魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「減点ね・・・・シモン・・・」
「いや、むしろ高得点じゃ・・・・あ~あ、木乃香真っ赤になっちゃってるよ~。とにかく写メで保存♪」
「・・・・不潔です・・・・シモンさん・・・・」
「そうでござるか? あの空間だけとてもキラキラと輝いているように見えるが・・・・」
「お嬢様、とても幸せそう・・・・よかったですね」
草葉の陰から覗く面々、反応はそれぞれである。
一度居眠りを初めたシモンにヨーコが教師の癖でチョークを投げそうになったのを全員で押さえるというハプニングがあったが、今は黙って見物していた。
「シモンはいつから無自覚であんな技を覚えたのかしら・・・・最低ね・・・」
「そうっすね~、・・・・ところでなんでシスターシャークティ、ウズウズしてるんすか?」
「えっ!? ・・・・あっ・・・いえ・・・その・・・」
「まさか・・・・木乃香がうらやましいんすか?」
「ちちち、違います!」
顔を赤くしてうろたえるシャークティ。バレバレだった・・・・。
しかし事態はさらに変化した。
「木乃香サン・・・・アニキに顔近づけテル・・・・」
「「「「なにィ!?」」」」
ココネのとんでもない一言に全員が身を乗り出した。
するとそこには眠るシモンの顔に自分の唇を近づけようとしている木乃香がいた。
(こんなん・・・・寝てる人にこんなんしたらアカン・・・せやけど・・・)
木乃香は徐々に顔をおろしていく。
今すぐシモンが起きないかどうか心臓がヒヤヒヤである。
しかしそれでも少しずつシモンに顔を近づけていく。
「ちょっ、あの子なんてこと・・・・・」
「こ、これは流石に黙っておけません!」
「し~っ! 落ち着いてよ、ヨーコさんもシスターシャークティも、今すんごくいいとこなんだから!」
「いくでござるか、木乃香殿!」
「こここ、このちゃん!?」
シモンは一向に起きない。邪魔しようとするものも抑えられている。
木乃香の前に立ちはだかる壁は今どこにも無い・・・・・かに見えた。
あと数センチをどうしても埋めることが出来なかった。
(やっぱこんなん、アカン・・・せやけど・・・・う~~~~、生殺しや~~~)
一度顔を上げて深呼吸をし直し、もう一度トライしようとするが、まともや失敗に終わる。
深呼吸しなおしては口を近づけ、再び深呼吸の繰り返しである。
この光景に草葉の陰から見守っている女性陣のイライラが溜まっていくのだが、木乃香はやはり出来なかった。
「あ~もう、何やってんのよあの子は!? やるんだったらさっさとやりなさいよ!!」
「お嬢様、もう一息です!!」
「ぬぬぬぬ、しかしそのもうちょっとが厄介のようでござる」
「だあ~~、また失敗してる。何回繰り返えしゃいいんだ!!」
「これはシモンさんの気持ちを無視した行為・・・止めなければ・・・・しかし・・・・」
「皆・・・暇人・・・・・」
「ぶう・・・・」
木乃香のキスひとつで悪戦苦闘する中学生らしい反応だが、今木乃香は大人の姿のため、一同イライラしながら眺めていた。
ココネとブータだけは呆れてこの光景を眺めていた。
結局木乃香の攻防はシモンが目覚める夜まで続いた・・・・・・・・・・。
この時何時間もこの光景を見ていたヨーコたちのストレスがシモンにぶつけられるのはもう少し後の話である。
シモンは夢の中だが意識だけはあった。
シモンは眠りの中で木乃香たちの好意と自分の気持ちについて考えていた。
正直ニアと一緒にいたときに一生分の愛を使い切ってしまったような気がした。
それゆえこうやって他の女性の好意について考える日が来るとは思わなかった。
わずか一年しか経っていないのである。
一生ニアだけを想い続けることだけが残された自分の唯一出来ることだと思っていた。
だが、この世界の出会いを思い起こす。
家族、友、仲間、そして自分を慕ってくれる女性。
僅か一年の旅路でこれだけのものに巡り会えたのである。
かつての仲間たちと比べようなどとはしないが、今では自分にとって大切な者たちである。
そんな中で、ニアと自分の気持ちを知りながらも、想いを伝えてくれる子達がいた。
自分はそれを拒んだ。
しかしそれでも一途な想いをぶつけてくれる。
悪い気はしない。
気持ちは痛いほど伝わっている。
嫌いなわけではない。
しかし受け入れられなかった。
受け入れてしまったら、ニアが自分の中から消えてしまう、それが一番怖かったのである。
木乃香と今日一緒にいて楽しいと思った。
木乃香の美しさにドキッとしてしまった。
しかしどうすればいいのか自分でも分からなかった。
「う~ん・・・ふわあ・・・・・」
結局答えが分からぬまま、シモンは目を覚ました。
まだ覚醒しないままボーっとする。今の自分の状況が分かっていなかった。とてもやわらかい感触が頭部に感じた。
「ん~っと・・・俺は・・・・・」
自分が今何をやってるのかは分からない。
分かるのは・・・・目を瞑って唇を自分に近づけている木乃香が目の前にいるということである。
「うわあああああああああああああああああああああああああ!?!?」
一気に目が覚めてシモンは木乃香の肩を押し上げて、慌てて飛び起きた。
「こここここ、木乃香!?」
「あっ・・・・シモンさん・・・・起きた?」
「おおお、起きたじゃなくて・・・・何をって・・・・起きた? ・・・・・そうか・・・・俺・・・・寝てたのか・・・」
なぜ今こうなっているのか未だに分からない。
だが、徐々に意識がハッキリしだし、シモンの顔が引きつってきた。
(そうだ・・・俺確か木乃香と学園祭を・・・でも途中で眠くなって!?)
答えが分かったシモンはガバッと起き上がり慌ててベンチから離れて立ち上がった。
「うわああああああ!? 俺・・・・・・・その・・・・ゴメンッ!! せっかく木乃香が・・・・その・・・本当にゴメン!!」
必死になって何度もシモンは頭を下げる。
いくら疲れていたとはいえ、木乃香に最低なことをしてしまったと心の底から後悔していた。
だがもう遅かった。なぜならすでに空は暗く、時刻は夜に回っていた。
今から予定をこなすなど、どう考えても不可能である。だからシモンはどうすることも出来ずにただ何度も謝った。
すると木乃香は首を横に振る。
「ええんよシモンさん・・・ウチは怒っとらん・・・・」
「で・・・でも・・・・」
「今日はシモンさん独り占めに出来たからな、ウチはそれで満足や!」
木乃香は本心からの笑顔をシモンに向けた。
再びドキッとさせられてしまったが、木乃香の心遣いが身にしみた。
「そうか・・・でも本当にゴメン・・・・って・・・あれ?」
「どうしたん?」
「・・・・そういえば・・・・さっきなんで・・・・木乃香・・・・・俺にその・・・キスをしようと・・・」
「へっ?」
その瞬間ボンッと音を立てて木乃香の顔が真っ赤に沸騰してしまった。
「あ、あああ、あれはな、シシ、シモンさんがあんまりにも隙だらけやったから、思わず・・・・せやけどしてへんよ! あとちょっとやったんやけど苦戦してもうて・・・」
「そそ、そうか・・・俺も急に起きてゴメン・・・じゃなくて・・・・・まあ、おお・・俺も悪かったし・・・」
二人揃ってあたふたし出し、頭を下げて謝罪しあう。
だがどちらも動揺しまくって口もうまく回らない。
シモンも自分の責任だと思い、何度も謝罪をやめなかった。
「とにかく本当にゴメン!! 俺の責任だ・・・・」
「そんな・・・シモンさんは悪くあらへん・・・・」
「いや・・・木乃香の気持ちを知っていながら、無責任に寝ちまったのが悪い・・・本当にゴメン!」
自分の責任であることは引けずに、シモンは何度も頭を下げた。
しかし木乃香も少し計画がダメになったことが残念ではあったが、それでも疲れているのに付き合ってくれたシモンの気持ちと、今日一緒に入れたことだけで満足だった。
しかしシモンは引きそうに無い。
だから木乃香はあることを思いついた。
それは欲張りな要求かもしれない。しかし木乃香は言ってしまった。
「せやったら・・・ウチのお願い・・・聞いてくれる?」
「ああ、俺に出来ることだったらな・・・・」
その言葉を聞いて木乃香はゴクリと唾を飲み込み、告白したときと同じ緊張感の中で伝える。
「シモンさんに・・・キスしてええ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ・・・・・・・・」
すると木乃香はシモンが答える前にシモンの胸に飛び込み腰に手を回してきた。
そして絶対に離さないよう力強くシモンに抱きつく。
「こ・・・木乃香・・・・」
「そんなんゆうんやったら・・・・これがウチのお願いや・・・・」
見上げる木乃香の顔は真剣である。
それが瞬時にシモンにも伝わった。そしてつま先を伸ばし、ゆっくりとシモンに顔を近づけていく。
「で・・・でも・・・・」
「シモンさん・・・・・・ウチに・・・ちょっとでも可能性無いんかな・・・・ニアさんには一生敵わんかな?・・・・・」
「・・・お前はお前だ! そう・・・言っただろ・・・・」
「せや・・・せやからウチは・・・・負けたない! ウチは・・・・・子供かも知れんけど・・・・好きゆう気持ちだけやったら・・・負けたない」
今度こそ本気で木乃香はシモンに顔を近づけていった。
(木乃香・・・そんなに・・・俺のことを・・・)
だがシモンはどうすればいいのか分からない。
たかがキス一つと言っても仮契約や親愛の類ではなく、木乃香は愛情を求めていた。
だからこそ、その想いにどうすればいいのか思いつかなかった。
(アニキ・・・こんなとき・・・アニキならどうする・・・)
こんなときシモンが心の中で問いかけるのはいつものあの男。
だが、それは少々人選ミスのような気もするが、このときのシモンにはそれに気づく余裕もない。
シモンの頭の中の精神世界。
すると自分一人だけの暗闇の世界に一匹の悪魔が降り立った。
悪魔の羽と尻尾を生やし、サングラスをつけた悪魔は高らかと笑いながらシモンに向かって叫んだ。
『がっはっは! 悩んでるみたいじゃねえか、ええ~? シモン!』
(ア・・・アニキ!)
『バカヤロウ! 俺はアニキじゃねえ! 言ってみりゃあデビルカミナ様だッ!』
(やっぱ滅茶苦茶だ!?)
シモンの頭の中で一匹の悪魔が囁いた。
『にしてんもだ! 情けねえ~ぞ~、シモン! 男が女に退いてどうすんだ!』
(うっ・・・・でも・・・俺にはニアが・・・・)
『バカヤロウ!! 据え膳食わねえのは男失格! 不能屈折のダメ漢! いい女が向こうから迫ってきてんだ! ありがたくもらっちまえ!』
(で、でも俺にはニアがいる! そんなこと断じて出来ない! それに木乃香は真剣なんだよ・・・・だったら俺も場の雰囲気とかそんなもので応えるわけには・・・・・)
だがそんなシモンを「やれやれ」と言った感じでデビルカミナはため息をついた。
『っか~~、おめえってやつはよ~。いいかシモン、・・・愛といい女は別腹だ! ちょいちょいっと、やっとくのも経験だ! こんなおいしい場面は滅多にねえぞ!』
(なな・・・なんだよそれー!?)
とんでもない滅茶苦茶な誘惑を囁くデビルに狼狽するシモン、
しかしその時だった。暗闇の世界に一筋の光が差し込んだ。
『うおっ!? この光は・・・・天使の光!?』
デビルカミナとシモンだけの精神世界に一人の天使が舞い降りた。
暗闇に包まれた世界に光をてらし白い翼を羽ばたかせる者、それは昔の出会った時のニアだった。
(ニ、ニニニ・・・ニア~~~!?)
懐かしい少女時代の二アの姿、すると天使はニコッとシモンに微笑んだ。
『ごきげんよう。私はエンジェルニアです』
(エンジェル・・・・でもニアなら納得だ・・・・)
思わず精神世界で泣きそうになるシモン。するとエンジェルニアはとても温かい笑みを送ってくれた。
『シモン、・・・シモンはアニキさんじゃない。シモンはシモンの思ったとおりにすればいいと思います』
(俺の・・・・思ったとおりに・・・・・)
同じようなことを昔本人に言われたような気がした。
それはシモンにとっては生涯を通じて重要な言葉だった。
だが、その感動を遮るように悪魔は口を挟んできた。
『おうおうおう! 黙って聞いてりゃ言ってくれるじゃねえか! 俺はシモンの心に問いかけてんじゃねえ! 俺様が説いてるのは男としての常識だ!』
『いいえ、違います! シモンの常識を決めるのはシモンなのです! 周りが決めた常識など打ち破るのがシモンなのです!』
すると頭の中で天使と悪魔が喧嘩を始めた。
当事者でありながらシモンはそれをハラハラしながら眺めていた。
そんな中で、天使はビシッと悪魔に向かって指を指した。
『デビルアニキさん、アナタは間違っています! この子が真剣ならシモンはそれを真剣に考えて応えるべきなのです!』
『何言ってやがる! やりてえもんはやりてえ! それが漢ってもんだ! 漢をなんだと思ってやがる! 俺たちのドリルは女の都合どおりに出来ちゃいねえんだよ!』
デビルも一歩も退かずに指を天に向かって指した。
両者の意見は未だに纏まらない。
そこで天使と悪魔はようやくシモンへ振り向き。
『もういい! シモン、お前が決めろ!』
『もういいです! シモン、アナタが決めるのです!!』
(結局それか~~!?)
再び頭を悩ませるシモン、現実世界では刻一刻と木乃香の唇が迫ってくる。
『がっはっは! 天使のお許しも出たんだ、怖いものわねえ! ほらシモン、いただいちまえ!!』
(ななな、何ガンメンを奪うときみたいなノリで言ってるんだよ~~)
悪魔が高らかに笑う。
すると天使があることに気付いた。
『あっ、でもこの状況は・・・なんて言えばいいのでしょう・・・』
(ニア?)
『シモンは私が好きで・・・私もシモンのことが大好きで・・・でもこの子もシモンのことが好きで・・・・これは・・・・』
(・・・・ニア?)
首を傾げるニア、すると疑問の答えに気付き、シモンにビシッと指を指した。
『そうです! これは浮気です!』
(なッッッA○×B□△D~~~~~~!?!?)
それは最強の一撃だった・・・・・・。
プクッと頬を膨らめせる昔の二アは可愛いなと思いながらも、純粋なその言葉はシモンの心に大きなダメージを与えた。
「シモンさん!?」
「ハッ!? ・・・・ゴ・・・ゴメン、少し意識が飛んでて・・・・・・」
天使の一言により、シモンは一瞬で現実に引き戻されてしまった。
目の前には心配そうに顔を覗きこむ木乃香。
すると木乃香はさっきの続きを求めるかのように再び目を瞑り顔を近づけてきた。
だが今は先程と違ってシモンも冷静になれた。
シモンは木乃香の両肩を掴み遠ざけた。
そしてハニカンだ笑みを木乃香に送った。
「ゴメンな、・・・それだけは絶対にできない・・・」
「――っ!」
「そうだ・・・・お前が真剣だからこそ・・・・まだまだまだまだ、揺るげないんだ・・・・」
そう言っていつものように笑うシモン。
それが今のシモンの答えだった。すると木乃香もようやく肩の力を抜いてシモンに気の抜けた笑みを送った。
「せやろな・・・・やっぱこれ以上の背伸びはまだ早いか~・・・・」
苦笑しながらモジモジする木乃香。
告白した時以上の勇気と気合を使用したため、落ち着いた途端に自身の行動が恥ずかしくなってきた。
「木乃香・・・・・・・ホントにゴメン・・・・今日のことといい・・・今といい・・・俺は本当に最低なことをしちまった・・・・」
「ううん、・・・シモンさんが真剣にウチの気持ちを考えてくれた・・・・・それだけで満足や・・・・・」
「今日のところは」とあとで付け足して木乃香はウインクした。
その言葉がシモンの心に響き、シモンは少し考えたあと、ある決意をした。
「木乃香・・・・今日はこれ以上は無理だ・・・・でも・・・・今度からはもう少し・・・・・・」
「えっ?」
木乃香は慌ててシモンを見た。そこにあるのは真剣なシモンの表情だった。
「正直俺は・・・ニアが全てだった・・・だからお前の7年後のプロポーズとかあまり考えていなかった・・・・」
それは今まで考えられなかったことだった。
「木乃香・・・・正直に言って、お前が男女の意味で俺に好きだと想ってくれている感情に対して俺は・・・・・・」
「う、うん・・・・」
「俺は・・・・・嬉しいけど、それを受け入れることは絶対にできないよ」
その時、あまりにもストレート過ぎる発言に、草むらで誰かがズッコケた音が聞こえ、木乃香が口開けたまま真っ白に固まってしまった。
「お前は友達で・・・ネギやアスナや刹那たちと同じで、そして俺の妹分の美空とクラスメートの・・・・」
「ちょちょちょーーーまちい、シモンさん! そら、アカン! 御願いやから改まっての不意打ちタコ殴りは勘弁してやあ~! シモンさんの気持ちはわかっとるから、ウチはこれから頑張る言うてるから、せやから今は!」
「そう、お前はこの世界で出来た俺の大切な友達の一人で・・・・」
「せやからあーーーっ! 告っとる女の子相手に大事な友達やっちゅう返答はいっちゃん言っちゃ駄目なんよ~!」
「だからその気持ちは、俺がニアに対して抱いていた気持ちとは全然別のものだから・・・・・俺が今後もお前のことをそういう風に考え直すことは・・・・ありえないんだ」
先ほどまで、「このムードいけるんちゃうん?」なんて甘いことを考えていた木乃香の怒涛の攻めを真っ向から全てカウンターで倍返しでダメージを与えていくシモン。
木乃香はボロボロになりながらも、両手で耳をふさいで叫んだ。
「そんなん知らんもん! ありえへんなんて関係ないもん! ウチ、そんな壁突き破ったるもん!」
必死に抵抗を見せて叫ぶ木乃香。そんな木乃香に対してシモンは……
「ああ、そうだな。絶対にありえない。でも、俺たちもまた、そんな、ありえないことなんてありえないと、いつだって証明し続けてきた」
「へっ・・・・・・・?」
「俺は誰に言われても変わらない。誰が俺を好きだと言ってくれても、ニアが好きだから。そして、それは今もこれからも変わらないよ。でも、お前にだけは、そうじゃなくて・・・・・」
シモンが切なそうに微笑みながら言った言葉に、木乃香はキョトンとしてしまった。
するとシモンは・・・・
「俺は、この学園祭が終わったら一回元の世界に帰ってニアに会いに行く。・・・・でもそれからは・・・・・ニアがどうのこうのじゃない、俺が近衛木乃香をどう思っているのか、もう少しお前と向き合って考えることにするよ・・・・・」
「シモンさん・・・・」
「だからと言って、お前を好きになるとは限らない。それに木乃香だって今後他の男を好きに・・・「それは絶対あらへん!」・・・・・でも・・・・やっぱり未来はどうなるのか分からない・・・・、でも今度からはニアを理由にしたりはしない。・・・・それでも・・・いいかな?」
木乃香は拒む理由など無い。
それは大きな前進であった。「俺がニアを好きでいる限り、他の誰かを好きになることは無い」と言っていたシモンにようやく少しだけ近づけたのである。
可能性がゼロでは無くなったのである。
それは大きな成果だった。
これで少なくとも土俵の上に立つことが出来たのである。
ならば後は自分をもっとシモンに知ってもらうだけである。
「それはそれとして、今日は単純に俺も楽しかったよ・・・楽しかった・・・・」
その言葉を聞いて木乃香はシモンに向かって満面の笑みで頷いた。
「シモンさん・・・・ありがとな・・・・」
涙が出そうになった。
一度はあきらめた恋だったが、ようやく少しだけ前進できたのである。
未だに片思いではあるが、木乃香はそれだけでうれしかった。
「う~ん、よしっ! ホンマは今からロマンチックなイベントが多いんやけど、今日は大人しく引き下がることにするわ~」
「そうか、・・・そうだな・・・明日も色々あるからな・・・・お互いにな」
「・・・超さんのことなん?」
「まあな、・・・木乃香には悪いけど最終日はアイツとの予定が入ってるからな~」
「む~、それやっぱうらやましいわ~、ええな~超さん」
互いに冗談めいた言葉で笑いあい、シモンは木乃香に背を向けた。
「それじゃあ、・・・・・また明日」
「ん! 必ずネギ君たちと一緒にシモンさんに会いに行くからな~」
こうして学園祭二日目が終わろうとしていた。
あきらめずに突き進んだ少女の想いが少しだけ前に進んだ日だった。
教会への帰路の途中、泣きながら走るアスナとすれ違ったが声を掛けそびれた。
恐らく彼女の想いは届かなかったのだろう。
しかし自分が何もしなくてもアスナも、そしてたくさんの仲間がいるのだから心配は要らないだろうと思い、アスナの背中を見送った。
後は明日を迎えるだけである。少なくともこの時はそう思っていた。
しかし超は待ってはいなかった。
間もなく本格的な大決戦が始まることに、まだシモンは気づいていなかった。
よっしゃ、これで苦手な恋愛パートは終わりだ! さあ、終わり!
後は暑苦しい、むさ苦しい、そんな怒涛の勢いでいきます!
「甘い甘い恋愛のないものなんて、ネギまじゃないやい!」と思われている方には、今のうち謝罪させていただきます。