魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第26話 男も女も魔法も関係ない

ここは南の島の楽園、海に囲まれたリゾート地。

今ここで一人の少女が7つ年上の男と向き合っていた。

 

 

「ウチ・・・・シモンさんのこと本気で好きや!」

 

「・・・・・・木乃香・・・」

 

 

夕焼けの海岸線、木乃香は目の前に居るシモンに告げた。

その顔は真っ赤になっているが、真剣な表情で向き合っていた。

その言葉に一瞬あっけに取られるが、シモンに取り乱した様子はない。

内心かなり驚いてはいるがなるべく態度に出さないようにしていた。

そんなシモンに向かって木乃香は言葉を続ける。

 

 

「せ・・・せやから・・シモンさん・・・ウチのパートナーになってください!!」

 

 

木乃香の声は波の音よりも大きくシモンの耳に入った。

顔を真っ赤にしながら真剣な表情で自分に想いを伝える少女。

相手は少し年が離れている。自分からすればまだ子供。なにより自分の妹分でもある美空と同じ年である。

しかし木乃香の想いが真剣であることは一瞬で察した。

 

 

「木乃香・・・・」

 

「ゥ~は・・・はいい」

 

 

シモンは木乃香の顔を見て名を呼んだ。

これに木乃香はびくっと肩を震わせ恐る恐るシモンの顔を覗く。

木乃香のそんな様子をシモンは見つめ、軽く微笑んだ。

そして今の自分の答えを木乃香に告げる。

 

 

 

 

 

 

 

明るい笑顔で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やだっ!」

 

 

 

――――ズガシャーーン!!!!

 

 

その瞬間木乃香が前にズッコける。

そして茂みの中から隠れて様子を覗き見していた者たちも一斉にズッコけてしまい、シモンたちの前に倒れこんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10時間前に戻る

 

 

 

朝早くにシモンは目覚めた。今日はバイトも入れていない。

今日はどうしようか悩んでいたら、朝早くすでにシスターの黒衣に身を包んだシャークティが挨拶をしてきた。

 

「おはようございますシモンさん、ブータ」

「おはようシャークティ、今日は休みの日なんだろ?いつも朝早いんだな」

「ええ、毎朝早く起きることが体に染み付いていますから・・・・以前は居候の誰かさんを起こしに部屋へ向かったら、部屋がもぬけの殻だったり、その人物が泥だらけで倒れていたりして朝からお説教をするような日があったのですが、今は毎朝爽やかに迎えられます」

 

普段クールな彼女しか知らない学園の教員や生徒たちが見たら卒倒するであろう。

それほどシャークティはやわらかい笑顔で少し皮肉を含めた言葉を言った。

 

「そうかな。俺は嘘をまったくついていない男を無理矢理病院に連れて行って、人を異常者扱いしたシスターを知ってるけどな」

「ふふふ、人の言葉を信じぬシスターはいけませんね♪」

 

そう言ってお互い軽い冗談を交わした。

 

「シモンさん、美空が来ています、何か遊びのお誘いみたいですよ」

「えっ美空が?なんだろう」

 

シモンは少し首を傾げながら美空のもとへ向かった。

 

「海?」

「そっ海!実はさ~ウチのクラスのみんなで委員長の別荘に遊びに行くことになったんだけどさ~、兄貴も誘ってって言われてさ~」

「誰に?」

「桜咲さんと木乃香に」

「刹那と木乃香?別に俺はかまわないけどなんで?」

「う~んなんかネギ君とアスナが険悪なムードらしくてさ~、それに普段あんまり会えなくてネギ君達も兄貴と会いたがっているみたいでね」

 

確かに普段はバイトに行ったりしているため会う機会が修学旅行以来あまりない。

それに向こうの世界でも海にはこれまであまり行っていなかったため、断る理由はなかった。

 

「海か~、久しぶりだな~、よしっ俺も行く!シャークティとココネは?」

「私は行きませんよ。人前で肌を出すのは嫌ですから、ココネを連れて3人で行ってください」

「なんだよシャークティも来ればいいのに」

「私はこれで忙しいんです。ですから私にかまわず楽しんできてください」

 

シャークティは笑顔で答える。

シモンもそれ以上は何も言わず準備をするため一旦部屋へ戻った。

二人きりになったのを見計らって美空はシャークティに話しかけた。

 

「なんかシスターシャークティやわらくなったっすね~」

「やわらかく・・・・ですか?」

「そっ、以前まではクールで厳しさ全開だったのに、なんか母性に目覚めてるっつうか・・・・・・シモンさん効果かな?」

 

美空は意地悪めいた顔で言う。以前までならシャークティは真っ赤になって説教タイムが始まったかもしれない。

しかし今は違うシャークティは取り乱した様子もなく静かに肯定した。

 

「それは・・・・・今さらですよ美空」

「あれ~、もっとムキになって否定すると思ってたんすけどね~」

 

美空が少し意外なシャークティの反応に首をかしげた。

 

「家族・・・・・彼は私たちをそう言ったんですよね・・・・・」

「えっ・・あっ・・・・はい」

「素敵じゃないですか、血の繋がりどころか世界も違う人に家族として認められた・・・そして教え子の貴方たちがいつのまにか私の家族です」

 

その言葉に美空は驚いた。本当にシャークティは変わったからだ。

 

「彼のニアさんへの想いを知ったときは胸が締め付けられました・・・・・しかし・・それはもういいんです・・・・・私は今の形が一番なんだと思います」

 

シャークティは優しい笑顔を美空に向けた。

シャークティはもう自分の答えを出したのだろう。

ホレたハレたの甘い関係ではなく家族という強い絆。

朝起きて一緒に食事をして、いってらっしゃいを言う。夜にはお帰りなさいを言ってそれの繰り返し。

シャークティはそれを選んだ。

 

「それに彼はいずれ元の世界に帰ります・・・・もしまた帰ってこれれば幸いですが・・・・そうでなかった時・・・」

「あっ・・・・そっか・・・・・・・」

 

シモンはこの世界にもっと居たいと言ったが、必ずいつかは帰る。

なぜなら元の世界には死しても強く想う女や戦友、そしてシモンの仲間も彼の帰りを待っている。

ならば、辛い恋よりも、たしかな強い絆で共に時間を過ごしていく。シャークティはそれを選んだのだ。

 

「ん~・・・・やっぱシスターシャークティも兄貴も大人なんすね~・・・」

 

もし自分がシモンに惚れていた場合は簡単に割り切れないだろうと美空は思った。

もっともシャークティが割り切れた理由はシモンのニアへの強い思いを知ったのが大きい。

 

「さあ美空、細かいことは考えないで行ってきなさい!今はあなたのお兄さんとの思い出を作ってきなさい」

 

シャークティはそう言って美空の背中を軽く叩いて送り出した。

シモンとココネも準備が出来たらしく、扉の前で美空を待っている。

美空はシャークティに見送られシモンたちのもとへ向かう。

その際に一度振り返り、少しイタズラめいた顔をしてシャークティに言った。

 

「じゃあ行って来ます!ね・え・さ・ん!」

「・・・・・・・・っ美空!!!!」

 

シャークティが一瞬あっけにとられて反応が遅れたため、彼女が怒った瞬間美空は既にその場から消えていた。

シャークティはやれやれといった感じで少しため息をついたが、その顔は少し笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

青い海が一面に広がる南国の島、

 

 

「「「「「海だー!」」」」」

 

「くっ・・・・せっかくのネギ先生と二人っきりの計画が・・・・・・なぜこんなことに・・・・」

「いやー中学生にこんなステキな御招待ありがとーいいんちょ!」

「むきーー!」

 

勢いよく駆け出して海に飛び込む水着姿の生徒たち。

ここは彼女たちのための貸切のため他に人はいない。

そのため彼女たちは自由に広々とした海岸を満喫する。

 

「まったくなんで私までこんなとこ来なくちゃいけないのよ」

「まあまあ、ちょうど新聞配達もお休みやったしええやん」

 

ハメをはずしてリゾートを満喫する生徒たちの中少し不機嫌そうにアスナも現れた。

アスナの存在に気づいたネギはあわてて駆け寄ろうとするが

 

「あっ・・・アスナさん」

「・・・・ふんっ!」

「あっちょっと待ってくださいよーアスナさん!」

 

ネギを無視して遠ざけようとするアスナ。今二人はケンカ中のようだ。

ネギは涙目になりアスナに近づこうとするが、アスナはまったく関わろうとせずその場から走った。

ネギも涙目のままアスナの名前を叫び追いかけるが、アスナはそれを無視して逃げる。

この様子にクラスメートたちも呆れ顔で見ている。

 

「ちょっ、ネギ先生とアスナさんに何があったんですの?」

「ん~今二人とも大ゲンカしてもうてな~理由はわからんけどアスナが一方的に怒っててな~」

「海で楽しく遊べば仲直りすると思ったんですけど・・・・」

「まったくあのガキどもは、どうせくだらないことが原因だろ」

「いえマスター・・今回は少し深刻かもしれませんよ・・・・」

 

ネギとアスナの様子にクラスメートたちは只事ではないと思い、最初は海に来て浮かれていたがそれどころではないような気がしてきて、少し不安げに二人を見ていた。

 

「まってくださいよ~~」

「うるさいわねっ!ついてこないでよ!・・・・・「ドカッ!」・・・っあたっ!?・・」

 

ネギの言葉を無視しアスナは本気で逃げる。

しかし後ろを振り返りながら逃げていたアスナは、前方不注意で前にいる誰かとぶつかった。

顔をその人物の胸に思いっきりぶつけたアスナは顔を抑えながらその人物の顔を見上げた。

 

 

「いった~~~、あっ・・・・ごめん・・・・って!?」

 

「あっ!?」

 

「「「「「あーー!?」」」」」

 

 

ぶつかったアスナだけでなくネギも、そして他の生徒たちも驚きの顔をする。

その中で木乃香と刹那はその人物が今日ここに来ることを知っていたため、ニッコリお互いの顔を見て笑った。

 

「上を向いて歩けアスナ!・・・なんてな」

 

水着姿でブータを肩に乗せ立つシモン。その後ろには美空とココネがいた。

シモンの登場にクラス中が驚いた。

 

 

「「「「「シモンさん!?」」」」」

 

「ちょっなんでシモンさんここにいるのよ!?」

「美空が木乃香と刹那に誘われたらしくて俺も来たんだ」

 

その言葉を聞いてアスナは刹那と木乃香に振り返る。

 

 

「刹那さん!木乃香!なんで黙ってたのよ!!」

「そのほうが驚く思ってなー、でもシモンさん・・・来てくれてホンマうれしいよ!」

「・・・・・よかったですね、お嬢様」

 

シモンを誘うよう美空に頼んだものの本当に来るかどうかわからなかった。

そのためシモンの出現に木乃香は本当にうれしそうな顔をした。

刹那も本当はうれしいのだが、顔を赤らめ喜ぶ木乃香を見ると、その笑顔の真意に気づき少し複雑な表情をした。

そして、

 

「シモーン!!キサマ私になぜ黙っていたーー!!来るなら来ると先に言えーー!!」

「いやあ急に誘われたもんだからさ・・・・でもみんな、また会ったな!」

 

エヴァもシモンが来ることをまったく予想していなかったために大声を上げた。

それに手を振り上げて全員に挨拶するシモン。よくよく考えればネギたち以外はシモンとは修学旅行以来の再会である。

あまり時間が経っていないうえに、シモンはとても印象的な男だったため全員シモンのことを覚えていた。

しかし何故そのシモンが今ここに来ているのか、さらになぜ美空と一緒なのか分からなかった。

 

「ちょっとちょっとーなんでシモンさんいるのー?しかも美空と一緒に?」

「そうそう!シモンさん修学旅行の時だけのバイトだったでしょ~、まさかあれからシモンさんと美空って連絡取り合ってたの?」

「えー!?じゃあシモンさんと美空ちゃんってまさか付き合ってるの!?」

 

シモンの登場にチアリーディング部の三人釘宮円、柿崎美砂、椎名桜子が興味心身とばかり駆け寄る。

その様子を見て他の生徒たちも一斉にシモンへ駆け寄る。

ネギしか男がいなかった中に、年上の若者が現れたことに生徒たちは黄色い歓声を上げシモンを取り囲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

時刻はもう夕方。

あれから生徒たちからの質問責めだったり、一緒に泳いだりビーチバレーをしたり、そして砂を使ってココネのために細かいところまで再現したグレンラガンの像を作ったりした。

ココネはシモンの言うグレンラガンをようやく知ることが出来て大変満足そうな顔をしていた。

時間が経つにつれて今まで騒がしく遊んでいた生徒たちもいくつかのグループに分かれ、今ではイスに座ってジュースを飲んだりしてまったりしていた。

その中でネギたちのグループを発見し、シモンはそこへ歩み寄った。

 

「よう、こうして話すのも久しぶりかもな」

「あっシモンさ~ん」

 

シモンが来たことにネギはうれしそうな顔をする。木乃香たちもそうだ。

昼間は他の生徒やココネと一緒にシモンは居たため、あまりゆっくり話を出来ずにいたからだ。

 

「ふん、年下のガキに囲まれて鼻の下を伸ばしおって」

「そんなことないさ。今、年下だったり、年上でも小さい女の子が目の前に居るけど、俺の鼻の下は伸びてないだろ?」

「シモーン!キサマそれは私に対する皮肉か~!私だって魔力を使えばな~!」

「もうシモンさん、女の子の前でそんなこと言ったらアカンよ~、年下やからって・・・伸ばしたってええんやよ?」

 

からかいの楽しみのないシモンのオープンな性格にエヴァは舌打ちをした。

 

「ったくシモンさんは~、あいかわらず思ったことはすぐ口にしちゃうのね~」

 

そう言うのは呆れ顔のアスナ。

今ここにはネギ、カモ、エヴァ、刹那、木乃香、朝倉、不機嫌な顔をしたアスナ、そして夕映とのどかがいた。

そしてシモンはアスナを見て言う。

 

「アスナは、思ったことを口に出来ずにケンカ中らしいな」

「うっ」

 

シモンの言葉にアスナが詰まる。どうやらネギとアスナは本当にケンカ中のようだ。

 

「でもシモンさん、今回はこのガキが悪いのよ!こいつがヒドイことを言うから!」

「そんな~僕はアスナさんを思って・・・・・」

「じゃあどんなこと言ったんだ?」

「それは・・・・・・・アスナさんは元々魔法とは無関係の方だからこれ以上迷惑かけないようにと思って・・・・」

「ッ、だから関係ないって今更何いってるのよこのネギ坊主!!この私が時間のない中なのに刹那さんに剣道習ったりしてんのは何のためだと思ってんのよー!!」

「ぼぼぼ・・僕そんなこと頼んでませんよ~、それにここから先は本当に危なくなるかもしれないのでアスナさんは・・・・」

 

ギャーギャー喚き合うアスナとネギ。

どうやらこれから魔法の道を進むに当たって危険が多くなるためにネギはアスナを遠ざけようとしていたようだ。

しかしアスナはそれに真っ向から反論する。

再発した二人の言い合いに、木乃香たちは心配そうに眺めることしか出来なかった。

こんな時はこの男に頼るしかない。

そんな顔をして全員シモンを見た。

するとシモンは腕を組みながら言い合いする二人の間に入った。

 

「二人の言いたいことはよく分かったよ、つまり二人とも悪い!」

 

「「えっ!?」」

 

「「「「?」」」」

 

 

シモンの言葉に全員が首をかしげる。そしていち早くアスナがこれに噛み付いた。

 

「何言ってるのよ、シモンさん!?私は何も悪くないわよ!謝んないからね!」

「アスナ・・・ケンカっていうのは互いの本音の意地と意地とのぶつかり合いなんだ。本当に言いたい気持ちを口にしないと相手も分からないさ。意地は張らずに、意地はぶつけろ!」

 

そして今度はネギに振り返った。

 

「ネギも関係ないなんて関係ないじゃないか。男が小さいことにこだわるな!」

「小さいことって・・・だってもしまた敵に襲われたら・・・・またアスナさん達を危ない目にあわせたたら・・・・・・」

「だったらその時はお前が守ればいいじゃないか!」

 

俯くネギにシモンは言う。そしてシモンはいつものように指を天に向かって指した。

 

 

「魔法はお前の魂だ!その魂は誰も守れないほど安っぽいものじゃないはずだろ!お前は自分を誰だと思っている!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

そしていつものように笑うシモン。

全員改めて理解した。これがシモンなんだと。

アスナも先ほどまでの怒りも収まり、久しぶりに聞いたシモンの言葉に少し笑ってしまった。

そしてアスナはもう一度ネギを見た。その顔は怒りに満ちた顔ではなく、決意をした顔だった。

 

「ネギ・・・・私は・・・アンタが心配なのよ、私の見ていないところで大怪我して死んじゃうんじゃないかって・・・・」

「アスナさん・・・・」

 

アスナの言葉に全員が耳を傾ける。

 

「私が言いたかったのは・・・・・・アンタが私を守ってくれるなら、私にもアンタを守らせてよ。あんたのパートナーとしてさっ!」

 

アスナはそう言って久しぶりに笑った。

 

「・・・危険かもしれないですよ・・・・・本当にいいんですか?「ピン!」っあたっ!?」

 

不安そうにアスナに聞き返すネギにアスナはデコピンをした。

 

 

「いいに決まってんでしょっ!私を誰だと思ってんの!!・・・・・・・・・・・あっ!?」

 

「「「「「・・・・・・・・ぷっ・・・」」」」」」

 

 

自信満々に答えたアスナだが、急に自分の言葉を思い返し、顔を真っ赤にした。

今までずっと黙っていた木乃香たちも、アスナの発言に大爆笑した。

 

「「「「「アハハハハハ!」」」」」

 

「もうアスナったら~ネギ君だけやなくて、アスナもシモンさんに影響されてるや~ん」

 

「ククク、まったく単純すぎて笑えてくる」

 

「ふふふ、エヴァンジェリンさんも以前使ってましたよ?シモンさんの口癖」

 

「何!?・・・・そんなはずはない!」

 

「そんなことあらへんよ~、エヴァンジェリンさんも言っとったよ、ええな~ウチも使ってみたいわ~」

 

 

皆が笑う中、アスナは顔を真っ赤にして地面に手を突いて恥ずかしがっていた。

 

「あ~も~なんでよ~?なんでまた言っちゃったのよ~?」

 

自分の言った言葉に恥ずかしがって顔を隠すアスナ。

これにはシモンも口元を隠しながら笑った。

 

 

 

「ネギ先生、私たちも・・・・魔法使いになれないものでしょうか?」

 

ようやくアスナとネギのケンカも収まりめでたしめでたしと思ったら、今度は夕映とのどかが身を乗り出してネギに聞いてきた。

 

「ええーーーー!?そんなー!?危ないんですよー!」

「しかしアスナさんは了承して私たちは無理だと言うのはずるいです。覚悟は出来ています!危険は承知で私たちはファンタジーな世界に足を踏み入れたいのです!」

 

力強い言葉で言う夕映。そしてのどか。

彼女たちは一歩も引く気はないようだ。しかしその言葉にエヴァは鼻で笑った。

 

「ふん覚悟だと?随分軽々しく言うなあ、おまえは修学旅行の時を忘れたのか?」

「っ・・・・いいえ・・・覚えてます」

「あの時はたまたま運が良かっただけだ。本当に誰かが死んでもおかしくなかった。だがあれが我々の世界の日常だ」

 

その言葉に夕映は押し黙る。

 

「今度こそぼーやが死ぬかもしれん、神楽坂アスナかもしれん。いや、お前たちかも知れんぞ?大して知りもしないで覚悟などとほざかぬ事だな!」

 

エヴァは少し強く言う。アスナはともかくとして完全に素人の彼女たちを巻き込まないようにするにはこれが一番なのかもしれない。

ネギや刹那もエヴァの言葉は正しいと思った。

しかし

 

「危険を知ってて飛び込むんだ。だったらそれでいいじゃないか!俺は二人がそうしたいんなら、いいと思うよ」

 

「は?」

 

「えっ?」

 

「・・・・・・シモーン!キサマ何を簡単に言っているー!」

 

 

あっさり夕映たちの味方になるシモン。

これにはエヴァどころか他の者たちも呆気に取られた。

 

「シモンさん・・・こればかりは私もエヴァンジェリンさんに賛成です。アスナさんやお嬢様はある意味仕方ないかもしれません。ですが彼女たちは違います」

 

「刹那の言う通りだ、シモンよ。面白半分でこの世界に突っ込み、危険がないとでも?」

 

 

エヴァと刹那は冷静にシモンの言葉に反論する。

しかしシモンも退かない。

 

「それでも衝動を抑えきれないのが人の本能だ。もし俺なら自分の命を殺すより、心を殺すほうがよっぽど苦しいと思うよ。俺は無茶で無謀と言われても、自分の道は自分で決めて進んできたんだ!」

 

そしてシモンはネギを見た。

 

「ネギ、先生って生徒の未来を勝手に決めたりするんじゃなくて、生徒が選んだ未来の手助けをする人なんじゃないか?それが綾瀬たちの本気の覚悟なら尚更だ!」

 

そして夕映とのどかの二人の元へ行き、シモンは二人の間に入って二人の肩に手を回した。

 

 

「俺は本気な奴らの味方だ!!度胸のある奴らに男も女も魔法使いも関係ない!」

 

かつてシモンは天へと目指す螺旋族の本能に身を任せ、地下から地上へと行き、そして宇宙まで飛び出した。

しかしその本能はとても危険で、その本能が宇宙を滅ぼす原因になると言われた。

それを恐れた反螺旋族は己の本能を封印し、他の生命を支配した。

しかしそれは大グレン団が打ち破った。

因果に支配された宇宙で自由を掴み取った。

 

この世界は自分のいた世界とは違う。

しかし銀河の果てまで行き自由を勝ち取ったシモンは、目の前で本気の覚悟を潰させるような真似はさせたくなかった。

自分で決めた道を自分の意思で歩かせる。

そうでなくてはグレン団がなんのためにアンチスパイラルと戦ったのか分からなくなってしまう。

 

シモンの言葉が全員に響く。

 

彼らは最初シモンの発言がとても無責任だと思った。

シモンは時折重要なことも簡単に片付けるような一面もあったからだ。

しかし最後までシモンと向き合うと、そうでないことがすぐに分かる。

その言葉と瞳には強い意志が宿っていたからだ。

 

 

(・・・今気づいた・・・・・この人は我々とは何か根本的な部分が違う・・・私やエヴァンジェリンさんのように人外などそういうものではなく・・・・なんでしょうこの感じ・・・)

 

(そうか・・・これがシモンか・・・・この世界とは違う世界で生きてきた男か・・・・)

 

 

刹那とエヴァンジェリンはシモンの奥底にある自分たちとの違いに気づいた。

だからこれほどまでに自分たちはシモンに惹かれたのかもしれないと。

 

(僕もエヴァンジェリンさんも多分間違ったことは言っていない・・・・・・でも・・・・なぜシモンさんの言葉はこんなに重たいんだろう・・・・)

 

シモンはただの熱い兄ちゃんではない。そのことが全員に認識された。

 

 


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