魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第64話 友の想いをこの身に刻む

「ちょっ・・・これ見てよ!!」

 

 

ネギの生徒でもある釘宮円が持っていたパソコンの画面に何かを写した。

声を聞いて委員長たちやヨーコもその画面を覗き込む。

 

「な・・・なんですの、これは?」

「ネギのこと・・・みたいね。ネギの涙の過去?」

 

気づけば自分たち以外にも会場中の観客たちが携帯電話やパソコンで同じ画面を写している。

リングサイドにいるハルナも携帯の画面を見ながら、その内容に驚いているようだった。

彼らはようやく、超の仕掛けた撒き餌に掛かったようである。

 

「ネギ君にそんなことが・・・・」

 

携帯の画面を見ながらハルナは呟く。そしてその後ろにいるのどかや夕映を見る。

 

「ゆ・・・ゆえ~、これネギせんせ~の・・・」

「はい、しかしなぜこの事が・・・」

 

何かを小声で話し合っているが、その様子だと自分と同じ反応ではなさそうである。

 

「ふ~~~ん、ひょっとして君たちはこの内容を知ってたのかな~~~?」

「「ギクッ!?」」

 

ハルナと違い夕映ものどかもネギから直接話を聞いていたが、その場にハルナはいなかった。それを今日までずっと黙っていたことにハルナは不気味なオーラを出しながら二人を威圧する。

 

「ほほ~~う、ちょ~~っと、後でお話しようね~~」

「「ひいいいいい!!」」

 

超の仕掛けにより彼女たちだけでなく色々な場所でネギの過去を皆に知られていく。

 

「んまあ・・・まあ・・・。行方不明のお父様を・・・ネギ先生にそんな事情が・・・・」

「しかも・・・お母さんもいないみたい・・・」

「んまあ!・・・そ・・・そんなことも知らずに・・私は私は・・・・雪広あやか、一生の不覚!!」

 

委員長を始め、ネギの過去を知り涙を流す一同。

いつもそんな素振りを見せずに笑顔を見せていたネギを想い、胸が痛んでいた。

 

「あっ!? これによると決勝のクウネル選手がお父さんかもしれないって!?」

「なんですと!?」

「ウッソー!? もしそうだとしたらスゴすぎじゃん!」

 

ネギの生徒たちだけではない、この会場にいる観客たちもその情報が耳に入り、試合そっちのけで騒ぎ出す。

そして会場中の考えが一つになった。

 

「じゃあ私たちに出来ることは!」

「当然!・・・・・」

 

「「「「「「「ネギ先生を応援よ!!!!」」」」」」」

 

 

ネギの生徒や女性客だけではない。

ネギの過去に心打たれた者達が一つになり大声援を送り出した。

 

「シモンさん!!」

「いくぜ、ボウズ!!」

 

シモンのブーメランとネギの魔法の杖が交錯する。

素手の戦いをこれまでしてきたネギが武器を使うことは珍しかったが、ネギは長い杖を槍のように巧みに使い、シモンと衝突する。

 

「桜花槍衝・大公釣魚勢!!」

「ちぃっ! 鮮やか・・・そして速い!」

 

ネギは槍の扱いにも慣れているようである。

古によれば八極拳は槍をも得意とするそうである。

その間合いの長さと動きの独特さに、流石のシモンも舌打ちをする。

ネギの技はシモンの直撃は避けたものの、確実にダメージを与えていく。

さらに先程ネギから貰った拳の一撃により、明らかにシモンの体の動きが鈍っていた。

そして・・・

 

「そこです!!」

「しっ・・・しまった!?」

 

シモンの動きが鈍った瞬間、ネギは杖でシモンの手首を攻撃し、持っている武器を落とさせる。

シモンも顔を歪めてブーメランから手を離した瞬間、ネギは既にシモンとの間合いを詰めて次の動作に動いていた。

急接近したネギはそのままスピードを殺さずに、シモンの腹に肘打ちを叩き込む。

 

「硬開門!!」

「~~っ!?」

 

声に出せぬほどの衝撃がシモンを襲う。

一瞬息が止まってしまった。だが、ネギはこのチャンスを逃しはしなかった。

 

「魔法の射手(サギタ・マギカ)!! 光の一矢(ウナ・ルークス)!! 弓歩沖拳!!」

 

即座に追撃するネギは右手に雷を集える。そしてその一撃をすかさず叩き込む。

同じ箇所にこの試合三度目の衝撃、さすがのシモンも倒れこむ。

しかしネギは倒れこむことすら許さない。

 

「高畑先生のときの連携攻撃アル!」

「しかも完全に入っている! まだまだ続くぞ!!」

 

ネギが完全に動きで圧倒している。ある意味予想外だった。

しかしネギは冷静に攻撃を繰り出していく。

 

(いける! このまま押し切れば勝てる! ここで決める!!)

 

雷の魔法の矢を纏わせた右手を中段に真っ直ぐに打ち出す。

この技は大してタカミチに通用しなかったが、今のボロボロのシモンには充分な一撃である。

シモンを覆う螺旋力も最初のころの力強さが徐々に消えて、光が小さくなっている。

シモンはそんな中、小さく呟く。

それは迫り来る少年への素直な感想だった。

 

「ったく・・・・ネギ・・・やるじゃねえか・・・」

「雷華崩拳!!」

 

完全にフラフラとなったシモンのみぞおちに叩き込み、さらに三本の雷の矢が追い討ちをかける。

シモンは勢いよく場外へと吹き飛ばされた。

 

『完全にネギ選手のペースです! シモン選手これまでか!?』

 

肩で息をしながらリングの外を見つめる。

そして、完全な手ごたえに拳をぎゅっと握り締め、ネギは叫ぶ。

 

「はあ、はあ、はあ、僕の・・・僕の勝ちです!」

 

その言葉に連れられて、会場がワッと盛り上がる。

 

 

『こ・・・これは完全にキマッタ~~~~~!! つうかシモンさん死んだか~~~!?』

 

「ネ・・・ネギ先生~~! なんと素晴らしい! 感動で涙が止まりませんわ!!」

 

「すっげ~~!ネギ君つよ~~い!」

 

 

委員長や裕奈を始め、ネギの大活躍に大興奮だった。

 

「ちょっ・・・ホントにネギの奴シモンさんに勝っちゃったの?」

「シモンさんが・・・そんな・・・こんなにアッサリと?」

 

だがアスナや刹那たちはこれで終わりだとは思えなかった。なぜか分からないがそんな気がした。

シャークティや美空たちもそうである。

まだ何かが起こりそうな気がした。

 

「いや・・・そんなはずないって・・・」

「美空の言うとおりです・・・少なくとも私たちの知るシモンさんは・・・こんな時に立ち上がる人です・・・」

 

それは勝利宣言したネギもそうである。

これではあまりにも簡単すぎる。

こんなに簡単に負けるようなら刹那も遅れを取るはずはないと思っていた。

そしてその考えは正しかった。

 

 

「まったく・・・ごほっ・・・ぐっ・・・はあ、はあ、・・・体がぶっこわれそうだよ・・・」

 

「!?」

 

 

このまま終わりではないとは思っていた。だがそれでも驚いた。

シモンはまだ終わっていなかった。

再びフラフラと立ち上がり、自分の前に現れたのである。

 

 

『生きていた~~! シモンさん生きています!』

 

「「「「アニキ~~~!!」」」」

 

<そうだ、立つんだシモンさん! アンタはこんな所でやられる男じゃねえ!>

 

 

再びリングに現れたシモンに豪徳寺や観客の男たちが声を上げる。

シモンの健在にシャークティたちもホッと胸を撫で下ろすが・・・しかし・・・

 

「はあ、はあ、はあ、・・・っつう・・・・」

 

もうすでにシモンの体はボロボロである。その地面を支える両足には力がなく、今にも倒れそうである。

思えばヨーコとの一回戦、刹那との戦い、そしてネギの強力な技を何度も食らって、もはやシモンの体は限界に近づいていた。

それはネギにも理解できた。

 

(シモンさんは立った・・・でも・・・もうこれ以上は戦えない・・・・いや、違う!!)

 

次に攻撃をすれば自分の勝利だと確信した。

だが、すぐに頭の中で否定する。

自分が憧れてきたシモンの背中はいつだってボロボロだった。

だが、そんなボロボロの状況から無理を通してきたのがシモンなのである。

 

(そうだ・・・シモンさんはいつだってここからなんだ! そんな人だからこそ、僕たちは憧れたんだ!)

 

ネギは微塵も油断などはしていなかった。

決して自身を驕る事無く、真っ直ぐとシモンを見つめた。

今のネギは決勝のことよりもシモンのことしか眼に入っていなかった。

その瞳を見てシモンはため息をつく。

 

(舞い上がっているのかと思っていたけど、冷静だな・・・予想が外れちまったな・・・)

 

てっきりネギはクウネルのことで頭がいっぱいなのかと思っていた。

だが今のネギは自分に集中していた。

本当は集中力が乱れていてもおかしくなかったが、試合前にアスナに言われた一言がネギには効いていた。

ネギに油断は無い。シモンはボロボロ。螺旋力も切れ掛かっている。

この状況はまさにアレだった。

 

(はは・・・俺すごいピンチなんじゃないかな?)

 

すごくピンチだった。

すると自分に向かって構えるネギは、今の心境を語り始めた。

 

「シモンさん・・・さっきまでの僕は父さんの事を考えるばかりに集中し切れませんでした・・・でも・・・アスナさんが目を覚まさせてくれました。」

 

ネギはリングサイドにいるアスナをチラッと見る。

 

 

「僕は一人で走っているわけではありません。僕の隣で支えてくれるアスナさん、のどかさんや、それに木乃香さんやいいんちょさん達、全てを見失わずにココまで来ました」

 

「・・・へえ・・・」

 

「そして今・・・僕の前にある壁を突き破り、僕は決勝へ行きます!!」

 

 

気持ちが空回りしていないネギ。その凛々しい姿に会場の声援が一層高まる。

先程までシモンを応援していたものたちですらネギの心意気に感動していた。

 

 

「んまああああああ!!」

 

「うっひょ~~、ちょっ、今のネギ君やばくね~~!?」

 

「カッコイイーーーー!?」

 

「くう~~、カッコいいぜボウズ!!」

 

「俺たちも応援するぜ!!」

 

「この試合に勝てば親父さんに会えるんだろ? がんばれ!!」

 

『おお~~っと、突如鳴り響く大声援!!観客の心が一つになっています!!』

 

 

鳴り止まぬネギコール。会場中が一体になっていることにようやく気づいたネギはペコペコと礼儀正しく挨拶していた。

そんな光景の真ん中でシモンは苦笑するしかなかった。

シモンのネギに対する予想は外れたが、この状況だけは当たった。恐らくこの試合では全員がネギを応援するであろうことを。

多くの声援を受けて、より一層気持ちを高ぶらせるネギ、ボロボロの自分。

この状況を打破するには一つしかなかった。

 

 

「ったく・・・妙な悪役になっちまったな・・・味方が居ない孤立無援・・・・体は傷だらけ・・・たしかに絶体絶命だな・・・。・・・しょうがない・・・あの力を使ってみるか・・・」

 

「シモンさん?」

 

 

自嘲気味に笑うシモン。その態度からネギも何かを感じ取った。

それはまだ見せていないシモンの何かである。

ネギは瞬時にそれを感じ取った。

シモンはこのままでは本当に勝てないだろうと判断した。

螺旋力も風前の灯である。

よってネギに対抗する最後の一手を使うことにした。

 

「シモンさん・・・一体どうする気なのよ?」

「・・・たしかにこれ以上は・・・ヨーコさんと私の試合で、もうあの人はボロボロなのに・・・」

「たしかに・・・僕らの世界の常識では、これ以上は無理だろうな・・・」

「当たり前アル、ここからネギ坊主相手に逆転は不可能ネ!」

 

刹那たち専門家の目から見ても、これ以上は不可能という判断である。タカミチですら頷いている。

だが、彼らも妙な期待感を隠すことが出来なかった。

それはシモンが一体どんな人物なのかをよく知っていたからである。

 

「おい、・・・シモンにはまだ何かあるのか?」

 

エヴァがこの中でもっともシモンを知るシャークティに尋ねるが、彼女も分からなかった。

 

「分かりません・・・。・・・ですが・・・・」

「なんなん? シモンさんにはまだウチらが知らん力があるん?」

「それは分かりません、ですがあの人は胸に宿した気持ちを力に変える方・・・ヨーコさんの時には真の気合、刹那さんの時には愛の力・・・、ならばここでは何を見せるのでしょう・・・」

 

その答えは誰にも分からなかった。

だが、これでシモンが終わるとは一人も思っていなかった。

 

「シモンさん・・・その体でどうするつもりですか?」

 

構えは崩さずにシモンに問いかける。

ネギは警戒心を解かないまま、肩で息をするシモンを見つめる。

 

「身体だけじゃねえよ、今の俺はかなり疲れているから螺旋力も湧き上がらない・・・・正真正銘のピンチって奴だ・・・勝ち目はかなり薄い・・・」

「そ、それじゃあ・・・「でもな!」・・・」

 

ネギの言葉にシモンは口を挟み、小さく笑いながらネギに語りかける。

 

「俺だって一人で戦っているわけじゃない」

「・・・・えっ?」

「俺は多くの仲間たちに支えられて今まで踏ん張って来れたんだ。俺一人だけの力じゃない。どんな時でも仲間との絆が力をくれた・・・だからこのピンチでは・・・」

 

シモンはニッといつものように笑った。

 

 

「仲間との絆の力でこの困難を乗り越える!!」

 

 

堂々と叫ぶシモンの言葉。それがシモンの奥の手であった。

ヨーコとの戦いでは気合。刹那の戦いでは愛。そしてこの戦いでシモンが選んだ力は、絆の力であった。

しかしその内容は周りの者には理解できなかった。

なぜならこれは一対一の武道大会なのである。

仲間の加勢など許されるはずはない。

そんなこと誰だって知っている。そんな中でどうやってシモンは仲間から力を得るつもりなのかと全員が疑問に思っていた。

そんな中シモンが大きく息を吸い、大声を上げる。

 

 

「ヨーーーコーーー!! いるんだろーーー?どこだーーーー?」

 

「えっ!? ヨーコさん?」

 

「「「「!?」」」」

 

 

突如大声で仲間の名前を呼ぶシモン。

その名前を聞いて、まさか本当に仲間を乱入させるつもりなのかと誰もが疑問に思った。

辺りをキョロキョロ見渡すシモン。すると委員長たちネギのクラスメートの集団に混じっていたヨーコがシモンに向かって手を上げて応えた。

ヨーコと目が合い、シモンはニッと笑う。

そして彼はヨーコに向かって手を差し出した。

 

 

「俺の・・・、俺たち大グレン団の魂を俺に!!」

 

「!?」

 

 

魂。そう言われてヨーコは頷き、納得したよう笑みを浮かべた。「なるほど、そういうことか」というような表情だった。

委員長やまき絵や龍宮ですら、何のことだか分からなかった。

ネギたちも頭に?マークを浮かべていた。

するとヨーコは首からぶら下げているドリルの形をしたアクセサリーのようなものを外し、シモンに向かって投げつけた。

 

 

「受け取りなさい、シモン!!!!」

 

 

ヨーコが投げた物をシモンは真上に手を伸ばし受け取った。

そして自分が受け取った物の感触を確かめた。

それは実に一年ぶりに手にした物だった。

全ての始まりにして全ての物語を創った希望の象徴。

自分たちの意思を受け継ぐものに託したものが、何の因果があってか、今再び自分の手に帰ってきた。

 

 

(懐かしいな・・・この感触・・・、この重さ・・・。そうだ・・・これに俺たちは明日を賭けたんだ!)

 

 

右手を天に伸ばし、それを握り締めたまま固まるシモン。

そしてようやく目を見開いた。

 

 

「俺は忘れない。これには倒れていった者達の魂が眠っている。今その魂を受け取り、この世界に轟かせる!!」

 

 

するとシモンの手の中でヨーコから受け取った物が光りだし、その光がシモンの体を覆いだす。

そして同時にシモンはゴーグルを装着した。

 

 

『な・・・なんだ!? シモン選手が再び光りだしたぞ!? こ・・・この光は・・・一体どこから湧き上がっている!?』

 

 

エヴァたちも目を見開き驚いた。

シモンの言葉の意味は分からない。

しかしもう不可能だと思っていたシモンの気合が、これまで以上の輝きを出したのである。

 

 

 

 

この状況は当然彼女の目に入っていた。

 

 

「バ・・・バカな!? アレが・・・アレがこの世界に!?」

 

 

バンッと机を勢いよく叩く超。

彼女はシモンがヨーコから受け取ったものを見て、心臓が飛び出しそうになるほどの衝撃を覚えた。

 

「超さん? ・・・ど・・・どうしたんですか?」

 

超の取り乱した姿に、慌てて顔を覗きこむハカセ。しかし超の動揺はただ事ではなかった。

超はシモンたちの物語を知っていた。

そしてシモンがそれをギミーに託して旅立ったのも知っていた。

だからこそこの事態には予想外だった。

 

「アレが・・・コアドリル・・・全ての始まりにして・・・希望・・・カ?」

 

シモンたちの物語を真に証明するもの、それがコアドリルである。

ヨーコがこの世界ではずっと首から提げていたことに超は気づいていなかった。

まさか本物のコアドリルがこの世界にあったなどと予想もしていなかった。

全ての物語が詰まっている大グレン団たちの魂を、超はこの目で見ることが出来たのである。

その興奮を抑えることなど出来なかった。

彼女は我を忘れ、その場を後にして、急いで会場まで向かった。

 

 

 

 

そんな超の心情を察してか、シモンは心の中で語りかける。

 

 

(見ていろよ、ネギ・・・そして超!・・・これがお前の知らない、大グレン団の絆の力だ!! いくぜ・・・アニキ・・・ニア・・・そして・・・)

 

 

シモンの上げた雄叫びと螺旋力の光が、シモンのゴーグルをいつものサングラスに形を変える。

だが今回はそれだけではなかった。

いつものV字型のサングラスが、今回は星型の形になって現れた。

 

 

「いくぜ、キターーーン!!」

 

 

失った友の名を叫ぶシモン。

だが、コアドリルに眠る魂は彼だけではない。

 

 

「いくぜ、キッド!! アイラック!! ゾーシィ!!」

 

 

かつて銀河に散った英雄たちの名前、彼らのことをこの世界では誰も知らない。

だがその英雄たちの一人一人の名前をシモンはこの世界で叫ぶ。

未来永劫一人たりとも忘れない、そう誓っているように見えた。

 

 

「マッケン!! ジョーガン!! バリンボー!!」

 

 

シモンが一人の名前を叫ぶたびに光の力が強くなる。

まるで名前を呼ばれたものの魂が頷いて、シモンに力を与えていくような気がした。

 

 

「そしてお前も一緒に行こうぜ! ロージェノム!!」

 

 

その瞬間、天を突く光がシモンを包み込んだ。

倒れていった全てのものたちの想いが、今シモンと共に次元の異なる世界で輝きだした。

 

 

『こ・・・これは一体どういうことだ!? シモン選手が何かを叫んでいます! そしてその度に光の強さが増していきます!』

 

「ななな、一体なんなんですの!?」

 

「シ・・・シモンさんが、スーパーサ○ヤ人に!!」

 

「バカな・・・シモンさんの、き・・傷が癒えていく・・・・」

 

 

反応は人それぞれである。

満身創痍のシモンを包む光がシモンの体まで癒していく。

 

「なな・・・なんなのよアレ!? アレも気合だって言うの?」

「す・・・スゴイ・・・・シモンさん・・・キレーや・・・」

 

目を輝かせてシモンを見つめる木乃香たち。

するとココネが何かに気づいた。

 

 

「キタン・・・キッド・・・アイラック・・・ゾーシィ・・・マッケン・・・ジョーガン・・・バリンボー・・・ロージェノム・・・」

 

「ココネちゃん、どうしたん?」

 

 

シモンが叫んだ一人一人の名前を口にしていくココネに、美空とシャークティもハッとした。

 

 

「そ・・・そうだ・・・大グレン団の人たちの名前じゃん・・・」

 

「そうです・・・それに・・・螺旋王ロージェノムの名前まで・・・」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

シモンが叫んだ名前は分からなかったが、螺旋王ロージェノムにはアスナたちも反応した。

その名は昨日の夜自分たちに教えてくれたシモンの過去の話に出てきた人物である。

 

 

「それってたしか・・・シモンさんたちの世界の王様で敵だった人じゃない?」

 

「ええ、・・・たしかそうだったと・・・ですがなぜシモンさんは螺旋王の名まで・・・」

 

 

螺旋王との戦いでシモンは、かけがえの無い人を失ったはずである。

大グレン団たちの名前とともに叫ばれるなどありえないと思った。

そしてシャークティと美空もである。

シモンは失った者の魂と言った。

それは即ち今叫んだものたちは既に死んでいるということである。

シャークティたちはシモンから昔の話をネギやアスナたちよりも知っていた。

シモンたちが螺旋王を倒して地上を奪い取ったことも知っている。

しかしその戦いで死んだのはカミナ一人だけだと思っていた。

まさか既に他のメンバーたちまで死んでいたことを知らなかったのである。

そう、まだこの世界の者は、超鈴音を除いて知らなかったのである。シモンたちの真の戦いを。

そう、この世界の人間は死んだグレン団のメンバーだけでなく、シモンたちの運命の戦いを知らない。

だがシモンは忘れない。

今、彼らの魂を受け継ぎ、その姿を現した。

 

 

「友の想いをこの身に刻む、一騎当神超銀河!!!!」

 

 

膨大な螺旋力の束がスパークする。

その一つ一つの想いを噛み締めて、シモンは新たなる進化を遂げる。

 

 

「目に焼き付けやがれ!! 真の絆の力! 螺旋族の力! 大グレン団の力!! 見せてやるぜぇ!!」

 

 

その叫びはシモン一人だけのものではない。

銀河の命運を変えた者達の魂が、今日この日、麻帆良の地に光臨した。

巨大ないくつもの光の束が螺旋の渦となり交わり、シモンを包み込み、ついにその姿を現した。

 


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