魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第51話 夢の時間

「う~ん・・・・ん~・・・・あれ・・・ここは?」

 

 

意識を取り戻し、身体を起こすアスナ。

目を見開き辺りを見渡すとそこには心配そうに自分を覗き込むネギや刹那たち、そして美空の姿があった。

 

「アスナさん!」

「ネギ?・・・・それに皆・・・・・ハッ!?試合は!?」

 

一瞬頭がボーっとして目覚めていなかった頭が一気に目が覚めた。

アスナは勢いよく飛び上がりネギに問いただす、しかしネギや刹那たちが言いづらそうにしている様子を見て全てに気づいた。

 

「あの・・・アスナさん・・その・・・」

「いいわよもう、・・・そっか・・・・私負けたんだ・・・・・」

 

興奮気味だったが結果を理解したアスナはすぐに肩の力が抜けた。

自身の全てを賭けた勝負だったが力及ばず敗北したことが分かった。

 

「でも、アスナさん凄かったですよ!僕、アスナさんにも美空さんにも感動しました!」

「そうですアスナさん!ネギ先生だけでなくアスナさんの力は会場中の者が知っています!」

 

落ち込むアスナにフォローしようとネギも刹那もアスナを懸命に励まそうとする。

木乃香やハルナたちもアスナは凄かったと口をそろえて言っているが、それでもアスナの悔しさは大きかった。

 

「はいはい、ありがと・・・・・・でも・・・・美空ちゃん・・・・本当に強かったよ・・・」

 

アスナは視線を美空へ向ける。すると彼女は少し照れくさそうにハニカンだ。

美空に話が振られ、その言葉に古や楓も頷く。アスナも凄かったが美空の力は本当に予想外だった、

 

「そうでござる、一度手合わせ願いたいでござるな」

「せや、美空ちゃん凄かったな~」

「はは・・ありがと・・」

 

未だに人に褒められることになれていない美空はポリポリと顔を少し恥ずかしそうにしていた。

 

「見事でしたよ・・・美空」

「ああ、カッコよかったよ!」

「美空スゴカッた」

「ホント、私も驚いたわ」

「ぶひ~」

 

勢いよくブータが美空の肩によじ登る、ココネも美空の手を繋ぎ見上げる。

グレン団のメンバーが美空の健闘を称えにやってきた。

 

「うは~皆・・・・いや~恥ずかしいっすね~」

「何を恥じるの?胸を張りなさいって!私もネギの言うとおり感動したわ!」

「ああ!困難に立ち向かって風穴空けたお前はグレン団の鑑だよ!!」

 

ヨーコとシモンも美空へ駆け寄りポンポンとその頭を軽く叩く。

決してお世辞ではない彼らの言葉がとてもうれしかった。そして・・・・

 

「シスターシャークティ・・・・・」

「美空・・・・・・・」

 

シャークティと美空の目が合う。美空は少し戸惑ってしまった。

試合には勝ったものの途中ではシャークティに叫ばせるほど無様な姿を見せたと本人は思っていた。

しかしそんな美空の心情を察してか、シャークティはゆっくり美空に近づき手を美空の頭の上に置いた。

 

「あっ・・・あの・・・・・」

 

呆ける美空。するとシャークティは手をチョップの形にして美空の頭を何度も叩く。

 

「まったく・・・なんです?最初のあの情けなさは、一体アナタはどれだけの期間修行していると思っているのですか?」

「あっ・・いや~・・あっはは・・痛いっすよ~」

「笑い事ではありません、それについ最近から修行を始めた神楽坂さん相手に・・・・・」

 

シモンもヨーコも笑ってしまった。

本当は誰よりも美空を褒めてあげたいとシャークティは思っているはずなのに、シャークティはここで美空に調子に乗らせて今後の修行を疎かにさせないよう、教師としての立場を崩さないでいた。

 

 

「大体、中盤で攻撃が当たらないのを良いことに調子に乗って!そもそも実戦経験の少ない神楽坂さん相手なら避けられて当然です!オマケに途中で相手に怯えるなど・・・・情けない!」

 

「う~・・・面目ないっす~・・・・」

 

 

するとシャークティは手を止め美空に背を向ける。

 

「ただ・・・最後の覚悟と勇気は見事でした・・・・次の試合もがんばりなさい・・・」

 

それは美空にとっては彼女からの最大限の褒め言葉だった。

厳しさを崩さないシャークティだが、それでも美空にとってはシャークティに褒められるということはとてつもない喜びだった。

 

「うっす!わかりやした!!」

 

美空は満面の笑みで力強く頷いた。

シャークティはヨーコに「素直じゃないわね」などとからかわれていた。

この光景にネギやタカミチたちも笑っていた。

アスナも敗れたとはいえ、全力を出し切ったことにより清々しい気持ちだった。

 

「さて・・・次のエヴァの試合が終われば、その次は俺か・・・・色々準備しておこうかな~」

「そうね・・・私も少し疼いて来た・・・・シモン・・・リングで会いましょう!」

 

柔軟をして身体をポキポキ鳴らすシモンとヨーコは少し真面目な顔をしてこの場を後にしようとする。

 

「むっ!?おいシモンよ、私の試合を見ないつもりか?」

 

エヴァがシモンに少しむっとした態度で言う。

 

「見ているよ。でも俺も色々と準備運動とかしたいからな。それに今は勝った後のことより目の前のことに集中だ」

 

エヴァは真面目な顔で告げるシモンにこれ以上文句を言うのに戸惑ってしまった。

 

 

「刹那もエヴァもガンバレよ、どっちが勝っても必ず俺もそこへ行く!」

 

 

シモンは二人に告げコートを翻してその場を後にした。

不満そうなエヴァ。その様子にクウネルが口を開く。

 

 

「ふふふ、随分不満そうですね、そんなに彼とキスがしたかったですか?」

 

「・・・・・・・・んっ?・・」

 

「「「「・・・・あっ・・・・・」」」」

 

 

その言葉で全員今頃になって思い出した。

試合前にしたシモンとクウネルの賭けをようやく思い出した。

しかし美空とアスナの熱い戦いの所為ですっかりそのことを忘れていた。

その瞬間エヴァはワナワナと震えだす。

 

 

「うがああああああああ!?神楽坂アースーナー!キサマ~・・・よくも負けたなー!!!!」

 

「ごご・・ごめんなさーーーーい!!」

 

「美空ちゃん!よう勝ってくれたわ!」

 

「私は信じていました美空さん!!」

 

「あはは・・ありがと」

 

 

爽やかな空気が一気に弾けてしまった。

エヴァが怒り狂い、木乃香と刹那は美空の手を握りながら感謝していた。

シモンとヨーコの耳にはその騒ぎの声が聞こえていたが、それを気にせずに二人は分かれた。

 

 

「さ~て・・・あいつの所へでも行ってみようかな~」

 

 

ヨーコと途中で分かれ一人になったシモンは、エヴァと刹那の試合を見る前にとある人物を思い出し、その人物の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見渡す限りにコンピューターが並ぶ薄暗い部屋。

盛り上がる会場近くのこの部屋に今二人の女がいた。

 

「ネット上の噂拡散震度及び進行速度全て異常なしです」

「よし、魔法近い側からの介入があるまでは現状維持ネ」

 

薄暗い部屋でカタカタとパソコンを打ち込むのはネギの生徒の一人の葉加瀬ことハカセだった。

そして彼女といるのは超鈴音。

大会主催者である彼女だが、試合の状況を直接ではなくこの部屋にある巨大なモニターで確認していた。

 

「となると問題は・・・このフードの人ですね」

 

ハカセがスクリーンにクウネルの姿を映し出した。

 

「ウム、さっき高畑先生たちの会話を盗聴したが、サウザンドマスターの仲間で間違いないようネ」

「ええ~!?それってネギ先生のお父さんの・・・・まずいですね・・・」

 

超の言葉に驚くハカセ、しかし超はそれほど慌てた様子はなかった。

その時、

 

 

「―――そうか、クウネルさんはネギのお父さんの仲間だったのか・・・」

 

「「!?」」

 

 

不意に男の声がした。二人が勢いよく後ろを振り返るとそこには、

 

「よう、祭りの日に引きこもるのはよくないと思うよ?せっかくこんなに盛り上がってるんだから」

 

軽く手を上げて笑うシモンがいた。

 

「ウソ!?センサーに何も反応しなかった・・・どうやって・・・・」

「気合で・・・・なんてな、超のことばかり考えてたからかな?」

 

その言葉を聞いて超は軽くため息をつく

 

「やれやれ、ワープかナ?シモンさんはそんなことも出来たのカ?」

「まあ、細かいことは気にするなよ、それでクウネルさんの話だろ?どうせだから教えてくれよ」

 

シモンはお構いなしに二人の下へ歩み寄った。

一瞬呆けていたハカセだが超の顔を見て「別にかまわない」というような目をしていたので構わず話を進めることにした。

 

 

「では・・え~、本名は『アルビレオ・イマ』といっても魔法界の資料にも詳しいことは載っていませんけど・・・しかしサウザンドマスターの仲間となるとエヴァンジェリンさんクラスと思っていいでしょう・・・」

 

「へえ~それはスゴイな~、それで・・どうするんだ超?」

 

「安心するネ、私の勘では・・・この男は私たちの戦いに関係ない、おそらく大丈夫ネ」

 

 

超はニヤリとシモンを見上げる。

根拠はないがシモンもその言葉をアッサリと信じることにした。

 

 

「そうか、まあお前がそう言うんならそれでいいさ・・・」

 

「単純ネ、そういうとこ好きでもあるし嫌いでもあるネ」

 

「はは、そうか?」

 

 

それは他愛のないやり取りであった。

二人が敵対関係であることはハカセも知ってはいるが、とても今の二人にそれほどのギスギスした空気を感じられず、ハカセは少し首をかしげた。

 

 

「それで何しに来たネ?ただの様子見なんてことないネ?」

 

「いや、本当にただの様子見だよ」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 

シモンの行動に何か狙いがあるのかと一瞬危惧したが、どうやら本当にただの様子見なようで超は呆れてため息をついた。

特に用事が無かったため、このまま帰ってもよかったがシモンはある言葉を疑問に思いたずねた。

 

「さっきハカセが魔法界って言ってたけど・・・・魔法使いってそんなに多いのか?」

 

具体的に魔法使いの存在は学園の人間しかシモンは知らなかったため、それ以外の者たちに少し興味を持った。

聞かれて超も少し考えたが、隠すことでもないと思い、シモンの質問に答える。

 

 

「世界に散らばる魔法使いの人口、私の調べによると・・・・合計6千7百万人ネ!」

 

「は・・・・はあ!?ちょっ・・・そんなにいるのか!?」

 

「シモンさんも知らなかったようネ、そう・・・これはかなりの人数ネ、さらに彼らは異界と呼ばれる場所にいくつかの国まで持っているネ」

 

 

その膨大な人口にシモンは開いた口が塞がらなかった。

そもそも彼の故郷からしたら考えられないほどの数である。

 

 

「俺の世界じゃ100万人超えるか超えないかで一時世界が滅びかけたのに・・・俺も狭い世界にいたのかもしれないな~」

 

「むっ!?それはたしかアンチスパイラルの人類殲滅システムのことカ!?あれは事実だったカ!?」

 

 

シモンの呟きに超が身を乗り出して反応した。

 

 

「そうだよ、地上の人間の数が100万人を超えて空に輝く月が落っこちて来そうになったんだよ」

 

「おお!ではその月はアンチスパイラルに乗っ取られた大型のガンメンだったというのも・・・・」

 

「なんだ、よく知ってるじゃないか!」

 

「当然ネ!それで他にも聞きたいことがあるがいいカ?」

 

「ああ、いいぜ!何が聞きたい?」

 

 

それは異様な光景だった。少なくともハカセにはそう見えた。

二人はお互いの信念を掛けて戦いあう敵同士のはずの二人がとても楽しそうに談笑している。

シモンは立ち上がり身振り手振りで超に当時の状況や様子を語っている。

それに対して超鈴音はまるで御伽噺を聞かされている子供のように目を輝かせてシモンの話を何度も頷きながら聞いて、時には手を挙げて質問したりしていた。

 

 

「ではラガンはやはり特別なガンメンだたカ?」

 

「そうだな、専門家はそういうふうに言ってたよ」

 

「う~む、興味深いネ・・・それと螺旋王についても聞きたいが・・・」

 

「ロージェノムのこと?どんなこと?」

 

 

話は終わりが見えなかった。

超は物語の作者と出会ったときのような様子でシモンに次から次へと質問をしていく。

あまりにもそれが幸せそうでハカセは何も言えずに黙って見ていた。

時間がコクコクと過ぎていく、さすがにそろそろと思いハカセが口を挟む。

 

「あの~、シモンさん次試合ですよね?そろそろ準備しなくていいんですか?」

「えっ?もうそんな時間?しまった・・・エヴァと刹那の試合見てないや・・・」

「そうか~もっと話を聞きたかったが残念ネ・・・・」

 

超は少し不満そうに頬を膨らませる、彼女の初めて見るふてくされた態度にハカセは驚いた。

シモンは超の態度に少しからかおうか思ったが止めた。

きっと意地を張ってごまかすだろうと思っていたからだ。

シモンは苦笑しながら会場に戻ろうとしたが一つだけ気になったことがあった。

 

「そうだ、さっき言ってた異界って?」

「私も詳しくは無いが、この世界とは位相の場所にある魔法世界と呼ばれる場所ネ、興味あるカ?」

「新たな世界を掘り続けるのが俺の遣り甲斐だからな、・・・そうか~この世界にはまだまだ多くの未知な世界があるんだな~、本当にスゴイや~」

 

宇宙を左右する戦いをしたシモンはこの世の全てを知った気になっていたのかもしれない。

しかしたった一年の旅で自分の知らなかった世界、そしてまだ見ぬ世界が限りなく存在する。

それがシモンの無限の好奇心を刺激した。

 

「俺は・・・・いや・・・俺たちもアンチスパイラルも・・・・ひょっとしたら狭い宇宙を争ってたのかもしれないな・・・・・・」

 

100万を遥かに超える人類が住む世界、異形の力を使うものたち、魔法、全てが驚きと興奮の出会いだったことを改めて感じた。

そんなシモンを見て超は告げる。

 

「興味があるなら行ってみればいい、とどまることの無い螺旋族の本能がシモンさんたちネ」

「そうだな・・・・・・アイツとの約束が・・決着がまだだしな・・・・」

 

その時シモンはこの世界に来て出会った強敵、白髪の少年を思い出した。

再戦の約束をしたまま京都で別れた男を。

するとシモンはいつものように笑い超を見る。

 

「だったらその前に・・・・・意地っ張りなお嬢さんと決着をつけないとな・・・・・・」

 

シモンの笑顔を見て超も笑顔を返す。

 

「フフフ、試合を楽しみにしてるヨ、シモンさんが魔法使いたちに完敗して恥かく姿を眺めてるヨ」

 

超の軽い皮肉を受けてシモンは手だけを上げてその場を後にした。

結局本当にただ顔を出しただけで終わったが、超の様子にハカセは心配そうに尋ねた。

 

「あの・・・超さん・・・」

 

ハカセは超がシモンと本当に戦う気なのか疑問に思っていた。

シモンの言うとおり本当に意地を張っているだけなのかもしれないと思った。

もしそうだとしたらこの計画自体が意味を無くす危険性を感じた。

すると超は少し悲しい笑みを浮かべていた。

 

 

「ハカセ・・・大丈夫ヨ・・・・そんなことシモンさんも分かってるネ・・・」

 

「でも・・・今の超さんを見てると・・・・」

 

「ハカセ・・・私は・・・エヴァンジェリンや木乃香さんより・・・美空が羨ましかたヨ・・・・」

 

「えっ・・・美空さんが?・・・・それは・・・シモンさんの家族だから・・・・」

 

「いや・・・そうじゃないネ・・・」

 

 

超は首だけ振りそれ以上を言おうとしなかった。

ハカセもこれ以上聞くことは出来ないと思い、少し気になったが無理に聞き出すのをやめた。

そして再びパソコンの画面に顔を向けた。

 

「茶々丸から通信です。どうやら千雨さんがパソコンで私たちの妨害をしようとしているようです・・・」

「ウム、もっとも彼女一人でどうにか出来ると思えないが警戒はしとくネ」

 

超も再び仕事に取り掛かった。

先程までの彼女にとっては夢のような時間は全て忘れ、自分がなすべきことを進めていった。

 

(とても言えないネ・・・・うらやましかた理由なんて・・・・)

 

超はシモンに自分の気持ちを素直にぶつけるエヴァや木乃香がうらやましいわけではない。

兄貴と慕う美空たちがうらやましいわけではない。

ただ超は美空がその背に付けていたサングラスを掛けた炎のドクロのマークがうらやましかったのだ。

しかし彼女はその考えを捨てるように頭を振る。

 

(私にはあれを堂々と付ける資格はない・・・ならば倒すまで!・・・螺旋王やアンチスパイラルでも倒せなかった彼らを・・・私が倒すネ!)

 

少し寂しそうな目を浮かべ、超は一人心の中で誓った。

 


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