魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「俺に相談って何?」
「実は・・・・・・・」
今シモンの目の前には、アスナ、木乃香、刹那、エヴァ、のどか、夕映がいる。
アスナたちはさほど珍しくは無いが、のどかと夕映がシモンを尋ねに来るのは意外であった。
そして彼女たちは少し顔を赤らめながら本題を告げる。
「ネギが恋?」
アスナたちの説明を受けてシモンが聞き返す。
「でも別に珍しくないんじゃないかなあ? ネギだって誰かを好きになってもおかしくないじゃないか」
「まあ・・・それはそうなんだけどね・・・・・その・・・」
アスナは言いよどむ、そして
「ヨーコさん・・・・みたいなのよね・・・・あいつが好きなの・・・」
「ッ!?」
思わぬ人物の名前でシモンは噴出してしまった。
「よよ・・・ヨーコを・・・・ネギが?」
「そそそうなんです~~」
「シモンさん、どうにかならないですか?」
テンパッてるのどかの肩に手を置きながら夕映が聞いてくる。
「どうにかってなあ・・・・・俺はネギの気持ちが分からなくも無いけど・・・しかしネギがヨーコをな~・・」
「そうよね~、だってシモンさんの初恋の人でしょ?」
「おいおいおい!?木乃香もそうだったけど何でおまえたち知ってるんだ!?」
「うっ!?・・・・まあ細かいことは気にしないでよシモンさん!」
シモンの初恋がヨーコであることを、どうやら全員が知っているようだ。
「う~ん、・・・・・でもさすがにネギとヨーコは歳が離れすぎてるよ。心配することないんじゃないかな?」
「何ゆうとるんシモンさん!ウチとシモンさんのように恋愛に歳の差関係ない!」
「その通りだシモン!それをいうなら私とキサマは幾つ年が離れていると思っている!」
「あううううう~」
「こ・・木乃香さん、エヴァンジェリンさん!?のどかを不安がらせるような真似はやめてください!」
「このちゃん・・・・すごくたくましくなったな・・・」
木乃香の発言に涙目になってあわてるのどか。
まあ別にシモンと木乃香は付き合っているわけではないが、木乃香の発言は皆に響いた。
「そういえばヨーコさんはシモンさんのアニキが好きだったんでしょ?その人はどうしたの?」
シモンはヨーコとシモンの兄がキスしていた場面に出くわして、走ってその場から逃げ出して自分の初恋は終わってしまったと言っていた。
しかしヨーコは誰とも付き合っていないと言っている。疑問に感じたアスナはシモンに聞いてみた。
「な・・・なんでそこまで知ってるんだ?・・・まあ・・・たしかにそうなんだけどね・・・・でもアニキは死んじゃったんだ・・・8年も前に」
「「「「「!?」」」」」
シモンの言葉に皆ショックを受ける。
シモンが時折語っていたアニキという男。その人物がとっくの昔に亡くなっていたことにエヴァを除いて皆ショックを受けていた。
「それじゃあヨーコさん・・・」
「うん・・・ヨーコも俺も皆あの日は泣いた・・・無理を通して道理を蹴っ飛ばした男の死を・・・」
「その言葉!?」
「ああ、この言葉は死んだアニキが言っていた言葉だ。そしてその言葉はいつでも俺たちを奮い立たせてくれた」
シモンがよく言っていた言葉。
その言葉はシモンの言葉ではなく、受け継がれた言葉だったのである。
「そうだったんですか・・・・・・」
「そんな顔するなって。しんみりするために話したわけじゃない。ただそんな男をヨーコは好きだったんだよ」
「ではヨーコさん、その方が亡くなって以来誰か恋人がいたわけではないのですか?」
夕映の質問に少し考える。たしかに誰かと付き合っていたという話は聞いていない。
少し大グレン団のキタンといい雰囲気だったようだが、そのキタンもすでにいない。
それにヨーコは学校の生徒たちを自分の子供のように思っているところもあった。
そう考えるとたしかにヨーコには恋人がずっといない。
それにヨーコが今更誰かと付き合うというのも想像がつかなかった。
「多分・・・・、まあ、お前たちが心配することでもないだろ?そんなのネギとヨーコの問題だし、アスナと宮崎はパートナーって言ってもそれとこれとは話が別だろ?」
「シモンよ、魔法使いのパートナー同士はほとんどの確率で結婚するぞ」
「え?便利なアイテム貰うだけじゃないのか?それじゃあアスナと宮崎はネギと・・・・」
その瞬間のどかとアスナが真っ赤になった。
「ち・・違うわよシモンさん!わた・・私のは、あくまで緊急事態だったのよ!」
「あう~~ネギせんせ~と~けっこ・・・けっこん~」
それぞれの反応を見せる
「ネギって・・・・もてるんだね・・・・」
「シモンさんもウチにモテモテや!」
「なっ!?シモンそれを言うならわた「まあ今はその話は置いといて・・・」」
木乃香やエヴァの発言をサラッとスルーして、シモンは状況をまとめる。
「要するにアスナと宮崎はネギが好きだからヨーコをどうにかした「ちーがーうー!!」」
「別にそんなんじゃないわよ!私は本屋ちゃんがこのままじゃ可哀想で」
「えっ?・・あう・・でも~~」
再び顔を真っ赤にする二人、しかしシモンにはどうすることも出来なかった。
「ヨーコって恋人作らないのか?」
「いきなり何よ?」
夕御飯の時にシモンは直接聞くことにした。
ヨーコは食べてる手が止まり、少し困惑気味な顔をして聞き返してきた。
「それは私も気になるな~。ヨーコさん昼間に教室来たときにフリー宣言したけど、みんな信じられないような顔してたんだよね~」
美空も箸を動かしながら聞いてくる。しかしヨーコの答えは冷めたものだった。
「作んないわよ。なんてったって私は何十人の子供を抱えるシングルマザーなのよ?」
ヨーコは学校の生徒たちを自分の子供のように可愛がっていた。
別に彼らは孤児なわけではないが、ヨーコ自身がそう思っているのだ。
「ヨーコさんカミナさんが好きダッタ?」
「「「「ぶーーーっ!?」」」」
ココネのまったく遠慮の無い質問に全員噴出してしまった。
ココネの発言に一同唖然としてしまった。シャークティは申し訳ないとココネの頭を掴み頭を一緒に下げた。
ヨーコはそれを見て少しため息をついて懐かしそうに遠くを見るような目で答えた。
「アイツが私の事どう思っていたのか、結局最後まで分かんなかったわ・・・・私みたいな鉄砲だけのガサツな女にはちゃんと言葉に表してくれないと分かんないんだから・・・・・」
「ヨーコ・・・・」
ヨーコはおそらく8年前のことを言っている。
シモンはそれを瞬時に察することが出来た。
「恋人ね~、美空たちにも言ったけどグレン団はいい男がいっぱいいた。・・・・そう考えるとそこいらの男じゃもうダメね・・・それにもう欲しいとも思わない・・・私にはあの子達がいるからね・・・・・・・私も歳をとったかな?」
ヨーコは少しハニカんだ笑みを浮かべた。
「自分ではなく次の世代に託す・・分かるよ・・・俺にもその気持ち」
シモンもその気持ちがよく分かった。もう彼らは自分たちが誰かと共に寄り添いあい、愛を育んだりして未来を輝かせるよりも、自分たちの思いを新たな世代に託し、未来の行く末を見守るという立場を選んだのだ。
今を生き、成長するネギやアスナや木乃香たちとは違う。
シモンは二アと、ヨーコはカミナやキタンと一生分のエネルギーを其処に費やしてしまったのかもしれない。
だから今更誰かとともに未来を歩もうとは思っていなかった。
「私も分かります・・・・なんとなくですけど」
シャークティも例外ではない。
彼女もまたシスターとして生涯神に身を捧げ、美空やココネのように新たな世代を育てるという立場にたっている。
シモンと出会い、それが少し変わったかもしれない。おしゃれをしたり、恋人としてイチャついたり、デートをしたりの願望もあったかもしれない。もし二アという存在を知らなければその欲望に囚われたかもしれない。
しかし、もう自分もシモンも子供ではない。自分にとって一番最良の立ち位置を見極められる。それで選んだのが切っても切れない家族という立場なのかもしれない。
木乃香のようにシモンの心の中に居るニアに打ち勝とうなどと言う選択は彼女には無かった。
シモンはギミーに
シャークティは美空とココネに
ヨーコは自分の生徒たちに
それぞれの思いを受け渡していく、その考えの違いはネギたちと一緒にいればよくわかる。
「ムズカシイ」
「なるほどね~、兄貴もヨーコさんも熱い兄ちゃん姉ちゃんと思ってたけど、そういう話聞くと大人なんすね~」
美空は少し感心したように言う。そして
「こりゃあ、ネギ君と木乃香はかわいそうだな~~」
「ネギ?シモンを好きな木乃香ならまだしも、なんでネギなの?」
ヨーコのあっけらかんとした問いかけに、美空とシモンは心の中で呟いた。
((お前の(アンタの)所為だ!!))
そしてヨーコは木乃香の名前を聞いて思い出したかのように聞く。
「木乃香で思い出したけど、今の話を聞く限りアンタもニア以外は考えてないんでしょ?」
「まあな、木乃香はあきらめないって言ってるけど・・・・・」
「7年勝負・・・・木乃香さんが不憫ですね・・・現段階でここまで脈が無い人に勝負を挑むのですから」
シャークティが木乃香を憐れむような声で言う。
「でもアンタどうするの?とりあえず一度は元の世界に帰るんでしょ?それからまたコッチに来るの?」
そもそもヨーコはシモンを連れ戻しに来たのである。
美空とココネは不安そうにシモンの顔を見る。するとシモンは心配するなと言わんばかりの顔でうなずく。
「ああ!そう考えている」
「随分簡単に言うわね~、まあ一度帰るって言ってるんだし、ニアとの約束を破らずにすんでよかったわ・・・・・でもそれならいつ帰るの?私も学校始まる前には帰りたいけど」
仕事もあるうえに、早くシモンの姿を見せてロシウやギミーたちを安心させたいという思いもヨーコにはある。
そう考えると一度帰るのなら、早いほうがいいと思っていた。
シモンもいきなり言われたため少し考えた。
すると美空が口を挟む。
「じゃあさ、学園祭が終われば夏休みになるから、そのとき一度帰れば?」
「「ガクエンサイ?」」
「そちらの世界にはないのですか?一年に一度、生徒たちが中心となって開かれるお祭りのことです」
シャークティの説明にシモンとヨーコは驚いたような顔をする。
「生徒たちが?おもしろそうね!」
「ああ!それにここは、ものすごい大きいところだから祭りとなるとスゴイんじゃないか?」
「その通りです。世界でも有数の学園都市である麻帆良の一大イベントですからね」
「そっか~、よしっじゃあそれが終わってから一度帰ることにするよ!」
「そうしましょう!なんだか私も楽しみになってきたわ!」
ヨーコもシモンも話を聞いただけで楽しみになってきた。
「ただし!一つ注意事項があります!」
「「?」」
シャークティの強い口調にシモンとヨーコは黙って首を傾げる。
「学園祭中に告白されてはいけません!!」
「「はっ?」」
「・・・・するんじゃなくて、されちゃダメなの?」
「シモンさんとヨーコさんは自ら告白することは無いでしょうけど、されてもダメなんです!実は今年の学園祭の告白は120%の確率で成功します!」
「「えっ!?120!?」」
シャークティの発言にシモンとヨーコは驚きを隠せない。シャークティはその理由を語りだす。
「世界樹の伝説と生徒達の間では言われていますけど、実は伝説などではなく魔法の力なのです」
「「魔法?」」
「世界樹はその内に莫大な魔力を秘めています。22年に一度、その魔力は極大に達して、外へとあふれ出し、世界樹を中心とした六つの場所に魔力の溜まり場を形成します。この膨大な魔力が人の心に作用します。俗物的な願いは叶いませんが、告白に関しては・・・・・」
「「????」」
あまりよく分かっていない、シモンとヨーコ。
シャークティは一度ため息をついて少し恥ずかしそうに言う
「つまり気合が無くても告白が成功するのです!」
「「ええーーーーーっ!?」
「なぜこの説明で理解できるのですか?」
「はっはっは、シスターシャークティも兄貴たちの扱いがうまくなったんじゃないっすか?」
ようやく理解できたシモンとヨーコ。
長々とした説明より気合と一言加えるだけで話を理解するグレン団にシャークティは少しあきれた。
「まてよ・・・・それなら仮に木乃香やネギが告白すると・・・・」
「人の心を操る魔法は禁止されています。ですから学園祭中は我々魔法使いは告白防止の警備に当たります。ネギ先生や木乃香さんたちにも説明されると思いますが・・・・・・・告白されればアウトです!」
くだらないようで実はかなり危ない魔法。
もし告白されれば自分の思いは関係なしに、好きでもない者と永久に恋人になってしまう。
そのことにシモンとヨーコは少し背筋が震えた。
「人の心を操るか~、恐怖で支配するよりもよっぽどタチが悪いわね~」
「そうっすよ!特にヨーコさんは、彼女のいない男子生徒に狙われる可能性大だから気をつけてよね~」
「ヨーコさんモテモテ」
美空とココネの忠告を受けてヨーコは顔を引きつらせる。
いきなり告白されて恋人になるなど絶対にありえないからだ。
「しかしそれ以外はとても賑やかな学園祭です、是非楽しんでいってください!」
「・・・・び・・・・微妙ね・・・・」
ヨーコは呟いた。
「生徒たちの間ではロマンチックに語られてるんでしょうね、その伝説って。でもタネ明かしをされたら冗談じゃないわね」
ヨーコは少し怒り気味で言う。
「今まで出会った人とのことも、そこにあった気持ちも、そして失った人への想いも全て無視されるんでしょ?ニアや・・・・・カミナやキタンたちへの想いも関係なしに・・・・」
「ヨーコ・・・」
「はい、だからこそ我々魔法使いがそれを防ぐのです。安心してください!絶対にそうならないようにしますから」
「まあ、まかせてよ!いつもはメンドクセーとか思っていたけど、私も今回は真面目にやるからさ!」
「マカセテ」
シャークティ、美空、ココネは力強く言う。ヨーコとシモンもそれを見て安心したように笑った。
という少しシリアスな会話があったにもかかわらず、3-Aの生徒たちは能天気だった。
翌日
「ねえねえ、誰か今年世界樹伝説に挑戦する奴いるかな~?」
「何?あんなの信じてるの?」
「そう?わりとゆーめーじゃん!」
ネギのクラスのチアガール3人組が始めた話題にクラス中が話に参加して来る。
「それ何のこと?」
「知らないの?学園祭最終日に世界樹の下で好きな人に告白すると絶対にうまくいくってゆう話」
「「「「!?」」」」
「エー!?何々?そんなのがあるの!?」
昨日、シモンとシャークティたちであれほど真面目に話し合っていた世界樹伝説に生徒たちは興味津々。
この事態に美空や毎年同じ内容を聞いているエヴァは呆れ顔。
しかし
「ほかほか、そんなんあるんやったらウチもう一回シモンさんに告白してみようかな~」
「「「「「「「「は!?」」」」」」」」
「なんだとキサマー!?」
「ぶーーーーっ!?」(美空)
「こ・・・このちゃん・・」
木乃香の発言にクラス中騒然。
「木乃香どういうこと!?」
「シモンさんに!?ってゆうかもう一回って何!?すでに告白済み!?」
「シモンさん?・・・・たしかにカッコ悪くはないけど、歳がね~」
「そうそう、歳の差があっていいならやっぱネギ君じゃない?」
「私も私もー!」
クラス中が騒ぎ出す中、美空はため息をついていた。
(こりゃあ後でちゃんと世界樹のこと話してやんないとな~、木乃香だってそんなんで結ばれてもうれしくないだろうし、つうか兄貴一部の人間以外評価高くなかったんすね・・)
シモンよりむしろネギのほうがいいというクラスメートが大半だった。
美空がそうやってクラスを傍観していると、話に加わらずパソコンをカチャカチャ弄くってる女が目に入った。
その女は愛や人の心を科学に売ったマッドサイエンティストの噂が名高いクラスメートだ。
「ハカセー、何やってるの?」
「春日さん?」
葉加瀬ことハカセがパソコンから目を離し、美空を見上げた。
「はい、茶々丸が最近、気合がどうのとかわけも分からないことを言っているのでちょっと調べてるんです」
「はっ?それって人権は・・・いやロボットには無いか、つうか気合って・・・」
「むっ!?何やら私の知らないフォルダが作られています!・・・・・何です?・・・フォルダ名、これが漢の魂だ?」
「ハ・・・ハカセ・・・それは・・・」
茶々丸が慌ててハカセを止めようとしているが、もちろん止まることは無い。
ハカセはそのファイルを開けてみた。
「シモンさんはかっこええよ~、なあせっちゃん?」
「えっ?は・・・はい・・・そう思います・・・・う~・・」
「ええ~、やっぱネギ君だよ~」
「アスナはどう思う?けっこーシモンさんと仲良さそうじゃん」
「う~ん、私も最初はどうかと思ったけど、カッコイイ人だと思うよ?あれですごい熱い人だしね」
「えーー?どこが~?」
賛否両論のシモンの評価の中、一つの音声が教室に流れる。
『それが穴掘りシモン、俺を誰だと思ってやがる!!!』
「「「「「えっ?」」」」」
突如響き渡るシモンの声。これに皆時が止まったように黙ってしまった。
「ハカセ?・・・・・今の?」
「なんと驚きました!茶々丸にシモンさんの映像がここまで保存されていたとは!」
「ハ・・・ハカセ・・・・もうこれ以上は・・・」
「ようし、この調子でどんどん見ていこう!」
ハカセの号令とともに再び映像が再生される。
『おまえの生き様を俺は見ている!・・・・・よろしくなエヴァ!!』
「キサマラーーーーーーーーー!!!!何を見ているかーーーーーーーー!!!!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らすエヴァ。
「なにこれシモンさんとエヴァちゃん?エヴァちゃん、かわいい~~」
「うがーーーーーー!!茶々丸----!!キサマこっそり録画していたな!!」
「も・・・申し訳ありません・・・・マスター」
先ほどまでの話を忘れ、クラス中がハカセのパソコンの画面を覗き始めた。
それには茶々丸が録画したシモンの映像が流されていた。
「まだまだーーー!!ほら続いての映像はコチラ!」
『逃げねぇ、退かねぇ、そして渡さねぇ!それが俺の背負った心意気だ!俺の背負った魂に賭けて、近衛はテメエらに渡さねえ!俺を誰だと思っている!』
「あ・・・・うわお」
再生ボタンを押したハカセ自身が口を半開きにしたまま固まってしまった。
ハカセの肩越しから画面を覗く生徒たちも顔を赤らめてシモンの映像を見ていた。
「すご・・・・たしかに木乃香じゃなくても言われたら惚れるわ~」
「せやろせやろ!こんときホンマにカッコよかったんよ」
「たしかに恥ずかしがらずに言うあたりすごいね・・・・・」
「熱い人か~、それでいて暑苦しくない、不思議な人だね~」
「う~んシモンさんか~、意外と狙い目?」
生徒たちが徐々にシモンへの評価を改めていった。
木乃香はシモンの評価があまり高くないのに反発していたようだが、評価が高くなったら高くなったで文句を言う、「今更気づいてもおそいで~」などいつもの口調で皆を牽制していた。
美空はこの事態をただ傍観して見ていた。
昨日のヨーコたちの恋愛に対する考え方などを聞くと、目の前の光景がとても子供に見えた。
(惚れたハレたは私にはわかんね~っすね~、兄貴は確かにカッコイイと思うけどやっぱ兄弟としての憧れだからな~、ましてや10歳のネギ君相手はなおさらわかんね~)
子供じみたイタズラなどが好きな美空だが、思春期特有の恋愛話には少し疎いところがあった、
「たしかに狙い目かもね~、私も最終日はシモンさんに行こうかな?」
「それアカンー!ウチが最終日シモンさんと過ごすん!」
「何を言っている木乃香!シモンは最終日は私のために使うともう決めているんだ!」
「そんなんウソや!」
それで結局また口論が始まる。いつものお決まりである。美空は欠伸をしながら見ていた。
するとクラスメートの一人が教室から出て行くのが分かった。
「ふふ、やれやれネ」
その女は超鈴音だ。
彼女もまた恋愛の話などまったくない女のうちの一人。
おそらくこういう話題は苦手なのかと思い、その時は大して気にも留めていなかった。
「やれやれ、随分慌しいが最終日は私がシモンさんとのデートヨ。早目に約束したほうがいいネ」
廊下で呟く超
「大グレン団のシモンに憧れたのは私のほうがずっと先ネ」
超の呟きは誰にも聞いていなかった。