魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第38話 俺は何も言えない

文化祭初日。時刻は夜の8時。

今一人の少年が保健室のベッドの上で眠い目を擦りながらようやく目を覚ました。

 

「う~ん、あれ・・・真っ暗・・・・・8時・・・夜の8時!?」

 

時計の時刻を見て一気に目が覚めた。その言葉に付き添っていた刹那とカモも目を覚ます。

 

「ど、ど、どうしよー!?みんなの所に行ったり、先生の仕事や格闘大会も全部す・・すっぽかしたー!?」

 

顔を真っ青にして慌てふためくネギ。その言葉に刹那とカモも現状を把握して動揺する。

 

「ど、どうしましょーう、刹那さん!?」

「もも申し訳ありません!?私もうっかり寝てしまって・・・・」

「おい兄貴確か今日嬢ちゃんとデートだったはずじゃ・・・・」

「4・・・4時半に・・・・」

「「ええええーーー!?」」

「あわわわわわどうしよう!?」

 

 

丸一日ギッシリ予定が入っていたネギ。しかしもはやどうすることも出来ず、ただ慌てるだけ、もはや何もかもが手遅れだった

しかしこの事態に奇跡が起こった。

ネギの懐に入っていた懐中時計が急に作動した。

その瞬間。自分のいた空間が突如回りだしたかと思えば、先ほどまで真っ暗だった外が急に明るくなり、時計を見たら時刻は10時を指していた。

 

「「「あ・・・あれ?・・・え?」」」

 

今の一瞬で何があったのかまったく把握できずに呆然とするネギと刹那とカモ。

そして彼らにさらに追い討ちをかける事態が起こった。

 

 

『只今より麻帆良祭を開催します!!』

 

「「「はっ?」」」

 

 

 

校内全体に響き渡るアナウンス。なぜかもう一度学園祭の開会式が行われていた。

この状況にお互いの顔を見合い、ただ首を傾げるしかない、とりあえず現状の把握のために彼らは近くの喫茶店に入り、話し合った。

 

「うーむ、やっぱこれが怪しいな……」

 

超から貰った懐中時計を調べながら、カモはうなる。

 

「やっぱこれが原因で戻ったとしか・・・」

「やはりそうなんですか?しかしアレは東西を問わず、どんな魔法使いにも不可能と言われる術の一つでは……」

「刹那さん・・・カモ君・・・アレって・・・・?」

「むっ!?おい兄貴外を見ろ!」

 

状況を理解出来ずに首をかしげるネギ。

その時カモは喫茶店の外の光景を指差した、そしてそこには図書館三人組と一緒に歩いているネギがいた。

 

 

「あ・・あれは僕?・・・ど・・・どういうこと・・・?」

「こりゃあ信じられねえかもしれねえが、本当に俺たちは文化祭初日に戻っちまったようだ・・・」

「私もあまり詳しくはないのですが、魔法世界でも実現不可能と言われた時間跳躍術・・・」

 

「「タイムマシン」」

 

 

一瞬の沈黙・・・そして

 

 

「ええー!! タイムマシン!! す、すごい!! 僕、映画とか日本の漫画とかで見たことあるけど本当にあるなんて!!じゃあこれがあれば恐竜時代に行けたりするんですか?」

 

 

タイムマシンと聞いてハシャぎ回るネギ、

 

 

「うわ~、こんなスゴイものくれるなんて超さんなんていい人なんだろう、とにかくこれで問題は全部解決だ~、よかった~」

 

「何をアホにハシャいでいる?」

 

「えっ?」

 

 

突如声がした、そして振り返るとそこにはゴスロリ姿の師匠、エヴァンジェリンがいた。

 

 

「あ、マスターお人形みたいで可愛いですよ」

 

「そうだろう、今日はシモンとのデートなんでな、少し気合を入れてみた、ところで何か面白そうな物を持っているな・・・・よこせ!」

 

 

邪悪な笑みを浮かべて某有名なガキ大将のようなオーラを出すエヴァ、このオーラに耐えられずネギはその場から走り出した。

 

 

「す・・・すみませんー、僕はもう行きます!・・・シモンさんとのデートがんばってください!」

 

「むっ・・・そうか・・・・・いや、ごまかすな!待てぼーや!」

 

 

一瞬の隙を突いて逃げ出すネギ。そして刹那とカモも追いかけ、なんとかエヴァから逃げ出した。

 

 

「危なかったですね・・・・」

「そうだな・・・・こんな大発明品をエヴァンジェリンが手にしたら・・・・」

「でもこれで学園祭をゆっくり回れるよかったー」

「でも兄貴スケジュールは・・・・」

「だってこの大発明があれば問題なしだよ!」

 

そう言ってネギは懐中時計を突き出して自慢するかのように胸を張る。

 

 

「これで一日を何度もやり直せばいいんだから!」

 

 

この言葉にカモも刹那もそれほど気にしたりしなかった。

だから彼らも分からなかった、そうやって認識させることが罠だということを。

 

 

「まあとにかく超を探したほうがよさそうだ、それにこのカッコじゃあ、さっきみたいに見つかると厄介だしな・・・・」

 

「そうですね・・・あそこに貸衣装屋があります・・・少し変装しましょう」

 

 

過去の自分たちと鉢合わせすることも恐れ、ネギたちは変装することにした。そのカッコとは・・・・・とても可愛らしいウサギのコスプレだった。

 

 

「もっ・・・・もっと他には無かったんですか・・・?」

 

「いや~似合ってるって、いいじゃねえか!さっそく超を探しに行こうぜ!」

 

 

予想以上露出の激しい自分の姿に刹那は顔を真っ赤にしていた。

何はともあれ超を探すことを優先・・・のはずだったが・・・

 

「刹那さん、カモ君!あそこが怪しいです!」

 

そう言ってネギはいくつものアトラクションに入っていった。

当然怪しくもなんとも無い所である。しかし目を輝かせて飛び込むネギに刹那たちは何も言えず、教師という重圧から外れ歳相応の子供のように遊びまわるネギを暖かい眼差しで見守っていた。

最初は苦笑していた刹那だったが、いつしか自分もネギと同じように学園祭回りを楽しんで遊んでいた。

そして・・・

 

「うわーーすごい!杖に乗って見るのとは違う!」

「ったく・・・兄貴はすっかりガキになっちまったな~」

「しょうがないでしょう、ネギ先生はまだを10歳なんですから」

 

飛行船に乗り上空からの景色を満喫するネギ。もはや超のことを忘れていた。それは刹那も同様である。ネギの子供らしい姿を見てやさしく微笑んでいた。

 

 

「以前までなら・・・想像できませんでした、こうして学園祭を楽しめるなんて・・・」

 

「刹那さん?」

 

「私がこうして普通でいられるのも・・・ネギ先生たちが受け入れてくれたから・・・そしてあの時・・・・」

 

 

それから先は刹那は言わずに、フッと笑って窓の景色に目をやった。

 

(修学旅行のとき・・・・私の心の壁を突き破ってくれたあの人がいたから・・・・・)

 

自分の境遇にコンプレックスを感じ殻の中に閉じこもっていた刹那。自分の正体を知っても受け入れてくれたネギやアスナ、木乃香たち、そして踏み出す勇気を与えてくれたシモンを思い返していた。

今の刹那の顔を見てカモはピンときた。

 

 

「なんか恋焦がれる表情だな~」

 

「えっそうなんですか?」

 

「なっ・・・・なにをいきなり!?私はシモンさんのことなんて一言も・・・・・」

 

 

顔を真っ赤にして両手を胸の前で激しく横に振る刹那。

 

 

「ああ、シモンの旦那のことは一言も言ってね~な」

 

「あっ・・・・・・・」

 

 

自爆してしまった刹那。そしてそれを聞いたネギは・・・

 

 

「えーーー!?刹那さんシモンさんを好きなんですかっ!?」

 

「なっ!?ちょっ・・・いえ・・・違・・・わない・・じゃなくて・・・あの・・とと・とりあえず落ち着いてください!?」

 

「でも木乃香さんもシモンさんのことを・・・・」

 

「うっ!?」

 

「刹那さん木乃香さんの親友なのに・・・・三角関係・・・・」

 

「なっ!?」

 

「木乃香さんは刹那さんの気持ち知っているんですか?」

 

「なっーーー!?あっ・・うううう・・・・・ガクッ」

 

 

子供ゆえの容赦ないネギの言葉が刹那を襲い掛かる。

自分が一番気にしていたことをネギは容赦なく言ってしまったのだから。

刹那は完全に打ちひしがれていた。しかしこのまま黙ってやられるわけにも行かずに、反撃に移った。顔を真っ赤にしながらネギの肩を掴み。

 

 

「ネギ先生こそアスナさんと、のどかさんのことを、どうするおつもりですか?」

 

「えっ・・・あの・・・それは・・・」

 

「宮崎さんには告白されて返事は出したのですか?」

 

「い・・・・いえ・・・」

 

「シモンさんに返事を先送りするなと言われた筈ですよね?」

 

「は・・・はい・・・」

 

「それに最近ではヨーコさんのことを・・・」

 

「うわああああああん!?」

 

 

子供相手にムキになった刹那の逆転勝ち。ネギもヨーコや、のどかへのことを気にしていただけに刹那の言葉はボディーブローのように効いた。

この様子にカモも顔を引きつらせるしかなかった。

 

 

「容赦ねえな・・・・」

 

「申し訳ありません・・・・・少し・・大人気なかったですね・・・・」

 

 

刹那も自分の行動に少し後悔し、バツの悪そうな表情をした。

その時だった、

 

 

「時間旅行はいかがカナ皆さん?」

 

「「超さん!?」」

 

 

急に話しかけられてハッとした。当初自分たちが探していた人物が自ら現れたのである。

 

 

「まずは体験してもらうのが一番と思い、保健室のお茶に眠り薬を入れさせてもらたヨ」

 

「キサマ・・・・」

 

 

その言葉に刹那は鋭い目つきで身構える。そして警戒心を保ったままネギが聞く。

 

 

「あの超さんに貸してもらったこの時計ひょっとして・・・・」

 

「ウム!それこそ懐中時計型タイムマシン、カシオペア!使用者と密着した同行者を時間跳躍させる超科学アイテムヨ!」

 

「そうなんですか!?うわ~、こんなすごいもの貸していただきありがとうございます!」

 

「タイムマシンなんて時間跳躍術、そんなもんいくら天才だからって開発できるもんじゃねえ、お前はいったい何者だ?」

 

「ふっ・・・来たネ」

 

 

カモの質問に対して超はニヤリと笑みを浮かべ別の方角を見た。

その視線を追ってネギたちも見ると、見知った人が随分と目立つ姿で現れた。頭にゴーグルと派手なコートを着る男と、上半身をビキニとジャケットを覆う色っぽい女、シモンとヨーコが現れた。

 

 

「シモンさん、ヨーコさん!?」

 

刹那もネギも驚いた表情をする。

別にシモンとヨーコが二人でいること事態は珍しくは無いが、二人の今の服装はとても普通のようなカッコではなかったからだ。それでいてその目立つ服装がとても似合っているからだ。

その姿に見惚れてボーっとしていると、シモンがいつものような軽口で話しかけてきた。

 

 

「よう!随分変なカッコだな、刹那」

 

「シモンさん、ヨーコさん!・・・・あっ!?・・この姿は仕方なく・・・」

 

 

シモンに言われて気づいた、今刹那の姿はウサギのコスプレに肌の露出の多い姿である。一瞬で顔を真っ赤にしてしまい慌ててへそなどを隠した。

恥ずかしがる刹那を置いて、ネギは懐中時計をシモンに自慢気に見せた。

 

 

「シモンさん!ヨーコさん!こんにちは!見てくださいこれ、超さんがくれたんですけどタイムマシンなんです!」

 

「「!?」」

 

 

まるで子供がおもちゃを自慢するかのようにネギはカシオペアをシモンたちに見せる、その姿に刹那は苦笑していた。

 

(まったくあんなにハシャいで・・・・・・ん?)

 

しかしその時異変に気づいた、シモンとヨーコの顔がとても厳しく険しい顔をしていたからだ。

 

(えっ・・・・シモンさん・・・・ヨーコさん?)

 

いつものように笑い飛ばしてくれると思っていただけに刹那も、そしてネギも今のシモンとヨーコの真剣な態度に何かを感じ取った。

そしてそんな自分たちの疑問をさらに深めるかのように超がシモンたちに

 

「悪いネ二人とも、先手を取らせてもらったヨ」

「そうか・・・・じゃあ今ここにいるのは?」

「お察しの通り目の前にいる刹那さんとネギ坊主は少し先の未来から来た二人ネ!」

 

意味不明な会話を始めた。そもそも超とシモンたちが関わりを持っていることに驚いた。

確かにシモンは修学旅行にも来たが、それ以外で超とシモンに関わりがあることを知らなかった。

さらにヨーコも超と知り合いみたいである。しかもそれはあまり良好な間柄ではなさそうである。

 

(先手?何のことです?それになぜシモンさんとヨーコさんが超さんと・・・・・・・それに・・・なぜ・・)

 

刹那の疑問、ネギも同じことを考えていた。

 

(何で・・シモンさんが・・・・超さんを睨んでいるんだろう・・・)

 

人外だろうと魔法使いだろうと、分け隔てなく接するシモン。だからこそネギたちも慕っている。

しかしそのシモンが自分のクラスの生徒に対して明らかに敵意を持った眼差しで睨んでいる。いつものシモンを知っているだけに刹那もネギもこの事に戸惑っていた。

彼らが何を話しているかは分からない、しかしこの険悪なムードは良くないと思い、刹那とネギはあわてて口を挟む。

 

「シモンさん、超さんと何かあったんですか?先手とは一体何のことですか?」

「そうですよ~、もっと仲良くしてください!」

 

しかしシモンから帰ってきた言葉は想像していなかった言葉だった。シモンは少し自分たちを悲しい目で見つめ、

 

 

「ネギ・・・刹那・・・お前たちがどれだけそれを使うかは分からない・・・でも・・・それに頼る限りは、俺は何も言えない・・」

 

「「!?」」

 

 

この言葉に二人はまるでハンマーで頭を叩かれたかのような衝撃を受けた。

自分たちにどんな状況だろうと力強い言葉で奮い立たせてくれたシモンが初めて自分たちを拒絶するような態度をしたからである。

 

 

(えっ?・・・シモンさん・・・なぜ・・なぜ・・そんな目で見るんですか?・・・・ヨーコさんまで・・なぜ・・・・)

 

 

刹那の足はガタガタ震えている。

 

(シモンさん・・・・シモンさんが私にかつて言葉をくれたから・・・・あの修学旅行からシモンさんの大きさに触れ、私はあなたをどこまでも信じるようになった、・・・なのに何故・・・・・今になってそんな目で私を見るんです・・・)

 

ネギも同じだった。

 

(シモンさん・・・どうして・・・・いつものシモンさんなら笑って僕の頭を撫でてくれたのに・・・・・どうして・・・・)

 

呆然と立ち尽くすネギと刹那。そんな二人を置いて超とシモンは自分たちには分からない話をしている。

 

「やるじゃないか超、こんな先手は予想外だった」

「ふふふ、ネギ坊主を仲間に引き入れグレン団と戦うにはこれぐらいのズルは当然ネ!」

 

仲間?グレン団?

グレン団という名前はネギも刹那も何度か聞いたことがある。詳しくは知らないがシモン、ヨーコ、ブータたちのチーム名である。美空は知っているようだった。自分たちも何度か聞こうとしたが、結局今まで詳しい話を聞くことが出来なかった。

そしてそのグレン団という名前を超が口にしている、もはや疑問は深まるばかりだった。

 

「シモンさん・・・・それに超さん・・・・仲間?グレン団?何のことを話しているのですか?」

 

震える声でそれだけを搾り出した刹那、しかしシモンは先ほどと同じ目で刹那を見つめ。

 

「・・・・知りたいことがあれば・・・・明日になる前に会いに来い・・・」

 

それだけを言ってその場に背を向け立ち去った。

 

 

「まっ・・・待ってくださいシモンさん!?一体・・・・一体何があったんですか!?」

 

 

ネギが叫ぶ。しかしシモンもヨーコもその言葉に振り返ることも無く、何も言わずに離れて行った。

呆然とするしかないネギと刹那。そんな二人に超は明るい声で口を開く。

 

 

「アララ、嫌われたネ」

 

「「!?」」

 

 

その言葉を聞いて、刹那は超の胸倉を掴む。その表情は悔しさで歯を力いっぱいかみ締めていた。

 

 

「シモンさんたちに何をした!?貴様は何を知っている!」

 

「ふふふ・・・そんなに悲しいのかな、シモンさんに拒絶されて・・・・」

 

「き・・・貴様!」

 

「落ち着いてください刹那さん!喧嘩はダメですよ!」

 

 

二人の間に慌てて入るネギ。しかし刹那も納得するはずが無い。

 

「ネギ先生、あなただって・・・・」

「それでも喧嘩はダメです!」

 

ネギだってまだショックを受けているはずだが、それでも冷静であろうとしている。

この姿を見て刹那もようやく超から手を離した。そしてネギはゆっくり超へ振り返る。

 

 

「超さん、グレン団というものを僕は良く知りませんけど、それはシモンさんたちのことですね・・・・」

 

「ウム、その通りネ」

 

「先ほど超さんは僕たちを仲間に引き入れてグレン団と戦うと言っていました・・・・それはつまり・・・」

 

 

超はその言葉にふたたび怪しい笑みを浮かべ、

 

 

「ネギ坊主・・・・私はシモンさんたちと喧嘩中ネ・・・」

 

「そんな!?シモンさんたちが誰かを嫌いになるなんてありません!」

 

「ふふふ、シモンさんもヨーコさんも人間ネ。ネギ坊主も刹那さんも実はシモンさんたちをあまりよく知らないネ」

 

 

超の言葉に彼らは言い返せない。事実そうなのである。

 

「ネギ坊主・・・・・今は思う存分学園祭を楽しむといいネ、そのためにそのカシオペアを渡したのだから・・・・・ただし・・・・」

 

ネギはゴクリと息を呑む、

 

 

「よく考えるといいネ自分の道を、ネギ坊主はシモンさんではない、ネギ坊主の自身の答えを導き出すネ」

 

「道?・・・答え?・・・・・」

 

「そう、シモンさんたちが私を嫌うのは、シモンさんが信じて歩いてきた道の先にある答えによるもの。ネギ坊主がこれから歩き、そして辿り着く答えがシモンさんと同じとは限らないネ」

 

「超鈴音・・・・何のことを話している・・・・」

 

「刹那さんも同じネ。シモンさんを慕うのは間違っていないが美化しすぎるのも問題ヨ。シモンさんも人間ネ、弱いときもあれば・・・・・・人の意見と違える時も・・・道を間違えることもある・・・・・」

 

「シモンさんが道を違えるだと!?それは貴様が正しいから貴様の仲間になれとでも言うつもりか!?」

 

 

刹那の言葉に超は先ほどまでの表情を崩し、いつものように明るい笑顔を見せた。

 

 

「安心するネ!ただシモンさんにいつまでも頼っていたらダメという事だけヨ、自分の道は自分で見つけるネ!」

 

「超さんは・・・・シモンさんのことが嫌いなんですか?」

 

 

ネギには、超とシモンたちの間に何があったかは分からない。

彼らの言う戦いというのも分からない。しかしそれだけは気になった。

もし彼らが単純に互いに嫌いあって対立しているのであれば黙っているわけにはいかなかった。しかし超は笑顔で否定した。

 

 

「そんなこと無いよ・・・・むしろ大好きネ・・・だからこそ許せないこともあるネ・・・・・」

 

 

グレンラガンに憧れた超。しかしそのグレンラガンこそが超を失望させた。だからこそ超は憧れたグレンラガンとシモン、そしてグレン団との決別のために、シモンに決闘を申し込んだのである。

しかしネギたちにその理由を言うことは出来ない。超はただそれだけを言ってその場から立ち去った。

 

 

「超さん!?」

 

「学園祭はゆっくり楽しめばいいネ」

 

 

超は手だけを上げてそれだけを言い残した。後に残されたネギと刹那、

 

 

「やはり、超さんはイマイチ信頼できません」

 

「分かりません・・・・・ですがもし本当に超さんとシモンさんが喧嘩しているのなら仲直りさせてあげたいです・・それが戦いになるならなおさらだよ・・・」

 

「兄貴、そういう感じじゃなかったぜ」

 

「どういうことカモ君?」

 

 

カモの言葉にネギと刹那が注目する。

 

 

「超も旦那も少なくとも憎しみ合ってるわけじゃねえ。おそらく自分たちの信念がぶつかり合ってるんだろ。そしてそれが自分たちだけの信念だから俺たちには何も言わねーんじゃねえか?」

 

「つまり・・・道をまだ決めていない僕には口出しできないってこと?」

 

「どうだろうな~、そもそも何で超と旦那が喧嘩中なのか理由が分からねえ内は、どっちの味方になるもねえだろ。シモンの旦那は夜また来いって言ってたから、スケジュールを終わらせたら行ってみりゃいいじゃねえか?」

 

「そうですね、私もそれが正しいと思います」

 

 

カモの考えは正論である。理由が分からないならどうしようもない。

しかも超もシモンもその理由を今話す気はなさそうである。ならば先に予定を終わらせようという意見は間違ってはいない。しかし予定を全てこなすには当然タイムマシンを何度も使う必要がある、

 

その行為が徐々にシモンたちとの距離が離れることになるとは、まだ誰も想像していなかった。

 

 

 

 

 

 

「「たいむましん!?」」

 

二つの驚きの声が上がる、

 

「うっそ~、魔法とか色々見てきたけどこんなのがあるなんてね~」

「ほんまや~、こんなんどうしたん?」

「はい・・・・実は超さんに貰って・・・・・」

「へ~、こんなの作っちゃうなんてサスガね~」

 

カシオペアを手に持ち、アスナは目を輝かせて感動している。

 

今からのどかとのデートの準備のために、ネギたちはアスナと木乃香と合流して、その際にこれまでの経緯について説明した。

タイムマシンの説明を聞いてアスナも木乃香も最初は信じられないような反応だったが、これまで見てきた常識はずれの日常にすっかり慣れてしまったため、タイムマシンを信じるのも時間はかからなかった。

 

「じゃあこれがあれば学園祭もバッチリ楽しめるじゃない!それに本屋ちゃんともデートに長い時間取れるし言うこと無いじゃない!」

「せやな~、なあなあ、ウチもあとで一緒に使わせてや~、まだ回ってへん所いっぱいあるんよ」

「はい・・・わかりました・・・・」

 

「「?」」

 

タイムマシンを聞いて興奮気味のアスナと木乃香、しかしネギの反応はイマイチである。

 

「ちょっとネギ~、これからデートなんでしょ~、そんな元気ない顔で本屋ちゃんに会う気?」

 

ネギの態度にアスナは少しムスッとして言う。

しかしネギはその言葉に対してもあまり反応を示さない。そのネギの態度に対して事情を知る刹那が答える。

 

 

「アスナさん・・・実は先程シモンさんとヨーコさんに会ったんです・・・・・」

 

「シモンさんに?ふ~ん、シモンさんにタイムマシンについて話したの?」

 

「それなんですが・・・実は・・・・・」

 

 

刹那は先程のシモンとヨーコの自分たちに対する態度を説明した。

そしてそれを聞いたアスナたちはタイムマシンを聞いたときと同じぐらいの衝撃を受けた。

 

「はあ!?シモンさんに拒絶されたーー!?」

 

アスナの声は辺り一面に聞こえるほど大きなものだった。通行人が何事かと振り向いている。

しかしアスナにはそれを気にする余裕は無い。なぜならシモンが自分たちを拒絶するなど信じられないからだ。

 

 

「いえ・・・拒絶というわけではないのですが・・・・」

 

「そやよ、せっちゃん!シモンさんがウチらを嫌うなんて絶対あらへん!」

 

「そうよ!だってあのシモンさんよ?重大なことも気合で片付けるあの人がよ?そんなことあるわけないじゃない!」

 

「でも・・・シモンさんもヨーコさんも・・・・僕たちをとても悲しい目で見ていたんです・・・・・」

 

「はい・・・・それに・・・・何も言葉をくれなかったんです・・・・今のお前たちには何も言えないと・・・・」

 

「う・・・ウソでしょ・・・・」

 

 

アスナも木乃香も信じられなかった。シモンに限ってそんなはずは無いと思っている。

しかしネギと刹那の態度はそれが事実だったと物語っている。しかしそれでも信じられない、いや信じたくは無い。

 

 

「そんなんあらへん!きっと・・・何か事情があるんよ!」

 

「木乃香さん・・・でも実際僕たちは・・・・」

 

「ううん、だってシモンさんは・・・・・いつだってウチらを助けてくれた・・・何度も何度も立ち上がって・・・せやのに急にウチらを嫌いになるなんて・・・・ウチは絶対信じひん!」

 

 

木乃香の悲痛な叫びが響き渡る、その言葉を聞いてアスナもうなずく。

 

 

「そうよ。木乃香の言うとおり!シモンさんはそんな人じゃない、むしろこんな所でグジグジ暗くなっている方がよっぽど嫌われるわよ!」

 

「アスナさん・・・・」

 

「ネギ、シモンさんに言われたでしょ・・・・・自分を信じろって!シモンさんが信じる自分を信じろって、だったらアンタは自分が思うようにすればいいじゃない!今は目の前の事に集中して、それからシモンさんに会いに行こうよ!」

 

 

アスナの言葉に全員がハッとして顔を上げる。

 

 

「だ、か、ら、アンタはこれから本屋ちゃんを楽しませてきなさい!」

 

 

アスナはそう言ってネギの背中をバシンッと叩いた。

ネギはその力強さに少し背中を撫でたがすぐに笑顔で立ち上がり、そして力強く頷いた。

 

 

「はいっ!」

 

 

先程までの暗かった雰囲気が一気に明るくなった。その様子に木乃香も刹那も笑みを浮かべた。

 

 

「じゃあ今からネギ君のコーディネートしたげるわ~」

 

「そうよネギ、デートなんだから失礼の無いようなカッコでね!」

 

「はい!・・・でも緊張します・・・僕デートって初めてで・・・」

 

「ウチも明日シモンさんとデートや~、ウチも初めてやし・・・・アカン緊張してきた~」

 

「それを言うなら私だって高畑先生とデートよ・・・・・・」

 

「そうなんか~、・・・・・・・ん?」

 

「「「えっ!?」」」

 

 

聞き逃してしまうところだった。アスナの発言に一同が首をギギギとロボットのような動作でアスナに向ける、

 

 

「アスナさん・・・・た・・・・高畑先生と・・・」

 

「ハハハ~・・・・・・ニッ!・・・この間・・・電話してさ・・・」

 

 

照れくさそうに笑った。その答えを聞いて木乃香たちはあわてて詰め寄る。

 

 

「やりましたねアスナさん!」

 

「せや!よかったな~アスナ~、そっか~アスナ、ガンバッたんやな~」

 

「ありがと、まあまだ告白したわけじゃないんだけどさ・・・でも私も負けてらんないって思ってね」

 

「すごいですアスナさん・・・・尊敬します」

 

「大袈裟よ刹那さん、まだ告白したわけじゃないんだからさ~」

 

「それでもです!応援します!」

 

 

アスナも一歩を踏み出した、この勇気に彼らは心を打たれ賞賛していた。そのため彼らはこの時シモンとヨーコ、そして超のことはいったん頭から離れてしまった。


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