魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
日は沈み、生徒たちは委員長のホテルに泊まり一夜を過ごすことになった。
あれから結局他の生徒たちがネギたちの話に混ざろうとしてきて、魔法の話はいったん打ち切りになった。
シモンもそれに従い、夕映たちのことをそれ以上その場では言おうとはしなかった。
リゾート地での一夜。
しかしシモンはどうも眠りにつけず、夜の浜辺を少し散歩することに決めた。
「まあ、ネギの気持ちも分からなくないんだけどな~」
誰もいない海岸で一人呟くシモン、
自分もかつてニアを大切にした。
しかし大切にすることは危険から遠ざけるという意味ではない。
いつも自分のとなりで寄り添い共に戦う。そんな関係だった。
グレン団にはニアを始め多くの女性もいた。
しかし危険だからといって誰もが女性を戦線から遠ざけようとはしなかった。
それは、彼女たち自身も望んでいたことだったからだ。
(・・・強い女ばかりだったなあ・・・・・・・グレン団は・・・・)
女性を守るのは男の役目。そう考えるネギも分からなくなかったが、いつも男だろうが女だろうが共に肩を並べて戦っていたシモンはネギと考えが違っていた。
シモンはゆっくり浜辺に腰を下ろし、空を見上げた。
そこには多くの星が光り輝いていた。
いくつもの星々を見上げ、ひょっとしたらあの中に自分のいた世界もあるかもしれないとシモンは思っていた。
すると後ろから気配がした。
「綺麗やね・・・星・・・」
「?」
急に話しかけられた。
シモンは声のほうに振り向くとそこには木乃香がいた。
「木乃香。どうしたんだ?」
「外にシモンさんがおんのがわかってな~・・隣座ってええ?」
木乃香はそう言ってシモンの隣に座った。
「初めてやね・・・・シモンさんとこうして二人で話するん・・・・」
「ん~・・そういえばそうだったな~」
二人は並んで座っている。
そこは波の音しか聞こえず、あたりには彼らしかいない・・・・・・っと、彼らは思っていたが違った。
シモンと木乃香を離れたところから見ている者たちがいた。
「くっ・・・一歩遅かったか~・・木乃香め・・・振られた分際で抜け駆けしおって~」
「そ・・・それを言うならエヴァンジェリンさんもそうではないですか・・・」
「エヴァちゃんも刹那さんも静かに。二人ともなんか話してるよ」
「一体何を話しているんでしょう」
なんとエヴァ、刹那、ネギ、アスナ、がいた。
彼女たちもシモンの動きを察して外で偶然鉢合わせした。
本当は二人きりでシモンと久しぶりに話したかったエヴァは顔を悔しそうに顰める。
「シモンさん。ウチな、魔法の勉強しよう思っとるんよ」
木乃香が語り始めた。
「ネギ君が、アスナが、そしてのどかや夕映もそうや。さっきシモンさんが言っとったように自分の本気をもっとるんよ」
「ああ、そうだな」
「でもなあ、ウチは何もあらへん。ついこの間までがんばろう思っとったことも、すぐにあきらめてもうた」
「すぐにあきらめた?何をあきらめたんだ、木乃香は?」
シモンの言葉に木乃香はゆっくり呼吸を整えシモンに告げる。
「シモンさんはニアさんゆう人がおる、せやからシモンさんはウチのことを絶対好きになってくれへん・・・・・・・」
「ッ・・・・そうか・・・・・そうだったんだ・・・・ごめんよ・・・木乃香」
シモンはこの時ようやく気づいた。
以前ニアのことを教会まで聞きに来た彼女はとても切なそうな顔をしていた。
その理由がシモンにはようやくわかった。
「シモンさんはホンマに不思議な人や。世の中には熱血な人はいっぱいおるけど、そうゆんとはなんか違う。熱血な人ってスポーツ選手とかそうゆん人やと思っとたんやけど、・・・シモンさんはその生き方がとても熱くそして輝やいとるんや」
木乃香の言葉に少しシモンも照れて頭をかく。そして、
「そして・・・その言葉は絶対に人を裏切らん・・・せやからウチもシモンさんのこと・・・・好きになったと思うんよ」
「・・・・・・そうなんだ・・・・」
顔を真っ赤にしながら木乃香はようやく自分の想いをシモンへ告げた。
その言葉にシモンは少し悲しそうな顔を木乃香に向ける。
アスナたちも切なそうに木乃香を見る。
「こ・・こ・・木乃香め~、私の目の前でシモンに告白するとはいい度胸だな~」
「・・木乃香・・でもさ・・・・もうシモンさんの答えは出てるじゃない・・・・」
「・・このちゃん・・・・シモンさん・・・・」
そうシモンの答えはもう出ている。
それはこの場にいる全員が知っていた。
「ウチはあきらめることにしてたんよ・・・・何も伝えられんかったけど、しょうがない思うて・・・・でもこの間ネギ君が無理を通して困難に立ち向ったん見て思ったんよ・・・・ウチも負けてられんて!」
木乃香は顔を上げ真っ赤になりながらも真剣な顔でシモンを見る。
「せやからウチも、自分の力と向き合って魔法の勉強しよう思ったんよ、そして・・・一度がんばるって決めたことも投げ出さんと立ち向かったろうって」
「木乃香・・・・」
「ニアさんゆう人をシモンさんが忘れられんのはようわかった・・・・せやけどウチもこの想いを忘れられへん!」
シモンは木乃香の言葉を黙って聞いた。
そして茂みの中のアスナたちも食い入るようにこの光景を見ていた。
「もっとシモンさんを知りたい!アスナやネギ君・・・いんやそれ以上の絆で結ばれたい!」
木乃香の言葉が夜の海に響く。
「魔法もがんばる・・・・そしてシモンさんへの想いもあきらめたない!歳の差とかそんなん関係あらへん!いつも一緒にいて、シモンさんが喜ぶことにウチも喜んだり、シモンさんが悲しい時は一緒に泣いたり、そしていつだって信頼し合える一心同体の関係や!」
そして自分の口からちゃんと伝える。
「ウチ・・・シモンさんのことが本気で好きや・・せ・・・せやから・・・・ウチのパートナーになってください!」
「「「「(言ったーーー!!)」」」」
近衛木乃香生まれて15年。初めての告白である。
木乃香の言葉に茂みに隠れておるアスナたちは口を半開きにして呆然としていた。
一方シモンは、木乃香を見て微笑んだ。
自身も生まれて初めて受ける告白だった。
しかし真剣な木乃香の意思は充分伝わっていた。
「木乃香・・・・」
「ゥ~は・・・はいい」
名前を呼ばれ、肩を震わせる木乃香。恐る恐るシモンを見上げた。そして、
「やだっ!」
――――ズガシャーーン!!!!
「ん?おまえたち、起きていたのか」
木乃香、そして茂みの中に隠れていたアスナたちもシモンの言葉にズッコけた。
そしてアスナたちは勢い余ってシモンたちの前に飛び出してしまった。
アスナたちの登場にシモンは驚く。
そして木乃香もシモンの言葉やアスナの出現にもはや思考が飛んでいた。
振られる可能性が高いとは思っていたがまさか「やだっ!」なんて言われるとはまったくの予想外だったからである。
無論それはアスナたちも同じ。
アスナたちは倒れた体を起こし、ズカズカとシモンへ詰め寄った。
「ちょっとシモンさん!それはいくらなんでもあんまりでしょーーーー!!!!」
「そ・・そうです・・・・シモンさんの想いは知っています・・・ですがお嬢様が勇気を振り絞ってようやく言った言葉ですよ!」
ものすごい剣幕で詰め寄るアスナと刹那、ネギとエヴァもそれに続く
「シモンよ・・・振るのは別にかまわんが・・その・・なんだ・・・・もっと言い方というものがだなあ・・・」
「そうですよ、シモンさん。いくらなんでもその言い方は・・・・・・」
するとシモンは明るい顔で
「だって俺と木乃香は別々の人間じゃないか」
「「「「は?」」」」
全員が意味も分からず首を傾げた。
「二人が一心同体にはなれないんじゃないかって・・・・・」
「「「「・・・・・・は?」」」」
もはやシモンが何を言いたいのかさっぱりな彼らは首を傾げるしかなかった。
するとシモンは急に笑顔はそのままだが真剣な目をした。
「そう言って昔プロポーズを断られたことがあるんだ・・・・・ニアに」
「「「「えっ?」」」」
「俺も木乃香と同じようなことを言った。同じ物を見て、同じ音を聞いて、同じように笑う。そういう暮らしをニアとしたいってさ。でもあのお嬢さんはどう勘違いしたのか二人は同じ人間にはれなれないからって、俺の一世一代のプロポーズをやだって言ったんだ。まあ結局色々あってその後プロポーズを受けてもらえたけどな」
アスナたちはシモンの言うニアという女についてがんばって想像しようとしていた。
てっきり以前話していたシモンの初恋のヨーコと似た人なのかと彼女たちは思っていたため、相当これには驚いた。
しかし、シモンが話したかったのはそのことではない。
「二人が同じ人間にはなれないんじゃないか・・・・・ニアはそう言っていたけど、俺は違うと思う。だってニアは俺の胸の中に一つとなって生き続けているから」
シモンは自分の胸を叩きそう言った。
カミナを始め、グレン団の仲間たち、そして二アの魂を己の背中と胸に一つにして今のシモンがあるのだ。
「二アとニアへの想いは俺には欠かすことの出来ない一部なんだ。それがあって俺はシモンになる・・・・・・木乃香!ニアっていうのは俺にとってそういう女なんだ」
シモンはそう言っていつものようにニッと笑った。
揺ぎ無いシモンの言葉。これにアスナとネギは何も反論できなかった。
エヴァも刹那もそうだ。彼女たちもシモンに惹かれていた。今回はたまたま木乃香が自分たちより先にシモンに想いを伝えただけだと思っていたがそれだけではない。
シモンの木乃香へ対する答えは自分たちにも同じになる。
それほどまでにシモンのニアへの想いの強さを感じたのだ。
エヴァは思った。それを感じたからこそシャークティはシモンの家族であることを選んだのではないかと。
改めて知るシモンとニアの絆の強さ。シモンは明るい声で言っているがアスナたちはシモンの痛々しいまでの想いに悲しい顔をしていた。
しかし、木乃香は違った。
「まあ、せやろな。シモンさんが好きになる人はやっぱそれくらいやないとあかんなー」
今ハッキリとシモンに振られたばかりの木乃香は、なぜかとても笑顔でシモンを見ていた。
その意外な反応にシモンを含めアスナたちも驚いた。
「木乃香・・・?」
「7年も一緒におったんやろ?そらー今のウチじゃあ相手にならんわー」
木乃香もシモンと同じように明るい笑顔で話す。しかし突如その顔は真剣になった。
「今は敵わん・・・けど7年もあったらウチも負けへん!」
「えっ?・・・・」
その言葉に全員ハッとする。そして木乃香は続ける。
「ウチも本気になる・・・魔法もシモンさんのこともや・・・・勉強いっぱいして・・これからシモンさんのこともよう知っていく・・」
そして木乃香はパッと明るい笑顔になり、
「7年後・・・・もう一度シモンさんにプロポーズするっ!せやからその時まで待っとってな~」
シモンを真似て木乃香もニッと笑う。
そして木乃香の本気を目の当たりにしたこの場にいた全員は、開いた口が塞がらなかった。
しかし一早く意識を取り戻したシモンは今の木乃香の言葉に少し考えた。
(本気になる・・・・か・・・・そうか・・・この子も強い子なんだな・・・・・)
そしてシモンはいつものようにニッと笑い返した。
「そうか、木乃香・・お前の想いは伝わった!!だが言っておくが覚悟しろよ!ハンパじゃねえぞ、俺のニアへの思いは!」
木乃香はその言葉を聞いてうれしそうに笑った。
「ふふ、そんなんよーわかっとるわ、シモンさん!」
そう言ってお互いが笑い出した。
木乃香の挑戦と宣戦布告にシモンは快く受け入れた。
いつもポーっとしているような天然な少女のイメージが強い木乃香とは思えないほど、今の木乃香は強い眼差しをしていた。
それを見てアスナもネギも笑うしかなかった。
そしてエヴァは少しつまらなそうに、そして刹那は強くなった親友を感心すると同時に少し胸が締め付けられる思いがした。
木乃香も本気になった。
この日はアスナ、それに夕映ものどかも自分の本気を打ち明けていた。
ネギもつい先日に自分の本気で進む道を決めた。
彼らは全員自分の意志で決めた。
しかしその原因にはシモンが関わっていた。
エヴァも刹那もそうだ。シモンへの想いは別にして、シモンがいたからこそ自分の過去やコンプレックスを乗り越えることが出来た。
彼らの中でシモンはとても大きな存在となっていた。
かつてのグレン団のカミナのように。