魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第39話 赤点

初日から盛り上がりを見せる学園祭。

それは生徒たちの出し物やイベントだけではなく、その空気に当てられて自分の気持ちを相手に伝えようと勇気を出している者たちもいる。

しかしその想いがこの日に実る可能性は限りなく低い。

告白防止のために動く魔法先生や生徒、そして一人のスナイパーによる活躍である。

 

今、学園祭期間中には数多く存在するカフェテリアの一つ。

そこは特に何の見栄えがあるわけでも、サービスが特別に優れているわけではない。

しかし向かい合って座り、優雅にコーヒーを飲む二人の女性が何者も口出しできない空間を作り出していた。

 

「ふ~ん、報酬のためね~、アンタ随分つまんない女なのね~」

 

相手を見下したように告げるその女は、通り過ぎるものは誰もが振り向くほどの美貌と色気を兼ね備えた赤い髪の女、ヨーコだった。

その隣にはエヴァの人形チャチャゼロが座っている。

そして、正面には……

 

「私は報酬さえもらえば誰にでもつくし、何でもする。私は自分の仕事をするだけさ」

 

ヨーコの発言をクールに返すのは、こちらもヨーコに負けないほどの美貌を兼ね備えた褐色肌の女性。

そのかもし出す大人の雰囲気にもかかわらず、実は中学生でネギの生徒、龍宮だった。

 

この二人にこれまで特に接点は無かった。

ヨーコがネギのクラスに顔を出した際に一度見ただけで会話をしたわけではない。

何故この二人が今こうしているのかは、ただの偶然である。

 

シモンとエヴァがデートに行ってしまったため、ヨーコは暇を持て余していた。その際に偶然告白間際の生徒たちを目撃した。しかし次の瞬間、告白しようとした生徒が何者かに撃たれ気絶してしまった。

射撃の達人ヨーコは即座に発砲位置を特定し駆けつけた、

 

「ガキのくせに随分背伸びしたこと言うじゃない」

「やれやれイキナリ現れて説教ですか?私は間違ったことはしていませんよ」

 

告白防止をしたのは龍宮。彼女は学園長に雇われこの学園祭期間中、告白防止のために働いている。

ヨーコが龍宮の元へ駆けつけた際に、ヨーコは龍宮に何かを感じ取った。そのため彼女と少し話をしたくなり彼女を誘った。

龍宮もヨーコのことは名前と顔だけ知っていた。あとシモンの初恋の人であり昔からの友人であるということを。

それほど親しくはないが、シモンは修学旅行でともに戦い、少しだけ興味もあった男である。

そのシモンの友人であるヨーコの誘い。少し興味が沸いたため仕事の休憩時間ということで、彼女は合意した。

 

最初は他愛の無い会話。なぜならお互いはほとんど初対面と言ってもいいほど接点が無かったからである。

しかし今は徐々に二人の間の空気が徐々に重くなっていた。

 

「そうね間違ってないわ、アンタはアンタの仕事をしているだけ、それにケチをつけられないわ・・・でもね・・・」

 

そして軽く睨みつける。

 

「アンタなんか気に食わないのよ」

 

ヨーコには珍しい言葉だった。彼女は余程のことがないかぎり人を嫌うことは無い。しかし彼女は龍宮の行動に対して不快感を感じた。

 

 

「おやおや、大人の女性と思っていたが随分と子供じみたことを言う、私の行動にケチつけるのかい?」

 

「何も問答無用で撃ち抜くことは無いんじゃない?せっかく勇気を振り絞ろうとしたのに、アンタが撃った人、この学園祭期間中は動けないわよ?」

 

 

龍宮の打つ麻酔弾は神経毒が塗られている。命に別状は無いがこの学園祭期間中は二度と告白できないようになっている。

仕事だけこなして、他はどうでもいい。そんな龍宮の行動にヨーコは癇に障った。

 

 

「同じ銃を扱う人間にしては随分甘い人なんだな・・・・」

 

「どういうこと?」

 

 

龍宮の言葉にヨーコは少しカチンと来た。しかし龍宮は続ける。

 

 

「初めてあなたが教室に来たときから気づいていたよ、あなたから発する火薬の匂い、相当昔から使い込んでいるんじゃないかい?」

 

「そうね、私も昔は色々あったからね」

 

「それほどになるまで、どれほどの屍を乗り越えてきたんですか?そんなアナタが甘いことを言わないでもらいたい。私は学園長の依頼を遂行しているだけ、ましてや相手を殺しているわけではない、それともアナタは相手の心を縛る魔法を発動させてもいいと?」

 

 

世界樹の魔力により、学園祭期間の告白は必ず成功する。相手の気持ちを一切関係なく相手を縛り付ける魔法。ヨーコ自身もその魔法について嫌悪していた。しかしそれを防ぐために動く龍宮のやり方も気に入らなかった。

 

 

「でもそれはアンタたちの都合でしょ、少なくともアンタが撃った人たちは魔法の力に頼るどころかその存在すら知らない人たち、精一杯の勇気と気合を出して打ち明けようとする気持ち、それを問答無用で台無しにするやり方が気に食わないのよ」

 

「そんなことは学園長に言ってくれ、私に言われてもどうしようもないよ」

 

「そうね、アンタのようなガキにそんな仕事を任せる学園長ってのも気に食わない、でもそれを仕事と割り切って平然と実行するアンタもね、魔法使い?何様のつもりよ!」

 

 

決して怒鳴りあっているわけではない。しかし彼女たちの座るテーブルの周りには誰も腰を掛けず、誰もが近寄りがたいギスギスとした空気が場を支配していた。

ヨーコは龍宮が、そして魔法使いたちのやり方、それが気に入らなかった。しかしそんなヨーコに対して龍宮はため息を吐く。

 

「ふう、シモンさんの仲間にしては随分つまらないことを言う、あの人なら細かいことは気にしないんじゃないかい?」

 

龍宮は少しガッカリしていた。表と裏の世界を問わずに今時珍しい熱血男のシモン、そのシモンの友人であるヨーコがどんな人物かと興味を持ったが、ヨーコの言葉は龍宮にとっては実につまらなく感じた。

しかしヨーコはその言葉にニッと笑った。

 

 

「残念ね、私はシモンじゃない、私はヨーコよ、アイツと私は別々の人間なんだから考え方違うこともある、アイツと私が同じなのはその掲げる誇りと信念!そして魂だけよ!」

 

「ほう・・・」

 

「それとアンタはシモンをあまり分かっていないようね、細かいことを気にしない?告白は勇気と気合をぶつける一世一代の大勝負よ!それを台無しにすることを細かいことでアイツが片付けるとは思わないわ」

 

「!?」

 

 

たしかに龍宮はそれほどシモンと親しいわけではない。最近自分のクラスメートやルームメイトの刹那たちはシモンと親しくなっているようだが、自分の中でのシモンのイメージはあまり細かいことを気にしない大雑把な人間だと思っていた。

 

そのため細かいことを気にしないシモンが気にすること、それは細かいことで片付けられないものである。ヨーコの言葉はそう聞こえた。

 

「なるほど・・・・たしかにあの人はそういう人なのかもしれないね・・・」

 

龍宮はもう一度ため息をつく。

 

 

「ではどうしろと?私はハッキリ言って告白防止以上のことをする気は無いよ、わざわざエリア外へ誘導するのも面倒だ。もしあなたがシモンさんと同じなら、口だけでなく行動で見せてくれないかい?」

 

「私を試そうってこと?上等じゃない」

 

 

ヨーコはガタッと立ち上がった、その笑みは自信に満ち溢れていた。その表情を見て龍宮も笑みを返す。

しかし次の瞬間事態が一変する。

 

「えっ?」

「むっ!?」

「ケケケ、何ダカマズイコトニナッテルジャネエカ」

 

突然世界樹が光り出し、強い魔力を発したのである。

急なことに事態を把握できないヨーコ。しかし龍宮の表情は少し焦っていた。

 

 

「まずいね、告白生徒が出たようだ」

 

「えっ?」

 

「ホウ、初日カラトバシテル奴ガイルンダナ」

 

 

感心したように言うチャチャゼロ、そして龍宮は

 

「やれやれ、どこかの誰かさんが邪魔をしなければ防げたものを、どうしてくれるんだい?」

 

理由はどうあれ、一方的な理由で邪魔をしてきたヨーコに責任があるという口ぶりだった。

しかしヨーコは大してあわてる様子もなく、黙ってチャチャゼロを掴み上げ、世界樹の方角を見た。

 

「まだ終わってないわ」

「終わっているさ、世界樹の魔力は絶大さ、相手の心は完全に支配された」

「人の心はそんなに弱くない、魔法の力で少し乱されているなら私が正気に戻して見せるわ!告白云々は正気を取り戻させてからよ!」

 

迷いのない瞳でヨーコは龍宮に告げる。

 

 

「本気かい?」

 

「私はいつだって本気よ、私を誰だと思っているの?」

 

「!?」

 

 

その言葉とともにヨーコは駆け出した。

あとに残された龍宮はヨーコの背中を見て呟いた。

 

「前言撤回、あなたはシモンさんの仲間だ・・・・」

 

もう一度ため息を吐いて

 

「ふう、超よ、お前の言うとおり彼らは相当手強いかもな」

 

一言呟いて龍宮もゆっくり立ち上がりヨーコのあとを追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはネギの一言から始まった。

 

「何かしてほしいことはありませんか?僕に出来ることがあれば何でもします!」

 

のどかとのデート中、告白危険レベルまで達したのどかが他の魔法生徒に見つかり、一緒に逃げ出したりしていてデートが台無しになってしまった。

せっかくのデートを台無しにしてしまったことに申し訳なさを感じたネギはお詫びの意味を込めてのどかにそう告げた。

 

「し・・・してほしいことですか?でもそこまでしていただかなくても・・・・」

 

ネギの言葉にのどかは少し考えてしまった。

 

(ネギ先生は本当に優しいなー、私なんかの為に・・・・私は全然台無しになったなんて思っていないのに・・・・)

 

たしかに邪魔が入ったかもしれない。しかしそれでも今日はのどかにとってとても満足な日だった。

引っ込み思案な自分がネギをデートに誘い、わずかな時間でもデートをすることが出来た。それは彼女にとってとても幸せな時間だった。

しかしどこまでも紳士なネギも一歩も引かない。

 

(ネギ先生やっぱりかっこいい・・・・やっぱり私ネギ先生のことが・・・・・)

 

その時のどかはハッとした。

 

(でも・・・ネギ先生はヨーコさんのことを・・・・)

 

最近いきなり現れたシモンの友人である大人の女性ヨーコ。そのヨーコにネギが一目惚れしたのは周知の事実だった。

それを思い出し、先程まで幸福に包まれていたのどかに突如黒い感情が沸き起こる。

 

 

「ネギ先生は・・・・ヨーコさんのことをどう思っているんですか?」

 

「えっ!?ヨ・・ヨヨ・ヨーコさんですか?急になな、何ですか?」

 

「答えてください!」

 

 

いつもの大人しい彼女らしくないほどの大きな声。のどかはネギの両肩を強く掴み叫んだ。

彼女自身も驚いたかもしれない。しかし今はその思いを振り切ってネギの言葉を待つ。

 

「ヨ・・・ヨーコさんは・・・とても綺麗で・・・暖かい・・・素敵な女性です・・・・」

 

のどかの気迫に圧されて、ネギは顔を少し赤らめて答える。しかしその答えを聞いたのどかは少し目に涙を浮かべる。

 

(そう、・・・ヨーコさんはとても素敵な人・・・)

 

頭の中に強く凛々しいヨーコの姿が思い浮かぶ。そしてそのヨーコの姿を見て顔を赤らめていたネギの顔も。

 

(私は出会ったときからネギ先生が好き・・・)

 

だからこそ、その想いを修学旅行のときに打ち明けた。

 

(ずるい・・・私はヨーコさんに何も敵わない、スタイルも強さも・・・ネギ先生が好きになるのも分かるけど・・・・・でも・・そんなの・・やだ・・)

 

だからこそ、どうしても受け入れることができない。

 

「ネギ先生・・・」

「はっ・・・・はい」

「何でもしてくれるって言いましたよね・・・・・」

「はい・・・・」

 

のどかはキッとネギを睨みつけ。

 

 

「それなら・・・私・・・・キスしてほしいです・・・・」

 

「!?」

 

 

ヨーコへの対抗意識。いつもの彼女ならこんな発言をしたら自分の言葉に慌てふためくのだろうが今は違う。

のどかは力強い瞳でネギに伝える。予想もしていなかった言葉にネギは口を空けたまま固まってしまう。

しかしこれが世界樹に反応してしまった。

 

 

「「!?」」

 

 

急にネギの体を光が包み込む、その瞬間ネギも察知した。

 

「しまった!?このエリアは・・・・」

 

しかしもう遅い。一度激しく光った光が収まり、そこにいたのは、少し目がうつろになったネギだった。

世界樹の魔力に飲み込まれたネギが発した次の一言は。

 

 

「あの~、ネギ先生・・・今のは・・・・」

 

「わかりました・・・」

 

「えっ!?」

 

「ではキスさせていただきます」

 

「ええええええ!?」

 

 

まさかネギが了承してくれるとは思わなかったため、のどかは焦ってしまった。

しかし正気の状態ではないネギはさらなる言葉を告げる。

 

 

「優しい軽いキスがいいですか?それとも激しいディープキスですか?」

 

「はわくぁわわわ×A○■~~!?」

 

 

自分から言い出したのどかだが今のネギの発言に完全に取り乱したのどか。頭の中が完全にパニックになっていた。

 

(えっ、えっ!?どうゆ~こと~、ネギせんせ~が・・・・ディ・ディープ~・・ネギせんせ~が壊れた~?・)

 

正気ではないネギの様子に気づいたのどかだが、どうすればいいか分からない。そして・・・

 

 

「でも・・・・せっかくこう言ってくれてるんだし・・・・いいんだよね・・・・で・・・では、は・・激しいディープキスを~~」

 

 

爆弾発言をしてしまった。自身の心臓の音を自分でも感じることが出来るほど彼女は緊張していた。

しかしそんな彼女の発言もネギはサラッと真に受け、

 

「わかりました激しくイカせてもらいます」

 

ネギはのどかの肩に引き寄せて、頬に手を添えてゆっくり自分の唇を近づける。

のどかは体全体がフルフル震えているが、顔を真っ赤に染めながら瞳を閉じた。

二人の唇が徐々に近づいていく、そしてそれがゼロになる寸前の瞬間。

 

「ぬああにやってんのよアンタたちーーー!?」

 

ハリセンを振りかざし二人の間に割って入ったのは、アスナ、そして刹那、カモ、木乃香だった。

ネギたちのデートを最初覗き見していた彼女たちだったが、急に逃げ出したネギたちを追いかけてきたようだ。

そして世界樹が光りだしたかと思えば二人はキスしようとしている。答えにたどり着くのは簡単だった。

 

 

「まずいぜ!初日っつうのになんて威力だ」

 

「アカン!ネギ君の目正気やない!?」

 

「のどかさん、ネギ先生に何を言ったんですか!?」

 

 

ネギは世界樹の魔力にやられた、その原因であろうのどかを全員が振り向く。

 

 

「え・・・あのう・・え~と・・・・ディ・・・ディ~プキスを~」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

一瞬間を置いて

 

 

「「「「えええええええーーーーー!?」」」」

 

 

のどかが意外に大胆であることは知っていたが、まさかそこまで要求していることに全員があごが外れそうになるくらい大口を開けて驚いていた。

 

「皆さんお邪魔虫ですか?実力行使しますよ?」

 

キス魔と変貌したネギがふらふらと近寄ってくる。その表情に一同顔を引きつらせる。

 

 

「しょっ、しょうがねえ取り押さえろ、姐さん!」

 

「わかったわ!刹那さん行くわよ!」

 

「は、はい!いきますネギ先生!」

 

 

のどかを後ろへ置き、刹那とアスナがネギを二人がかりで取り囲む、しかし

 

 

「実力行使です」

 

「むっ!?」

 

 

ネギの容赦ない掌底が刹那を襲う。刹那も紙一重で交わしたがあまりの鋭さに汗が噴出した。

 

ネギの反撃にアスナは後ろからハリセンを振り上げる。しかしネギは難なくそれを交わし、小さな杖をアスナに向ける

 

 

「風花・・武装解除(フランス・エクサルマティオー)!!」

 

「くっ!?」

 

 

咄嗟にハリセンを盾にして直撃は防いだが、今のでアスナも制服が少し破れた。

 

「こんのエロガキーー!」

 

ダメージはないが今の攻撃に怒り心頭のアスナはハリセンを勢いよく振り回しネギに襲い掛かる。しかし研ぎ澄まされたネギの動きには決して当たることはない。

 

 

「ちょっ・・・こいつめちゃくちゃ強くなってんじゃない!」

 

「やりますねネギ先生!」

 

 

ネギの強さに焦るアスナ、一方で刹那はネギの強さに武人として少し楽しく感じていた。

しかしそれが油断を招いた。一瞬で間合いを詰めたネギが指を弾いて刹那の前で魔力を弾かせ目くらましをする。

 

「しまっ!?」

「双撞掌!!」

 

隙を作ったが、かろうじて反応して防御した刹那、しかしその威力に押されて壁に激突する。

 

「うあっ・・・・しまった・・・」

「せっちゃん!?アカン今のネギ君無敵モードや!」

「や・・・やべ~、今の兄貴はキスするまで止まらねえぞ・・・・」

今のキス魔と変貌したネギとすれば・・・・・想像しただけでアスナたちは顔を真っ赤にしてしまう。

「も・・・もうやめてください!」

 

突如のどかが叫ぶ

 

 

「こうなったのも私の責任です!だから・・わわ・・私がキスしま・・・いえされますーーー!」

 

「「「「んなっ!?」」」」

 

「何言ってんのよ!こんなネギにディープキスなんてされたら・・・・・」

 

「でもこうなったのは私の所為みたいですし・・・・・・それでネギ先生が元に戻るなら・・・・・」

 

 

事態の状況はよく分からなかったが、少なくともネギの変貌には自分に責任があると判断したのどかは、自らを生贄にすることを震えながら宣言した。

しかしその時だった。

 

 

「あなたの勇気と気合の所為だなんてそんなことありえないわ」

 

「「「!?」」」

 

「責任があるとすれば・・・・魔法なんかに飲み込まれたアンタの弱さよ・・・ネギ!」

 

 

彼らの前にヨーコが颯爽と現れた。

いつものような露出の多い服装にライフルを肩に担ぎ悠然と立っている。

そしてそのすぐ後に龍宮も駆けつけた。

 

 

「ヨーコさん!?・・・それに龍宮さんまで!?」

 

「た・・・龍宮・・なぜ?」

 

「油断したようだね刹那。もっとも、そうでなくても今のこの子は手強そうだけどね」

 

 

龍宮は変わり果てたネギの姿を見て呟く。意外な組み合わせの登場に一同少し反応が遅れる。そんな彼女たちの反応を無視し龍宮はヨーコへ振り向く。

 

 

「それでどうするんだいヨーコさん?本当なら撃って眠らせるのが手っ取り早いがそれはあなたのやり方ではないんだろ?」

 

「どうするって簡単じゃない、あの少年の目を覚ましてやればいいんでしょ?」

 

 

まるであたりまえかのようにヨーコが呟くが、今のネギの強さを目の当たりにしたアスナたちは首を横に振る。

 

 

「それが簡単じゃないのよヨーコさん、今のアイツすごく強いのよ!」

 

「せや、アスナとせっちゃんの二人がかりでも敵わんのや」

 

「何か策があるんですかいヨーコの姉さん?」

 

 

アスナたちの疑問にヨーコはフッと笑う。

 

 

「どうするか?気合でぶん殴ってやるのよ!」

 

「「「「やっぱり!?」」」」

 

 

シモンとある程度長い付き合いのせいか、ヨーコの発言も何となく予想できたアスナたち。

しかしそのヨーコの言葉にのどかが反対する。

 

「でもっ!・・・私が告白なんかしなければ・・・ですから・・・・私がネギ先生とキスするだけで元に戻るなら・・・・」

 

その言葉を聞いてヨーコはのどかにツカツカ歩み寄りのどかの頭に手を置いた。

 

「あの・・・」

 

突然置かれた手にのどかは戸惑いながら顔を上げた、するとそこにはニッコリと笑みを浮かべるヨーコの顔があった。

 

 

「目を見ればわかるわ、あなたが本気でネギを好きだって言うのが・・・」

 

「・・・・ヨーコさん・・・・」

 

「そしてその想いを打ち明けたあなたの勇気は誇りに思えど、後ろめたく思うことなんてないわ!」

 

 

のどかは黙ってヨーコの言葉を聞く、そしてそれはこの場にいる全ての者もでもある。

 

「その真剣な想いをあんなヘロヘロした状態の奴なんかに唇一つ許したりすることなんてない!自分の誇りを安っぽいものにすることはないわ!」

 

ヨーコは親指を突き上げウインクする、そしてのどかの頭から手を離しネギの前に立つ。

 

「魔法がなんだっていうの?乙女の想いを前にして自分を保てない男は、お仕置きが必要ね!いくわよネギ!」

 

するとヨーコは肩に掛けたライフルを無造作にその場に置き、素手でネギに向かっていった。

 

 

「素手で!?無茶ですヨーコさん!」

 

「ちょっ・・ちょっとーーー!」

 

 

アスナたちの制止を振り切りヨーコは果敢にネギに向かっていく。

 

 

「ヨーコさん、どいてください、僕はのどかさんにキスを・・・・」

 

「あの子の唇は・・・今のアンタには勿体無いわよパンチ!」

 

 

ヨーコの渾身の力を込めた拳をネギに振り下ろすが、ネギは難なく捌く、

 

「排除です」

 

片手でヨーコの拳を捌いたネギは余った腕でカウンター気味の突きをヨーコに突く。

 

「くっ、フェミニストも台無しねっ!女に手を上げるのは最低よキック!」

 

しかしヨーコも体を一瞬で後ろに仰け反らせ回避する。

体を仰け反らせた状態のままヨーコは地面に体がつく寸前にネギに向かって、あびせ蹴りを打つ。

しかし中国拳法を使用するネギの前にヨーコの苦し紛れの蹴りは簡単にガードされる。

 

「まずい!?ヨーコさん!」

「やべえ、兄貴にはそんな攻撃は通じねえぞ!」

 

ヨーコの蹴りをガードしたネギはそのまま倒れこむヨーコに向かって拳を振り下ろす。

しかし誰もが直撃を確信していたが、ヨーコは体を捻らせスレスレのところで交わし、その場から飛びのいた。

 

「あぶな~、でもあのままじゃあ・・・」

「たしかに相当実戦で慣らした動きをしているが・・・・・あの程度では・・・・」

「ヨーコさん、我々も加勢します!」

 

ヨーコはシモンと違い幼いころから戦場を生身で駆けていた。

当然獣人だけでなく強大なガンメン相手だろうと生き延びてきた。ヨーコには危険回避能力が優れていた。そのため昔から戦場にいたにもかかわらず、その肌に目立った大きな傷がなかった。

しかしそれでも刹那たち気や魔法を扱うものから見れば一般的なレベル。ネギに敵うほどではないと刹那たちは判断した。しかしヨーコは加勢を拒否。

 

 

「なに言ってるのよ、私はこう見えても先生よ?悪ガキに拳骨くらわせることはあっても、人数集めてイジメたりしないわ」

 

「そんなこと言ってる場合では!?」

 

「そうよヨーコさん!?悔しいけどここは皆で」

 

 

引き下がらないアスナたちを見て龍宮はヨーコに告げる。

 

「刹那たちの言うとおりだね。アナタの力では勝てないよ、それぐらいわかるだろ?」

 

戦力差は明らか、しかしヨーコは龍宮に微笑む

 

 

「勝って誰に?」

 

「・・・誰も何も・・・「私は!」」

 

「私は勇気を出した女の子の想いを無駄にしたくないだけ。だから銃も魔法も必要ない、あんな悪ガキ、私の気合を纏った拳骨一つで十分よ!」

 

「「「!?」」」

 

 

ヨーコは再びネギに向かって駆け出した。

 

「「「ヨーコさん!?」」」

 

しかしネギのスピードはヨーコとの間合いを一瞬で詰める。

 

「くっ、がはっ!?」

 

ネギの突き出された肘がヨーコの腹部を直撃する。さすがのヨーコも回避できなかった。

 

「のどかさんとチュウです」

「・・・・・だからアンタには勿体無いのよ!!」

「あっ」

 

ネギの攻撃に前のめりに倒れそうになったヨーコは、そのまま踏ん張りネギの体に腕を回し自分に引き寄せ、ネギを抱きしめるような形で拘束した。

 

 

「つ~か~ま~えた!」

 

「!?」

 

 

体を捩じらせて必死にもがくネギ。しかしヨーコは腕の力を緩めない。

 

 

「スゲー捕まえちまった!」

 

「しかしここからどうするんです!?」

 

 

ネギを拘束したヨーコだがここからの手は無い、皆そう思っていた。しかし次の瞬間ヨーコの体が光に包まれた。

 

 

「あれは・・」

 

「シ・・・シモンさんと同じ光や・・・」

 

 

ヨーコの体から緑色の螺旋力。正確にはヨーコの体からではなく、ヨーコが首から提げているコアドリルから溢れ出した光がヨーコを包み込んだのだ。

 

「いくわよ、ネギ!」

 

ヨーコは拘束している片方の手を離し振り上げる。そしてそれを思いっきり振り下ろす。

 

 

「ネギーーー!歯をくいしばりなさい!!!!」

 

「!?」

 

 

螺旋力に包まれたヨーコの拳がネギの顔面を直撃し、ネギは一回転二回転しながら殴り飛ばされた。

 

 

「ちょっええええ!?」

 

「うっ・・・・ウソ・・・」

 

「ネ・・・ネギせんせ~が~」

 

「・・・自分も充分やり過ぎだと思うが・・・・」

 

 

あまりの威力に一同唖然としてしまった。それほどまで強烈な拳だったのである。

殴り飛ばしたネギを見つめながらヨーコは呟いた。

 

 

「まだまだ・・・・・・赤点ね♪」

 

 

力強い笑みを浮かべていた。

 

 


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