魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第59話 あっけない幕切れ

蹴りを食らって倒れたネギだが、身体をゆっくりと起こしていく。

その間に美空は攻撃しようとはしなかった。余裕なのか、それとも美学なのかは分からない。

しかしこれにより美空は一つの勝機を見逃していた。

ネギは攻撃を食らったことにより逆に分かってしまったのである。

 

(美空さんの今の蹴りはそれなりに力を入れて打ったはず、でも・・・それほどダメージはない、美空さんも魔力で身体を強化しているけど、僕も同じだし美空さんのほうはまだ供給の仕方が甘い、・・・タカミチの居合い拳に比べると質が軽い!)

 

それこそネギと美空の決定的な差だった。

いくらスピードに乗った蹴りでも、美空の攻撃の仕方は素人同然なために魔力で身体を強化しているネギには芯まで響かない。

加えて美空は普段修行をサボっていたため、ココネからの魔力供給が全身までうまく行き届いていなかった。

ほとんど完璧に魔力を体中に流せるネギからすれば、ノーダメージだった。

つまり、

 

(美空さんの攻撃は防御する必要なんてない! 被弾を恐れずに攻撃のみに集中すればいい!)

 

当初カウンターという後手の戦法をとったネギだが、予想を上回る美空の動きに目がくらみ、防御ばかりに意識が集中していた。

しかし大振りの美空の蹴りをまともに食らったことにより、防御は捨ててもいいと分かった。

 

『ネギ先生立ち上がりました! しかし逆転の手は残されているのでしょうか!?』

 

やることが一つに絞られれば難しいことはない。

立ち上がったネギの目は先程とは変わって一気に強気な目になった。

 

 

「手段も何もやることは一つ、ぼーやが守りを捨てればいいだけだ」

 

「まってよ!? 私美空ちゃんの攻撃を受けたけど物凄い威力だったわよ!?」

 

「お前からすればそうなのだろう。言ってみればそれがお前とぼーやの歴然たる力の差だ。ここでハッキリと言っておくが、お前が思っているよりぼーやとお前の力の差は大きい。さらにぼーやは身体の使い方を知っているから直撃してもダメージを受け流せる」

 

「えっ・・・・・そんな・・・」

 

「その通りです。美空には決め手がない、そして今のネギ先生を倒せるだけの攻撃力がない。適当な思いつきの技では限度があります」

 

 

エヴァの言葉はアスナにはショックだった。

なぜなら自分がパートナーとして今後護ろうとした少年は自分よりも遥かに強いと言われているのだ。

さらに自分は美空にも負けているのだ。改めてこの世界での力の重要性を感じた。

そんなネギやエヴァたちの考えをよそに、美空はあくまで余裕の姿勢を崩さない。

 

(立ち上がったるとは流石だね~、でも今日の私はマジでイケル!!)

 

立ち上がり構えるネギ。その構えは実にオーソドックスな構えで左手を前にして両拳を顔の前で構える、ボクシングや空手のような形である。

単純に左手で相手との距離をとり右の大砲で打ち抜くというシンプルなものである。

しかし美空にそんな思惑が分かるはずもなく。

 

「さ~て、トドメだ!」

 

美空は正面からネギに向かっていった。

 

『春日選手再びダッシュ! 勝負を決めに来た!!』

 

自分のスピードと反応さえあればネギには勝てるという自信だった。

観客の9割は美空の勝利を、そして残りの一割のタカミチやエヴァなどの強者はネギの勝ちだと思った。しかし次の瞬間。

 

「!?」

 

美空は急に立ち止まった。

 

『春日選手止まったぞ!? これはどういうことだ!?』

 

急に立ち止まった美空に会場がざわつきだす。勝利を目前に立ち止まり、そして美空の額から汗が噴出しているからである。

しかし美空はこれまで強敵相手には常に逃げ出していた経験が幸いして、直前に気づくことが出来たのである。

 

(・・・あれ・・・急にネギ君に近づけなくなったような・・・)

 

それは怯えではなく、察知である。

ネギから突如かもし出され、魔力とは違う研ぎ澄まされた空気のような圧力を美空は感じ取ることが出来たのである。

 

(なんかネギ君の構えてる拳・・・・来ても避けられると思うけど・・・でも・・・)

 

ネギから感じるプレッシャーによりネギの攻撃力を自分の中で勝手に想像してしまった。

その結果当たる可能性は低いが、もし当たれば大ダメージは免れないことを感じ取った。

今にして思うとネギの身体を強化するために覆う魔法、自分のように不完全な供給ではない。

自分がネギを倒すのにはまだ何発も当てる必要がある。

しかしネギは一撃入れれば逆転できるほどの力を持っているのではないかと思ってしまった。

すると美空は軽いステップでネギの周りを素早く走り出した。

 

『おお~っと春日選手、ネギ選手の周りを走り翻弄しようとしています!』

 

しかし美空は翻弄する気などはなかった。だたネギの正面からは攻撃したくなかったのである。しかしネギの右に左に後ろに回りこんでみても、ネギは決してブレない。

 

(やば・・・・・急に自分の攻撃が入るイメージが無くなっちった・・・でも・・・正面からいくと100パーあの拳でカウンターされる気がする・・・)

 

ネギは何もせず構えているだけ。しかしそれだけで美空は動揺してしまった。

当初は自分のペースで試合が出来ていたが、ここに来て開き直ったネギを前にして自分とネギとの力の差を理解してしまったのである。

 

(いや・・・勝ってるのは私!・・・ビビらず行け!)

 

胸に湧き上がる不安を振り払うように美空はネギに迫る、そして・・・

 

『春日選手、再び高速のラッシュです! ネギ先生はこれをどう破るのか?』

 

再びラッシュが繰り出される、しかし先程とはまったく違うことがある。それは・・・

 

 

『なっ!? ネギ選手まったく防御しません!? 全て命中しています!?」

 

「なっ!?」

 

 

防御を捨てて意識を全て攻撃にまわすネギ。そして大きく一歩を踏み出す。

 

 

「風華崩拳!!」

 

 

風の力を身に纏った拳が美空に向かって放たれる。

 

「うわっ!?」

「よけろ、美空!」

 

凄まじい風がリングに広がる。

ネギの放った拳圧がリングの外までに吹き、その勢いが壁まで激突する。

 

「はあ、はあ、・・・アブナ・・・」

 

かろうじて回避した美空はリングのギリギリまで逃げ、膝をつき息が荒かった。

 

 

『春日選手は再び回避した~!? 相変わらずのスピードです! これでまたもや仕切り直しです!?』

 

「えっ・・・・し・・・仕切りなおし・・・」

 

 

仕切りなおし、その言葉は美空の身体を震えさせた。

つまり今の一撃を回避しながら何度もネギに接近しろということである。

今の風を纏ったネギの恐るべき拳圧に威力を思い出し、背筋が震える。

 

(無理無理!! あんなの直撃したらココネの魔力ごと吹っ飛ばされるって! でも・・・ネギ君、まだまだ相当元気っぽいし・・・)

 

美空はネギに何発攻撃を入れたかは覚えていない。しかし今にして思えばネギにまったくダメージは見られなかった。

つまりネギを倒すには今よりさらに攻撃を当てるしかない。しかもより威力を込めた一撃を入れていく必要がある。

だが、威力を込めるとモーションが大きくなり回避され、カウンターをされる恐れが合ったためスピードを重視した。

しかしその戦法ではネギには勝てないことがようやく分かった。

 

(どうする・・・・どうしよ・・・・このまま時間切れまで待てば判定で勝てると思うけど・・・まだ時間はある・・・それにそんな逃げ腰は兄貴たちの前で許されない・・・なら・・・)

 

美空は動きを止めてネギの正面に立った。そして・・・

 

『立ち止まったぞ美空選手! そしてこれは・・・・一回戦のときと同じ技です!』

 

立ち止まった美空は一回戦と同様にクラウチングスタートの構えをした。

 

「どうせ今の私にはこれしか出来ない! なら・・・当たって相手を砕け!」

「そうですか・・・でも・・・ぼくには通用しませんよ?」

 

美空は一発の被弾を警戒しながら連打を重ねるのは止めた。自分の一撃に賭け、ここで勝負を決めようとした。

だが一回戦とは状況は違う。一回戦はアスナ自身が正面からのぶつかりを要求したため成立したが、ネギがそうするとは決まっていない。だが美空は恐れながら向かうよりも全身全霊でぶつかることを選択した。それに対してネギは静かに構えている、美空の特攻の姿勢を前に、とても落ち着いている。

 

(美空さん・・・本当にその手段で来るなら・・・僕は・・・別の手段がありますよ)

 

するとネギは構えを変えて、両手を身体の前に出した。

それが何の意味があるかは美空には分からない。しかしネギは避けようとするそぶりは無い。

美空もそれを見て足を軽く浮かせる・・・そして・・・

 

 

「いくよネギ君!!」

 

『春日選手消えた~~~~!! 神風特攻再び!!」

 

 

猛烈に加速して特攻する、恐れも全てなぎ払い、ネギだけを目掛けて走り出す。しかし・・・

 

 

「今だ!! 風障壁(バリエース・アエリアーリス)!!)

 

「いっ!?」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「ネギの奴、ズリー!?」

 

 

美空が正面突破しようとした瞬間、ネギは風障壁を発動。

風障壁の効果は一瞬だけだが、その力はタカミチの居合い拳の一撃をも防ぐ、つまり・・・

 

「ぶへァ!?」

 

思わぬ壁に激突した美空は、ネギにぶつかる前に弾き飛ばされる。そして

 

「は・・・鼻うった・・・・」

 

全力疾走ゆえの自爆のダメージが美空を襲う。だがその瞬間ネギはすでに・・・

 

「美空~~~!ネギは後ろに居るぞ~~~!?」

「へっ?」

「遅いです!」

 

美空が痛がっている隙にネギは既に次の行動をとっていた。ネギは美空の後ろにすばやく回りこんでいた。

 

「あっ!?」

「美空さんの動体視力も相手が見えなければ意味がありません!」

『ネギ選手、一瞬で春日選手の後ろをとった~~~~~!?』

 

今の美空では相手の動きを気配などで察知する力はまだ無い、目に頼るのは当然であった。

だから自分の目が逸れている間に行動されればどうしようもない。

気づいたときには遅い、背後に回りこんだネギはゆっくりと美空の首筋に手刀をおとす。

 

「あっ・・・・・うっ・・・・あっ・・・」

「美空~~~!」

『ネギ選手の・・・いや、今大会初めて春日選手に攻撃がヒット! それは意外にもやさしい攻撃です!』

 

威力などはない、しかしそれで充分な一撃だった。

シモンの叫びは届かず、ネギの手刀で美空は脳の中がグルングルンかき回されるような衝動に陥り、フラフラと身体を揺らし、そして「バタン」と音を立てリングの上に倒れた。

あまりの突然のことに一瞬観客が唖然とする。そして

 

 

『こ・・・これは・・・ネギ選手がよくわからない防御で春日選手を弾き飛ばし、ネギ選手の手刀が春日選手の脳を揺らし・・・気絶しています!! よって・・・ネギ選手の勝利です!! 序盤は完全に春日選手が圧倒していましたが、ネギ選手の作戦勝ち! ネギ選手準決勝進出です!!』

 

「「「美空ちゃ~~ん!?」」」

 

「アネキ~~~~!?」

 

 

盛り上がりに対してそれは実にあっけない幕切れだった。何名か首を傾げる者も多い。

さらにこの大会で一気に学園の人気者になった美空に暑苦しい男たちが大声を出して叫んでいる。

だがネギが勝利という結果は揺るがず、仕方なく観客もネギに拍手を送る。

その声援を受け、ネギは気絶している美空を抱きかかえ、控え室へと向かった。

 

 

 

 

この光景に、観客席で千雨とともにパソコンと格闘しながら見学していたシモンは、

 

「美空・・・負けちまったか・・・結構いい線行ってたと思ったんだけどな~、まあネギも強かったからしょうがないかな?」

 

とても残念そうなため息をついた。

ネギの力は知っているし、二人とも自分にとっては大切な存在だが、妹分が負けたことには素直に残念そうだった。

 

「・・・それで・・・長谷川・・・どう?」

 

シモンはパソコンと睨めっこしている千雨を見る、すると千雨は少しため息をつきながら画面を見せる。

 

「今のネギ先生の防御に魔法派が復活しました。もっとも負けたとはいえ春日の気合というよりも人気が急上昇したようだが・・・」

「う~ん・・・美空の奴・・・気合じゃなくて『速さ』がどうのこうのって叫んでたからな~~」

 

気合で戦えといったにもかかわらず、美空は魔法でも気合でもなく気づいたら速さを武器にして戦っていた。

そのためネット上では気合派が意外と伸びていなかった。シモンも少し「う~ん」と唸って考えた。

しかしその時あることに気づいた。

 

 

「美空の人気が急上昇って?」

 

「えっ?・・・そりゃあ、あんだけ派手にやらかしたから、憧れるバカも出てくるってことですよ。現に観客の男もそういうのが結構居ると思いますよ」

 

 

その言葉を聞いてシモンは周りを見る。すると確かに美空の名を叫んでいる観客がかなり居た。

それに気づきシモンは拳を握り締めた。

 

(よしっ! 気合はともかく、これはこれで順調そうだ。美空はもう大会には出ないから、後は俺がどこまで出来るかなんだけどな・・・)

 

シモンは自分の気合普及以外のもう一つの計画が徐々にうまくいっていることに満足した。

そしてそれを成功させるにはこの後自分がより一層がんばる必要があることも。

 

「もう・・・一回戦の時みたいに無様なことは出来ないからな・・・それこそ気合で乗り越えないとな」

 

もし一回戦のようにだらしない姿を見せたら美空の今のがんばりが全て無駄になってしまう。そのことをかみ締め、シモンは次の己の試合に向けて意気込んだ。

 

 

 

 

 

場所は変わって控え室、気絶している美空を横に寝かせて、ネギは今アスナに説教されていた。

 

「美空ちゃん・・・負けちゃった・・・でもネギもずるいわよ、魔法使うなんて!」

「そんな~~、でも美空さんも強くてあれぐらいしか・・・」

 

ネギを応援していたが、少し納得のいかないアスナは魔法という言葉の部分をハルナたちに聞こえないように小声で文句を言う。

しかしエヴァがそれを否定する。

 

「ルール上詠唱を唱えなければ問題は無い、それに戦いの場に立てば女も男も関係なく等しく戦士だ。手を緩める必要も無い」

「うっ・・・でも・・・」

「まあ、少し調子に乗った美空にもいい薬になったでしょう」

「シャークティ先生まで!?」

「美空は結局無傷で負けました。まだネギ先生にはそれだけの気遣いが出来るほど差があるということです。努力を怠らない天才少年と戦ったことによって、あの子も何かを感じ取ってもらえたならいいんですけどね・・・」

 

シャークティはまるでこうなることが分かっていたかのような口ぶりで、横たわる美空を見下ろしながら告げる。

おそらく美空自身よりも美空を知っている彼女だからこそかもしれない。

そして彼女の言葉どおり、この大会がキッカケでアスナや美空が急成長するのはもう少し後の話だった。

何はともあれネギの勝利に木乃香やハルナたちが沸きあがる。

 

 

「まあまあ、美空ちゃんもがんばったし、ネギ君がまた勝ったってことでいいじゃん♪」

 

「せや、これでネギ君はベスト4や~」

 

「ホントにスゴかったよね~~二人とも、・・・・まるで・・・・魔法みたいに♪」

 

「「「「「「いっ!?」」」」」」

 

 

一般人ハルナのいやらしい笑みを浮かべた発言に全員の顔が引きつった。

全員のその反応を見て、ハルナの口元が更に不気味に吊り上る。

その結果、ハルナが新たな世界に足を踏み入れるまでの時間は、美空やアスナの成長よりも遥かに早いことになった。

 

「う~~ん・・・・・あれっ? ・・・・ここは?」

 

ハルナの発言により騒がしくなり、気絶していた美空が首を抑えながら目を覚ました。

 

「あっ、美空ちゃん!」

「・・・・アスナ? ・・・それにネギ君も・・・みんなも・・・・あっ!? ・・・試合は!?」

 

目を開けた瞬間に飛び込んだアスナたちの顔に一瞬戸惑ったがすぐに目が覚めて頭が働き出した。

慌てて試合の経緯を聞こうとするが、シャークティが首を横に振る。それを見て美空も全てを理解した。

 

「あ~~~あ~~、負けちゃったのか~~、イケルと思ったんだけどな~~」

 

美空は体を大の字になりがら床に横たえた。

 

 

「途中で調子に乗りすぎましたね。まったく、今のアナタの何処にそんな余裕があるのですか? 自信を持てとは言いましたが、過信しろとは言っていませんよ」

 

「いや~~、私の人生であんな経験なかったから、つい調子に乗っちゃってさ~、」

 

 

申し訳なさそうに笑う美空。あまり反省してなさそうなのでシャークティも少し呆れてため息をつくが、今はこれ以上は言わなかった。

負けたとはいえ、自分の弟子はこの大会で一皮剥けたので、それだけでよしとした。

すると・・・

 

「でも美空ちゃんすごかったな~~~。あんなこと出来るなんて驚いたよ~~」

 

ハルナがニヤニヤと笑いながら、美空に詰め寄る。

ネギたちも先程のハルナの呟いた発言を思い出し、慌て出した。

しかしハルナはそんなネギたちの思惑を無視して美空に問い詰める。

 

「それで~、美空ちゃんはどうしてあんなに足が速いのかにゃ~?」

「えっ?」

 

美空はチラッとネギたちを見た、すると何かを訴えているような目だった。

そのことから美空も何かを察して、少し間を置いてから・・

 

「・・・えっと・・・パシリで鍛えて・・・」

 

だがそんなことでハルナが納得するはずも無い。

 

 

「ふふ~~ん、そんなアメフト選手みたいな言い訳が通用すると思ってるのかにゃ~? 美空ちゃんの足が速いのは知ってるけどさ~、私を誤魔化せると思ってるのかにゃ~?ね~、のどか、夕映?」

 

「「えっ!?」」

 

 

急に名前を呼ばれて過剰な反応をしてしまった。

そのためハルナの目は再び光、不気味な笑いがさらに聞こえる。

 

「ふふふふ、その反応・・・君達は知っていたのかな?」

「「ひっ!?」」

「ちょ~~っと話が聞きたいね~~」

 

もはやこれまでか?そう思った瞬間、援護が意外なところから来た。

 

「気合だよ」

「えっ? ・・・高畑先生?」

「タカミチ?」

「ハルナ君、さっきの美空君の力は気合だよ。そうだよね美空君?」

 

タカミチはウインクをしながら美空を見る。それを受けて美空も勢いよく頷く。

 

「そうそう! いや~、あれこそグレン団が誇る気合の力っ! まあ、未熟な私はまだまだ足りなかったってことだけどね~~」

「そうそう、あれが美空ちゃんの気合よ! シモンさん流で、気合があれば何でも出来るってことよ~」

 

美空に便乗して気合で押し切ろうとするアスナたち、しかし、

 

「ふ~~ん、美空ちゃんはそうなんだ~~」

「「「「美空ちゃんは?」」」」

「じゃあ、ネギ君はどうなのかな~~? 気合じゃないよね~~~?」

「「「「いっ!?」」」」

 

押し切れなかった。

ポーカー勝負で相手になるはずが無く、アスナたちは徐々おされていく。

タカミチとシャークティも少し困ったような表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

ネット上以外でも魔法についての論争があったことはシモンには分からず、今は次に迫った自分の試合に集中していた。

 

「最低でも次ぐらいは勝たないとな・・・・相手は刹那・・・微妙なところだな・・・」

 

さすがに自分まで負けてしまったら全てが水の泡である。

さらに超の失望も大きいだろう。それゆえ負けられないと意気込むシモン。

そんなシモンの様子を見て、千雨は尋ねる。

 

 

「なあ、シモンさん・・・アンタは魔法使いじゃないんだろ?・・・何が目的なんだ?」

 

「長谷川?」

 

「気合も魔法も私から見たら大して変わらないですよ、どっちも常識外れの力。どっちが普及されても一般人の私達は困りますよ。・・・アンタは気合を普及して何がしたいんだ?」

 

 

どちらも異形の力、それが千雨の素直な感想だった。しかしシモンは首を横に振る。

 

「そうかもな・・・でも・・・魔法は魔法だ。鍛錬しなければ扱うことは出来ない、でも気合はどうかな? 気合は誰だって持っている。気合を出せるか出せないかは本人のココ次第だ!」

 

シモンはそう言って己の胸を叩いた。

 

 

「いや・・・気合で体が光ったりされても・・・・」

 

「俺の目的は捻じ曲がっちまった俺達の物語の真実を・・・ある女に教えるためだ。魔法がどうのこうのは、別の話。でもそれも防ぐ、アイツにも勝つ、それが目的かな・・・」

 

「・・・・・・・全然分かりません・・・」

 

『さあ、2回戦最後の試合です!!桜咲選手、シモン選手、リングまでお越しください!!』

 

 

朝倉のアナウンスを受けてシモンはコートを翻してリングへ向かう。

 

 

「まあ見てろって、長谷川。この背中のマークに賭けて、お前が困るような世界にはしない! 全部俺が・・・俺達が勝てば変わらない明日が来るんだから」

 

 

シモンは背を向けたまま手を上げて、その場を後にした。残されたち千雨は少し納得いかないような表情になりながら、再びパソコンに言葉を打ち込んでいった。

 


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