魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第25話 イイ女とイイ男

「すげーぜあの若いの・・・・」

「ああ、俺もこの道に長えがあんな奴見たことねえ」

 

とある工事現場にて、泥だらけで作業する男たちが呟いた。

男たちの前には無人のショベルカーとでっかい穴。

 

「あの男、自前のドリルでこんなデッケー穴開けやがった!」

「しかもショベールカー使わねーでだと!?」

「奴こそドリルに愛された男、まさに穴掘りの達人だああああ!!」

 

なんとそこにはかつて銀河を救った英雄が、大工の作業着を着てガテン系の仕事をしていた。

 

「こんな土ならいくらでも掘れるさ!なぜなら俺は穴掘りシモンだからな!」

「「「「うおおおおお!」」」」

 

泥まみれのシモンが親指を突き上げて仲間たちにグッと向ける。

その姿に多くの大工仲間たちが声を上げた。

 

「ホレ、今日の分だ」

「親方、これちょっと多いよ・・・」

「バカヤロー!あんな見事な作業する若いもんにケチっていられるか!そのかわりまた来いよ!」

「ああ!ありがとう親方!!」

 

そう言ってシモンは渡された給料を持ち、帰宅することにした。

 

「バイトも結構楽しいもんだな~、皆いい人だし」

「ぶひっぶひっ」

「ジーハ村で、たくさん仕事をした分、大きなステーキを食わせてくれた、村長を思い出したな~」

 

そう、シモンはこの日バイトをしていた。

修学旅行のバイト料がまだ残っていたが、昼間は美空もココネも学校に行っているうえに、シャークティも仕事がある。

一日中のんびりしているわけにもいかず、シモンは外の世界の見学もかねて自分の特技を活かしたバイトをした。

この世界に来てシモンはこの世界の非常識な存在ばかりに触れていた。

吸血鬼、魔法、鬼。よくよく考えれば一般の世界とあまり関わっていなかったことに気づいた。

 

「ジーハ村にいた時と同じだ。いつも馬鹿にされていた俺も穴掘りの時は褒められてたからな~」

 

シモンは昔を少し思い出していた。自分のかつての日常を。

それから色々あって地上へ行き、ガンメンたちと戦う日々を向かえた。

ガンメンたちと戦っていたことは間違いなく現実だった。

しかしもし自分が地上へカミナとともに行かなかったら、きっと今でも故郷で穴を掘っていたに違いない。

これも自分にとっての一つの道だったのかもしれないとシモンは思った。

 

「さてシャークティたちも待っているだろうし帰ろうか、ブータ」

「ぶい」

 

シモンは相棒を肩に乗せ自分の家へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「そ・・・・そんなにおかしいかな・・・」

「美空失礼ですよ・・・ぷぷ・・・くすくす」

 

教会に帰ったシモンを待ち受けていたのはシモンの作業着姿を見て爆笑する美空とシャークティだった。

タビをはいて白いシャツを泥だらけにして帰ってきたシモンが、彼女たちのツボに入ったようだ。

 

「いや~グレン団のコートも似合うけどガテン系の兄貴も似合う似合う!」

「う~ん俺は結構気にってるんだけどな~」

「ふふ、お疲れ様ですシモンさん。先にお風呂に入ってから夕食をとりましょう、ブータも一緒に入ってきなさい」

「ぶひっ」

 

シモンは貰ってきた給料袋をシャークティに渡し、そのままブータとともに風呂に入った。

 

風呂から上がったシモンを食卓に向かえ4人は夕食を食べた。その様子はまさに一家団欒である。

 

「はあ~今日は本当に充実したよ~」

「それはよかったですね、はいシモンさん、シモンさんのためにココネが料理を作りました」

「ピース!」

 

ココネがシモンに向けてVサインを送る。どうやらシモンの料理はココネが作ったようだ。

その料理とは、もはや食べ物なのか判別不能の料理だった。しかしシモンはそれを豪快に腹の中に入れる。

 

「ガツガツガツ・・・・あ~~ココネの料理おいしいな~~」

「兄貴・・・美味シイ?」

「ああ、この世界に来て一番美味い料理だ!」

 

目を輝かせて嘘偽りのない言葉を吐く。

 

「・・・・兄貴・・・よくそんなん食えるね・・・・本当にトンデモ味音痴だね・・・・・・」

 

美空が信じられないような目で言う。

そう、シモンはようやく自分の味覚が人と違うことを告白した。

これからも教会に住み続けるにあたって食事は超重要問題だった。

なぜなら元々味音痴なうえに7年間ニアの超弩級の破壊力を占めた手料理しか食べてなかったため、シャークティなどの作る一般的な料理は口に合わなかったのだ。

それを聞いたシャークティたちは最初冗談だと思っていたが、試しに料理をしたことのないココネに調味料の分量など無視して自由自在に使わせた度胸料理をシモンはとてもおいしそうに食べたのだった。

 

「まったく、本当に料理の作り甲斐のない人ですねあなたは」

 

以前手料理をシモンに存分に振舞っていたが、実はあの料理は全て口に合っていなかったことをシャークティも知り、少しふてくされ気味だった。

 

「はは、ごめんよ、シャークティ!でも魔法使いや吸血鬼ってのもいるんだ。味音痴がいてもおかしくないさ」

 

シモンもゴメンゴメンとシャークティに謝った。

すると美空があることを思い出した。

 

「そうだ!魔法使いと吸血鬼で思い出したけど今日ネギ君たちが兄貴を訪ねに来たよ~」

「ネギたちが?なんで?」

 

食べ物を口に頬張りながら美空は答える。

 

「なんか今日ネギ君のエヴァンジェリンさんへの弟子入りテストがあるんだってさ。それで兄貴に激励を貰いたかったみたいだよ」

「ふ~んエヴァに弟子入りね~、そういえばエヴァって戦ったところあまり見たことないけど本当に強いのか?普段は態度のでかいガキにしか見えないけど」

「兄貴・・・・それ本人の前で言ったらぶっ飛ばされるからやめなよ・・・」

 

エヴァへのガキ発言に少しビビる美空。

その美空に代わってシャークティが答える。

 

「ええ強いです。もし私の予想が当たっているなら開放状態のエヴァンジェリンさんはガンメンを生身で倒せると思います」

「へ~それはずいぶん怖いじゃないか」

 

なるほど。たしかにそれは強いとシモンは理解した。

 

「多分今頃やってんじゃないかな~、兄貴見に行く?」

「んっ?いいや別に」

 

美空の提案だったがシモンは拒否した。

 

「いいんですか?ネギ先生、シモンさんから何か言ってほしそうでしたよ?」

 

エヴァンジェリンの課すテストはおそらく難題だろう。

そんな難題に立ち向かうためにネギは何か言葉を貰いたかったためにシモンを訪ねたのだろう。

しかしシモンは、

 

「大丈夫だ。あいつが自ら望んで受けた課題を、事情の知らない俺が何かを言う資格はない。でもネギなら大丈夫!あいつはあきらめねえって事もう知ってるからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ネギside

 

 

真夜中の学園内の敷地。

いまここで、一人の少年が自分の生徒にボロボロに打ちのめされていた。

それはいったいどれだけ長い時間かけてつけられた傷かは分からない。

しかしその少年の体がもう限界だとこの場にいる誰もが思っていた。

 

「おいぼーや、もういいだろう、お前のやる気はわかったからな・・・・」

「い・・・・いえ・・まら・・あきらめないれふ・・」

 

ボロボロのネギは茶々丸に向かっていったが、簡単に返り討ちにされた。

 

「センセ~~」

「ネギ君・・・何であんなにがんばるの~」

 

ネギと茶々丸の戦いを見守る生徒たち。

その中には何度も目を逸らそうとする木乃香、今にも飛び出そうとするアスナ、そして刹那までいた。

エヴァもこの戦いを見ている。

魔法を使わず茶々丸に一撃を当てる。それがエヴァの課したテストである。

しかし今のネギでは一撃どころかこれ以上戦うことは不可能なぐらい疲弊しきっていた。

 

「あ、ネギ君アカン!」

 

急に木乃香の悲鳴がした。戦いに目をやると、ネギはもう地面にうつ伏せなって倒れていた。

もうこの瞬間、今まで拳をずっと握り締めて耐えてきたアスナには限界だった。

 

「もう限界よ!わたし止めるわっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

教会side

 

 

「茶々丸に一撃か~~」

「う~ん茶々丸さんもそんなに本気出すとも思えないけどエヴァンジェリンさんのパートナーだし、魔法なしじゃネギ君も辛いんじゃないかな~~」

 

テスト内容を聞いてシモンは少し考えていた。

ネギはこの数日生徒の古に体術を習っていたようで、どうやらその力で茶々丸と戦うようだ。

以前、生身の体で茶々丸にズタボロにされたシモンなだけに、少し難しい顔をしていた。

 

「まあでもいいんじゃないかな、辛いと分かってそれでも行くんだ。それを邪魔するのは野暮ってもんだ」

「でもネギ君があんまボコられてるとアスナあたりが黙ってないんじゃない?」

「かもな、でもそれを黙って見てられないようじゃ、いい女への道のりは遠いかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネギside

 

 

もはや我慢の限界に達したアスナは古とともに戦いを止めようとした。

その手に仮契約のカードを持ち実力行使も辞さない態度だった。しかし

 

「だめーーー!アスナ止めちゃダメーーー!」

 

なんとアスナたちの前に、一般人でネギの生徒まき絵が立ちはだかった。

 

「アスナ・・・止めちゃダメだよ・・・・」

 

まき絵涙を堪えながら懸命に言う。

 

「何言ってんのよ・・もうあいつボロボロじゃない、子供のアイツがあそこまでがんばることじゃないわよ!」

 

アスナだけではない。今ここにいる全員がネギがこれ以上戦うのを望んでいないはずだ。

アスナは、もうこれ以上は見ていられなかった。

しかしまき絵は立ちはだかる。

 

「ここで止める方がネギ君には酷いと思う・・・それにネギ君は大人だよ」

「なに言ってるのよ・・・・あいつのはただの子供の意地っ張りだよ、止めてあげなくちゃ」

 

ネギが大人?そんなことはない、アスナはまき絵の言葉の意味が分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

教会side

 

 

「いい女は黙って見ていろということですか?」

 

シャークティはシモンに聞く。

 

「違うよ、いい女ってのは、男の本気を理解してくれる人さ。心配だからとかもうこれ以上は無理だからと判断して男の本気を止めるようじゃまだまだってことさ」

 

シモンは続ける。

 

「それに、女に心配かけて助けられるようじゃ男の面目丸つぶれだよ。あっこれは差別じゃなくて男なら抱く本能だ。そこに魔法使いだとか関係ない」

「なるほど・・・しかし今日は多分他の一般人の生徒も見物していると思います。彼女たちは耐えられるでしょうか?」

 

もし凄惨な事態が起こったら、きっと彼女たちは我慢できないのではないかとシャークティは疑問に思った。

だが、それでもシモンは首を横に振った。

 

「魔法が使えないから一般人って線引きするのは間違ってると思うよ。今日バイトで魔法の使えない人と知り合ったけど、彼らは皆気のいい人たちだった。別に目標や夢があるわけじゃないけど皆それぞれ自分の名前と自分の仕事を持っている。魔法使い以外は一般人なんて言いたくないや」

 

「・・・なるほど・・」

 

「だからいい女や男に魔法を使えるとか関係ない。男の本気を理解するのがいい女だ!」

 

 

 

 

 

 

 

ネギside

 

 

「違うよ・・ネギ君は大人だよ・・・覚悟を決め、目的があって、それのために戦ってるんだよ・・・アスナ、そういう人が周りにいる?ネギ君みたいに絶対に譲れないものに本気で立ち向かう人がいる?ネギ君は大人なんだよ!だから今止めたらダメ!」

 

「まき絵・・・・」

 

まき絵の言葉にアスナは押し黙った。

戦いから目を逸らしていた他の生徒たちも、まき絵の言葉を黙って聞いていた。

推定年齢600歳以上のエヴァも、少し青臭いまき絵の言葉だったがこの時ばかりは少し感心しているようだった。

普段はバカレンジャーなどと呼ばれている彼女はネギのことを理解していたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

教会side

 

「兄貴~じゃあいい男の条件って何?」

 

美空の質問にシモンは

 

「決まっている、そんな女の想いに応える男だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネギside

 

 

まき絵はネギの気持ちを尊重し、この戦いを止めなかった。

そしてその言葉はうつ伏せに倒れているネギにも聞こえた。

 

(うっ・・・・・・まき絵さん・・・・・はあはあ・・・・・・・くっ・・・・こんな時・・シモンさんなら・・・)

 

ネギはこの場にいない男を思った。

しかし、すぐに頭から振り払う。

 

(なにやってるんだ僕は・・・・・いつまでシモンさんに頼ってるんだ・・・・・これは僕が自分で決めた道じゃないか!)

 

この戦いの前に、ネギはアスナたちとともにシモンのもとへ行こうとした。

シモンに激励の言葉をもらいたかったからだ。

しかしシモンは居なかったためにしょうがなく今のまま試験に臨んだのだ。

だが、ネギは気づいたのだ。

今ここにいるのは自分の意思。立ち向かうのも自分の意思。そこにシモンは関係ないことを。

 

(それに言葉をもらう必要なんてなかった・・・・だってシモンさんは僕にこれまで多くの言葉をくれた・・・)

 

―――足掻くのをあきらめたら一歩も前に進めない!

 

―――お前を信じる、俺を信じろ!

 

―――無理を通して、道理を蹴っ飛ばせ!

 

ネギは他の生徒たちの顔を見た。

 

(アスナさん・・木乃香さん・・・刹那さん・・・・まき絵さん、・・みなさん・・・・とても心配そうな顔をしている・・・・・僕が不甲斐ないからですね・・・・でも安心してください・・だって僕は!

 

するとネギは再び立ち上がった

 

 

「ネギ先生・・・・」

 

「ぼーや・・・」

 

「「「「ネギ君!」」」」

 

 

全員が驚きの声を上げる、そして立ち上がったネギは

 

 

「これは大人も子供もありません!これは僕の本気の魂を賭けた男の意地です!!」

 

「ね・・・ネギ君?」

 

「ぼーや・・いきなり何を言っている?」

 

 

 

するとネギはある男と同じように自分の指を天に向かって指した。

闇夜にその少年にだけスポットライトが当たっているような気がした。

その姿にこの場にいた全てのものが見入っていた。

 

 

 

「意地を張っても貫き通す!人に涙を流させようと、笑顔に変えれば僕の勝ち!!3-A担任ネギ・スプリングフィールド!僕を誰だと思ってやがるんですか!!!!」

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

それが一体何なのか、エヴァ、茶々丸、アスナ、刹那、木乃香は分かっていた。

そしてそれを何なのかを知らないまき絵たちも、今のネギの姿に目を輝かせていた。

 

 

「いきます!うああああああああああああ!!」

 

「あっ!?」

 

「茶々丸!?」

 

 

ネギが雄たけびを上げて茶々丸に向かう。

ネギの突然の名乗りに見入っていた茶々丸は反応が遅れる。

これはボロボロのネギの最後の挑戦。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会side

 

 

「まあ合格かどうかはまた今度聞けばいいさ、今日は遅いからもう寝よう!」

「そうだね~、私もそろそろ寮に帰るよ」

「兄貴、ブータ、オヤスミ」

 

夜も更けてきたため、そろそろお開きにした。シ

モンもブータを肩に乗せ自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネギside

 

 

「ふん、負けたよぼーや、約束どおり弟子にしてやる」

「はい・・・ありがとうございます・・・エヴァンジェリンさん」

 

エヴァンジェリンは少しつまらなそうにネギの合格を告げる。

ネギはもう完全に仰向けになって倒れていたが、なんとか喋ることは出来た。

倒れているネギに生徒たちが笑顔で駆け寄る。

 

「やったねーネギ君!」

「ネギ坊主よくやったアル!」

「ホントすげーよネギ君!つーかさっきのあれ何?あれカッコよかったよー!」

 

先ほどまで顔を歪めて何度も戦いから目を逸らそうとしていた生徒たちも、全員笑顔でネギを称えた。

 

「まったくアンタは誰の真似してるんだか」

「ふん、まあ名乗りの方はイマイチだったがなあ」

 

エヴァは少し意地悪な笑みを浮かべる。その言葉にアスナと刹那も苦笑する。

 

「ふふ、そうですか?とっさの思い付きでは良かったと思いますけど」

「何言ってるのよ、刹那さん。シモンさんに比べたらまだまだインパクトが足りなかったわよ!大体さ~、やがるんですかってね~」

「え~、そんな~」

 

ネギが一体誰の真似をしたのか分かっている彼女たちは思わず笑ってしまい、ネギは少し恥ずかしそうな顔をしていた。

 

「ちょっとアスナー、なんでそこにシモンさんなの~?」

「あ~それは~・・まあ細かいことは気にしない!」

「何よそれ~!私たちだけのけ者~~?アスナなんて泣きそうになってたくせに~~!」

 

まき絵がぶーぶーと不満を言う、するとネギは体を起こした。

 

「のけ者なんてとんでもありません、僕がここまで出来たのはまき絵さんのおかげです!まき絵さんも新体操がんばってください!」

 

その言葉にまき絵は少し顔を赤らめ笑顔でうなずいた。

 

「テスト前にシモンさんに会えなかった時は少しがっかりしてましたけど、大丈夫でしたね」

「でもネギ君意外と熱血なんやな~、あんなんなるまでがんばって~・・・・これもシモンさんの影響なんかな~」

「かもね~、今度シモンさんに会ったらネギの名乗りの採点してもらおうよ!」

 

今この場に居ない男について彼女たちは笑った。

しかし木乃香だけは少し俯いていた。

 

(ウチより年下のネギ君はこんだけがんばって・・・・アスナも最近せっちゃんに剣道習っとるようやし・・・まき絵かて新体操がある・・・・ウチだけや・・・なんもがんばってへんの・・・)

 

ネギのテストクリアに大いに喜んだ木乃香だが、今その姿に少し嫉妬を感じていた。

 

(ウチものどかのようがんばるゆうたけど・・・・・・結局何もしとらん・・・・・・シモンさん・・・・)

 

シモンへの想いを忘れなければと思っていた木乃香。

しかし、ネギの姿を見て木乃香は一人空を見上げ黄昏た。

 

(ウチは魔法使いの素質あるいわれたけど、まだ一個も魔法使えへん・・・今傷ついたネギ君の怪我も治せへん。今のネギ君の戦いかて目え逸らそうとした・・・・・)

 

―――覚悟を決め、目的があって、それのために戦ってるんだよ、ネギ君みたいに絶対に譲れないものに本気で立ち向かう人がいる?ネギ君は大人なんだよ!だから今止めたらダメ!

 

先ほどクラスメートで魔法とは何の関わりの無いまき絵の言った言葉を思い返した。

 

(ネギ君は立派や・・・・それが理解できるまき絵も立派や・・・・それに比べてウチはがんばるゆうたことを、もうあきらめとる)

 

木乃香は談笑しているエヴァンジェリンを見た。

 

―――ニアだかヨーコだか知らんが上等だ!そこに割って入って見せるさ!この私を誰だと思っている!!

 

エヴァンジェリンが言っていた言葉だ。そんな言葉はとても自分では言えなかった。

 

―――細かいことを気にするな!

 

シモンの言葉である。

 

(細かない・・・ニアさんゆう人はシモンさんのお嫁さんや・・・・・)

 

頭の中でぐるぐると回る想い。

木乃香は自分が何をすべきなのか分からなかった。

 

「木乃香さん帰りましょう」

 

雑談を終え、ネギはアスナにオンブされながら言った。

どうやら長い時間一人で考え込んでいたようだ。もう他の者たちも帰ろうとしていた。

木乃香はアスナにオンブされているネギを見て駆け寄り尋ねた。

 

「なあなあ、ネギ君。ちょっと質問あるんやけどええ?」

「はい・・・・なんですか?」

「ネギ君今度からエヴァンジェリンさんの下で修行して、中国拳法習って、先生の仕事もやって、お父さんも探すんやろ?」

「はい・・・そうなります」

「それ全部はしんどくあらへん?」

 

よくよく考えたら10歳の少年でなくてもキツイスケジュールだ。

さらにそれだけ多くの事をすれば、どれもが中途半端になってしまうかもしれない。木乃香の疑問は正論だった。

これにはアスナと刹那もうなずいた。しかしネギは首を横に振った。

 

「そんなことありません、これは全部僕が望んだことです、自分の望んだことを出来るんだから大変なんて言ってられません!」

「ん~でも木乃香の言うとおり確かにハードスケジュールよ・・・やっぱ全部は無理なんじゃない?」

「アスナさん、無理を通して道理を蹴っ飛ばせです!これくらいの無理も通せないようじゃ僕は自分の目標になんて辿りつけません!」

 

ネギは笑顔で親指を上に突き上げニッと笑った。そのネギに少し顔が赤くなったアスナだが、照れ隠しのようにネギの頭を殴った。

 

「ったく・・・・アンタ影響されすぎよ!」

「う~そんな~アスナさんだって影響されてたくせに~」

 

ネギをおぶったまま二人はまたいつものような言い合いになった。

その姿を刹那は笑顔眺めていた。そして木乃香は・・・・

 

(無理を通して・・・・・これもシモンさんの言葉なんやな~・・・・・・よしっ!)

 

すると木乃香は何かを決意した目をした、

この様子に親友の刹那やアスナも何かを感じ取った。

 

「このちゃん?」

「木乃香・・・・どうしたの?」

「アスナ・・・・せっちゃん・・・・・ウチもがんばる!」

 

「「「?」」」

 

木乃香の発言に急に首を傾げる3人。

 

「のどかにも・・・・ネギ君やまき絵・・・・エヴァンジェリンさんにも負けへん!そしてニアさんにもや!」

「・・・・・このちゃん・・・それって・・・・」

「魔法もがんばる、そして一度がんばるゆうたこともや!ウチも無理を通したる!」

 

曇りのない決意を木乃香はここに誓った。

その顔はつい最近まで落ち込んでいた木乃香の顔ではなかった。

 

「なるほどね~、よしっ!私ももっとがんばろう!」

 

アスナもまた、ネギや木乃香に触発され、今まで以上にがんばることを決めた。

しかし刹那は少し複雑な表情をしていた。

 

「せっちゃんも応援してな~」

「うっ・・・・・・と・・・当然やこのちゃん・・・」

 

今はそう答えるしかなかった。刹那自身はまだ答えが見つかっていなかったのだから。

 

こうして一日が終わった。

 

この日のシモンは本当に魔法とは無縁の一日を送った。

 

しかし彼の知らないところではシモンの気合がまた伝染していた。

 

一人の少年が己の目標に向けて今一歩踏み出し、少年は一つ成長していた。

 

そして一人の少女も自分の本気を見つけたのだ。

そのきっかけを作ったのは魔法が使えないが『いい女』。

彼女のおかげで少年も少女も一歩を踏み出すことが出来たが、そのことをシモンは知らない。

 


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