魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

44 / 233
第44話 お前の誇りは何だ?

「俺のいた世界、・・・俺が子供の頃の人類の世界は全て地下だけだった・・・地下にある村を広げるために毎日毎日横穴を掘る。それが俺の仕事だった」

 

ようやく明かされるシモンの人生。

色々と質問もある。

違う世界。地下の世界。

しかし今は黙って皆シモンの話を聞くことにした。

 

「夢も無く、やりたい事も特に無く、薄暗い地下で穴を掘りながら、たまに起こる地震に怯えながら暮らすだけの世界、そんな環境にいたせいで俺は『穴掘りシモン』、臭いとか汚いとか変な目で見られていたよ・・」

 

その時ネギたちはハッとした。シモンは以前、昔の自分は凄くかっこ悪かったといっていた。

ヨーコもシモンは自信が無かったといっていた。その当時のシモンのことをようやく知ることができた。

 

 

「でも・・・そんな薄暗い世界にいたんだ・・・でっかくて、熱い魂を持った不撓不屈の男、・・・それが俺達の村が誇る無敵のグレン団のリーダーカミナ!俺がこの世でもっとも尊敬する魂の兄弟、・・・俺のアニキだ!」

 

「カミナさん・・・その人が、シモンさんがたまに言っていたアニキさんのことね・・・」

 

 

アスナの言葉にシモンはゆっくり頷く。

ネギたちはカミナの名前は知らなかったが、それでもシモンのアニキという存在は何度か聞いたことがあった。

自分達が尊敬するシモンとヨーコ。そのシモンが最も尊敬し、ヨーコが愛した人物。すでに亡くなった人物であることは聞いていた。しかしどのような男だったかはまだ知らなかった。

そしてシモンは続ける。

 

 

「いつもアニキは言っていた、地上は必ず存在するって、壁も天井も無い世界が存在するって、・・・・俺はよくアニキに地上へ向けて脱走する行動に付き合わされていた・・・そして言っていた。ドリルは、お前の魂だ!お前のドリルは天を突くドリルなんだよ!ってさ・・」

 

「「「「あっ!?」」」」

 

「シモンさん・・天を突くってたしか・・・」

 

 

その言葉にシモンは苦笑しながら頷く。「俺のドリルは天を突く!」、シモンの決め台詞の一つである。

その言葉がアニキという存在から送られて、今でもシモンはその言葉を口にしている。

そのことからシモンのカミナへの尊敬の念が深いことが知れた。

 

「何度か地上を目指していたけど結局失敗して辿り着くことは出来なかった・・・・、でもそんなある日、巨大な地震と共に天井が崩れ、そして巨大なメカの怪物と、一人の大胆な格好をした女が落ちてきた」

 

その言葉を聞いてネギたちはヨーコを見た。その視線を受けヨーコも笑みを浮かべて肯定した。

 

「天井を突き破り落ちてきたその二つの存在が、俺達に地上の存在を教えるのに十分だった」

 

この時ずっと黙っていた夕映が口を開いた。

 

 

「シモンさん、私は異世界の存在の有無は問いません、しかしそうなると地上から現れたのがヨーコさんだとするともう一つの巨大なメカとは何ですか?」

 

「・・・それが地上を恐怖で支配し人類を地下へ追いやった獣人たちの兵器ガンメン!・・・そうだな~、この世界で言うロボットみたいなものかな~、そのガンメンが地上に数多く存在するために、運良く地上へ辿り着いた人間も皆殺される。それが俺達の憧れた地上の姿だった・・・」

 

 

皆殺し。獣人。その言葉に顔が暗くなる。

 

「酷い・・・しかしシモンさん・・・獣人がシモンさんの世界にいたのですか?」

 

獣人という単語に食いついたのは刹那だった。

 

「まあな・・・あたりまえのようにたくさんいた。動物の姿のやつもいれば人の姿をしているやつも・・・この世界にもいるだろ?」

 

刹那はその言葉を聞いて静かに頷く。そしてシモンが自分の様な人外の存在に対して恐怖や差別をしなかった理由の背景を知ることが出来、納得した。

 

「そうですね・・・、シモンさんが私達に対して無頓着だった理由が分かりました」

「そうだね・・・エヴァとか・・刹那とか・・・小太郎とか・・・」

「おい、私を獣人なんぞと一緒にするな!私は誇り高きヴァンパイアだ!」

「ん~よく分からないけど、それじゃあ木乃香のおじいさんとか・・・」

 

「「「「「あれは人類です(や)!!」」」」」

 

「・・・・まあ、ともかくそこから俺とアニキとブータ、そしてヨーコの旅と戦いが始まったんだ」

 

「それは・・・人類と獣人による地上の領土を争う戦争、そう思っていいのですか?」

 

 

戦いという言葉に再び夕映が食い付いた。

どうやら彼女もシモンの世界であった出来事に大変興味を抱いているようだった。

 

 

「地上で唯一の文明を持つ都、獣人たちを生み出しガンメンの力で人間を地下へ追いやった張本人、螺旋王ロージェノム。奴の命令で獣人たちは人間を巨大なガンメンの力で追いやっていた」

 

「螺旋王・・・いかにも悪役っぽい王様ね・・」

 

「そうです・・・なんでそんな酷いことを・・・」

 

 

ロージェノムの話を聞いてネギたちは直ぐにロージェノムを悪の親玉と決め付けていた。

実際当時のグレン団にとってはそうだったため、シモンもヨーコもまだ口出しはしなかった。

 

 

「巨大なガンメンに対して・・・俺達は戦う術が無かった・・・ヨーコの持っている銃の類はあったけどな、でも・・・ある日・・・獣人の乗っていたガンメンを奪い取った無茶苦茶な人間が人類に希望を与えた」

 

「奪ったって・・・それひょっとして・・・ひょっとしなくても・・」

 

「ああ、アニキだ!そしてそのアニキが奪ったガンメン、グレン!俺が偶然穴を掘っていたら地中で発見したガンメン、ラガン!この二つのガンメンを手にして俺達人類の反撃が始まったんだ」

 

 

ヨーコはその言葉を聞いて当時のことを思い出し笑みを浮かべた。

ガンメンを奪い取り、そして気合で動かしたカミナのことを。そしてその姿に自分が惚れたことを。

ネギたちはシモンの話に聞き入っていた。

超の事や、シモンの昼間の態度など既に頭には無く、シモンやヨーコのまるでウソみたいな壮大な物語の続きを心待ちにしていた。

すでに結末を知るシャークティたちも同じような態度である。

 

 

「それからだよ、獣人からガンメンを奪い取った男の噂を聞きつけ、色々な所で真似してガンメンを奪い取る人間が増えた、・・・・アニキの気合が・・・地上の人類に伝染したんだ」

 

「あの時は本当にゾクゾクしたわね。突如現れたガンメンの集団がグレン団の旗を掲げて私たちの前に現れたんだから・・・・」

 

「ぶう~!」

 

 

グレン団が大グレン団になった日。自分達のカミナが人類に知れ渡り、その名の下に集った。

あの日ほど嬉しかったことは無かった。シモン、ヨーコ、ブータにとってはそれほどの日だった。

そして・・・カミナと過ごした最後の夜だった。

 

 

「伝染ですか・・・・何故でしょう、シモンさんを見ていると、カミナさんという方が物凄く想像しやすいのですが」

 

「あっ、僕もです」

 

 

刹那の言葉に皆頷く。シモンにとってカミナがそうであったように、今はネギたちにとってシモンがカミナの様な存在だったからである。

 

「しかし巨大なメカか~、熱いやないか!因みにそのガンメンちゅうのは、どれぐらいの大きさなん?」

 

少々興奮気味の小太郎、彼はガンメンに興味津々なようだ。

 

 

「そうだな~、だいたい鬼よりは大きかったな~、大きいのになるとスクナより遥かに大きいのもあったから・・・・」

 

「「「「えっーー!?」」」」

 

「ス・・・スクナって・・・」

 

「あっ・・・あれより大きなものですか?」

 

「・・シモンさんがまったくスクナに驚か無かった理由が分かりました」

 

 

顔が引きつってしまった。京都で大死闘を演じたスクナ。あれよりも遥かに大きいとなれば・・・・恐ろしくて想像できなかった。

 

 

「そのうちの一つ・・・螺旋王の四天王の一人が持っていた巨大なガンメンが俺達の前に現れた」

 

「・・・・ちなみにそれってどれぐらいの大きさ?」

 

「・・・う~ん・・ブータから見たスクナぐらいかな・・・」

 

「「「「いっ!?」」」」

 

 

その瞬間全員ヨーコの肩に乗っているブータを見た、

 

 

「か・・・勝てるわけ無いじゃない!?」

 

 

アスナがブータと京都で戦った巨大なスクナを頭の中で比べて叫ぶ。ネギたちも同じような表情だった。しかしエヴァは

 

「・・・・勝ったのか?」

 

その言葉にシモンは当時を鮮明に思い出しながら答える。

 

「アニキが言ったんだ・・・あのガンメンも俺達が頂いちまおうってさ・・・あれが明日から俺たちの寝床だ!って言ってた・・・」

 

その言葉を聞いたアスナたちは、以前、今の話をシモンが美空達に教えた時と同じ表情をしていた。

 

「さすが・・・・シモンさんがアニキって言うだけあるわね・・・」

 

皆コクコクと頷いた。カミナという男の生き様をシモンは出来るだけ丁寧に伝えていった・・・・そして・・・

 

 

「そして俺達は・・・後に大グレンと呼ばれる巨大な家を手に入れることが出来た・・・・アニキが命懸けで残してくれたものだ・・・」

 

「えっ?・・・命懸けって・・・」

 

「「「「!?」」」」

 

 

ネギが聞き返す。その言葉を聞いてアスナたちは思い出した。

アニキという男は・・・すでに亡くなっていることを・・・。ヨーコをチラッと見る、ヨーコは腕を組み、目を瞑って黙って立っている。

その様子を見て気付いた。この時がその時だったという事を。

 

 

「アニキは・・・・その戦いで死んだ・・・俺達にでっかい家と・・俺達の心に10倍でっかい穴を開けて・・・」

 

 

今でもその日のことを鮮明に覚えている。自分を殴りに来たカミナ。自分を信じろと言ってくれたカミナ。

地下で燻ぶり一気に噴火したあの日の火山。燃え上がるマグマ。

そして・・・「あばよダチ公」その言葉を残し死んだことを。

 

すでにその話を聞いているシャークティたちも、やはりこの出来事には悲しみを隠せないでいた。

ココネもカミナとシモンを重ねてかギュッとシモンに後ろから抱きついた。

 

 

「それが・・・カミナさん・・・・シモンさんの・・・」

 

 

ネギは当時のシモンの気持ちを考えた。

何故ならそのカミナという男はまるで自分達から見たシモンそのものの様に感じたからである。

アスナたちもネギと同じ気持ちだった。そしてヨーコの気持ちも考えた。

ヨーコがカミナを好きだったことは聞いていた。

だからこそヨーコの当時の気持ちは・・・、自分達と近い年齢の時に好きだった男を目の前で無くした・・・、それだけで彼女達は気付かぬうちに涙を流していた。

 

 

「これが・・明日のために今日を命がけで戦い、散った男の生き様だ・・・俺達はその想いを受け継ぎ明日へ向かった・・・」

 

 

シモン、ヨーコを除き、この場にいる者達の瞳がいつの間にか潤んでいた。

 

「ネギ・・・お前の明日はどこにある?お前は将来何がしたいんだ?」

「えっ・・・将来ですか?」

 

そんな質問されるとは思っていなかったため少し戸惑ったが、すぐに真っ直ぐな目をしてネギは答える。

 

「お父さんのような立派なマギステル・マギになることです」

 

ネギの昔から変わらぬ夢、その言葉を聞いてシモンは頷く。

 

「お前のお父さんがどういう人物かは大体聞いている。魔法使いの仕事っていうのもだ。お世辞じゃなくて立派な志だと思う。お父さんを目標にするものいいことだと思う・・・」

 

そう言ってシモンはネギ、そしてアスナたちを見た。そして続ける。

 

 

「ネギだけじゃなく皆も絶対に譲れない事とか信念とかがあると思う。別に無いから悪いってわけじゃない、でもそれは俺にもあるってことなんだ」

 

「シモンさんの譲れないもの?」

 

 

それは今日のシモンの態度の理由に繋がる。全員が緊張しながらその理由を待つ。

 

「皆も既に知っていると思うが俺は超鈴音と喧嘩している。俺の絶対に譲れない信念と超の信念がぶつかり合っているんだ」

 

シモンの言葉、それは昼間カモがネギと刹那に言った予想と全く同じだった。

 

「超も譲れない、でも俺も譲っちまったら、俺が俺で無くなる。それほどのことなんだ・・・」

 

シモンは強い瞳で答える。すると木乃香が納得しないような顔で口を挟んだ。

 

「・・・シモンさんが大事なん抱えてるんはよう分かった。せやけど何でウチらに教えてくれへんかったん?シモンさんがシモンさんで無くなるんはウチも嫌や!・・・ウチらはそこまで信用出来ひんの?足手まといやから?」

 

木乃香は悲しみを帯びた瞳で言う。その言葉に刹那やアスナたちも続く。

 

 

「そうです!シモンさんは今まで何度も私達を助けてくれました!熱い言葉で何度も心を救ってくれました!・・・なのに・・シモンさんの態度は・・・自分の問題だから私達には関係ない、そういうことなんですか?」

 

「私もそう思う!私達だってシモンさんの力になりたいわ!私達には関係ないなんて酷いと思うわ!」

 

 

のどかも夕映も、そして小太郎も同じだった。

 

 

「わ・・私も!い・・以前魔法の世界に足を踏み入れる時シモンさんが後押ししてくれました!それに今日もヨーコさんにも私の決意の後押しをしてくれました・・、今度は私もお手伝いしたいです・・・」

 

「私もです。お二人の言葉や行動は尊敬に値するものだと思っています、私も非力ですが協力したいです」

 

「せやで兄ちゃん!今更水臭いで!」

 

 

ずっと黙っているヨーコはこの光景に微かに笑みを浮かべる。

彼女はこの世界に来てまだ日が浅い。

しかしシモンがどれだけ信頼され慕われているのかがよく分かったからである。

 

エヴァンジェリンも静観している。

エヴァもシモンと超の間に何があったかは知らない。

シモンはネギと戦うこともありえると言っていた。

只事ではない事は予想していたが、彼女はあえて黙っていた。

たとえどのような状況になろうと彼女の答えは決まっているのだから。

 

涙目を浮かべながらシモンに訴える木乃香達。ここでようやくヨーコが口を開く。

 

 

「それが問題なのよ・・・・昼間会った時に私が言ったでしょ?今回はそれじゃダメなのよ」

 

「ヨーコさん、どうゆうことなん?何でシモンさんの味方になったらアカンの?」

 

「シモンも超もこの事態を予想してたのよ。あなた達は理由も聞かずにシモンの味方になるってね。今までがどうだったかは知らない。でも、今回は友達として味方になるとかじゃダメなのよ」

 

 

どういう意味なのかまったく分からない。そんな表情でネギたちは見つめる。

 

 

「ネギ・・・お前の絶対に譲れない夢、信念、ひょっとしたら超のやろうとしていることは、その夢の大きな手助けとなるかもしれない。そして世界に住む多くの人が救われるかもしれないんだ」

 

「えっ・・・・僕の・・夢を?」

 

「でも俺達はそれを邪魔する・・・、人から見たら勝手な価値観を押し付ける行為になるかもしれない、その結果魔法使いやこれからその道へ進もうとするお前達の妨げになってしまうかもしれない、だから俺は何も言えなかったんだ」

 

「じゃあ超のやろうとしていることって何なの!?だったらそれを聞かせてよ!」

 

 

シモンの核心を述べない説明にアスナは我慢が出来ずに叫ぶ、しかしシモンは話さない。

 

 

「超は俺達に黙っていれば簡単に計画を実行できた。でもそれをせずにあえて俺達に明かし挑戦をしてきた!その敬意を表して俺は超の口からネギたちに伝えるまで何も明かさないと約束した。・・・まあそれが理由だ」

 

 

超との約束。それほど大した理由ではないがそれでも両者の間で交わした誓いに変わりは無い。シモンはそれを破ろうとはしない。

 

「ネギ・・俺はこれまでお前に・・・お前達に色々と言ってきた。それは弱気になったり自分を見失ったりしているお前達に、男も女も関係なく強くあって欲しい、人としてこうあって欲しいと思い言ってきた・・・」

 

シモンはネギをそしてアスナたちを一人ずつ見る、そして

 

 

「でも今回は・・・お前達の今後進む道・・・魔法使いとしての答えを出して欲しい、その結果お前達の答えは俺と違うかもしれない・・」

 

「そんな!?それじゃあ・・・それじゃあもし僕の答えが・・・・超さんに賛成してしまったら・・・」

 

 

ネギは涙を浮かべながら弱々しい声で叫ぶ。

なぜなら超の行動は自分を夢へ近づけ多くの人を救うかもしれない。

しかしもし超に賛成したらシモンとは・・・・その先は考えたくなかった。

それはアスナも、刹那も木乃香も同じだった。

しかしシモンはニヤリと笑い。

 

「自分が選んだ一つの事が、お前にとっての真実だ!だからその時は・・・迷う必要なんて無い!」

 

それはシモンの決意の言葉。シモンはネギたちと戦うことも辞さないという決意の現われだった。

それが分かりネギは、そして木乃香も涙を流した。

 

 

「いやです・・・そんなの・・シモンさんと・・・戦いたくありません!」

 

「せや、そんなん絶対嫌や!超さんが何するか分からへん!でもシモンさんと戦うなんて嫌や!魔法の道なんて知らへん!ウチは・・・どんなことがあってもシモンさんの側におる・・・」

 

 

木乃香は肩を震わせながら辺りに聞こえるような大声で涙を流しながら叫ぶ。

刹那やアスナも木乃香の気持ちが痛いほど分かる。

愛する人と戦う。それは絶対にしたくなかった。

しかしシモンは首を横に振る。

 

 

「ダメだ・・・お前の気持ちはすごくうれしいよ、でも魔法もがんばるとお前は言ったはずだ・・・その決意を知らないなんて言ったらダメだ!超から全てを聞いてよく考えるんだ」

 

「嫌や・・そんなん・・・ひっく・・・いや・・・」

 

 

耳を塞ぎ、頭をブンブンと横に振る木乃香。刹那は何も言えずにただ木乃香の肩に手を置いた。

 

「でもそれなら・・・それならシャークティ先生や美空ちゃんはどうなの?」

 

アスナは悲痛な顔をしてシモンに問いかける。魔法使いの美空達とも戦うのか?それが疑問だった。

 

「いや・・・美空、シャークティ、ココネは・・・俺とヨーコの仲間だ・・・」

 

その瞬間アスナは顔を真っ赤にして怒りを露にした。

 

 

「どうしてよ!?私達はダメで同じ魔法使いなのに、なんで美空ちゃんたちはいいの!?シモンさんの家族だから?私達とは友達でも何でもないからって事!?」

 

「今の美空達はただの家族じゃない。魔法使いでもない、グレン団だ!美空達は魔法使いの道ではなく、俺達グレン団の道を共に進むことを選んでくれた」

 

 

シャークティは学園祭前に言った。魔法使いであることよりも家族を選ぶと。

その言葉があったからこそ、今でもこうして共に過ごすことが出来るのである。

だがネギも木乃香も違う。魔法の道に進むと宣言したのである。

だからこそ魔法使いとしての答えを出して欲しかったのである。

 

「それなら僕たちはダメですか?僕は・・・シモンさんと戦ってまで夢に近づくなんて嫌です!僕たちはグレン団に入れないんですか?」

 

あくまでシモンとの戦いを拒むネギ。

その姿は最近まで陰を潜めていた10歳のオドオドした少年そのものである、しかし・・・

 

「以前までなら・・・、でも少なくともこの学園祭期間中はダメなんだ、超の仕掛けた先手がそれを出来なくした。今のネギたちと俺たちが仲間であることは・・・出来ないんだ」

 

その瞬間ネギたちは絶望に満ちた表情をした。

木乃香に関しては俯いてその顔が髪に隠れ、どんな表情を浮かべているかも分からない。

刹那も、アスナもまるで親に捨てられた子供のような悲しい瞳でシモンを見つめるしかなかった。

 

シモンもヨーコも別にネギたちを嫌いになったとは言っていない。今でも大切な友だと思っている。

しかし志が違う。だから友であっても今は仲間であることは出来なかった。

 

超の先手。タイムマシンをネギたちに渡し時間を逆行させ、やり直したり、時間跳躍の認識を軽くさせること。

現に今日ネギたちはすでに4回も学園祭初日をやり直していた。

そんなネギたちを今グレン団に入れて、超を否定して戦うことは出来ない。

それがシモンの思いだった。

 

しかしそんな思いも目の前にいるネギたちにはまだ分からない。

アスナたちだってまだ子供である。『仲間に出来ない=拒絶』、そう思っても仕方が無かった。

 

彼女達はただ呆然とシモンを見つめることしか出来なかった。

そんな彼らの視線を受けて、シモンは勢いよく立ち上がった。

 

「ドリルが俺の魂で、グレン団が俺の誇りだ!・・・ネギお前の魂と誇りは何だ?お前の誇りはグレン団じゃないだろ?」

 

涙を流しながらネギは顔を上げる。するとシモンは天に向かって指を指した。

 

 

「魔法だろ?魔法は、お前の魂だ!そしてマギステル・マギになるという夢、夢こそお前の誇りだろ!たまたま今回俺と道が重ならなかったからって何も落ち込むことはない!」

 

「シモンさん・・・・」

 

「大丈夫だ!俺はお前達を嫌ったりなんかしない!何も心配要らない!だから・・・何も悲しいことなんて無い!」

 

 

シモンはネギの頭を自分の胸に引き寄せた。力強くネギの顔を胸に押し付けた。

 

「シモンさん・・・はい・・」

 

そしてネギはシモンの腕の中で静かに頷いた。

 

 

「お前達もだ、アスナ・・・道に迷ったネギをぶん殴るのはお前の役目なんだぜ!」

 

「シモンさん・・・」

 

 

シモンはアスナをそして順に一人ずつ見ていく。そしていつものように笑う。

その笑顔を見てアスナたちも少し落ち着いてきた。

 

「わかったシモンさん、私も・・・自分で考えてみる・・・」

 

アスナの言葉に頷き刹那も口を開く。

 

「私もです・・・でも絶対に忘れないで下さいね、私達だってシモンさんと同じ気持ちです」

 

その言葉を聞いて木乃香も涙を拭きながら言う。

 

「せや、たとえ答えがシモンさんと違ごうても、ウチらは絶対にシモンさんを嫌いにならん!シモンさんを好きゆう気持ちは絶対に変わらん!」

 

少し目が赤くなっているが、それでも木乃香は満面の笑みで告げる。

その言葉に夕映ものどかたちもコクリと頷く。

 

「木乃香・・・刹那・・みんな・・」

 

シモンは少し目頭が熱くなった。しかし泣こうとは絶対にしなかった。

自分よりも年の離れた子達の想い、それがうれしかった。

 

シモンも辛かったのである。ネギたちを拒むのを。

しかしタイムマシンを使う彼らを仲間に入れて超の行いを否定して戦うことは出来なかった。

嫌ってなんかいない、しかし仲間にすることは出来ない。

その複雑な引っかかりが今日ネギたちに涙を流させたが、今はこうして自分の想いを理解し、笑顔を見せてくれる。

それがうれしかった。

 

ヨーコもシャークティもこの光景に安堵の笑みを浮かべていた。

 

シモンは瞳が潤んでいることに気付かれないように上を見上げて。

 

 

「ありがとう・・・みんな・・・」

 

 

一言告げた。その言葉を聞いて皆照れくさそうに笑う。

 

 

「あはは、何かシモンさんに言われると照れるわね~」

 

「そうですね、でもこのちゃんの言うとおりです!私もシモンさんの事が大好きです!」

 

「せや、だから~・・・・・・ん?・・・せっちゃん?・・・」

 

「・・・えっ?」

 

「・・・・・刹那さん?」

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

 

全員が刹那を見て固まってしまった。

自分が何か変なことを言ったのか・・・、刹那は自分の言葉を思い返してみた・・・すると・・

 

 

「あっあああああああああああ!?」

 

 

一気に顔が真っ赤になってしまった。

 

 

「あのさ・・・刹那・・」

 

「ち・ちちち違います!!今のは私『達』もシモンさん『達』のことがという意味です!!」

 

「そういえば刹那さん・・・昼間たしかシモンさんのことを・・・」

 

「ネーギーせーんーせーい!!あれは違います!!カモさんが適当に言ったことなど気にしないで下さい!!」

 

 

急に取り乱して手をバタバタ振りながら否定する刹那だが、違うと言われてもシモンと木乃香以外は刹那の気持ちにとっくに気付いていただけに今更だった。

しかしそれでも懸命に否定しようとする刹那。

 

 

(ああああー、わた・・私は何ということを~!?・・よりにもよって本人とこのちゃんの前で~・・・う~・・シモンさん・・・このちゃん・・・・ってこのちゃん!?)

 

 

その時刹那は見た。シモンたちも見た。

満面の笑みを浮かべながらもドス黒いオーラを出す一人の少女を。

 

 

「あの・・こ・・このちゃん?」

 

「んふふふ~、せっちゃ~んどうゆうことなんかな~?」

 

「このちゃん違うんや!・・こ・・これは・・」

 

「ん~?違うって何が~?せっちゃん急に慌ててどうした~ん?」

 

 

木乃香の笑顔に皆顔が引きつってしまった。

 

 

「・・・・こ・・・」

 

 

「こ・・・・」

 

 

「「「「(こえ~~~!?)」」」」

 

 

そこにいるのは先程まで泣いていた少女はいない。

好きな男に満面の笑みを送っていた少女でもない。

クラスメートのアスナたちでも未だかつて見たことが無いほどの禍々しいオーラが木乃香からあふれ出ていた。

 

 

「おかし~な~、ウチのこと応援してくれるんやなかったん~?」

 

「あのですから・・ウチは・・このちゃ・・お嬢様・・あの・・あの・・」

 

 

アレレ~?という感じで言う木乃香。その言葉に完全にテンパッてしまった刹那。

木乃香は笑顔を崩さず笑顔のまま首だけをグルンとシモンへ向けた。

 

 

「シモンさん~」

 

「は、はいっ!な・・なんだね木乃香くん?」

 

 

シモンも完全にビビってしまうほど今の木乃香は怖かった。

 

 

「ウチちょっとだけ、せっちゃんに事情聴取・・・やなくてお話があるから先に帰ってるわ~」

 

「そ・・そうかい、で・・・ではまた明日会おうじゃないか!」

 

「んっ!明日はデートやからな~、格闘大会終わったらエヴァンジェリンさんの10倍増量で頼むわ~」

 

 

そう言って木乃香は刹那の手を握った

 

 

「ほな、せっちゃん帰ろか(ニッコリ)」

 

「は・・・はい~・・(笑顔が・・・怖すぎる~!?)」

 

 

嵐は刹那を巻き込んで去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

木乃香の思わぬ迫力に未だに彼らは圧倒されていた。

 

「木乃香さん・・・怖かったです・・・」

 

ネギがブルブルと震えながら先程までとは全く違う涙を流していた。

その言葉に一同ただ黙って頷くだけだった。

シモンもこの時は木乃香の迫力に飲み込まれて刹那の発言がすっかり頭から抜けてしまった。

 

「せっかく真面目な話をしてたんだけどな~、でもこれが一番落ち着くかもな・・」

 

ギスギスした空気が一気に軽くなりシモンはため息をついて呟いた。

ヨーコもそのことに同意した。

結局この日に超とシモンの争いの原因はネギたちには分からなかった。

しかし今はそれで良かった。今はただ魔法使いとして進む自分の道について少し考える時間が必要だった。

超の話を聞くのはそれからでもいいと思った。

 

ネギたちも今日はカミナとグレン団の話に満足し、帰路に着くことにした。

ネギたちが今後どういう答えを出すかは分からない。

しかし彼ららしい答えが聞かされることを願い、シモンたちは彼らを見送った。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。