魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
武道会を終えてシモンたちはこれまでの状況を整理すべく、教会に集まり話し合っていた。
色々とあったが、ようやくシモン、ヨーコ、ブータ、シャークティ、美空、ココネのメンバーが揃うことが出来た。
「さて、武道会での成績はともかくとして、超鈴音の計画は大まかに邪魔できたと思います」
「そうっすね~、魔法を世に広めるためにインターネットを使って裏でコソコソやってたみたいだけど、これはほとんど邪魔できたしね~。しかも気合で♪」
「そうね。ネギと・・・クウネルだっけ? あの二人の戦いのときは少し吹き返した感じがしたけど、まあ大丈夫でしょうね」
武道会の裏で行われた戦いは自分たちの勝利と思っていいだろうとシャークティたちも頷き合っていた。
シモンもこれには異論はまったくなかった。
その後も話し合いは続いた。
他の魔法先生たちは未だに気づいていないこと。
コッソリ調べたら、既に地下にあった大量のロボットが行方をくらましたこと。
超のタイムマシンを使った戦闘手段。そして協力者。
今日の時点でも分かったことがこれだけあった。
魔法先生が未だに現状を把握していないのは先程も言ったとおり、魔法の話題がそれほど広まらなかったことが大きかった。
地下のロボットに関しては、超が場所を移動させ、準備を整えているからと考えた。
そして超の協力者、シモンとヨーコの報告によればネギの生徒のハカセと龍宮、そして茶々丸がそうである。
「・・・こんなところかな? 今分かっているのは・・・」
「そうね、後は明日までに体調を整えて迎え撃つって感じかしら・・・。そうなると問題はネギたちね・・・。美空はどう思う?」
ヨーコはクラスメートである美空の意見を聞いたが、その答えは美空自身もよく分かっていなかった。
「う~ん・・・、超の考えに賛成するかどうか・・・か~、どっちにしろネギ君のようにウルトラマジメ君は迷いまくるんだろうな~」
「たしかに、10歳の少年に答えを求めるには少し難題かもしれませんね・・・・」
「「「「「う~ん」」」」」
やはり難関はネギたちがどう動くかがポイントになるとシモンたちも感じた。
ネギが動けば当然アスナや他の面子も動くことになる。
かなり重要なポイントだと感じていた。
だがしかしネギたちの考えはネギにしか分からない。
よってここでいくら考ええも、明日まで待つしか方法は無かったのである。
「・・・・まあ、どっちにしろ俺たちのやることは変わらない。俺たちの明日は、俺たち自身の手で決める!」
それこそが自分たちの役目であると言い聞かせた。その言葉に全員が強く頷き、気持ちを一つにした。
「よし! じゃあ明日勝つために、今日は最低限の警戒を忘れずに祭りを楽しもうぜ!!」
「「オオーーッ!!」」
シモンは立ち上がり、堅苦しい雰囲気はぶち壊して叫んだ。
それに美空とココネも立ち上がり拳を上げて叫んだ。
学園の仕事も警戒だけですみそうなので、今日は一般の学生として学園祭を満喫しようとハシャいだ。
ヨーコとシャークティもその言葉に頷いて、今日はこれぐらいにしよう・・・・とおもったのだが、ヨーコが何かに気づいた。
「あれ? ・・・・今日やることって・・・もうこれだけだっけ?」
「「「はっ?」」」
「・・・何かまだあったような・・・・・・」
「なに言ってるんだヨーコ? もう報告も終わったし、後は明日を待つだけだろ?」
「う~ん・・・そうなんだけど・・・私じゃなくてアンタに用事があったような・・・・・」
「えっ、俺?」
ヨーコに問われてシモンも考え込んだ。
正直、超のことや格闘大会のことでもうやるべきことはやったと思っていた。
そんな自分に他に予定があったかどうか思い出そうとしたが、まったく心当たりが無かった。
「兄貴に用事~? まさかデートの約束でもしてたの~?」
「デート? 兄貴デートするノ?」
「なに言ってる、超とのデートは明日だし、エヴァとも昨日ちゃんと一緒に学園祭回ったぞ? ・・・・・・・・・・・あっ・・・・・」
「「「・・・・・あっ・・・・」」」
美空はふざけて言ったのだが、その言葉で全員ようやく思い出した。
正にデートの約束。
シモンにこの世界で最初に告白した女性。
「「「「「木乃香(さん)!!」」」」
全員がその名を同時に呟きシモンを睨む。
「・・・・・・・・・・・・・・・・どうしよう・・・・・」
「「「行って来なさい(ぶうっ)!!!!」」」
うっかり忘れていてどうしようか尋ねようとした瞬間に物凄い剣幕でブータを含めて全員から命令されてしまい、シモンも思わず仰け反ってしまった。
「ちょっ・・・待ってくれよ、大体ヨーコはニアの味方なんじゃないのかよ?」
「ええ、当然よ。でもがんばってる子を応援してあげたい気にもなるのよ。のどかとか・・・刹那とか・・・・」
「でもなあ、たしかに木乃香の気持ちはうれしいけど・・・・、ノリで木乃香の挑戦は受けたけど、俺はハッキリ告白は断ってるんだよ? やっぱりこういうのは、よくないんじゃないかな?」
一緒に遊んだりするために学園祭を回るのならば、ちっとも問題は無いだろう。
しかし木乃香の気持ちをハッキリ知っている以上、あまり中途半端な行為はしたくないというのが本音だった。
だがそんなシモンにシャークティは首を横に振った。
「・・・行ってあげてください・・・シモンさん」
「シャークティ?」
シャークティが言うのは予想外だった。
むしろ「ふしだら」などと言われて怒られると思っていただけにシモンも意外そうな顔をした。
「女性がもっとも傷つくのは、なんだと思いますか? それは好き嫌い以前に相手にもされないことです・・・」
「・・・・・・・相手にもされない・・・・」
「ニアさんへの愛は分かります。うらやましいぐらいに・・・。ですがニアさんを理由に最初から断るのではなく、少し彼女自身も見てあげてください。・・・そうでなければ・・・・あまりにも不憫です・・・・」
その言葉はシモンの心に残った。「相手にもされない」それは好きでも嫌いでも、どちらでもないということになる。
もし自分のしている行為がそうなのだとしたら、たしかに失礼なのかもしれないと感じた。
「・・・・はあ、分かったよ。それじゃあ少し行ってくる。グレン団の格好のままじゃ少し変だから、着替えてから行くよ・・・・あと、木乃香にも電話しとかないとな・・・」
こうしてシャークティたちに諭されて、シモンもあまり乗り気ではなかったが、渋々と木乃香と会うための準備を始めた。
シモンは木乃香の電話番号を知らなかったため美空の携帯で掛けてみたら、木乃香はシモンの声を聞いて異常なほど取り乱したが、学園祭回りの話をしたら電話越しで何度も頷くほどの食い付きをみせた。
電話越しで木乃香以外の生徒たちの声も聞こえた。
おそらくアスナたちが大騒ぎしているのである。
甲高い声がキャーキャー聞こえる中、取り合えず一時間後の噴水広場での待ち合わせと決定した。
約束を取り付け少しシモンはため息をついた。
「はぁ~、木乃香自身を見ろ・・・か~・・・・」
シモンは先程シャークティたちに言われた言葉を思い出し考えた。だがその言葉には少し無理があるだろうと思った。
(やっぱ歳の差離れすぎだからな~。恋愛対象で見ろって方が難しいよ・・・)
木乃香の年齢は15歳、たしかに7歳差のカップルは珍しくないし、アスナとタカミチほど年齢は離れていない。
だが、歳の差よりもやはりまだ15というのはシモンから見たら子供のようにしか見えなかった。
シモンが14の時、アダイ村でグレン団の仲間になったギミーとダリー、当時七歳だった二人。
今は木乃香たちと同じ年齢である。
そう考えるとやはり木乃香たちは自分を慕ってくれる妹分のようにしか見えなかった。
(ヨーコやシャークティぐらいだったら俺だって考えられるけど・・・・、そりゃあ、俺だって女の子が嫌いなわけじゃないし、好意を持たれたらうれしいと思うけど・・・それが特別な存在としての好意だったら応えることなんて出来ないよ・・・)
自分なりに他の者からの好意について考えてみる。
たしかにそれは男としてはうれしいという気持ちになる。
だがそれでも最後は同じ結論に至ってしまう。
(いや・・・仮に誰が相手だったとしても俺はやっぱり・・・・・・・ニアが・・・・)
やはりそれは譲れなかった。
「・・・・・っとまあそういうわけでして・・・・」
「そうか、・・・まあそれは人それぞれだからね・・・・」
噴水広場で木乃香を待つシモンは、これからアスナと学園祭を回ろうというタカミチと偶然出会い、自分の考えを伝えた。
タカミチもシモンの心の中にいるニアについてはネギたちに大まかに聞いていたため、話の内容は理解できた。そしてタカミチはシモンの考えに反対するわけでもなく賛成するでもなく、頷くだけだった。
「・・・高畑さんは、どうなんですか? やっぱ・・・・モテるんでしょ?」
「さあね、・・・・少なくとも僕は7年かけて口説いてみせるだなんて言われたことはないよ・・・・」
「あっ・・・そこまで知ってたんですか・・・・」
互いに苦笑しながら少女たちの強い想いを感じていた。
「七年か~、・・・どうなることやら・・・・」
「ははは、どうなることかな・・・・」
この時タカミチは人事のように笑っているのだが、このときシモンは気づいた。
ひょっとしたらタカミチはアスナの好意にまったく気づいていないのではと。
たしかアスナはタカミチに告白するようなことを言っていた。
モチロンそのことを言うつもりなどはないが、この様子だと結果は見えているような気がした。
少しそのことを確かめたくてシモンは当たり障りのないように聞いてみた。
「高畑さんはアスナと一緒に回るんですよね? 高畑さんにとっても15のガキは恋愛対象外ですか?」
だが、タカミチはその問いに対して少し苦笑した笑みを浮かべて、
「ふふ、それ以前に僕は君と違って誰かに愛される資格はないよ・・・・」
「えっ・・・・あれっ・・・・ちょっとマズイこと聞いちゃったかな・・・」
タカミチの様子からシモンもタカミチの何らかの事情を察してこれ以上聞こうとはしなかった。
だがタカミチの答えは自分にはよく分からなかったが、少なくともアスナに勝機がなさそうだというのは分かった。
(まあ、高畑さんは俺よりも年上だし、俺以上にアスナたちは対象外だろうけどな・・・・アスナも可哀想に・・・・)
だがその言葉が直接自分にも返ってくることがシモンにもすぐに気づいた。
(でも・・・俺も同じことをしているのかもな・・・・)
シャークティの言っていた通り、やはり相手にもされないのは不憫すぎるのだとシモンも感じた。
(しょうがない、俺も今日だけは木乃香を一人の女として見てみようかな。・・・それが・・・今の俺があの子にしてやれることだな・・・)
シモンも今日一日だけは木乃香を真正面から見ることにした。
自分の答えはともかくとして、それが自分に好意を寄せてくれる女に対するせめてもの礼儀だと思ったのである。
そしてようやくその時が訪れた。
息を切らせながら駆け足で寄ってくる二つの気配。その一つがタカミチの前で止まった。
「ス、スミマセン高畑先生・・・おっ、お待たせしました・・・・」
「おっ・・・・」
「アスナ・・・・か?」
その姿を見てタカミチもシモンも思わず感心してしまった。
いつもの活発でラフな格好をしていたアスナが、今日はその長いツインテールを下ろして、いつもより長めなスカートでかなり可愛らしい姿で現れたのである。
一番驚くべきなのはその姿がとても似合っているということである。
タカミチとシモンの驚いた表情を見て、アスナは少し不安そうな顔を見せる。
「この格好・・・やっぱり変・・」
「いやいや、驚いた。キレイになったねアスナ君」
「えっ・・あのその・・・そんな・・・まさか・・・・」
「ホントだよ、ビックリした」
タカミチの一言で、顔が真っ赤になりとても照れた表情を浮かべた。
タカミチの言葉は決してお世辞には感じなかった。
実際シモンも今のアスナにはかなり驚いた。
意外にタカミチにも好印象であるため、ひょっとしたらアスナもひょっとするのかもしれないのではないかと感じた。
「シモンさんも一緒にいたんだ・・・ですね・・・・」
「ああ、俺もビックリしたよ、アスナ!・・・でも別に畏まらなくてもいいんじゃないか?・・・・高畑さんの前だからって・・・」
「あ・・・あはは、ちょっとテンパちゃって・・・。あ、木乃香もすぐ来るからさ。・・・・シモンさん・・・・驚かないでよね・・・」
「?」
するともう一つの足音が聞こえてきた。アスナ同様駆け足で息を切らせている。
「も~、アスナ速すぎや~。ウチじゃ追いつけん~」
「ゴ・・・ゴメンって。ほほ・・・ほら私も慌ててたからさ・・・・。でも、ホラ! シモンさんもここにいるよ」
「あっ! シモンさん、遅れてゴメンな~、ちょっと色々手間取ってもうて・・・・・」
「「・・・・って、木乃香(君)!?」」
どうやら二人は一緒に来たようである。
しかし途中でアスナの足についていけず、木乃香が少し遅れた形になってしまったようである。
アスナも夢中で走ってたためそれに気づかず置いていったことを謝罪していた。
だが、その会話がシモンには、そしてタカミチの耳にも聞こえていなかった。
なぜなら今の二人はアスナの登場以上の衝撃を受けて呆然としていたからである。
「あの・・・・木乃香・・・・その姿・・・・」
「こ・・・・木乃香君・・・・・」
「あっ・・・・やっぱ驚いたてもうた?」
木乃香の服装は、アスナと同じような感じである。
膝元に届く辺りのスカートを履いている。
だが木乃香の普段着は大体が可愛らしい服装のため、そこには何の問題はない。
だが問題なのはアスナは可愛らしい歳相応の姿なのに対して、今の木乃香はどちらかというと大人の女性の綺麗という表現が合っていた。
しかしそれは当然であった。
なぜなら木乃香は大人の姿をしているからである。
「こ・・・木乃香・・・な・・・なんで?」
シモンはわけが分からず尋ねた。するとアダルト木乃香はその姿のまま顔を赤らめ照れながら口を開く。
「あんな・・・ほら、以前カモ君が持っとった魔法の薬あったやん・・・」
「あ・・・あ~、あれか・・・」
「今日は・・・その・・・今日はシモンさんと同じ年でいたかったんよ。・・・そんでカモ君にお願いして・・・・」
「――っ!」
思わず少しキテしまった・・・・。
長く美しい黒髪の似合う成人女性。正に大和撫子と言うべき存在かもしれない。
しかしその大人の姿でありながら、少女のように顔を赤くしてモジモジとする可愛らしい表情とのギャップに思わずシモンも心臓が高鳴ってしまった。
正に不意打ちのようなものだった。
今日は木乃香を正面から見ようと思った途端に、この攻撃は予想外だった。
教会で木乃香がこの姿で現れたときは、事前にかなりマジメな話し合いをヨーコたちとしていたため、急に大人の姿で現れた木乃香の存在にただビックリしただけだったのだが、今改めて木乃香を見てみると・・・・
(この前はよく見ていなかったけど・・・美・・・・人になるだな・・・・木乃香は・・・)
だがシモンの反応が分からず木乃香が不安そうに顔を覗きこんできた。
「・・・・に・・・似合っとらんかな~?」
「あ、いや・・・・すごく・・・・いいと思うよ・・・」
「ホンマ!」
アスナ同様シモンの一言で木乃香はとてもうれしそうな笑みを浮かべた。
その笑顔は美しさと可愛らしさを兼ねていた。
身長はやはりシモンの方が大きい。
だが、当然木乃香の身長も伸びているわけで、覗き込んでくる木乃香の顔の位置は当然以前よりも近いため、ドアップで今の木乃香に顔を近づけられたら当然・・・
「あっ・・・その・・・ええっと・・・・あのだな・・・・」
「?」
当然健全な男なら動揺してしまうわけであった。首をかしげる木乃香。
一度意識してしまったらそんな単純な動作ですらドキッとさせられてしまう。
だが、我を忘れるわけにはいかない。シモンは懸命に心を落ち着かせる
(落ち着け・・・・落ち着くんだ俺・・・。そうだ、少し驚いただけだ・・・俺はそんな節操無しなんかじゃない!)
かなり動揺している様子だが、懸命に息を整えて落ち着こうとしている。
その光景は周りから注目されてしまうほど奇怪な行動だったかもしれない。だが、シモンは懸命に心と戦っていた。
(そうだ、俺は決してやましいことは思ってないぞ! だから安心しろ、二ア! 俺を信じろ! お前が信じる俺を信じろ!)
だが、そんなシモンの葛藤を知ってかしらずか、側にいた木乃香が間近で顔を覗きこんでいた。
長く綺麗な黒髪を靡かせて、目のいる彼女からはとてもいい香がした。
「シモンさん、どうしたん?」
「い、・・・いや、・・・なんでもないというか・・・・その・・・木乃香・・・」
「ん~?」
動揺するシモンに首を傾げる木乃香。
するとシモンはチラチラと木乃香を見ながら少し顔を赤くしていく。
「その・・・木乃香・・・あ、・・・あんまり顔を近づけたらダメだよ・・・・その・・・今は・・・ちょっと・・・」
「え~、なんでなん?」
「どうしてもだ」
分かっていて言っているのか、分かってないで言っているのかは分からない。
しかし普段見慣れていたはずの木乃香の姿に、シモンが今動揺しているのは誰の目にも明らかだった。
「ええっと・・・その、俺と同じ歳でってのは、気持ちはうれしいけど・・・・やっぱそんな物には頼らないでいつもの木乃香の姿でよかったんじゃないか? 無理に背伸びをしても仕方ないじゃないか・・・」
動揺したくせにもっともらしいセリフでシモンは余裕を出そうとしていた。
だが、その言葉に木乃香は少し申し訳なさそうに己の心境を語っていった。
「ウン、・・・シモンさんはきっとそう言うと思っとった・・・・せやからウチもすごく悩んだんや・・・こんなズルしてシモンさんの気ぃ惹こう思っても、シモンさんに逆に怒られるんやないかって・・・・」
「だったら何で・・・」
「せやけど・・・・今日はウチにとって特別な日やから・・・・は、は・・・初めての日やから!・・・・シモンさんと少しでも同じ目線で同じ物みたい思ったんや・・・・」
「うっ・・・・・」
「せめて今は・・・体だけでもシモンさんと並びたい・・・・そう思って・・・・」
「――っ!」
そう言って木乃香は恥ずかしそうにハニカンだ。
一途すぎる想いに、内心少しクラッとなりそうになった。
長い人生でこれだけ強く異性から想われることなど滅多に無い。
そして同時に申し訳ないような気がした。
シャークティの言うとおり刹那や木乃香に対してもやはり自分で思っているほど正面から向き合っていなかったのだと気づき、これまでニアを理由に問答無用で拒み続けてきたことに対して少し申し訳ないような気がした。
すると少し俯き気味だったシモンの背中をアスナがバシッと叩いた。
「ほら、シモンさん! いっつも天然でほんわかとしてる木乃香がどんだけ気合入れまくったか分かるでしょ!! だったらちゃんとそれに応えてあげてよね!!」
「アスナ・・・・」
そう言ってアスナは木乃香に向けてウインクした。それは互いの健闘を祈る合図だったのかもしれない。
女に言われて引き下がるわけにもいかない。シモンはアスナと木乃香に向けて小さく頷いた。
「ああ、わかった。・・・・・・・そういうことらしいですよ、高畑さん? ガキも・・・・成長していくみたいですね」
「・・・・僕もネギ君たちを見ていると、そのことを実感させられるよ・・・・」
「ええ。・・・よしっ、行くか! それじゃあアスナ、・・・・お前もぶつかっていけ!!」
「ちょちょちょ、シモンさん!」
その一言で真っ赤になったアスナに背を向け、シモンは正面から木乃香を見た。
「じゃあ行くか・・・木乃香!!」
「んっ!!」
アスナとタカミチと別れ、木乃香はうれしそうに駆け足でシモンの隣に立ち、二人は並んで歩き出した。