魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第4話 マホウはそんなに偉いのか?

「おのれーこれで次の満月までお預けか・・・ぼーやがパートナーを見つけていない今がチャンスであることに変わりないが・・・」

 

ようやく望みが叶えられると思った寸前に、思わぬ邪魔が入ったことによりエヴァはかなり不機嫌だった。

 

「しかし神楽坂明日菜め・・・」

 

さきほどから空を飛んでるパートナーの茶々丸の肩の上でエヴァは何度も同じことを考えていた。だから油断していた、

空を飛んでる自分達に誰かが叫んできたからだ。

 

「おーい!そこで飛んでるオマエー!」

「はっ!?」

「マスター申し訳ありません、人に見つかったようです」

「なっ!?茶~々~丸~何やってるかーーー!」

「申し訳ありません、しかしマスターが先程から「なんだ貴様ー!?まさか私の所為だとでもいいたいのか~!」・・・・・・・いえ」

 

 

思わぬアクシデントに元々機嫌の悪かったエヴァはさらに悪くなった。

しかし一般人に見つかったのなら無視するわけにもいかない、

しぶしぶエヴァは茶々丸に命じ、地面に下りていった。

そこにいたのはシモン、異世界に来てはじめて彼は人間以外の人物と出会った。

 

「すごいじゃないか。まさか空を飛べる人間がいるとは思わなかった」

 

そう言ってきたシモンをエヴァは少し品定めするように見る。

 

「見ないツラだな・・・魔力をまったく感じないということは一般人か・・・おい茶々丸こいつは誰だ?」

「・・・・マスター今私のデーターベースを調べてみた結果、彼はこの学園の生徒でも職員でもありません」

「はっ?一般人であり、まさか侵入者だと?おい貴様ここで何してる!」

 

茶々丸の言葉に少し警戒したエヴァはシモンを睨み付けて言った。

 

「俺はシモン今この近くの教会で世話になっている」

「教会だと?」

「ああ、それでさっき向こうで女の子が襲われて今犯人をその子の先生と友達が追っているみたいなんだ。何処にいったか知らないか?」

 

 これまたよく分からん奴に見られてしまったもんだとエヴァは思ったものの、正直、深く考えるのもメンドクサイと思っていた。

 今はただ、自分の目的が達成できなかったことでの腹立たしさの方が上。

 とりあえず、記憶だけ消しとけばいいか。思っていたのはそれだけだった。

 

「おい茶々丸、こいつを拘束しろ」

「了解しました」

 

エヴァはたいして考えることをせず茶々丸に命じた。

茶々丸はその言葉に従い、シモンに向かっていった。

 

「申し訳ありません、あなたを拘束させてもらいます」

「なっ、おっと・・・おい、いきなり何をする!」

「むっ・・・」

 

シモンの背後に高速で回りこんだ茶々丸。

しかしシモンは咄嗟にその場から飛びのいて、自分を取り押さえようとする茶々丸から逃れた。

 

(この娘、すごい速い・・・さっきも空を飛んでいたし・・何者だ?それともこの世界では普通なのか?)

 

シモンは思わずギョッとしてしまった。

自分の知らない力。想像を超える力。未知の世界の片鱗。

しかし、

 

「俺は今別の奴を追っている。オマエ達に用はない」

 

茶々丸の動きに驚いたシモンだが、自分のやるべきことを思い出したシモンは二人に向かって告げる。

だが、エヴァはエヴァで、特に興味の無さそうな顔から、少しだけ顔つきが変わった。

 

「ほぅ、茶々丸の動きから逃れるとは一般人にしては上出来だ。だが、用ならあるだろう、キサマの探している者は私のことだ。」

 

シモンの発言にエヴァはニヤリと笑って告げた。

どうせ記憶を消すのだから、バラしても問題ないだろうと。

しかし、シモンにとっては簡単に聞き流せる問題ではない。

 

「な・・なんだと!?オマエが犯人か!オマエを追いかけていた者が二人いたはずだ!そいつ等をどうした!?」

「ん?・・・ああ、ぼーやと小娘のことか・・・貴様、そんなことで私を探していたのか? あの二人ならもうとっくに家に帰っているさ。しかし今は自分の身を心配しろ」

 

無事。とりあえずその言葉にだけは安心した。

エヴァの言葉にシモンはホッと胸を撫で下ろした。

 

(よかった、間に合わなかったみたいだけど、あの女の子の友達は無事みたいだ)

 

約束通りにはいかなかったようだが、とりあえず無事でよかったとシモンは安心した。

そしてゆっくりエヴァを睨み付けた。

 

「なぜオマエ達はあんなことを?それに俺の身だと?俺をどうするつもりだ!?」

「安心しろ、殺しはしない。だがキサマは見てはいけないものを見てしまった、だからキサマの記憶を少し弄らせてもらう」

「き・・・記憶だと?それに見てはいけないってなんのことだ!?」

「どうせ忘れるんだ、教えてやろう。私は魔法使い、この世には魔法使いが多く存在する。しかしキサマのような一般人にはその存在を知られるわけにはいかない、つまりそういうことだ」

 

まさに悪の笑みを浮かべ、エヴァはシモンに告げたがシモンには意味無かった。

 

「マホウ?マホウってなんだ!?」

 

真顔で言うシモン。それものそのはず。

シモンは信じる信じない以前に、本来物語などでしか出てこない「魔法」という単語そのものを知らなかった。

なぜなら彼の世界にはそんな物語などは存在しなかったからだ。

 

エヴァはその言葉に少し呆れた。が……

 

「ようするにさっき私たちが飛んだりしていた力だ!!もういい、ほら茶々丸さっさとやれ!!」

「了解しましたマスター」

 

再びシモンに襲い掛かる茶々丸。

しかしシモンは抵抗する

 

「ふざけるな!!どんなことでも一度見て覚えたものは全て俺の記憶だ!!」

 

シモンは身構え、

 

「多くの思いを忘れず刻み込み続けて今の俺がいる、その一部をテメエの都合でいじられてたまるか!」

 

襲い掛かる茶々丸にシモンは立ち向かった。

 

「くらえ!!マホウはそんなにエライのかパーーーンチ!!!!」

「うっ!!」

 

シモンの雄たけびと共に繰り出すパンチ、が見事に茶々丸を殴り飛ばした。

シモンに殴り飛ばされた茶々丸だがなんとか態勢を建て直し着地した。

しかし、

 

「んな!?なにーーーー!?」

 

まさか茶々丸がぶっ飛ばされるなどまったく予想していなかったエヴァは、アスナに蹴り飛ばされたぐらいの衝撃を受けた。

 

(なっ・・・こいつには・・・魔力がまったく感じない・・・やはり一般人だ・・・なのになぜ・・・?)

 

混乱するエヴァをよそに、茶々丸を殴ったシモンは考えた。

 

 

「しまった・・女の子を思わず殴っちまった・・・・・でもこの感触・・・オマエ人間じゃないな!!」

 

 

シモンの問いかけに、まだ混乱しているエヴァの代わりに、茶々丸が静かに答えた。

 

「はい、私はガイノイド、魔法と科学の融合によって生み出されたロボットです」

「ロボット・・・ガンメンのようなものか!」

 

ガンメン。

かつて自分の世界にあったメカ、それこそ人間と獣人にとっての最強の武器だった。つまり

 

(俺は今、生身でガンメンと戦っているってことか)

 

そう思いシモンは少し焦った。

多くのメカと戦ってきたが、シモンは生身で戦ったことはない。

いつだって自分には最強のガンメン、グレンラガンがいたからだ。

 

「先ほどは油断しました、次は少し本気で行きます」

「ぐはっ」

 

茶々丸のさっきよりも高速で繰り出したパンチがシモンの腹を直撃する。

 

「うっ・・・げほっ、げほっ」

 

シモンは腹の中にある物を吐き出しそうになるほどの衝撃を受けてうずくまった。

 

(くっ・・なんて衝撃だ・・・一発で)

 

その様子に先ほど取り乱したエヴァは冷静さを取り戻した。

 

「ふっ、さっきは思わず取り乱したが、どうやらそれまでらしいな」

 

エヴァの見下した発言にシモンはカチンときた

 

「くっ・・・・ふう・・・舐めんじゃねえ!この程度の痛みも困難も俺が今まで俺が掘ってきた道にくらべればなんてことない!!」

 

立ち上がり息を整えたシモンはエヴァに向け叫んだ。

立ち上がって叫ぶシモンにエヴァは眉をしかめて茶々丸に言う

 

「ふん、私は口だけの男は嫌いでな、茶々丸もう少しおとなしくさせろ」

「了解しました」

 

まだダメージが抜けていないシモンに茶々丸が再び襲い掛かる、

 

「舐めるな!グレンラガンがなくたって俺は負けない!俺は不当不屈キッーーーク!!」

「無駄です」

「ぐはっ!・・・・・」

 

シモンは渾身の力を込めてをとび蹴りを茶々丸に放つが軽く片手でガードされ、茶々丸はその足をつかみ自分に引き寄せ、余った腕でそのままシモンの顔面を殴った。

その衝撃で今度はシモンがぶっ飛ばされ、壁に激突した。

 

「ふん、運動能力は神楽坂明日菜にも劣る・・・よくその程度で、大口を叩けるな。やはりただの一般人か・・」

 

静観を決めているエヴァは今の瞬間シモンへ感じた先ほどの衝撃を撤回したようだ。

茶々丸に殴り飛ばされたシモンだが今度はすぐに立ち上がった。

 

「まだやるのですか?」

 

茶々丸の質問にシモンは答えた。

 

「俺は昔・・・アニキに殴られたことがある・・・あの時の痛みに比べたらなんてことない!お前のパンチじゃ俺の心は絶対に折れない!!」

 

雄叫びを上げ、再びシモンは茶々丸に攻撃を仕掛ける・・・・

しかしその攻撃が当たることは無く、逆にシモンのほうが痛めつけられていく。

どれぐらい立ち向かったかは解らない、シモンは殴り飛ばされるたびに声を荒げ立ち向かった。

しかしそれももう限界に来ている。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ、」

 

もはや肩で息をしているシモンに茶々丸は静かに告げる

 

「まだやりますか?」

「と・・・当然だ!」

 

そのシモンの言葉に黙って見ていたエヴァはキレた。

 

「ふん、くだらない!キサマ自分がどれだけ茶々丸に手加減されていたか分からないのか!!もういい茶々丸とっとと気絶させろ」

「無理だ・・・こんな魂の無い攻撃じゃ俺は倒れない!俺は大グレン団のシモンだ!!」

「ダイグレンダン?何だそのふざけた名前は」

「無理を通して、道理を蹴っ飛ばす奴らだ!!」

「・・・ふん、ではこの状況も通すことが出来るとでも?」

「当たり前だ」

 

力強く答えたシモン。

だがその熱い想いとは裏腹にそろそろ体が動かなくなってきていた。

 

(さて・・・どうする・・・グレンラガンなしでどうやって勝つ・・・)

 

その時だった!!

 

「ブヒーブヒー!!」

 

シモンの仲間がその小さい体で何かを口に咥え、引きずってやってきた。

 

「何だその小動物は?」

「ブータ!?オマエ今までどこに?それよりオマエそれ・・・」

 

シモンは驚いた。

なぜならブータが引きずって持ってきたものは、自分の魂というべき物だったからだ。

 

「これは・・・俺のドリル・・オマエ・・・これを取りに行ってたのか?」

「ブヒーブヒー」

 

その小さな体で、自分より遥かに大きいドリルを引きずってやって来たブータの姿を見て、シモンは気づいた。

そうだ・・・・・・グレンラガンじゃない・・・・俺の本当の魂はこれだ!! と。

 

「ありがとうブータ・・・・・・俺思い出したよ!!」

 

ドリルを手にシモンは再び立ち上がった。

 

 

「グレンラガンじゃない!俺の武器は、いつだってこうして駆けつけてくれる仲間と、そして、このドリルだっ!!」

 

「なんだ?なにを言っている」

 

 

突然の事にエヴァは思わず呟いた。するとシモンは指を天に向かって指差し名乗りを上げた。

 

 

「異界に行っても穴を掘る。困難あっても止まらずに、心の魂消さずにぶち破る!それが穴掘りシモン! 俺を誰だと思ってやがる!!!」

 

 

その姿は圧倒的だった。

月の光を受け輝くその男の姿に、600年生きた吸血鬼と心持たぬはずのロボットが思わず見入ってしまった。

しかし次の瞬間茶々丸が告げた。

 

 

「マスター、マスター」

 

「はっ!?・・・・・どうした茶々丸?」

 

「彼から膨大なエネルギー反応・・・・・これは魔力ではありません・・・解析不可能・・・」

 

「なっ・・なんだと!?」

 

 

正体不明のエネルギー反応、その言葉にエヴァはハッとしてシモンを見る。

するとシモンの体を緑色に輝く光が包み込んでいく。

 

「なんだあれは!?茶々丸!」

「マスター、解析不能です」

 

光に包まれていくシモンが口を開く。

 

 

「螺旋の力を見せてやる!!」

 

シモンの螺旋力が、シモンのドリルに集まっていく。

その状況を茶々丸とエヴァはただ見ているだけしか出来なかった。

 

 

「いくぞ!!くらえ!シモーーンインパクトーーーーー!!」

 

 

シモンが螺旋力を込めたドリルを突き出した、その時生じた衝撃波だけで、茶々丸とエヴァを吹き飛ばした。

 

 

「ちょ、なっ!?」

 

「マ、マスっっぐっ!!」

 

 

決着は一瞬だった。

シモンの放った力はたった一発で状況を逆転させた。

よろよろと体を起こし、エヴァは自分のパートナーを見る。

 

「ぐっ・・・・なんという衝撃だ・・茶々丸」

「大丈夫です・・・しかし・・今の衝撃で・・損傷が激しいです・・」

「バカな!?たった一撃で・・・」

「はあ、はあ、どうする?まだ戦うか?」

 

肩で息をしながら、先ほどされていた質問を今度は自分からしてみた。

元々疲労の激しかったシモンも今の一撃は相当辛かったが、それで充分だった。

思わぬ反撃に、未知なる力、全力で戦えないエヴァには、これ以上どうすることも出来なかった。

 

「・・・・茶々丸ここはいったん引くぞ」

「了解しましたマスター」

 

冷静に状況を判断し、エヴァは悔しで、歯軋りしながらパートナーに告げる。

シモンの一撃に少し体の動きが、ぎこちなくなった茶々丸だがなんとかエヴァを抱えて飛ぶことは出来そうだった。

 

「キサマ・・・・この屈辱は必ず返す・・シモンとか言ったな」

「ああ。もう女の子襲ったりするなよ!」

「・・・・次の満月までは何もせん・・・しかし次の満月の夜・・・覚えておくがよい!!」

 

そう言って茶々丸に「帰るぞ」と合図を送る。

しかし茶々丸は動かずシモンを見つめていた。

 

「むっ?どうした茶々丸」

「シモンさん・・・一つ教えてください・・・なぜ私の攻撃では倒れなかったのですか?」

 

先ほどまでは圧倒的な力の差があったシモンと茶々丸。

現にシモンの体は茶々丸の攻撃で立つのもやっとと思われるほど傷ついている。

それでも立ち上ることが出来たシモン。

その原因がわからなかったため、茶々丸は純粋な疑問をシモンにぶつけた。

茶々丸の質問に少し驚いたシモンだったが、まったく考える素振りもせず、シモンは答えた。

 

「それはオマエの攻撃に足りないものがあったからだ」

「足りないもの? それは一体……」

 

自分の攻撃は、速度、タイミング、重さ、どれをとっても申し分なかったはず。

予想外の答えに茶々丸は尋ねなおした。

 

 

「それは気合だ!!」

 

「気合?」

 

 

自分の胸をドンッと叩き、シモンは何の躊躇いもなく答えた。

その答えにエヴァもあっけに取られてしまった。

 

「ただ命令されたから戦う・・・オマエの攻撃には魂が・・・気合がまったく無かった。気合の無い奴に俺は・・・・」

 

シモンは肩に昇ったブータの頭を撫でながら答えた。

 

 

「俺たち大グレン団は負けない!!」

 

 

エヴァはシモンのその姿に少しカチンと来て、フンッとそっぽを向いて再び茶々丸に帰るように命じた。

 

「気合ですか・・・・分かりました・・・今度博士に頼んでみます」

 

そう言って吸血鬼とロボットは夜の闇に消えていった。

二人の気配が無くなったことが分かると、シモンはその場に倒れこんだ。

 

「ふうー、危なかったなー、でもブータのおかげで助かったよ」

「ブヒーブヒー」

 

改めて自分の恩人に礼を言うシモン。

ブータはまるで「気にするな!」というような態度でシモンに向かって鳴いた。

 

 

「ブータそれで一つ頼みがあるんだけど・・・」

 

「ブヒ?」

 

「俺を部屋まで運んで・・お・・いて・・・・・・」

 

「ブ・・・ブヒー!?」

 

 

さすがに限界を超えたシモンはその場でそのまま意識を失った。

ブータがどうやってシモンを運んだかは謎のまま。

 

 

こうして新たな世界で最初の長い長い夜が終わった。

 


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