魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第53話 ブーイング

『さあ!一回戦最後の試合になります!予選で感動の渦を巻き起こした熱血代表のシモン選手!対するは予選でファンクラブまですでに設立されたキングオブ姉貴の称号を手にしたビキニ姿のセクシーダイナマイトのヨーコ選手!両者これまで学園の大会では顔を出していない無名の選手ながらすでに観客の人気を集めています!』

 

「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」

 

「シモンの兄さ~ん!漢のあり方を見せてくれ~!」

 

「ヨーコさーん、好きだー!」

 

 

突如学園に現れた二人の戦士。

そんな彼らを知るものはこの世界にはほとんどいなかったが、彼らはたった数日の間で多くの者たちから声援を一身に浴びるまで有名になっていた。

騒がれるのは昔から馴れていた。二人とも照れることなく声援に手を上げて応えながら堂々と入場する。

 

 

<一回戦最後のカードですがどう見ます豪徳寺さん?>

 

<はい、私はやはりシモン選手に期待します!あの人こそ男が漢と呼ぶにふさわしいと思っています!しかし対するヨーコ選手も予選を難なく勝ち抜いたとされる選手です!まずは互いの出方から様子を見ましょう>

 

 

会場が注目する中ようやく二人は定位置ついた。

これから始まる戦いの直前、互いに少し笑顔を浮かべて向き合っていた。

互いが無言でにらみ合う中、先にシモンが口を開いた。

 

「お前と会って・・・・・8年目・・・でもテッペリンでの戦いが終えてお前とは7年間会ってなかったから・・・・絆は太くても一緒にいた時間は短いのかもな・・・」

 

シモンが懐かしむような目でヨーコに語りかける。

 

「そうね・・・お互い少し大人になってはいたけど・・・・アンタと私の絆はちっとも変わってなかった・・・・。でも・・・変わっているものもあった・・・」

「変わっているもの?なんだよそれは?」

 

首を傾げるシモンにヨーコは鼻で笑いながら答える。

そしてその表情はまるでシモンをバカにしているような笑みだった。

 

「アンタよ・・・シモン、アンタは変わった・・・」

「えっ・・・・・俺が・・・・?」

「それは・・・私の・・・私たちの所為。あの日、あんたに何も言うことができなかった私たちの」

 

そのヨーコの表情をシモンは初めて見た。

まるで人を小ばかにしたような言い方だった。

 

「ヨーコ・・・・・どういうことだ・・・・」

「シモン・・・・気付いてないなら教えて上げる・・・・・、大人になるって事は・・・・割り切るって事じゃないのよ・・・」

 

するとヨーコの顔つきが変わり両拳を握り締め構える。

 

「あの日・・・・旅立ったあの日から溜まっているアンタの本音を・・・・私が引きずり出してやるわ!!」

 

その瞬間ヨーコの体から研ぎ澄まされた闘志がシモンに向けられた。

ビリビリと肌に感じるヨーコの闘志にシモンは並々ならぬ思いを感じた。

それはただのお祭りのイベントでは済まないように感じた。

 

「何言ってるか分からないよ、でも・・・一つだけ・・・・・俺は俺だ!それは変わらねえ!」

「変わったって言ってんのよ!!」

 

ヨーコの真剣な眼差しを受けてシモンも拳を上げて構える。

 

『な・・・なんでしょう、両者開始直前になにやら言い合っております、これは一体何があったのか!?しかしここは武道大会!今からは拳で両者に語ってもらいましょう!』

 

両者只ならぬ空気を出しているが、朝倉も司会者としての仕事を全うするために、二人のことが気になるが開始の合図を出す。

 

『では、Fight!!』

 

開始のゴングが鳴り出した。

 

「さて・・・・・お手並み拝見だね」

「うむ、ヨーコ殿の戦いを見るのは拙者は初めてでござるが・・・・」

 

一悶着あったが、なんとか試合に間に合ったネギたち。

向かい合うシモンとヨーコを見て高畑と楓がネギたちに尋ねる。

 

「僕たちも素手のシモンさんは・・・・ヨーコさんも龍宮さんみたいに拳銃を使いますけど、この大会では禁止されていますし・・・・」

 

それはアスナや、付き合いがそれなりに長い美空たちにも分からないことだった。

 

「そうか・・・・まあシモン君の方は予選で見せてもらったが・・・・とりあえず二人の格はすぐに分かるだろう」

 

顎に手をあてリング状を注目する高畑。

しかし今の発言の意味が分からずネギが聞き返そうとしたらエヴァが変わりに答える。

 

 

「たとえばだ、戦闘において闘志や殺気をむき出しにして立ち会うのは下の下、つまり二流三流のやることだ。相手がむき出しの感情を出せば動きが読みやすくなる。タカミチはその点戦いの時でも感情が読み取れず、動きが読めないだろ?」

 

「あっ・・・・そっか・・・」

 

「そういうこと、まず出だしの行動でだいたいの二人の格がわかるってことだよ」

 

 

タカミチがネギの頭を撫でながら答える。

刹那や楓もそのことがよく分かっているようで頷く。

アスナや美空、さらには素人の夕映たちも感心しメモを取っていた。

しかし・・・エヴァが少し笑いながら口を挟む。

 

「しかし・・・それはあくまで一般的な話だがな・・・・」

「マスター・・・どういうことです?」

「くっくっくっ・・・感情をむき出さない・・・・あの二人に想像できるか?」

「「「「あっ」」」」

 

ニヤリと笑みを浮かべるエヴァの言葉に一同口を半開きにして固まり、ゆっくり首をリングへ向けた・・・すると

 

 

「いくぜヨーコ!昔から消えねえ俺の気合を見せてやるぜぇぇーーー!!!」

 

「だったら教えてあげるわ!!このカッコつけ!今のアンタのメッキを剥がしてやるわ!!」

 

「「うおおおおおおおおおお!!」」

 

 

両者が雄たけびを上げ戦いを始める。

この光景にさっそく度肝を抜かれてしまった一同は口をそろえて・・・・

 

 

「「「「「二人とも感情むき出しだーーーー!?」」」」」

 

 

ネギたちとは離れた場所で観戦するクウネルはこの状況に少し笑みを浮かべていた。

 

「まあタカミチ君の言っていることは概ね正しい。感情をむき出しにして戦うのは二流三流・・・・・・もしくは超一流であること・・・・ナギのようにね・・・・」

 

クスクスと笑いながらクウネルはリングを見下ろす。

 

「さて・・・・あなたはどうですシモンさん?」

 

クウネルの言葉は誰にも聞こえなかった。

 

 

 

 

先に動き出したのはシモンだった。

特にシモンは戦略を練らずにバカ正直にヨーコに向かって真っ直ぐ走り出す。

それに対してヨーコは一歩も動く気配がない。

するとヨーコは突如ポケットから何かを取り出し、それをシモンに向けて投げる。

 

「うおっ!」

 

それは小さなものだった。

しかし強烈なスピードと風を切る音を響かせるその小さなものにシモンはとっさに回避する。

すると、

 

「なっ!?」

 

シモンの避けたその物体は、なんと壁に大きな音を響かせて突き刺さる。

 

 

『なんだー!?ヨーコ選手がつぶてのような攻撃を仕掛ける!しかもこれは強烈だ!壁に突き刺さっている!この大会で飛び道具は禁止されていますが、禁止されているのは重火器や矢尻のついたもの等で、投石や投げ縄などは許可されています!』

 

「ちっ・・・曖昧なルールだぜ!・・・なのになんでドリルは具体名で禁止されてるんだ?」

 

「あら弱気?早いわね!」

 

「うおっ!くっ!よっ!」

 

 

間合いを詰めての戦いになるかと思いきやヨーコの間合いの外からの強烈な攻撃がシモンに襲う。

シモンも少し距離を取って次々と回避していくが、やっとである。

 

『すごいすごい!ヨーコ選手、龍宮選手と同様な飛び道具で相手を苦しめる!しかし・・・龍宮選手は500円玉だったが、はたしてヨーコ選手は・・・』

 

一つずつ投げられても辛うじて回避するシモン。

するとヨーコは投げていた武器を大量に取り出す。それは・・・

 

 

「お・・・おいそれっ!?」

 

「ふふ、なに驚いているの?これは教師の必需品よ!」

 

『なんと・・・なんとヨーコ選手の武器は・・・チョークです!!なんと学園教師のアイテムのチョークを投げています!・・・つうかチョークで床や壁が陥没ってありえないっしょ!?』

 

「「「「「なにいーーー!?」」」」」

 

 

ヨーコが武器として投げていたのはチョークだった。

そう、ヨーコの投げたチョークは黒板をも陥没させる。

それゆえヨーコのいる学校では誰も授業中に悪さをしなくなったのは、故郷の世界にある小さな離れ小島の学校の生徒たちの間では有名である。

観客がその正体に騒ぎ出す中、ヨーコは得意げな笑顔で大量のチョークをシモンに投げる。

 

「そらそらそら!!余所見をしてると廊下に立たせるわよ!!」

 

教師のアイテムチョークを凶器に変えるこの所業に同職のタカミチとネギの顔が引きつっている。

 

「くそ!?飛び道具は卑怯だぞ!拳で来い!」

 

逃げ惑いながら苦し紛れに言うシモン、しかしヨーコは攻撃の手を緩めない。

 

「残念ね!これがチョークという名の私の拳よ!!」

「チョークはチョークだ!!てゆうかアニキみたいなこと言いやがって!!」

 

いくつ隠し持っているのか分からないほど大量のチョークをヨーコは投げる。

上下左右ほぼ同時に攻撃されるため防御にばかり意識を集中させているシモンは反撃の意図口を見つけられない。

砕けたチョークの数だけ白い粉が徐々にリングにこみ上げる。

しかしヨーコの手は止まらない。

このままヨーコのチョーク切れを待っていても、いつになるか分からない。

ならば、多少リスクを冒してでもシモンは前へ出るしかない。

 

 

「うおおおおお!シモンブーメラン!!」

 

『おおーっとシモン選手の目元にV字型のサングラスが出現・・・それを外し・・・・巨大化したーーーー!?』

 

 

シモンは螺旋力を高め、V字型のブーメランを具現化し、それを手元でクルクルと回しながらヨーコに接近する。

 

 

「むっ!?」

 

「どうだ!大回転ブーメランシールド!!」

 

 

ヨーコの投げるチョークは全て回転させたブーメランの前に弾かれる。

そしてその隙に一気にシモンが間合いを詰める。

投げチョークが通用せずにヨーコはシモンの接近を許してしまう。

その瞬間シモンはブーメランを消し、拳でヨーコに攻撃する。

 

 

「とったぜヨーコ!」

 

「素手で来るとはホントに律儀ね!でもまさか私が素手で弱いと思っているの?」

 

 

殴りかかるシモン。するとヨーコはチョークの攻撃を止めシモンのパンチを片手で払いのける。

そして余った拳でカウンターを仕掛ける。

 

「甘いわシモン!」

「それが甘いぜ!」

「それも甘いわ!」

 

シモンはその場で屈み足払いをヨーコに仕掛けるがヨーコは飛び跳ねてそのまま空中からドロップキックをおろす。

しかしシモンも咄嗟に地面を転がり逃れ、即効で立ち上がり再び構える。

お互いの攻撃を払いのけながら、どちらも後を引かずに拳と蹴りの応酬を繰り広げるが、どちらも被弾しない。

 

『間合いを詰めたが両者攻撃を軽やかに回避!それよりシモン選手女性相手に拳を振るうことに躊躇わない!これは意外だ!!』

 

先程と一転した接近戦の攻防になり、一つ一つに息を呑みながら観客が見守る。

 

「意外じゃねえよ!俺とヨーコに男も女も遠慮もねえ!それこそ友情が進化したダチ公だ!!」

「あら、言ってくれるじゃない!顔面狙わないフェミニストさん?」

「!?」

 

口でなんと言っていてもやはり顔を殴るのをシモンは控えていた。

そのためシモンの攻撃はほとんどローキックやボディへの攻撃に集中していたため、ヨーコには完全に読まれていた。

するとヨーコは予期していたシモンのローキックを素手で掴み取り片足で立っている足を払い、シモンをその場で尻餅をさせる。

 

「いてっ!?」

 

勢いよく転ぶシモン。その時ヨーコはすでに次の行動に移っていた。

ヨーコはシモンの背後に回り込み、シモンの首に腕を回す。

 

「なっ!?」

「遅い!」

「うおお!?」

「ほらシモン!ギブアップする?」

 

シモンが咄嗟に後ろを振り返ろうと思い、首を回すがその瞬間シモンの顔がヨーコの身体に押し付けられ、首を腕で締め付けられた。

 

 

『ヨーコ選手流れるようなコンビネーションでシモン選手の首を取った!これはチョークスリーパーです!!』

 

「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」

 

「華麗だぜヨーコさん!そのまま落とせーー!」

 

「シモンの兄貴ー!ギブアップはまだ早い!なんとか逃れるんだーーー!」

 

「ロープだ!ロープを掴めーーー!・・・・いやロープはねえーー!?」

 

 

プロレス顔負けの盛り上がりを見せる会場。

ネギや美空たちの戦いに比べたらとても現実的な攻防だが、会場の熱は上がっていく。

 

 

「ううむ、一見地味でござるがこのままヨーコ殿がいくか?」

 

「ハラハラ・・・・シモンさんを応援したいけど・・・・ヨーコさんも応援したいし・・・・僕はどうしよう・・・」

 

『さあ、盛り上がっています!シモン選手エスケープ出来ません!身動きが取れない!このままいくか!』

 

 

ヨーコの腕に力が入る。会場中も「落とせ」のコールが広がっていく。

しかし当のシモンは首を絞められている状況より別のことで頭がいっぱいだった。

 

「もご・・・もごもご・・」

 

首を押さえられるシモンは何かを呟いている。

ヨーコはシモンが抵抗しようとしているのだと思い気にせず腕の力を強める。

しかしその瞬間さらにシモンがもごもごと呟く。

 

「もご~~~・・・もご~(むむ・・・・胸が~~~!)」

 

半分顔を後ろに振り返った状態でシモンはヨーコに首を絞められている。

しかしそれは強くされればされるほどヨーコのビキニにのみで覆われている胸の谷間に思いっきり顔を埋める形になっているのである。

正直会場の盛り上がりは今のシモンにはどうでもよかった。

目の前にうずめる桃源郷に頭がいっぱいだった。

 

(ああ・・・やわらかい・・・この感触・・・この弾力・・・・ああ・・なんか・・・今俺は初めてブータの気持ちが分かった・・・・)

 

その瞬間シモンの心は勝負から完全に離れ天国へ行ったような気分になる。

首に痛みが走るが気にならない。

至福のこの瞬間に心を癒され、その顔はとても安らかである。

 

「シモン?あんた、大丈夫?」

 

一方ヨーコはシモンが抵抗の力を徐々に弱めていることに気になった。

しかし落ちる気配もギブアップする様子も一向にない。

そのことに少し首を傾げていると、もう一人状況が気になったアナウンサーの朝倉が横からシモンの顔を覗き見る・・すると・・。

 

 

『シモン選手はまだ落ちていない!しかしその顔は・・・・とても・・・・まさか!?シモン選手、ヨーコ選手の豊満な胸の感触を!!!!』

 

「なっ!?」

 

 

それを聞いて思わずヨーコは手を離しその場から飛びのいてしまった。

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

一瞬にして静寂な空気が流れる会場、するとシモンがようやく桃源郷から現実に戻ってきて慌てて立ち上がった。

 

「な・・・・なんだよ・・・・どうしたんだ・・・?」

 

キョロキョロと辺りを見渡すシモン。

正面には胸を押さえてジト目で睨むヨーコ。

そして無表情で自分を見るシャークティやエヴァたち。その背後には黒いオーラが浮かんでいた。

そして次の瞬間・・・・・

 

 

「「「「「「「「「ぬあああああんだそりゃあああああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」

 

「シモ~ン、テメーヨーコさんの・・・ヨーコさんの胸を!?」

 

「なんてうらやましい!?どさくさに紛れてなんだそりゃぁ!?」

 

<うおおおい!?見損なったぜシモンさんよぉ!アンタは・・・アンタは俺と同じ硬派を貫く男だと思ってたのによぉ!!>

 

 

シモンのファンも多かった観客が一転して全員シモンへ罵声を浴びせる。

そして解説者席に座っていた、昨晩シモンと壮絶な死闘を繰り広げた豪徳寺も立ち上がり机に足を乗せて物申している。そして、

 

「ほう・・・・・あのバカめ・・・随分と余裕があるではないか・・・・」

「ふふふ・・・せやな~~~」

 

邪悪な笑みを浮かべるエヴァたち。そのこめかみには血管が浮き上がっている。

シャークティや木乃香からも迫力のある笑みが向けられる。

この状況にシモンは焦って誤魔化そうとする。

 

「ま・・・待ってくれ皆!本当に逃げられなかっただけなんだって!」

 

会場中に聞こえるような大声で弁解の声を上げるシモン。

しかしヨーコは胸を押さえながらシモンを睨む、

 

 

「でも・・・・アンタ・・・感触楽しんでたでしょ・・・」

 

「それは・・・楽しんでたんじゃなくて、ブータの気持ちを理解したっていうか・・・」

 

「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおい!シモ~~~~ン!?」」」」」」」

 

 

再び怒号が吹き荒れる。

リングサイドにいるエヴァたちのこめかみの血管が一つ増える。

どこかから聞こえる何かが切れるような音。

会場中から睨まれるシモン。完全にあたふたして右往左往している。

そんなシモンにヨーコはトドメの爆弾を投下する。

 

 

「まったく・・・いい年して胸ぐらいで興奮するんじゃないわよ!だいたいアンタ昔に私の胸に顔を埋めて、思いっきり鷲摑みにしたことあったでしょ?」

 

「えっっっ!?」

 

「「「「「「「「「なっっっ!?」」」」」」」」

 

 

ヨーコの発言は事実だった。

しかしそれは昔地下から地上に飛び出したときに、上空から落下したさいにそんな形になってしまっただけで完全な事故である。

しかし今はそのことなど誰も知らない。

さらにヨーコは意地の悪い笑みを少し浮かべて爆弾を連射する。

 

 

「それに温泉に行った時に、私のハダカをじっくり見たでしょ?今更胸に触ったぐらいで慌ててんじゃないわよ、私とアンタの仲じゃない♪」

 

「お・・・・おい・・・・ヨーコ・・・」

 

 

ウインクをしながら色っぽい笑みでシモンに微笑むヨーコ。

これも事実だった。

温泉に入っているときに敵からの襲撃を受けてシモンたちはハダカのまま戦った。

ヨーコはその際タオルで身体を隠していたが、敵を撃退したときに喜んで飛び跳ねたら、タオルがずり落ちた事があった。

昇る朝日とともに見たその光景をシモンは今でも覚えていた。

 

「あっ・・・あの・・・・皆・・・・・・」

 

シモンはかつて言った。火山の噴火とは地下で燻り一気に地上へ弾け飛ぶものだと・・・・、今のこの状況はその光景と酷似していた。

沸々と会場全体から発せられる音。そしてそれは次の瞬間・・・

 

「「「「「「「ごぉるあああああああ!!!!シモオオオオオン!!!!」」」」」」」」

 

観客という名の火山が大噴火した。

 

 

「テメエ~~シモ~~ン!ぶっ殺ーーーす!」

 

「鷲摑みだと!?顔を埋めただと!?ハダカを・・・・あのビキニに隠された理想郷を見ただとぉ!?テメエは漢の敵だぁ!!」

 

「テメエには失望したぜごるぁ!!」

 

「ヨーコさんとの仲だぁ!?それはどんな仲だぁ!?ハダカを見るような仲かぁ!?」

 

<あの時の・・・あの時予選でアンタに感じたシンパシーはなんだったんだ!?あの時のアンタの男気はなんだったんだ!?アンタは完全に俺を怒らせたぜこの野郎!!>

 

 

予選では会場中が一体になって送ってくれた「シモンコール」が「シモンブーイング」へと変わった。

男たちは血の涙を流しながらシモンへ怒りの言葉の嵐を叩きつける。

最早完全に会場を敵に回したシモンは、言い訳ももはや無駄だと諦めた。

 

(なんだか、懐かしいな。あの時も、世界中から罵倒されたっけ・・・)

 

シモンはこの時アンチスパイラルが来襲したときのことを思い出した。

戦争責任者として市民が暴動を起こしシモンを罵倒し、死刑寸前まで追い詰められていた。

 

「全く、敵わないな・・・ヨーコには」

「当り前じゃない。私を誰だと思ってんの? エヴァや木乃香みたいに、可愛らしい女の子とは違うのよ」

 

うな垂れるシモン、試合を忘れヨーコはクスクスと笑っていた。

 


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