうにかしないといけない気がして・・・・・でもどうすればいいかわからなくて・・・・・」

「結局私たちがあんな態度でいたためシモンさんには不快な気にさせたでしょう・・・・・まだあの人にはお礼も言っていません・・・・・だからもう一度会わなければ行けないんですけど・・・・」

「そうよね~、あんな話を聞かされたらなんて声をかけたらいいか・・・・・・」

 

先ほどからため息の繰り返し。

まだ子供の彼らにはシモンとどう接すればいいのか分からなかった。

そして

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「木乃香・・・キサマもいつまで黙っているつもりだ、振られたんだからキッパリあきらめろ!」

 

「!?」

 

 

エヴァの言葉に木乃香の顔が歪み目に涙が浮かんでいく。

 

「エヴァンジェリンさん!?なんてことを!?あなただってお嬢様の気持ちぐらい分かるはずです!」

「ええんやせっちゃん・・・ウチが振られたんわ事実や・・・・・せや・・・あきらめな・・・うっ・・・・うっ・・」

「だ~~!いつまで泣けば気がすむ!泣くんならよそで泣けー!もういい私は少し出かけてくる!!」

 

居心地の悪さに耐え切れずエヴァは立ち上がり外に出ようとする、

 

「エヴァちゃん、ここはアンタの家でしょ、出てどこ行くのよ?」

「ふん、キサマらの顔を見るとこっちまで暗くなる、私は教会に行ってくる!」

「教会?エヴァンジェリンさん教会に何しに行くんですか?」

「シモンに会ってくる!」

 

エヴァの言葉に一同驚愕した、なんとエヴァ自らシモンに会いに行くというのだ。

 

「エヴァンジェリンさん・・・・・でもシモンさんには・・・・ニアさんという方が・・・・」

「ふん、妻がどうした!なぜこの私が会ったことも無い女に遠慮しなければならない!だいたい振られたのは木乃香であって私ではない!」

「振られたでしょ、シモンさん他の誰かを好きになることは無いって言ってたじゃない・・・」

「うっ・・・・・・・」

 

アスナの意外な冷静なツッコミに少し言葉に詰まったエヴァだが、

 

「・・・・・・知ったことかーーー!!とにかくそこら辺の事情をシモンに聞きださねば気が治まらん!キサマら小娘共はそこでメソメソしていろー!ニアだかヨーコだか知らんが上等だ!そこに割って入って見せるさ!この私を誰だと思っている!!」

 

一頻り叫ぶとエヴァはそのまま家の外に走って出た。

シモンのいる教会へ駆けるエヴァ、その後姿を皆呆然と見ていた。

 

「・・・・・エヴァちゃんって逞しいのね~」

「はい、マスターは以前と比べて自分の心に素直になりました」

 

エヴァのその素直な姿にアスナも立ち上がった。

 

「事情はともかくとして、あんなに助けてもらったシモンさんに今の態度のままじゃ悪いわよね!ねえ私たちも行こう!」

 

アスナの提案にネギも賛成した。

 

「はいっ!僕もその方がいいと思います!刹那さん!木乃香さん!」

「・・・私は・・・大丈夫ですけど・・・・このちゃん?」

 

本当は刹那もあまりショックから抜け出せていなかったが、木乃香を気にして態度を表に出そうとはしなかった。

 

「・・・・せやな・・・・このままやったらアカンな・・・うん!ウチらもシモンさんといこ!」

 

ネギとアスナの提案にいままで俯いていた木乃香もようやく少し笑みを取り戻し、シモンに会いに行くことを決めた。

刹那もその様子を見て自分も一緒に行くことに賛同した。

 

 

 

 

 

 

 

もう一度次元が飛んでカミナシティにて、

人類の希望グレンラガンの足元で、今一人の少年がこれ以上無いぐらい落ち込んでいた。

 

「・・・・・・俺なんかじゃ・・・・・俺なんかじゃ・・・・・・」

 

グラパール隊のエースパイロットにしてグレンラガンを受け継いだ男ギミー。

彼は部下や仲間の前にもかかわらず落ち込んでいた。彼の隣では双子の妹であるダリーが彼の肩に手を置いて慰めていた。

 

「ちょっとどういうことよ?シモンの所へ跳んでいくんじゃなかったの?」

 

うな垂れているギミーにヨーコが話しかける。

あれだけ意気揚々とシモンの場所まで跳んでいくと言ったギミーがグレンラガンの前でうな垂れている。

この様子に皆が首を傾げていた。

するとリーロンが皆の前に現れて状況を説明した。

 

「実はね~、今ギミーとダリーがグレンラガンに乗って試してみたのよ、ワープを」

「だったらなぜワープしない?俺とシモンが乗っていた時は銀河の果てまでワープできたんだぞ」

 

ヴィラルの言葉に再び落ち込むギミー。どうやら彼が落ち込んだのはそれが原因だったようだ。

 

「確かに本来ならどこへでも行けるわ。以前試したとおり、この地球上でも銀河でも多元宇宙でも超螺旋索敵で一度認知した物ならば隔絶宇宙にいようともワープできるわ。この場合シモンとブータのことね。しかしその距離によって使用する螺旋力の・・・・・・・」

 

「「「「「・・・・あ~~~・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 

リーロンの説明は全員頭に入らなかった。

元々難しいことを考えるのが苦手な連中が多かっただけに全員ボ~っとしていた。

リーロンはその様子に一度ため息をついて簡単に要約した。

 

「つまりぃ~、ギミーの気合が足りなくてワープが使えないってことよぉ~~」

 

その言葉にようやく全員が話を理解できた。

 

 

「「「「「おおおーーーー!!そうか~気合が足りねえか~~・・・・ってギミーー!!」」」」」

 

「うわ~~んシモンさ~ん俺はまだまだ未熟だ~~ごめんなさい~~~」

 

 

シモンですらグレンラガンのワープの力を7年たってようやく使えるようになった。

まだ一年目のギミーにはどうしようもなかったのである。

 

ようやく動き始めたと思ったこちらの地球も出だしから躓いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして再び次元を超える、

 

「そのアダイ村って所で出会ったロシウ、そして双子の兄弟ギミーとダリー、こいつらが新しい仲間として加わったんだ」

「そうですか・・・・しかし五十人しか住めない村ですか・・・・・神の名を語りそのようなことを・・・・・・」

「でもその村の司祭様もしょうがなかったんでしょっ!ガンメンを顔神様って言っているところは無理やりっぽいけどさ~~」

 

教会にてシモンはロシウ達との出会いについて語っていた。

この話については宗教が絡んでいたためシスターであるシャークティは真剣にその村について考えていた。

 

「たしかに私がその村の司祭だとしても同じことをしたかもしれません・・・・・カミナさんやシモンさんは否定するかもしれませんが、村人を救うにはそれが最良のだったのかもしれませんね・・・・」

 

アダイ村。とても貧しく電気も通っていない村。

50人以上の人間を養うことの出来ない村では、50人を超えるとくじ引きで選ばれた人間は天上の国に送るといって地上に送り出す。

しかし獣人とガンメンが支配する地上では死しかない。

村人を宗教で納得させ、家族もいないギミーとダリーにはくじ引きに細工してまで地上に送ろうとした。

この事態に当時カミナは全面否定をしたが、同じ神に仕えるものとしてシャークティはアダイ村の司祭に少し共感を覚えた。

 

「でもさっ、よかったじゃん!そのギミーとダリーって子は兄貴たちと会えたんだからさ!」

「さあ・・・それは本人に聞いてみないと・・・・でもギミーもダリーもロシウもグレン団には欠かせないメンバーになったのはたしかだったけどな」

「アニキ・・・なんでロシウは一緒に来たノ?」

 

くじ引きに選ばれていないロシウが危険な地上に自ら行ったことに、ココネも幼いながら疑問に思っていた。

 

 

「つらい掟で自分たちを縛ることの無いように、地上を取り戻すことによって村人を守りたいって言ってた。アイツは本当にすごいやつだよ。俺とは大して変わらない歳なのにいつだって大勢の人の為を思って行動していた・・・・・いつだって冷静に物事を考えて先を読もうとする・・・・俺がもっとも頼りにしていた男だよ」

 

「そうですか・・・あなた達はいつもすごい方々と出会うんですね」

 

「たしかにそうかもな、それにこの世界でも「シモーン!!」・・・・えっ?」

 

 

急に教会のドアが乱暴に開けられる、するとそこには息を切らせたエヴァが立っていた。

 

「エヴァンジェリン!?」

「エヴァどうしたんだよ・・・急に乗り込んできて・・・」

 

急な訪問客にシモンたちは唖然としたが、エヴァンジェリンはお構いなく自分の思いをぶちまけた。

 

 

「二アという女について教えろー!!」

 

「「「っ!?」」」

 

 

エヴァの口から出たのはありえない人物の名前だった。

一度カミナについて少し話したことはあったが、シモンは二アについてエヴァに話したことが無い。

シモンがひょっとしたらと思いシャークティや美空を見たが、

 

「私たちじゃないよ、つ~か兄貴の話はまだニアさんと出会ったとこまで行ってないじゃん!」

 

美空たちが話したのかと思っていたが否定された。

シモンは何故エヴァがニアを知っているのか聞こうとしたら、

 

「エヴァちゃん!それはいきなりすぎでしょー!!」

「そうですよー、まず話の順序が・・・・」

 

エヴァをツッコむ形でアスナ、ネギ、刹那、木乃香までもが現れた。

気まずい雰囲気の中で彼らと別れたために、いきなりの登場にシモンもそしてシャークティたちも事態を把握できずにいた。

するとネギがそれに答えた。

 

「実は僕たち・・・聞いちゃったんです・・・お風呂でシモンさんと長の話・・・」

「えっ?」

 

シモンが首をかしげる。

 

 

「あの時私たち先にお風呂に入ってて、シモンさんと木乃香のお父さんが入ってきてあわてて隠れたのよ・・・・・それでニアさんって人のこと聞いて・・・・・」

 

「その方がシモンさんにとってとても大切な人だと分かりました・・・・・そしてその方が・・・もう・・・」

 

 

刹那は申し訳なさそうに、盗み聞きしていたことを話した。

 

「それでさ・・・・私たちどうシモンさんに接したらいいか分んなくなっちゃって・・・・・・」

 

アスナの言葉に再び全員俯いた。

シモンがあえて自分たちに教えていなかったことを知ってしまった。それを申し訳ないと思っていた。しかしシモンは

 

 

「そうかおまえたち・・・・・そんなこと気にしてたのか!」

 

「「「「はい・・・・・・えっ?」」」」

 

 

シモンはまるで大したことが無かったかのように言う。

 

 

「俺はてっきりおまえたちの態度が変だから嫌われたのかと思ってたよ。そうかおまえたちニアのこと気にしてたのか!」

 

 

シモンは安心したように明るく言う。それがアスナたちには信じられなかった。

 

「だってその人!・・・・・死んじゃったんでしょ・・・・シモンさんの好きだった人・・・・・・・」

「死んだ者は死んだものだ、それを前へと進むおまえたちが気にすることじゃない、そっちの方がよっぽど気になるよ」

「でも・・・・・」

「俺のニアへの思いはそのままだけど、あいつが最後まで幸せだったと俺は思っている。そして俺も今では新しい家族や仲間に囲まれているんだ。誰も不幸になってないんだからいいじゃないか!」

 

時折ニアを思い寂しくなったのは事実だが、今この環境に満足しているのも事実である。

別れの瞬間ニアが笑顔だったのを覚えている。ニアが最後まで幸せだったのは自分が一番よく理解していた。なぜならニアのことをこの世で一番理解しているのはシモンなのだから。

それを分かっていながら引きずっていたのは自身の問題である。しかしようやくそれが無くなった。新たな出会いが変えてくれた。

シモンに残ったのは悲しみではなくニアを愛しているという想いだけなのである。

 

シモンはそう言うといつものようにニッと笑った。

 

その笑顔を見てアスナたちはようやく暗かった雰囲気が解消された。

シャークティたちも、この言葉を聞いて安心したように微笑んでいた。

 

 

「だからこれからもよろしくな!おまえたち」

 

「「はいっ!」」

 

 

しかしその言葉に頷くのはアスナとネギだけ。エヴァ、刹那、木乃香はまだ納得のいかないような顔だった。

 

「エヴァ・・・どうしたんだよ」

「おまえの言っていることは分かった・・・・しかし詠春と話していた時はニアとやらにこだわっていただろ・・・・・」

 

 

シモンは詠春に二アを今でも好きだから誰かを好きにはならないと言った。

それはこだわっているということだとエヴァたちは思っていた。

 

「だってそれは恋愛の話だったろ、それは別だよ」

 

と、まるでデザートは別腹みたいなノリで話すシモン。

しかしそれがエヴァたちにとっては重要なことだった。

 

「じゃあ・・・・シモンさん今後誰も好きにならんゆうこと?」

 

ずっと黙っていた木乃香がようやく口を開いた。

 

「そうだと思うけどな~、だって俺・・・ニアが好きだし」

 

照れながらも笑顔でハッキリと言うシモン。

もしニアが生きていたなら大勢の人間にからかわれたであろう。

しかし今はいない。周りから見たら痛々しいようにも見えるシモンの気持ち、それが木乃香たちには悲しかった。

 

シモンの気持ちをハッキリ聞いたため木乃香もこれ以上聞こうとはしなかった。

そしてエヴァも勇んでここに来てみたものの、シモンの思いを再確認したことにより先ほどまでの気持ちも少し萎えてしまい、ヨーコや二アのことを今聞くことをやめた。

 

 

「まぁさ、兄貴が気にすんなって言ってんだからそれでいいじゃん!それに私たちまだニアさんのこと詳しく聞いてないんだからアスナたちフライングはよくないよ~、グレン団の話はちゃんと順序を守って聞かないとね~」

 

「そうですね、・・・・まったくエヴァンジェリン、せっかくシモンさんの話を聞いていたのに大事なところで邪魔しますね」

 

 

美空が暗い雰囲気を軽い言葉で和ませる。その言葉にシャークティも従った。

以前までならニアの話題はシモンには遠慮していたが、シモンがそれを望まなかったために今こうして深く考えずにいられる。

これもシモンを理解してきた証拠なのかもしれない。

 

「そうかキサマら~、私に内緒でシモンの昔話を聞いていたな~~、シ~モ~ン私をのけ者にするとはいい度胸だな~」

「ちょっと待って!?」

 

アスナが何かに気づいた。

 

「何で美空ちゃんシモンさんのこと兄貴って呼んでるのよ!」

「あっ・・・」

「!?」

 

この言葉にネギたちもハッとした。

そもそも美空とシモンが親しかったことにも驚いたうえに、兄貴なんて呼んでいるからだ。

すると美空とシモンはお互いを見合い、そしてココネがシモンの肩に肩車の形で乗った。

そして美空とシモンは肩を組み、ネギたちに向かって

 

 

「「「兄弟!!」」」

 

「「はあーー!?」」

 

 

と叫んだ、

 

「ちょっ・・・美空ちゃんシモンさんと兄弟じゃないでしょうが!?」

「だはは、まあアスナ細かいことは気にすんなって!私たちとシモンさんは魂のブラザー!ソウルの兄弟!そしてファミリーってことよ、あははははは」

 

美空が笑いながら答える。その言葉にシモンも笑い、そしてシャークティは口元を隠しながら笑っていた。

 

「キ・・・・・サマら・・・・いつのまにそこまで・・・・」

 

この美空の言葉に全員があっけにとられてしまった。

 

「美空の言うとおりだ神楽「なあ・・・」・・・近衛?」

 

シモンの言葉に木乃香が口を挟む。

 

「あんな~・・・美空ちゃんだけするい思うんよ・・・・・・」

「ずるい?」

 

木乃香が何を言いたいのか分からずシモンは首をかしげた、

 

「名前や・・・・シモンさんウチらの苗字しか呼ばんけど・・・・美空ちゃんだけ名前で呼ぶのはずるい思うえ・・・」

「あっ・・・・・そういえばシモンさん私のことも神楽坂って言ってるわね」

「ああ、それは修学旅行中に名前を全部覚えるのはしんどくて・・・・・」

 

毎日会っている美空はともかく、木乃香たちとはシモンは修学旅行の時三十名以上の生徒と一緒に出会ったのだ。

当然名前を全部覚えることなど難しいうえに、自分のいた世界と違ってこの世界では皆苗字から名乗る。そのため名前を覚えることが出来なかったのである。

 

「せやから・・・・・今度からウチも木乃香ってよんでほしいんよ・・・・・」

 

それが最低限の望みだった。

恋愛云々の前に名前ですら呼ばれていないこの状況を木乃香は変えたかった。

シモンとこれだけ親しい美空が羨ましかったのである。木乃香の言葉にアスナもうなずき、

 

「そうよね~、あれだけ一緒に戦った仲間に苗字はないわよね~、シモンさん!私はアスナよ!」

 

アスナと木乃香の言葉に刹那も意を決して口を開く

 

「私のことも・・・・・今度から刹那と呼んでくださいシモンさん!」

 

彼女たちの願いにシモンもニッと笑って了承した。

 

「ああよろしくな!木乃香!アスナ!刹那!」

 

その言葉にようやく木乃香からも笑みがこぼれた。

自分たちもこれでようやく少しシモンに近づけたのだと思った。

その様子を見てシモンも微笑む、

 

(ニア・・・会いに行けなくてごめん・・・・でも俺たくさんの思い出とともに会いに行く、だから楽しみにしていてくれよ・・・)

 

シモンは教会の十字架を見上げ、故郷の愛しい女へ誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころカミナシティ、

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

グレンラガンのコクピットに乗ったギミーが雄たけびを上げていた。

 

「ギミー!気合入れないと居残りさせるわよ!」

「キサマはカミナとシモンの魂を受け継いだ新時代の男だぁ!その魂をかつての英雄まで轟かせろ!!」

「ギミー!私たちの気合を、明日を私たちに与えてくれたあの人のもとへ!!」

 

「「「「「わっしょい!!わっしょい!!わっしょい!!」」」」」

 

 

ヨーコ、ヴィラル、ダリーが叫び、他の者たちも全員一丸となりギミーへエールを送る。

 

「ギミー!まだ螺旋力が足りないわよぅ!もっと気合を捻じ込んで!!」

 

まだ足りない、リーロンがギミーに告げる。

 

 

「俺はシモンさんから魂を受け継いだ男だ!天も次元も突破して、未来のドリルを必ず轟かす!俺を誰だと思ってやがる!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「「「ギミー!!」」」

 

「「「「「わっしょい!!わっしょい!!」」」」」

 

 

「うおおおおおお!!!螺旋界認識転移システム発動ーーーー!!」

 

 

―――プシュ~~ウ

 

 

何かの気がぬける音がした。

 

「やっぱり駄目みたいねえ~~」

 

その瞬間ギミーは真っ白になり口から魂のようなものが出掛かっていた。

 

「「「「「はあ~~~~」」」」」

 

全員からため息がもれる。ギミーは再び自虐的になり落ち込んでしまった。

 

「シモンさん・・・俺・・・・俺っていったい誰なんですか・・・」

 

ギミーの声がグレンラガンの中で響く。

再会の日は遠い。

 


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