魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第43話 いい機会だから話すよ、俺のことを

「痛った~~」

 

「無理をし過ぎです!予選で完全燃焼するつもりだったのですか?」

 

 

体中傷だらけのシモンの手当てをしながらシャークティは少し頬を膨らませて怒る。

超のラボに偵察に行った彼女とココネが教会で帰りを待っていたら、ヨーコの肩を借りてゆっくり歩くボロボロのシモンを見て呆れ果てた。

 

「ホントだよ兄貴~、気の力使う相手にノーガードで打ち合うなんて・・・」

「底なしのバカってことね♪グレン団らしくていいじゃない」

 

ヨーコがクスクスと笑いながら言う、少し上機嫌のようだ。

 

「・・・・・・・」

 

シモンがジッとヨーコを見つめる。

 

「・・・何よ?」

「いや・・・ヨーコも美空も予選通過していたんだな、しかも無傷で」

 

ボロボロになりようやく勝ち取った本戦への切符を、ヨーコも美空もアッサリ手にしていたことに、シモンは少し悲しかった。

 

 

「まあ私の場合は逃げ回ってただけっすからね~」

 

「私のブロックも大したやつはいなかったからね~、一人強そう美形の男と金髪の女の子がいたけど、急に体が軽くなって一撃で倒せたわ・・・女の子の方は服が脱げちゃって大変だったけどね・・・・」

 

 

アーティファクトを持つ美空はまだしもヨーコがライフルなしで勝ち残っている。

しかしシモンはヨーコならありえなくはないと思っていたため、それほど驚きは無かった。

そのため体が急に軽くなったというヨーコの発言をそれほど深くは考えなかった。

その理由を知っているのはヨーコの胸の谷間に隠れていたブータとヨーコの首から下げられているコアドリルだけだった。

 

 

「まあ、とりあえず三人とも予選通過してよかった、・・・それでシャークティたちの方は?」

 

「はい、以前シモンさんたちが行ったと思われる場所までたどり着きました。さすがにまだ初日なため、それほど大きな罠も無く奥まで辿り着けました」

 

 

シャークティは淡々と説明していく。

 

 

「奥の部屋は学園の図書館島の地下のように広いスペースがあり、そこには多くのメカがありました。超鈴音がロボット工学研究会に所属しているのは知っていましたが、あれほどあるとは・・・・そして何より・・・」

 

「・・・アレ・・・スゴカッタ・・・・」

 

 

シャークティの後に少し震え気味の声でココネが呟いた。美空は首を傾げるが、シモンとヨーコにはココネの言っているアレが何なのかすぐに分かった。

 

 

「ココネもシャークティも・・・アレを見たのね・・・」

 

「ぶう~」

 

「はい・・・驚きました・・・・」

 

「コクリ」

 

「えっ?アレって何さ?何々?何見たの?」

 

 

ブータですら知っている雰囲気、一人だけ仲間外れだと感じた美空が少し慌てて聞く、するとシャークティ、ココネの二人が同時に呟いた。

 

 

「「グレンラガン」」

 

「・・・・・・・・はあ?」

 

「超鈴音の研究室に・・・シモンさんが教えてくださったグレンラガンを真似られた巨大なメカがありました」

 

「・・・・・・・へっ?・・・えっ?・ぐれんらがん・・ってグレンラガン!?・・・あ・・兄貴?」

 

 

シャークティの言葉にポカ~ンとしてしまう美空だったが、ようやく単語の意味が分かり、慌ててシモンを見る。

するとシモンは首を横に振った。

 

「あれはグレンラガンじゃない、どんな機能がついているか分からないけど、あれは超が真似して、そして失望し、今回の行動へ至った原因のものだ・・・」

 

形は似ていても違うものである。シモンはその姿勢を崩さなかった。

しかし何度も話しに聞いていたグレンラガンを真似して作られたレプリカ。自分だけ見られなかったことに対して美空は不満を撒き散らす。

 

「あ~も~、予選なんか出ないで私もそっち行きゃ~良かった~、ココネたちだけズリ~」

「あら、美空はグレンラガンに興味があるの?女の子はあ~ゆうの好きじゃないと思ってたけど」

「でもさ~ヨーコさん、兄貴とカミナさんとヨーコさんやブータ、そしてグレン団たちの最強のガンメンでしょ~、グレン団として一度は見たいな~って思うよそりゃあ」

 

ブーブーとグレンラガンを見られなかったことが本当に残念なようで美空はうな垂れる。

しかし美空の今の一言にシモンがあることが気になった。

 

 

「最強の・・・・か・・」

「どうしたのシモン?」

「いや・・・気になったんだけど・・あのグレンラガンモドキ・・まさか動いたりしないよな~・・・」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

 

 

シモンの言葉に全員顔を見合す、そして・・・

 

「「「「あっ!?」」」」

 

全員口を空けたまま固まってしまった。

 

 

「えっ・・・あっ・・・あっ・・・あれは失敗作なのでしょう?」

「そうそう!だだ・・だいたいあれが使えなかったから超は過去まで来たんしょ~、動くわけ無いって!」

「そうね~、大体レプリカとはいえあんなものが学園で暴れたら・・・・」

「ココ・・大惨事・・・・」

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

 

シモンの発言に全員が汗を流しながら否定した・・しかし

 

「ゴメン・・・私なんだか動くような気がしてきた・・・」

 

ヨーコの発言を聞いてシャークティもゆっくり手を上げる。

 

「・・・申しわけありません・・・わ・・私もそんな気が・・・」

「つうか、話の流れ的に動かなきゃむしろ申し訳ね~的な雰囲気が漂ってるんすけど・・・・」

「アレ動クノ?」

「ぶっ?」

 

一同冷や汗垂らす中、ココネだけが瞳を輝かせていた。

 

「本物になれなかったグレンラガンでグレン団を倒す・・・随分皮肉な話だな~」

「それがあの子の望む決別の形なのかもね・・・・・」

 

シモンとヨーコの呟き、その意味が美空たちにも分かった。

超鈴音の望むグレン団との決着の形を。

 

 

「どうすんのさ、兄貴?」

 

「・・・大丈夫さ、俺達は何も変わらない、アイツ自身が偽者と言ったグレンラガンなんか、俺達本物のグレン団には恐れるに足らずだ!・・・たとえ他のロボットや・・・魔法が相手でもだ!」

 

 

魔法。その一言を呟いてシモンは教会の入り口を見る。その様子を見てシャークティたちも気付いた。教会へ近づいてくる複数の気配を。

 

「来たみたいだな・・・」

 

シモンは立ち上がり扉を開けて外へ出た。

ヨーコたちもそれに従い黙って後を追う、

そして教会の外にいた少年少女たち。ネギたちがそこにいた。

 

「よう!もう今日は存分に満喫したのか?」

 

挨拶をするのでもなく、まずシモンはネギに向かって聞いた。

突如話を振られてどう答えていいのか迷うネギ。するとシモンは質問を変えた。

 

「ネギ・・・タイムマシンで今日を何回過ごしたんだ?」

「シモンさん・・・え~と・・4回です」

「・・・・そうか・・・」

 

シモンは一言それだけ言って黙った。

今のネギたちはタイムマシンを使って4回も学園祭をやり直して今日一日を終えた。

しかしシモンはそれに対して何も言うことは出来ない。

グレン団の時間への価値観を押し付けるわけにも行かなかったからである。

 

今ここにいるのは新生グレン団を除き、ネギ、アスナ、木乃香、刹那、エヴァ、のどか、夕映、小太郎、カモ、のメンツである。

格闘大会予選ではいつもと変わらぬシモンを見て安心したものの、やはりネギと刹那はシモンの昼間の態度を気にしているようだった。

そしてそれを聞いたアスナたちも少し不安そうな顔をしていた。のどか達は恐らく話の仲間外れになりたくなくて来た様子である。

その重い沈黙を破ったのは木乃香だった。

 

「シモンさん傷!ボロボロや~ん」

「あっ・・・これは名誉の負傷というか・・漢の勲章というか・・」

 

木乃香の言葉にシモンが普通に返すのを見て、いつもの態度だと思い少しアスナたちも安心して、どんどん口を開いていく。

 

 

「私達も見てたわよ~、シモンさん予選で注目されすぎ!」

 

「そうですね、少なくともあの会場にいた全員がシモンさんを覚えたでしょうね」

 

「でもすごくかっこよかったですよ~」

 

「せやせや!ウチなんか10回ぐらい惚れ直してもうたわ~」

 

 

木乃香のお陰で急に場の雰囲気が軽くなり、いつもと変わらぬやり取りが繰り広げられ、シャークティやヨーコもホッとした。

すると突然木乃香がシモンへ歩み寄り手を差し出した。そして

 

 

「プラクテ・ビギ・ナル 汝が為に(トゥイ・グラーティアー)ユピテル王の(ヨウイス・グラーティア)恩寵あれ(シット)“治癒(クーラ)”」

 

 

突然暖かい光がシモンを包んだと思ったら、シモンの腫れた顔や傷がみるみると治っていく。

 

「木乃香・・・これ」

 

シモンの驚きの顔を見て木乃香は両手を腰に当て、胸を張った

 

「ふふ~ん、どや!ウチも修行がんばってるんよ♪」

「そうか~、凄いじゃないか!ありがとな」

 

シモンに褒められた木乃香は更に調子に乗って凄い発言を連発していく。

 

 

「なあシモンさん、これでシモンさんがこれからいっぱい無茶してもウチが治せるえ、こんな奥さんいらん?先物買いはいいと思うえ♪」

 

「えっ?」

 

「「「「ぶーーーー!?」」」」

 

「木乃香・・・アンタ・・・」

 

「や・・・やるじゃない」

 

「こ・・このちゃん・・逞しすぎ・・」

 

 

少し真面目な話になるかと思えば結局笑いと暖かい空気が場に広がった。

木乃香の発言に対してエヴァが今日のデートを自慢したり、刹那が親友を見て自分の心の中の想いに頭を抱えて悩んだり、のどかやアスナも木乃香を見て気合を入れなおしたりと、話の流れがどんどん脱線していった。

 

シモンは悩んでしまった。

超のことを話すわけにもいかない。しかし場の空気を壊すような発言をしたくなかった。

だが、何かを言わなければならない。ならばどうするか?・・・シモンは夜空を見上げた。そこには自分の故郷とは比べ物にならないほど少ない星しかなかった。

 

「この前海に行ったとき、随分星が見えたけど・・・ここはあまり見えないな・・・」

「まあそりゃあ、リゾート地に比べたらね~」

「でもあの時は驚きましたよ~、木乃香さんがシモンさんに告白した日ですよね~」

「もう、ネギ君恥ずかしいわ~」

 

海に行った日。光り輝く星々の中に自分達のいた螺旋の星があるのではないかと考えていた。

 

「俺のいた世界には、もっと多くの夜空に光り輝く星があった・・・そしてその星には・・・多くの同じ種族の友が住んでいる。・・・会ったことは無いけどな」

 

光り輝く星々に住む螺旋族の友。宇宙に住む多くの仲間たちのことである、

急に語り出すシモン。その意味がよく分からず皆ポカンとした。

そんな中、ネギが一言だけ呟いた。

 

「星に住んでる人・・・宇宙人のことですか?」

 

その言葉にシモンは首を横に振る。

 

 

「違う・・・進化することを止めずに、本能に任せて常に天を目指して進むものたち、それが俺やヨーコ・・・螺旋族だ!」

 

「ラ・・ラセン族~?いきなり何言ってるのよシモンさん!?」

 

「そうですよ!それに僕そんな種族一度も聞いたことありませんよ」

 

 

ポカンと口を開けて皆が呆ける中、アスナとネギが皆の気持ちを代弁するかのように叫ぶ。それほど彼らにとっては唐突な話だった。

 

 

「世界は一つじゃない、この世には聞いたことも見たことも無い世界もある・・・・しかしそれでも同じものがある、進化し、人々が寄り添いあい、そして時には悲しみに直面しながらも、今日を生きて明日へ向かっている・・・・そう、どの世界でも同じなんだ」

 

 

シモンは星を見上げて語る、そしてゆっくりネギを見る

 

 

「俺とヨーコとブータは・・・この世界の人間じゃない・・・こことは別の宇宙にある地球という星に住んでいる」

 

「「「「?・・?・・・・?・・・はああーーー!?」」」」」

 

「イキナリ何言ってるのよシモンさん!?」

 

「そうですよ~、別の宇宙って何のことです?」

 

 

違う世界、魔法やタイムマシンの存在を知る彼らもこの言葉には固まってしまった。

 

 

「・・・お前達にはまだ話していなかったよな・・・・俺達のこと・・・そしてグレン団や俺のアニキのことを・・・お前達も知りたそうだったけど結局話す機会が無かった・・・」

 

「違う世界って・・・シモンさん・・」

 

「・・・グレン団・・・」

 

 

グレン団。アニキ。この単語を聞いてネギたちは首を上げる。

シモンが、ヨーコが常にこだわり続けて来たもの。誇りに思っている人物。

 

 

「シモン・・・アンタ・・」

 

てっきりそんな話になるとは思っていなかっただけにヨーコも少し驚いていた。

シャークティや美空もである。

彼女達はすでにシモンたち大グレン団の物語を知っていた、

しかしこのタイミングでネギたちに教える意図が分からなかった。

 

「いい機会だから話すよ・・・俺が・・俺達が選んで進んできたこれまでの道を・・・」

 

シモンはその場に座り込み、ゆっくりと話をしていく。

 


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