魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
新生大グレン団と超の火星軍団。
この二つの組織の対決がいよいよ始まろうという中、この舞台にもう一つの組織が、ある一人の少女の行動によって割って入ろうとしていた。
この少女の行動は超にもシモンにも予定外の行動だった。
それは少女の純粋な願いだった。
超鈴音というクラスメートを止めたいという願いからの行動だった。
超一味、超包子の料理人として常に超鈴音と行動していたネギのクラスメート四葉五月。彼女は今学園長室にいた。
「・・・・う~む、・・・・それは本当かのう?」
「五月君が嘘を言う子だとは思っていない・・・・しかし・・・・超君が全世界に魔法をバラす?」
五月は黙って頷いた。
今この部屋にいるのは学園長、そしてタカミチと五月の三人だけである。
超の計画を知り、それを止めたいと思った彼女は超に内緒で全てを打ち明けた。
本当はネギに相談したかったのだが、どうしてもネギが見つからず、かつての担任だったタカミチを頼った。
五月は魔法使いではないため、それほど詳しい作戦内容を知っているわけではない。
そのため大まかなことまでしか説明できなかった。
だがその説明だけでも充分だった。魔法の存在をバラすという行為、そして・・・
「今日の午後に計画を実行し・・・・邪魔を防ぐために2500対以上のロボット兵器を導入する・・・か・・・・」
「そんな大掛かりなら誰かが気づいていいはずじゃ、イマイチピンと来ないのう・・・・」
「・・・・ですが・・・・」
「安心してくれ、五月君が信用の置ける子だと信じている。ですが学園長、世界中に魔法を認識させるなんて可能なんですか?」
「・・・・都合よく今年は22年に一度の年・・・・あながち無理ではないかもしれん・・・」
顎に手を置き考える学園長。しかし本当だとしたらゆっくりとしている時間は無い。
「タカミチ、今すぐネギ君を連れてきてくれ、他の先生にはワシが連絡しておく」
タカミチは頷き駆け足でネギを探しに向かった。その様子を見て五月はホッと胸を撫で下ろした。
こうして一人の少女の行動により、これまで何も知らなかった学園側もついに動き出した。
その頃ネギたちは未だにエヴァの別荘の中にいて、今後の内容について話し合っていた。
「・・・・漢の魂の在り処・・・美空ちゃんたちは女の子でしょ? これで本当にシモンさんたち仲間増やせるのかな~?」
「ネット上では相当食いつきがいいみたいだがな。実際本当に行くバカがたくさんいるとは思えないが・・・・」
残念ながらバカはいっぱいいた。
そうとは知らずに千雨を含め、今この場にいるメンバーで今後の話し合いをしていた。
軽い気持ちで倒しちゃえと言うハルナや、これまでの情報を整理しながら事細かに予想していく夕映。
一部の戦闘屋たちを除いて意見が分かれていた。
「いいじゃん、いいじゃん!! 火星人に未来人に歴史改変!! お姉さん創作意欲わいちゃうなー!! 学園最強の頭脳の持ち主!! しかしその正体は未来からの侵略者!! クラスメートが悪の黒幕!! あ~、なんという悲劇! もう倒しちゃえ!!」
「アンタはもう黙ってなさい!!」
「しかし、その辺の話が本当だとしても疑問点が二つあるです。一つは何故「魔法をばらす」ということが「歴史の改変」に繋がるのか。もう一つはそもそもなぜ、超さんはわざわざ何年も先の未来から来てまでそんなことをしようとしているのか」
「そうですね・・・。実際に超さんがやろうとしていることが本当に悪いことなのかどうか・・・だからシモンさんも僕たちと別々に動いたんでしょうけど・・・」
夕映とネギの疑問にみんなは静まりかえる。
未だに纏まらない話し合いを見て千雨もいい加減ため息をついた。その様子を見て、この中で唯一一般人としての考えを持つ千雨に意見を求めた。
「千雨ちゃんはどう思うん? 魔法が広まるのと広まらんのどっちがええ?」
「あん? そんなもん広まらないほうがいいに決まってんだろ。 大体それが普通なんだよ」
「え~、でもウチはちょっとええと思うよ。 そら~、シモンさんと戦うんは絶対嫌やけど、ウチのように治す系の魔法を皆覚えたら、もっと多くの人が救えるやろ?」
「だ・か・ら、それがおかしんだよ! 簡単に怪我は治らないし、手から火が出たり、雷が出たりしないのが普通の世界だ! 不思議なことは起こらないのが現実だ!! でも私はその普通の生活が気に入ってるんだ。ファンタジーはゴメンだ」
「「「「おお~~~~」」」」
「感心するな、バカ共が!!」
千雨の演説のような言葉に感心し拍手を送るアスナたち。
相変わらずのお気楽な反応に千雨のイライラが募り募っていく。
そして少しため息をつき、武道会でのシモンとの話を思い出した。
「ったく・・・・まあ、そう考えると私はシモンさんに賛成だな」
「えっ? シモンさんにですか? それはやはりどんな理由にせよ過去の改ざんを行うべきではないということですか?」
「はっ、そんな大そうなもんじゃねえよ。でもあの人は私に言ったんだよ、私が困る世界にはしないってよ。自分が勝てば変わらない明日が来るってよ。私はその何も変わらない明日の方がいいってことだ。限度もあるけど、魔法よりは気合のほうが聞こえも良いしな・・・・」
夕映の深い考えを鼻であしらった千雨の機嫌はかなり悪い。
魔法でハシャイでいる木乃香やハルナたちを見て相当イライラしている。
そんな彼女としてはシモンの力は限度を超えているが、誰しもが持っている「気合」という単語で自分たちの力を現していたのが好感を持てた。
納得はしないが・・・・
『魔法は魔法だ。鍛錬しなければ扱うことは出来ない、しかし気合を出せるか出せないかは本人のココ次第だ!』
そう言って自分の胸を叩いたシモンを思い出した。
少なくともシモンは自分に向かって困る世界にはしないと言ったのだから、そうなることを願った。
「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」
「・・・・・なんだよ、・・・ジッと見て・・・・」
すると自分をアスナたちがなにやら無言で見つめている。
木乃香が少し不安そうな顔で尋ねてきた。
「なあ、・・・・千雨ちゃん・・・・・まさか・・・・」
「・・・・・・なんだよ・・・・・・」
「・・・・・・シモンさんに・・・・惚れたん?」
――ブチッ!!
堪忍袋がどうとう切れた。
「うおぉい!! 誰があんなダサくて、暑苦しくて、やかましい男に惚れるか!! つうかテメエらいい加減にしろよ!!」
「シモンさんはかっこええもん!!」
「そうですよ、シモンさんはかっこいいです!!」
「木乃香とネギの言うとおりよ、千雨ちゃん。ああゆうのはダサかっこいいって言うのよ」
「どっちでもいいんだよチクショー!! いいから話を元に戻せ! 」
マジギレする千雨だが、相変わらず3-Aの生徒たちには勝てず、話はどんどん脇道にそれていく。
結局長時間話し合っても、あまり大した成果は無く、結局行き着いた答えは・・・・・
「・・・というわけで、超さんのやることが正しいかどうか分かりません。でも、この計画は世界に大きな混乱をもたらすので僕は止めたいと思います。皆さん、協力してください!!」
「「「「おおーーーーっ!!!!」」」」
「あんだけ時間掛けてこれかよっ!! 結局普通じゃねえかよ!! まあ、ファンタジーの世界を止めてくれるんならいいけどよ・・・・」
余りにも曖昧すぎる答えに千雨はツッコミを入れたが、自分に不利な話ではないので取り合えず納得した。
だが、やはりネギはどこか浮かない表情だった。まだ自分の決めたことに迷いがあるような表情だった。
「どうしたんだ、アニキ?」
「カモ君、・・・・本当にこれでいいのかなって・・・・こんな感じで超さんとシモンさんの下へ行けるのかなって・・・・」
ネギは不意に首から提げているコアドリルを弄くった。
シモンは言った。これは信念の象徴だと。これを返しにくるときは対等だと思っていると言っていた。
しかし一応答えは出たものの、超やシモンのように確固たる信念の前には弱いと感じていた。
そして未だに超の言っていた魔法で救われる世界というのにも捨てきれない思いがあった。
だが未だに浮かない顔をしているネギを見て、アスナに後ろから頭を叩かれた。
「こら、ネギ!」
「うっ、・・・アスナさん・・・」
「ほら・・・え~と・・・その・・・とにかく、超は止めなきゃダメでしょ! アイツのやろうとしていることは悪いことなんだから、止めなきゃダメ!!」
「・・・・アスナさん・・・・」
「はあ~、私ももう少し口がうまければいいんだけどな~・・・」
言いたいことが思ったとおりに言えないアスナだが、ネギにも気持ちだけは伝わった。
少し迷いはあるがやはり超は止めなければならないという気持ちになった。
すると刹那たちが時計を確認した。
この別荘の中と外では時間の流れが違うが、そろそろ頃合の良いころである。
「ネギ先生、そろそろ外では学園祭最終日の午前になるころです」
「わかりました、では一旦外に戻りましょう! そして超さんを止めるということで、皆さんいいですね?」
「「「「「おおーー!!」」」」」
とにかく今はその通りに動くしかない。
超やシモンほどの信念は無いかもしれないが、現時点で仲間たちと懸命に考えて出した答えなのである。
ならばその通りに動くべきだとネギは自分に言い聞かせた。
外の世界へ帰るため、別荘の出入り口となるゲートに皆で同時に手を触れ、一斉に外へ出る。
それは何度も繰り返してきた行為だった。
ゲートを通ればいつものようにエヴァンジェリンの部屋に戻ることが出来るはずだった。
しかしその時だった!
「なっ・・・・これは!?・・・・・」
「兄貴、どうしたんだ!?」
「分からないよ、でも・・・カシオペアが・・・・」
「「「「「!?」」」」」
なんとカシオペアから実に荒々しい魔力の光が溢れている。
そして同時に自分たちの周りの空間が歪みだした。
「な・・・なんです!?」
「ま・・・周りの景色がグニャグニャしているアル!?」
「これは・・・一体何事でござるか・・・・」
「お嬢様! 手を離さないでください!」
ゲートに戻ったネギたちは、本来エヴァンジェリンの自宅の部屋の中に出るはずだった。
しかし突如カシオペアが作動し、周りの風景が変わっていく。
この事態に一人残らず頭がついていかなかった。
カシオペアで時間跳躍する際に一瞬空間が歪められるのは知っている。
しかしそれは一瞬だけである。
だからこの事態はおかしかった。
空間が歪み、地面がまわったかと思えばその事態から一向に元へ戻らず、自分たちの周りはどんどんくずれていった。
「なんなのよこれ!?」
「わかりません、ですが何もしてないのに急にカシオペアが作動して・・・・でもこんなのおかしいです!?」
ネギたちの混乱はピークに達していた。
自分たちの身に一体何が起こっているかなど想像もつかなかった。
カシオペアは未だに嫌な音を響かせながら光を漏らしている。
そして・・・・・ようやくその光が収まったと思ったら・・・・・そこは・・・・
「えっ!?」
「こ・・・・これは・・・・」
途端に自分たちの身体が軽くなり浮遊するような感覚に襲われた。
しかしそれは間違いではない。
まるで無重力のように身体が浮かび上がった。
「ど・・・・どうなってんのよコレ!?」
「せっちゃん!?」
「絶対に手を離さないでください!?」
そこにあるのは真っ暗闇の世界。
しかしその場にいる仲間たちの姿はハッキリ視認できるという実に不思議な空間だった。
身体が投げ出され、地面も天井も無ければ右も左も無い世界。
一瞬呆けたがネギはいち早く意識を取り戻した。
「皆さん、このままでは離れてしまいます一箇所に集まってください!!」
その声を聞き、皆ハッと意識を取り戻して、まるで無重力の中を浮遊するかのようにネギの元へ集まった。
「おい、何がどうなってやがるんだ・・・・・」
「僕にも・・・・急にコレが動き出して・・・・って、えっ!!」
「あ・・・兄貴!?」
ネギが取り出したカシオペアを見て全員が驚愕の声を上げた。
なぜならカシオペアに大きな亀裂が入っていて、完全に動かなくなってしまっているのである。
「そんな、・・・二日目までは使えたのに!?」
ネギは驚きを抑えることが出来ない。
しかし現実である。
カシオペアには無数の傷跡が残っている。
恐らく先程の魔力はこの隙間から漏れたのである。
全員何がなんだか分からずに不安そうな顔を浮かべる。
するとカモが何かを考えている。
「ひょっとしたら・・・・こりゃあ超の罠かも知れねえな・・・・」
「「「「「えっ!?」」」」」
顔の言葉に皆が振り向く。
そしてカモは自分の考えに唸りながら予想を出していく。
「超の様子だと・・・・シモンの旦那と戦いたがっているが、俺っちたちとは戦いたがっていなかった・・・・仲間に誘ったのはそれが原因だろう・・・・」
「たしかに超は無駄な戦闘を好まないアル。それにクラスメートと戦うのは嫌なはずアル・・・・」
「・・・・・・超の野郎はこれを使って未来と現在を行き来している・・・・・ひょっとしたら事前にタイムマシンに細工して、俺っちたちを未来にでも飛ばして戦いを避けようとしたんじゃないのか?」
「ちょっと待ってよ! こんな気持ち悪い世界がどうして未来なのよ!?」
カモは何か嫌な予感を感じながら亀裂の入ったカシオペアを眺めながら唸っていた。
そして・・・・何かにたどり着いた。
「・・・・ひょっとしたら!!!!」
「「「「!?」」」」
カモの叫びが空間の中に響き、全員が肩をビクリと震わせる。
何事かと思いきやカモは滝のように汗を流していた。
「どうしたですか、カモさん?」
「・・・・おれっちの勘だが、超のヤロウは予めカシオペアに罠を仕掛けていた。それは最終日を迎える前に俺ッちたちを戦いの終わった・・・・つまり学園祭の後の日まで飛ばそうと考えていた・・・」
「ちょっと待てよ・・・・仮にそうだとしても、そのタイムマシンがあればもう一度学園祭の日に戻れるんじゃねえか?」
千雨の言葉に皆なるほどと頷いた。
たしかに戦いの終わった日に飛ばされても、タイムマシンがあれば元に戻れるので無意味だと思った。
しかしカモは超から貰ったカシオペアの説明書を眺めて「やはり」と一言呟いた。
「こいつは22年に一度の世界樹の魔力の力で作動する。もし超が・・・その力が完全に失うほど・・・つまり一週間以上先の未来へ跳躍させようとしたら・・・・・」
「元の世界には帰ってこれない・・・・というわけでござるか・・・・しかし今のこの拙者たちはどう説明するでござるか?」
「それなんだが・・・・う~ん・・・アニキ、これ今までどうやって持ってた?」
恐る恐るネギを尋ねた。するとネギは・・・
「どうって・・・・ずっと服の中に入れてたけど・・・・・」
「・・・・・格闘大会の時もか?」
「・・・・・うん・・・・だってこんな大事なもの肌身離さず持ってないと・・・・」
「・・・・・それだァァ!!!!」
カモは完全に全ての謎が解けた表情をしていた。
「思い出してみてくれよ! タカミチさん、美空の姐さん、シモンの旦那、そしてクウネルと激戦を繰り広げていたんだ! その戦いで気づかねえ内にカシオペアに亀裂が入って少しずつ魔力が漏れ出したんだ!!」
「なっ!? でも僕はあの後に何回か使ったけど、ちゃんと動いたよ!」
「それが・・・何時間単位だったらまだ何とかなったんだろう・・・・だがよ、何日単位の長期の時間跳躍は無理だったんだ! それほどの巨大な魔力を使用しての跳躍に傷ついたカシオペアが耐えられなかったんだよ!!」
カモの推理に何人かの者も徐々にこの状況を理解して行った。
タイムマシンの故障、時間跳躍の失敗・・・・それに行き着いたのは夕映が最初だった。
「つ・・・つまり私たちは・・・・」
その言葉にカモはゆっくり頷いた。
「そうだ・・・俺っちたちが今いるここは、・・・・・俺っちたちは・・・・時空間の狭間のようなもんに囚われて漂流してるんだ・・・・」
いつもなら騒がしい声を同時に上げる彼女たちだが、この言葉に全員が言葉を失ってしまった。
ガクガクと足が震える。
しかしそれを支える地面などはない、なぜならここはそういう空間なのである。
それ以降一言も誰もしゃべれなかった。
いつも楽観的なハルナですら、この状況の深刻さを理解していた。
ネギはただ、涙が止まらず、震える手でカシオペアを眺めていた。
そんなネギたちの状況を知るはずも無く、教会は昨夜の宴会から明けて、朝を迎えていた。
大騒ぎして寝た美空や豪徳寺を初めとする新たな仲間たちを起こさないように寝かせたまま、シモンとヨーコ、そしてシャークティは最後の話し合いをしていた。
「集まった仲間は50人弱、・・・地下にあったロボットはどれぐらいかしら?」
「およそ、2000を超えています。頭の超鈴音一人を狙うしかありませんが先程の巨大メカもあります。・・・・その中で彼女を見つけるのは困難です・・・」
「シモンのワープがあるけど・・・・・使わないんでしょ?」
シモンはコクリと頷いた。
本当は超を倒すのであれば、認識転移システム、つまりワープを使えば一番簡単なのだが、シモンはそれを使おうとはしなかった。
なぜならただの超と一対一の戦いで解決するのならこれほど悩む必要は無かった。
しかも自分は超の練りに練った計画と立ちはだかる壁を破ることを誓ったのである。
「そうだな・・・・壁をすり抜けるのは俺たちのやり方じゃない。壁を突き破るのが俺たちなんだからな・・・・」
それは返って自分たちの勝率を下げる行為でしかなかった。
しかしシャークティたちはそのことについて文句は言わずに笑顔で納得してくれた。
「つまりロボットたちとは正面衝突。その上で超鈴音を見つけ出す・・・ですか・・・・いくら仲間が増えたとはいえ・・・・難儀ですね・・・・」
50対2000では勝敗は見えている。
いかに無理を通すのがグレン団とはいえ、このままではただの無謀だった。
だがここは学園という広い敷地内の上に相手は単純なロボットである。
さらにいくらなんでもそれほど大騒ぎを起こせば確実に魔法先生と生徒の介入があるはずである。
ネギたちがどうするのかは分からないが、さすがに学園側が超の協力をするはずなどは無い。
シャークティは口では出さないが、彼らの介入まで粘ることが出来れば勝機があると思っていた。
すると、3人で案を出し合っている中、教会の扉が開いた。
シモンたちが扉へ向くとそこに居たのは意外な人物だった。
「ふん、私の知らない間に随分賑やかになったじゃないか?」
「エヴァ・・・」
魔法使いのローブに身を包んだエヴァが少し機嫌よさそうに中に入ってきた。
中に入ってきたエヴァからはいつもと少し様子が違う気がした。
それは身に纏う空気のようなものである。その正体に逸早くシャークティが気付いた。
「最終日だと、魔力が戻っているようですね?」
「まあな、もっとも学園祭が終われば元に戻るのだがな・・・・・」
そう言って軽い舌打ちをするが、気分が悪いわけではなさそうだ。
だがシモンは少し気になったことがあった。
「・・・・なんで今日だけなんだ?」
「ん? それはこの学園最中は世界樹の発光により魔力があふれ出しているからだ。しかし学園祭が終わり世界樹の魔力が無くなれば、元に戻るということだ」
その答えを聞いてシモンは納得した。
魔法という奇跡の力がこの学園を今満たしている。
だからこそ、普通では体験できなかったことを体験できたのだろうと。
「そうか・・・・魔力が・・・いや・・・・魔法が溢れているのか・・・・」
「なんだ? 何かあるのか?」
「いや、・・・どうりでと思ってさ・・・・・」
「?」
「いつもは会わないのに・・・・学園祭が来てからどうりで会うわけだと思ってさ・・・・・」
それは武道大会でコアドリルを輝かせて自分を殴ったヨーコの一撃だった。
あの一撃で一瞬意識が遠のいたシモンは、普段は会えなかった人物と会えたのである。
「・・・・・・誰にだ?」
「魔法が溢れる奇跡の日・・・・死んだ人間に会うこともあるってことさ・・・・」
「?」
「ああ、そういうことね・・・・」
「むっ!? ヨーコだけ理解するとは気に食わん!! 教えろ!!」
最終日の青空を見上げてシモンは呟いた。
シモンの言っていることがヨーコには理解できた。
しかし理解できなかったエヴァは悔しそうにシモンに、教えろと怒っていた。
袖を引っ張りながら騒ぐエヴァをあしらいながら、シモンは心の中であの男に向かって呟いた。
(ネギたちがどうなっても、答えを聞くまではどうしようもない・・・・・・・だから・・・・)
自分はまだ助けることが出来ない。
だが、放っておくことも出来なかった。
だからこそお守りとしてコアドリルを預けたのである。
(俺の代わりに見守ってやってくれ・・・・アニキ・・・・・)
道に迷って重い選択肢に友が潰されてしまいそうになったら、手を貸してやって欲しいとシモンは心の中で願った。