魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第82話 さあ、そこを通してもらうぜ

ロボット軍団との交戦、巨大ロボット対決、そして女達の戦いが繰り広げる。

そしてこの場でも学園トップクラスの者達が人知れず死闘を繰り広げていた。

 

「はあ、はあ、・・・超くん」

 

体中が埃まみれのタカミチ。

相変わらずタバコを口に咥えてポケットに手を入れたままだが、その表情に余裕は無い。

それはネギ、アスナ、刹那も同じだった。

そして超本人もそうだった。

 

「流石に高畑先生もいるとキツイネ・・・」

 

カシオペアと強化服がある限り超自身は無傷である。それほどまでにネギたちとは能力差があった。

しかしそれでも経験の差から決定打を打ち込むことが出来なかった。

早々に特殊弾を撃ち込み彼らを退場させたかったがそうもいかなかった。

 

「へへん、ロボット達はぶっ倒したわよ!!」

「あとは、キサマだけだ!」

 

ロボット達の残骸の上に立ち、アスナと刹那は刃を超に向ける。

 

「ふ、流石に刹那サンたちに量産型では相手にはならなかたカ・・・」

 

引き連れてきたロボット達は粗方アスナと刹那に倒されてしまった。そして自分自身はネギ、タカミチに足止めを受けている。

 

「超さん、ここまでです。あなたを・・・捕まえさせてもらいます」

 

杖を構えながらネギは一切の隙を見せずに超に向かって告げる。その瞳は相変わらずだった。

迷い無く自分をしっかりと見据えている。

だからこそ不可解だった。

昨晩は自分が打ち明けた真実の内容にネギはおろか、後ろにいる刹那も取り乱していた。

あの場にはいなかったがアスナも恐らくは聞いたはずだろう。

世界を左右させるほどの重い選択。

親しい者との対立。

その二つの板ばさみにあっていたはずの彼らが今はどうだ? 

たった一晩明けただけで、己の選んだ答えと道を迷い無く進んでいる。

超にはそれが不思議でならなかった。

 

(僅かな間でこれほど成長し・・・そしてこうも最善の策を考えるとは・・・)

 

自身が優勢であることには変わらないが、ネギたちの計算外の行動が計算外だった。

シモンが計算外の行動をするのは当たり前。驚いたら負けだと自分に言い聞かせていた。

だが、常に教科書どおりの答えしか出さないと思っていたネギが、一般人を巻き込み、自分ともシモンとも対立する道を選んだのが計算外だった。

そして今のネギの目を知っている。

それはシモンと同じ、揺るがない信念を秘めた目である。

だからこそ・・・この手は通じないだろう。

 

「ネギ坊主なら分るハズ、この世界の不正と歪みと不均衡を正すには、私のようなやり方しかないと」

 

それは揺さぶりだった。

この語りなら、以前のネギならば100%揺らいだだろう。

現にタカミチも超の言葉に少し動揺している。

だが・・・今のネギは違う。

 

「・・・確かにそうかもしれません。だから僕はアナタを否定しません、・・・ですが、それは僕達が求める明日じゃありません」

 

微塵も決して揺らがなかった。

 

 

「タイムマシンを使った僕に、歴史の改ざんを否定は出来ません。ですが、僕達の明日は・・・超さんに与えられる明日ではなく、自分のこの手で掴んで見せます!!」

 

「――ッ!」

 

 

その言葉は超の胸に深く突き刺さった。

10歳の少年の言葉に言い返すことが出来なかったのである。

そしてタカミチも同じように目を見開いて驚いた。

昨日までとは精神的にもまるで違う今のネギ、そしてそんな彼の後ろにつくアスナと刹那の姿がとても大きく見えた。

そして、決め手に欠けて時間をかけ過ぎた超は、とうとう周りを囲まれてしまった。

 

 

「超!」

 

「!?」

 

 

第三者の声がした。

振り返るとそこにはクラスメート達がいた。

戦っていたのが一目で分る。しかし服が多少破れている物の無事な姿を見せてこの場に現れた。

 

「古・・・それに他の皆さんもお揃いで来たようネ・・・」

 

目の前のネギたちに集中していた超はこの場に現れた古や木乃香達の接近に気がつかなかった。

そして気付いた時にはもう遅い。前後を武装したクラスメート達に囲まれてしまった。

 

「お嬢様、皆さん、ご無事でしたか! ・・・楓は?」

「楓さんは途中遭遇した強敵の足止めをしています。我々も多少無茶はしましたがなんとか無事です」

 

ロボット達に行く手を阻まれた夕映達だが、手にした武器を構え、正面から壁を突破してこの場までたどり着いたのである。

楓を除いて誰一人未だ脱落する者なく超を見つけた。

 

「おい、いくらお前がトンデモアイテム持っててもこの人数に囲まれたら無理だろ? 大人しく捕まってこの騒ぎを止めてくれよ」

 

魔法否定派で非戦闘員だったはずの千雨も脱落していなかった。

彼女も口では文句言いながら魔法具を片手に服を少し破きながらもロボット達を乗り越えてきた。

それはのどかやハルナ、木乃香もそうである。古を除いた全員実戦経験がゼロの者達だが、逞しく気合で無理を通してきた。

このことが超をさらに驚かせた。

 

(まさか・・・全員無事だとは・・・本当に予想外ネ・・・。ネギ坊主だけでなく彼女達にも何があったネ?)

 

龍宮や茶々丸といった超側の主力は既にグレン団に抑えられているものの、圧倒的な兵力差を前に木乃香たちまで無事な現在の状況に信じられなかった。

 

「ネギ坊主・・・いや、皆・・・一つ教えて欲しい。・・・一体何があったネ?」

 

疑問を抑えることが出来なかった超はネギに尋ねる。

 

「解せないヨ・・・どうして・・・なんの迷いも無くいられるネ?・・・まったく分らないヨ・・・」

 

するとネギや木乃香たちはニンマリと笑みを浮かべ、ネギはコアドリルを超に見せた。

 

「たった一つの出会いが・・・僕たちを変えてくれ・・・いえ、教えてくれたんです。僕達は・・・分ったんです!」

 

コアドリルは何も変わらない。

しかし絶望の中、コアドリルが点滅した時に現れた男をネギは忘れない。

 

「そうよ、私達はただ分らなかっただけ。でも今は違うわ!」

 

アスナも前へ出た。

 

「そう、私達は答えに辿り着いたんです」

 

刹那がアスナの横に並んだ。

 

「考え方に賛否があるかもしれませんが、その人の言葉は私達に無限の可能性を教えてくれました」

 

夕映も語る。

 

「せや、シモンさんと超さんが自分の譲れへんもんを持っとるんなら、ウチらも自分達で決めたことは譲れへん」

 

木乃香も続ける。

 

「だからこそ私は、友として超を止める道を選ぶアル」

 

対峙した友へ向けて古が告げる。

 

「超さんのやろうとしていることはとても重要なことかもしれません。だけど・・・私・・・たちは・・・ネギ先生たちと離れたくありません」

 

のどかが純粋な想いを打ち明ける。

 

「まあ、要するに何も変わらねえ日常を好きな奴だっているんだ。相談なしにそんな日常を勝手に変えようとするんじゃねえよ」

 

千雨は少し不機嫌そうになりながらも強い口調で言う。

 

「超りんは超りんで苦しんでたのかもしれないけどね、ぶっちゃけ私はファンタジーだらけの世界にも興味あるけどさ、今はコッチにつかせてもらうよ♪」

 

ハルナは冗談交じりだが、それでも自分の考えを述べる。

 

「そういうことだ! もうテメエがどう言ったってアニキも姉さん達も揺るがねえってことよ!!」

 

カモがその小さな体から精一杯の大声で超に叫んだ。

 

 

「だから僕達は、この道を譲りません!! 超さんにも、シモンさんにも!」

 

「その通りよ!!」

 

 

ネギの叫びと同時にアスナたちは今一度、超を囲み武器を向ける。

 

 

「超さん、思いを通すのが力ある者のみなら・・・・」

 

「私達の力で貴様を、そしてシモンさんも止める!!」

 

 

超を囲む者達の力強い決意を秘めた瞳が一斉に彼女に向けて注がれた。

 

 

「僕を・・・」

 

 

全員の心を一つにして、同時に超に向けてあの言葉を叫んだ。

 

 

「「「「「「「「私達を誰だと思ってやがる!!」」」」」」」」

 

 

これ以上超の心に深く突き刺す言葉があっただろうか。

溢れ出す少年と少女達の魂の叫びに超はしばらく呆然としていた。

話の内容が未だに分らないタカミチでも、ネギたちの最後の言葉だけはよく分った。

戦いの最中でありながら、自然と口元に笑みが浮かんだ。

 

「あっ・・・・あっ・・・・」

 

これほど呆然とした超をネギたちは始めて見ただろう。

いつも底を見せない超鈴音が今始めて心を揺るがせた。

圧倒するネギたちの叫びに超は足を震わせ、飲み込まれそうになってしまった。

 

「いきます、超さん!」

 

踏み出したネギ。

超はまだ動けないでいた。それは致命的なミスだった。

動揺している超の思考にカシオペアを使って逃げるという簡単な考えすら思いつかなかった。

 

「し、しまっ!?」

 

だからもし、この場にこの男が現れなければ、もっと早くに決着がついていたかもしれない。

 

 

「飲み込まれるな、超! お前と決着を付けるのは、俺達だろ!!」

 

「!?」

 

 

男の声がその場に響いた。

声の方向を見ると、超を捕らえようとしたネギに向かって巨大なブーメランが飛んできた。

 

「こ、これは!?」

 

ネギは慌てて反応して真上にジャンプしブーメランを交わした。

そして交わしたブーメランはクルクルと勢いよく回転しながら主の手元に戻っていった。

 

「お前の信念が強固だからこそ、俺は全力で戦うと誓ったんだ」

「シ、シモンさん・・・」

 

シモンがこの場に現れた。

未だに動揺していた超はシモンにまだ反応を返せないでいる。

先ほどまで学園中が注目する中で巨大ロボットを従わせて戦っていたはずの男が目の前に現れた。

だがネギたちも最初は驚いたものの、ようやく自分達の目の前に現れた男にうれしそうに笑った。

そんなネギたちにシモンも笑みを返した。

 

「話は聞いた。・・・答え、見つかったみたいだな」

 

シモンの言葉に対してネギは言葉ではなく預かっていたコアドリルをシモンに向けて投げた。

それがネギの返答だった。

 

「はい、ようやく・・・たどり着きました」

 

投げられたコアドリルをパシッと受け取ってシモンは小さく「そうか・・・」と呟いてそれを自分の首にかけた。

 

「シモンさん、もうこれまでにしてください。私達は、あなた達の喧嘩を見て見ぬ振りは出来ません」

 

夕凪をシモンに向ける刹那。格闘大会でシモンに向けていた獲物はモップだったが今度は違う。真剣である。

そして刹那が冗談で刃を自分に向けているわけではないことが、シモンには直ぐに分った。

 

「余計なお世話なんて言わせへんよ。超さんはウチらの大切なクラスメート、シモンさんもウチらにはかけがえのない人や。そんな二人が大勢の人を巻き込んで喧嘩するなんて黙ってられへん」

 

シモンと戦うかもしれない。

その可能性を示唆しただけで涙目になっていた木乃香も今は違う。そう、シモンにも彼女達の成長ぶりが直ぐに分った。

大よそのことは見当がついた。ネギたちはきっと大きな出会いをしたのだとシモンはなんとなくだが気付いた。

でもだからこそ、シモンも譲るわけにはいかなかった。

 

「・・・って言っているぞ、超。本当はようやくお前と会えたんだから、このまま二人で戦いたかったんだけどな・・・」

「・・・シモンさん・・・」

 

呆然とする超の横に並んでシモンは見下ろした。

 

「先に言っておくぞ。俺は絶対にお前にグレン団を証明しなくちゃならない。だから、こんなところで立ち止まる気は無い。今も戦ってくれている仲間のためにもな!」

 

シモンは拳を握り締めて目の前に立ちはだかる少年と少女、そして学園最強のタカミチを睨みつける。

多勢に無勢。しかし大人しく出来るはずは無い。

 

「ここで終わってたまるかよ! そうだろ、超!」

「・・・では・・・どうするネ? どうすればいいネ?」

 

超とてこのままネギたちに黙って捕まるわけには行かなかった。

しばらく呆然としてしまったものの、シモンが登場したことにより、自分の譲れない物に再び熱を取り戻した。

シモンと決着をつける。

そして自分の抱いた憧れに見切りをつけて、望みを叶える。

超はそのために過去にやって来て長年の準備と積み重ねをして来たのである。

ここで終わらせていいはずが無い。

 

 

「簡単なことだ。決着をつけたい、その気持ちは同じなんだ。だったら今だけでも敵の敵は味方ってことでいいんじゃないか?」

 

「はっ?」

 

 

意味が分からずに超は変な声を上げてしまった。

それはネギたちも同じである。

 

「シモンさん・・・何言ってんのよ?」

「・・・まさか・・・」

 

嫌な予感がした。

 

「ネギ君! どうやら厄介なことになりそうだよ!」

 

シモンの言葉の真意に気付いたのはタカミチが最初だった。

そして超もようやくシモンの言葉の意味が分かったのか、心の底からおかしそうに笑ってしまった。

 

「あっはっは、それは実におもしろいネ!」

 

超の笑いを見てネギたちはハッとした。それは相変わらず予想もつかない展開だった。

笑い終えた超は拳を握り締めてシモンを見上げた。

 

 

「なるほど、道が重ならない同士だが・・・少しの間だけ一緒に並んで歩くのも一興ネ」

 

「ああ、ここで終われるほど、俺もお前も俺達の仲間もまだ何も見せちゃいない。だから、ここは一気に突っ走るぞ!!」

 

 

シモンは螺旋力を解放し、ドリルの槍を作り出し構える。ゴーグルをかけ、本気のスタイルである。

そして超もシモンの隣で構える。

ここで超が隣にいるシモンに特殊弾を使えばまた違った結果になっただろう。

超は卑怯な手を使うと宣言しているのだ、使っても何も問題は無いはずだ。

だが超は使わなかった。

思いつかなかったわけではない。だが、その考えを却下してシモンの提案に乗ることにした。

 

 

「可能性は・・・無限に広がる・・・カ。 こんな可能性は予想して無かったヨ・・・」

 

「そうだ、誰だって先のことは分からないんだ。 ・・・でも、俺もお前もこの戦いに決着をつけなければ・・・前には進めないだろ?」

 

 

超とシモンは同時にネギたちに向かって走り出した。

 

「そんな、シモンさん!?」

「来るぞ、ネギ君! 戦えない子達は後ろに下がって! ここで彼らを逃がすわけには行かない!」

 

元凶の二人が取った手段、それは一時の共闘だった。

これが終われば二人はまた敵同士に戻る。

だが今だけは、決着をつけるという両者の望みのために・・・

 

 

「成り行きだけどある意味・・・」

 

「ウム、最強タッグの完成ネ!!」

 

 

シモンも超もお互いを信頼しているかのような笑みを浮かべて共に駆け出した。

 

 

「「さあ、そこを通してもらうぜ(ネ)!!」」

 

 

ついに会合した物語の主役達。

だが、戦いはまだ終わらない。

 


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