魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
爽やかな朝。今日も心地よい陽の光が教会を包み込む。
しかし、今日はいつもと違う。
教会の中から何やら禍々しい黒い影が溢れ出している。
普段はとてもオープンなはずの教会の扉は今日に限って固く閉じられている。そして扉には張り紙が一枚張ってある。
『緊急家族会議中!迷える子羊立ち入り禁止!』
と張り紙には書かれてあった。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・ブルブルブルブル・・・」
教会の中には礼拝堂の十字架を背に立ち、微笑を浮かべるシャークティがいた。
教会のステンドグラスから侵入する陽の光が差し込み、彼女の姿をとても神々しく演出していた。
しかし彼女の顔は微笑みだけでなく怒りの血管がこめかみに浮かび上がっていた。
シャークティ以外にこの場にいるのは、恐怖で体を震わせる美空とココネ。
そしてシャークティの前で正座しているシモン。
そしてなぜかこの家族会議の中に学園長の姿があった。
重い空気が張り詰める中ようやくシャークティが口を開いた。
「シモンさん?・・・・懺悔は済みましたか?」
ニッコリと笑うシャークティ。
しかしその笑みとは裏腹に彼女は激怒していた。
それが分かるほどシャークティから流れる黒いオーラは凄まじかった。
シャークティの言葉に少し戸惑いがちに正座したままシモンは答える。
「俺はいつだって後悔しない!男が一度口にしたならば・・・・曲げ・・・ねえ・・・・折ら・・・・・」
シモンはいつもの熱い言葉が回らない。
それほどシャークティの迫力は凄まじかった。
そんなシモンにシャークティは言葉を告げる。
「ふふふ、そうですか・・・22歳のあなたが15歳の少女からのプロポーズを受けるのですね?」
「い・・いや待ってくれ・・俺は一度も受けるなんて言ってないぞ!」
シモンの言葉を聞きシャークティは木乃香の祖父でもある学園長を見た。
すると、
「木乃香がのう・・・今朝ワシのところに来てシモン君と結婚するんで、もう見合いはせんと・・・・・・」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
―――ブチッ!
誰かの血管が切れる音がした。
「ふ・・ふふふ・・・あ・あ・あなたはニ・・ニアさんを生涯愛するのでは?」
肩を震わせながら、後一歩を我慢してシャークティはシモンに聞く、
「だ、だから俺は『やだっ』て言ったんだよ、木乃香には・・・・ただ・・・まあ、・・色々とあって・・・」
―――ブッチン!!
「シモンさーーーーーーーん!!!!○▲□×△ーーー!!!(聞き取り不可能)」
今度こそ完全に切れた。シャークティの久々の怒号が教会に響き渡る。
「まさかあれだけ強い想いを人に見せたにもかかわらず、たった一夜の逢瀬で変わってしまうとは、ふふふふふシモンさんどう責任を取るおつもりですか?」
「責任って・・・別に俺は木乃香の告白をOKしたわけじゃない!なんていうか・・・あ~も~うまく説明できない~」
昨夜のやり取りを見ていたならまだしも、口で説明するのは難しい。
どうやら昨日海から帰ってきた木乃香は、さっそく祖父である学園長に今後のことを打ち明けたそうだ。
普段は鈍そうに見える彼女も本気を出したとたん急に動きが機敏になったようだ。
学園長へ報告の際にシモンとのことも話し、自分は今後誰とも見合いをしないと告げたようだ。
「ふふふふ、あ・な・たは・・・私の整理した気持ちをなんだと思っているんですかーー!!!!」
「えっ・・え~、何のことを言ってるんだよ?」
シモンは生涯ニアを愛する。
それを感じ取ったからこそシャークティもシモンへの想いを整理して家族であることを選んだ。
そしてそれは海にいく日の朝に美空との爽やかなやり取りで明るみになったこと、
しかしそんなシャークティの決意を裏切るように15の娘がシモンにプロポーズをして、シモンがそれを受け入れたというような話を聞いて、自分の決意はなんだったんだと怒り狂っていた。
学園長も詠春の報告からシモンを信用していたが、亡くなった妻を今でも想っていることを聞き、この話題はお流れになったと思っていたため、シモンの真意を確かめにワザワザ教会まで出向いたのだ。
「う~む、では君にはその気がまったくないということかの~」
「まあ・・・そうなります・・・ただこれは・・・そう勝負なんです!」
「「勝負?」」
シャークティと学園長が同時に聞き返す。
「7年たっても俺が二アしか考えられなかったら俺とニアの勝ち。木乃香を好きになれば木乃香の勝ち、そういう勝負なんだ!」
シモンの言葉は少し分かりづらかったが、学園長たちには四つ分かったことがある。
「フム、君の話を言い換えると、まず今の時点では木乃香の一方的な片思い、そして君には受けるつもりはない、そして木乃香はあきらめず今後も君を好きで振り向かせようとする・・・ということになるのう」
「・・・・まあ・・はい・・」
「そしてもう一つ・・・・君がこの世界の人間でないことを木乃香は知らないということじゃな」
「「「「!?」」」」
学園長の指摘にはシモン自身もハッとした。シモンは忘れていたのだ。
シャークティ、美空、ココネには毎日自分がいた世界の話をしているが、よくよく考えればネギたちにはその話をまったくしていなかった。
シモンが異世界の住人であることだけを知っているのはシャークティたちを抜いて、学園長、高畑、エヴァ、茶々丸の4名。
しかも彼らが知っているのはそれだけで、グレン団のこともグレンラガンのことも何も話していない。
そうでなければ木乃香が7年後の話をするわけがない。
「ワシとしては・・・詠春も君のことを認めていたようじゃ。もしこの世界にずっといてくれるのであれば何も言わん、・・・しかし君がいつか帰ってしまうかもしれないことを木乃香は知らんのじゃろう?」
「そうだった・・・・・俺はいつか帰るんだ・・・そうなると勝負は俺の勝ち逃げになるかもな」
その瞬間シモンの腰元にココネが抱きついてきた。
「~~~ッ、ギュっ」
「……ココネ?」
「ん~~、ブンブンブンブン!」
そして何も言わずにただ首を横に振っていた。
シモンはココネの頭を申し訳なさそうな表情で撫でる。
しかしシモンもこれは譲れなかった。
「ごめんなココネ。でも俺が宇宙一愛してる女が次元を超えた世界で眠っている、あいつから来ることは出来ないから俺のほうから行ってやらないとダメなんだ」
「うう~~、やっ……ブンブンブンブン!」
シモンの言葉に再びココネは首を横に振りシモンの腰に顔を埋める。
そしてシャークティも美空もこの光景を少し切なそうに見ていた。
シャークティはシモンがいつか帰ることを知っていた。だからシモンへの想いを割り切ろうとした。
しかしシモンの帰還の話が出るとやはりまだ割り切れていない部分があった。
学園長もこれには悩んだ。
なぜなら木乃香のシモンへの想いは本気だからだ。
そしてネギたちもそうだった。シモンと出会い確実に皆成長した。ネギもアスナも木乃香も刹那も、そしてエヴァンジェリンも前へ進もうとしている。
シモンには混乱を招くため不用意に異世界のことを他人に話さないようにと釘を刺していたが、もう彼らにとってシモンは他人ではない。
もしそのシモンと二度と会えないようなことになれば、そのショックの大きさは計り知れないだろうと思った。
少し空気が重くなる、それを察してシモンは明るい声を出した。
「大丈夫!少なくとも今日も明日も明後日も俺はここに居る!仮に帰る日が来ても、また気合でここまで戻って来るさ!何も悲しむことはない!」
「ホント?兄貴帰ってモまた帰ってクル?」
「そうだよ・・・戻ってくるって・・・・そんな簡単じゃないんでしょ・・・・」
ココネは不安そうにシモンを見上げた。美空も同じような顔でシモンを見る。それに対してシモンは、いつものあの言葉を言った
「俺を誰だと思っている?」
そう言ってシモンは親指をグッと突き上げシャークティたちに言った。
その言葉にシャークティたちも少し安心し、小さく微笑んだ。
「う~む、そういうところがそっくりじゃの~ナギに」
学園長はシモンを見て言う、その言葉に全員が振り返る。
「聞いたことある・・・たしかネギの親父さんで英雄だった人って・・・・」
「うむ、魔法使いで知らぬもの無し!まさに英雄にふさわしい男じゃった」
学園長は少し懐かしそうな目をしてシモンを見た。
「エヴァが言ってた・・・・エヴァもその人と俺が似てるかもって・・・・でもその人と似ているのは多分俺のアニキだと思う」
「カミナさんのことですか?」
「以前に君が言っとった・・・・確かその人は亡くなったそうじゃのう・・・・」
今度はシモンが少し懐かしい目をして遠くを見た、
「ああ、でも俺のいた世界では人類の英雄として後世に語り継がれている、・・・・ネギの親父さんは生きてるの?死んでるの?」
「ワシらは死んだと思っとった・・まあ今にしてみればアヤツが死ぬなんて考えられんが・・・・ネギ君が昔会ったことがあるそうじゃ」
その言葉にシャークティが口を挟む。
「私もサウザンドマスターは死亡したと聞いています、しかしネギ先生はいったいどこで会ったのですか?」
サウザンドマスターのことを魔法界に知らないものはいない。同時に死亡したことも知らないものはいない。
それほど広く知れ渡っている人物である。その人物が生きているという根拠がどこにあるのかシャークティは疑問に思っていた。
「うむ、ワシもネギ君に聞いた話なんじゃが、6年前彼の故郷が悪魔の大軍に襲われ、村人全員が石にされてしまうという事件があったんじゃ」
シモンたちは黙って聞く。
「そしてその悪魔がネギ君と彼のお姉さんを襲おうとしたその時に奴はあらわれたそうじゃ。そして瞬く間に悪魔を一掃したようじゃ」
「し・・知りませんでした・・・そんなことが・・」
「うむ・・・まあネギ君は奴の顔をよく見れなかったそうじゃが、あやつは最後に自分の杖をネギ君に託しそのまま姿を消したそうじゃ」
ネギの生徒の美空は初めて聞いたことだったため、ネギの悲しい過去に少し涙を浮かべた。
「その人を・・・ネギは探してるのか」
「うむ、・・・君のお兄さんがどんな人物かは知らんが・・・・少なくともワシらには君とナギが重なった、君に修学旅行でネギ君と一緒に行ってもらったのはそれが理由じゃ」
「ふ~ん、英雄に似てるってのは悪い気はしない、でも俺は俺だ」
そう言ってシモンは学園長に向き合った。
「俺はいつ帰るかまだ決めてないけど、それまではネギの父親の代わりとかじゃなくて俺としてネギたちと接していくよ。そして木乃香とも!」
「そうか・・・・ではよろしく頼むのう」
その言葉を聞いて学園長は少し肩の力を抜いた。
シモンがいなくなった時のネギや木乃香たちのことばかり心配していたが、今シモンはこう言ってくれているので、今はそれでいいのかもしれないと納得した。
しかしこの時シャークティは少し嫌な予感がした。
学園長はサウザンドマスターが死ぬなんて考えられないと言った、
しかし・・・・サウザンドマスターに似ていると言われているカミナは死んだ。
(死ぬなんて考えられない?・・・・・でも・・・カミナさんもそういう人だったはずです・・・)
死ぬなんて考えられない人物だって死ぬ。
大体サウザンドマスターが死んだという話を結局みんな信じていた。
英雄と崇められていたとしても、そのまま天寿を終えた人が何人いただろうか? 英雄ほど案外早く死ぬのかもしれない。
ではシモンはどうだ?
シモンはカミナにもサウザンドマスターにも似ている男だ。そして元の世界では知らぬもの無しの英雄である。
(・・・なぜ?・・・なぜ私はこんなことを・・・・しかし・・・・・胸騒ぎがする!・・・)
突如襲い掛かる不安と胸騒ぎにシャークティは襲われた。
(いいえ、京都のような危険な仕事はもう無いです!そう・・・シモンさんがこの世界で戦うことはもう無いはずです!)
シャークティは急に襲い掛かる不安を払うかのように心の中で決め付けた。
しかしそんなシャークティの思いを嘲笑うかのように、徐々にこの学園に黒い影が忍び寄っていた。
今朝はあれだけ快晴だったにもかかわらず、今は夕方になるにつれて雨雲が差し掛かり、今は大きな落雷とともに雨が降っている。
「うわ~すごい雨、こりゃ寮には帰れそうにないな~」
窓の外を見て呟く美空。それほどまでに外の天気は崩れていた。
今朝から言いようの無い不安を胸に抱えていたシャークティも、今の状況を見てさらに不安が大きくなった。
その時だった。
―――コンコン
教会の扉を誰かが叩く音がした。一体誰だろうと思い美空が入り口まで行って扉を開けた。
「ハイ~ハイ、どちらさんですか?」
扉を開けたそこには、黒いコートと帽子をを身にまとい、口ひげを生やし、ガッチリとした体格の老人がそこにいた。
「失礼、君がネギ・スプリングフィールド君の教え子の春日美空嬢だね?」
異様な雰囲気を醸し出す男。見習いとはいえ魔法使いの美空は瞬時に察した。
只者ではないと!
「シスターシャークティ!!兄貴ーー!!」
美空は本能的に男から飛び退き身構え、そして助けを求めた。
その言葉を聞いてシモン、シャークティ、ココネが美空の元に駆けつけた。
「ここに一体何の用ですか?」
男を見てシャークティが問いかける。
「夜分失礼シスター。私はヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン伯爵。伯爵と言ってるが没落貴族でね、今はしがない雇われの身だよ」
そう言ってヘルマンと名乗る男は帽子を取り丁寧にお辞儀をした。
「ネギ・スプリングフィールド君をおびき出すために、美空嬢の身柄を預からせてもらう」
「「「「!?」」」」
「ネギ先生を!?あなたはいったい!?」
「理由は知らねえが、そんなこと許すと思ってんのか!」
シモンはドリルを身構えた。
シャークティも魔力を込めたロザリオをヘルマンに向けた。しかしヘルマンは表情を崩さない。
「ふう、やはりここには人が揃っている。私が直接出向いて正解だったな・・・・・」
そう言ってヘルマンは姿勢を落とした、
「少々手荒になるが、神よ・・・・許したまえ」
「ふざけんな!神が許したって俺が許さねえよ!」
シモンとシャークティが動いた。
「私は才能ある若者は好きだが、君たちは違う。遠慮なく潰させてもらうよ!」
ヘルマンは不気味に笑い、シモンとシャークティに向かった。
それからどれぐらい経ったのだろう、教会に戦いの激しい傷跡が残る、その中でヘルマンは自分の仲間からの連絡を受けた。
「ふむ・・・・他の生徒たちはうまく捕らえられたようだ・・・・残るのは美空嬢、君だけだ」
ヘルマンが見下ろすように言う。荒れ果てた教会の中、シモン、シャークティ、美空、ココネが横たわっていた。
「くっ・・・・・強い・・・」
「なんだ・・・このジジイ・・強い・」
「いっ・・つ~~」
シモンたちが愚痴をこぼす、
「言っただろ、美空嬢やそこの小さなお子さんならまだしも、君たちのように成長の終えたものに私は興味ないんでね」
「ふざけんな!テメエの好みなんざ知ったこっちゃねえんだよー!」
シモンは再びヘルマンに攻撃を仕掛けた。
「くらえーー!、シモンインパク・・」
「遅い!デーモニッシェア・シュラーク!!」
「がはっ!?」
シモンの攻撃が発動する前に凄まじい轟音と衝撃波を纏ったヘルマンの拳が、シモンを教会の壁へと吹っ飛ばした。
「シモンさん!?キサマ!」
シャークティがヘルマンに向く。しかしそこにはヘルマンはいなかった。
「なっ!?」
「だから言っただろう、興味が無いと」
「うっ!?」
一瞬でシャークティの背後に回り込んだヘルマンは、シモンと同じように容赦なくシャークティへ攻撃し、壁へ叩きつけた。
「兄貴!?シスターシャークティ!?」
「くっ・・・・美空・・に・・逃げなさい!ココネを連れて早く!」
傷ついた体を起こしシャークティは懸命に美空へ呼びかける。しかし美空の体は震えていた。
「震えていようだが心配しなくてもいい、君に危害は加えないよ」
ヘルマンは醸し出すオーラはそのままにして、美空へ告げる。
しかし、
「アン・・・タ・・・・私の・・・・・」
「ん?なんだい?」
「私の家族に何してんだよーー!!!!」
「ほう!?」
美空が叫びながらヘルマンに立ち向かう。
美空のアーティファクトは、脚力を強化する靴のアーティファクト。そのスピードはヘルマンの顔色を変えた。
しかし、
「ふむ、いい能力だ。これからも鍛錬を怠らなければきっと力になる。しかし今はまだ及ばないようだね」
「あっ・・・うっ・・・・がくっ」
ヘルマンの拳が美空の腹に直撃し、美空は意識を失った。
「美空!?・・・・ぐっ・・・・」
「テ・・・・・テメエ・・・俺の・・・」
「おや、まだやる気かね?」
ヘルマンは余裕の態度を崩さない。しかしシモンの怒りは頂点に達する。
「俺の・・・・俺の妹に何しやがる!!!!」
シモンが体を無理矢理起こしヘルマンに向かうが
「君は修行をしたことがないな?」
一瞬でシモンに間合いを詰めてヘルマンが告げる。
「な・・・なんだと・・・?」
ヘルマンの言葉は正しかった。シモンはそれなりの格闘は出来るが、強さを求めて修行したことは無い。
格闘術の鍛錬等はしたことはあるが、それは強さを求めて行ったわけではない。
「若いうちから訓練を怠る、強くなる喜びも知らない、そんな君が何を出来るのだね?だから私は君に興味が沸かない」
ふたたび殴り飛ばしたシモンに向かいヘルマンは告げる。
そしてこの時シモンの意識はすでに無かった。
「さて行こうか美空嬢、主役のネギ君が来るのを待とう」
そう言ってヘルマンは気絶している美空を抱きかかえ、ここから立ち去ろうとした。
「んっ?」
その時へルマンは自分のズボンの裾を倒れながらもギュッと握り締めるココネを見た。
「ミソラを・・・・返セ・・・・」
傷つきながらも必死にヘルマンの裾を掴むココネ。
「おやおや、勇ましいお嬢さんだ・・・・・んっ?・・・そうか君は美空嬢のマスターだね?」
ヘルマンがニヤリと笑う。
「なっ!?何をする気ですか!?」
「いえいえ、ただせっかく捕らえてもカードの召喚能力を使われたら簡単に逃げられてしまう」
そう言ってヘルマンは腰を下ろしココネの首元を軽く叩いた。
それによりココネも気絶してしまった。
「こ・・・・子供に・・・なんてことを・・・・」
シャークティが倒れながらも怒りの形相をヘルマンに向ける、
「心配しなくてもいい、彼女たちはただのエサだ、用事が済めば無事に返してあげますよ」
そう言葉を吐き捨てヘルマンは美空とココネをつれて、夜の闇へと消えた。
美空・・・・・・・ココネ・・・・・
シモンは無意識の中、その名前を呟いた。
美空ちゃん・・・・・・・
美空ちゃん・・・・・
「ん?・・・・つ~・・・ここは?」
「あっ!?春日さん、気がついたようですね」
目を開ける美空の目の前には夕映がいた。
そして夕映以外にも、のどか、木乃香、朝倉、古、が・・・ハダカでいた。それを見て一気に目が覚める。
「ちょっ・・・あんたたちなんでハダカなのさ!?」
「あっ・・いえこれは・・・・お風呂場で襲われてしまい・・・・・」
夕映が胸元を隠しながら言う。
周りを見ると、アスナ、刹那、そしてなぜかクラスメートの那波千鶴までもがいた。
そして自分の膝の上には気を失っているココネ。
「ココネ・・・あんたまで・・・・それに・・・ん!?アスナあんたなんつーカッコ!?」
なんとアスナはド派手な下着姿のまま四肢を縛られたまま捕らえられていた。
「美空ちゃん!?これはこの変態ジジイに!」
「目を覚ましたかね美空嬢?」
ヘルマンが美空に告げる。
「このー!よくも兄貴やシスターシャークティをー!!」
「えっ?・・・美空ちゃん・・・シモンさんがどうしたん?」
木乃香が心配そうに告げる。
「なあに命は無事だよ、もっとも少々痛めつけたので、しばらくは動けないと思うがね」
ヘルマンの言葉に全員が衝撃を受けた。なぜならあのシモンが、この目の前の男には敵わなかったのだから。
「ウソ・・・・あのシモンさんが・・・・」
アスナの声が震える。そしてシモンを知る彼ら全員の心境も穏やかではなかった。
「おや?勇者様のお迎えのようだね」
「「「「!?」」」」
ヘルマンの視線の先には、ネギと京都で戦った小太郎がいた。
「ネギ!?それにアンタはたしか・・・・・・」
ネギの出現に生徒たちは少し落ち着きを取り戻した。
「来たでおっさん!!」
「みんなを返してください!!」
勇ましく叫ぶネギと小太郎。
ヘルマンは待ちわびたかのように立ち上がり二人の前に立ちはだかる。