魔法はお前の魂だ(魔法先生ネギま✖天元突破グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第9話 お前が光り輝け

エヴァにとっては予想外だった。

この状況でこの男。すなわちシモンが出てくること。

そして、何故か、ネギとも知り合いであるということ。

だが、すぐにそんな驚きは捨て去る。

それどころか、昨日の借りを返す絶好の機会と、口角がつり上がった。

 

「また会ったな気合バカ!!」

「シモンさん・・・」

 

 

シモンの出現により朦朧としていた意識がはっきりしたネギ。

そしてシモンを見た。

 

「シモンさん・・・・どうして・・・それにエヴァンジェリンさんとも知り合いだったんですか?」

 

ぼろぼろの姿のネギが疑問をぶつけた。

 

 

「ああ、この前、夜に会ってな・・・・でっかい音がしたから来てみたけど・・・・・また会ったなガキ!!」

 

「「「なっ」」」

 

 

いきなりシモンのとんでもない発言にネギ、アスナ、カモの三人は驚愕した。

今目の前にいるこの女を知らないのか?そう思った。

闇の福音、ドールマスター、これまでエヴァンジェリンという存在に対してを呼ぶ名は多かった。

それをガキ? 600年生きたこの不老不死の吸血鬼・・・この最強の魔法使いであるこの自分に?

 

「ガキだとーーーーーーーー!!!!上等だキサマ!!!!今日こそ殺してやる!!!」

 

怒りとともに噴出すエヴァンジェリンの超巨大な魔力、その姿は最強にふさわしかった。

 

「ちょっと何言ってるのよーーーー!あんた!」

「あわわわわわわ!?まずいですよ~~シモンさ~ん」

 

自分がさっきまで虫の息だったことも忘れ、ネギはアスナとともにシモンに詰め寄った。

しかしシモンはまったく悪びれた様子も無かった。

 

「ネギ!オマエもあいつと同じマホウ使いとかいうやつだったんだな」

 

この言葉はネギを更に驚かせた。

 

「シ・・シモンさん魔法を知ってるんですか!?」

 

「ああこの前あいつが言っていて記憶を消されそうになった、でもやっつけたけどな!」

「えっ!?やっつけたってまさかエヴァン「ちがーーーーーーーーーーーーう!!」」

「この前はろくに魔力も使えない状況だっただけだ!!!!だが今は違う!!私の本当の力で殺してやるーーーーー!!」

 

もはや完全に堪忍袋が切れたエヴァ。ネギは恐怖で震えてしまった。

それはアスナも同じ。だが、同時にアスナは僅かながらの期待感があった。

このシモン、何者かは知らないが味方なのではないか?

 

「あんた!誰かは知らないけど協力してくれるの?」

 

相手の魔力を感じることの出来ないアスナは、シモンのエヴァに対する余裕な態度を見て、助っ人かもしれないと思い込んだ。

アスナの問いにシモンはアスナとネギ、そしてエヴァを順番に見た。

そしてシモンはエヴァを指差し、

 

「・・・・・ネギ、あいつがお前の前にある壁か?」

 

シモンの質問にネギは短く

 

「はい!そうです!」

 

ネギの答えにシモンは「よしっ」と力強く腕を組み、

 

 

「だったら俺は何もしない!お前がやれ!!」

 

「「「・・・・・・・・はーーーー!?」」」

 

 

助けに来てくれたんじゃないのか? という淡い期待を打ち砕くシモンの言葉に、アスナは声を荒げた。

 

「あんた!もうネギはボロボロなのよ!!」

「はっはっはっ、怖気ついたか気合バカめ、今のぼーやに何が出来る?」

「シモンさん・・・・」

 

驚愕のアスナ、笑うエヴァ、そしてシモンを弱気な瞳で見つめるネギ、

しかし、シモンは・・・・

 

「シモンさん・・・でも僕なんかじゃ・・・・・」

「バカヤロー!!気合が足りねえぞ!!無理を通して、道理を蹴っ飛ばせ!!」

 

シモンは力強く、ネギに言い聞かせた。

 

「大丈夫お前なら勝てる!!」

「ちょっ・・・アンタ何を「大丈夫だ!!」

 

アスナの言葉を遮った。

 

 

「いいかネギ自分を信じるな」

 

「「「「「「「「「「は!?」」」」」」」」」」

 

 

普通そこは「自分を信じろ」だろ。この場にいた全員さらにこの戦いを見続けるものたちは思った。

するとシモンは自分の親指で自分の胸を指し、

 

「俺を信じろ!!」

 

と言った。

 

 

 

「お前を信じる俺を信じろ!!!!」

 

 

 

無茶苦茶な話だった。しかしその言葉はとても熱く、皆の胸に響いた。

 

「僕を信じる・・・・シモンさんを・・・・」

 

全員がこの光景に見惚れていた。

 

初めてシモンと出会うアスナとカモ、

学園最強の学園長と高畑、

ネギの生徒でありこの戦いを静観している刹那と龍宮、

そして彼を知るシャークティ、エヴァンジェリン、茶々丸、

 

もうボロボロでこれ以上戦うのは無理だと誰の目から見ても明らかな少年に向かい、戦えと言っている。

本来アスナならそんなことを言う者には殴り掛かっているかもしれない。

しかし「俺を信じろ!」そう言うシモンの言葉がとても胸に響いたからだ。

 

そしてネギは立ち上がった。

その目が言っていた。信じると。応えてみせると。

 

「はい・・・・僕も壁を突き破って見せます!僕の全力の魔法!!いきますエヴァンジェリンさん!!」

 

シモンの言葉に再び闘志を戻したネギ。

アスナとカモは黙ってこの戦いを見届けることにした。

茶々丸もアスナの様子を察して、戦闘態勢を解いた。

 

一方エヴァンジェリンは立ち上がったネギよりも、別のことを考えていた。

それは離れたところから見ていた学園長と高畑も同じだった。

 

彼らはシモンと一人の魔法使いを重ねていた。

 

その魔法使いこそ正にシモンの言った『無理を通して、道理を蹴っ飛ばす』という、この言葉どおりの男だった。

最強の魔法使いにして英雄だった男。

 

(違う・・・なぜ重なる・・・・・・なぜナギとこの男が・・・・・・ちがう!ちがう!ちがう!)

 

突如エヴァも魔力を上げた。

 

「ふん、では決着をつけるぞぼーや!そしてそこのバカ!!ぼーやの後はキサマだ!!」

 

ネギは今自分の持っている最強の呪文を唱えた。

 

 

「ラス・テル・ラ・スキル・マギステル、来れ雷精、風の精!!雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐・・・」

 

「来るがいいぼーや!!リク・ラクラ・ラック・ライラック、来たれ氷精、闇の精!!闇を従え吹雪け常世の氷雪・・・・・」

 

 

二人の魔力が上昇し空気が揺れる。

 

 

「雷の暴風!!!」

 

 

「闇の吹雪!!!」

 

 

二つの強力な魔法が激突する。

 

 

(くっ・・・・やるじゃないかぼーや・・・)

 

 

(スゴイ力だ・・・打ち負ける・・・・いやまだだ!!無理を・・・通すんだーーーー!!)

 

 

互いに魔力だけでなく、想いまで込めたその一撃は、両者一歩も譲らない押し合いとなる。

だが、その時だった。

 

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

「な・・・・何!?」

 

「うあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

シモンとの誓い。ネギは最後の最後でエヴァンジェリンの魔法を打ち破った。

 

 

「やったぜ兄貴、あのエヴァンジェリンに打ち勝ったぜ!?」

 

 

カモは信じられないように言う。

当然だ10歳の少年の魔法が魔法の世界でも名高い闇の福音、エヴァンジェリンの魔法を打ち破ったからだ。

ネギはシモンを見るとシモンは親指を上に向け突き出した手をネギに向けニッと笑う。

それがうれしくネギもシモンを真似て親指を上に向け突き出し、それをシモンに向けた。

 

するとネギはあることに気がついた。視線をチラッと上に向けると、

 

 

「あ、あわ脱げっ・・・!?」

 

 

上空に全裸のエヴァンジェリンがいた。

 

ネギの魔法の衝撃でエヴァンジェリンは身につけていた服を全て吹き飛ばされてしまった。

シリアスだったネギは一変して顔を真っ赤にして慌てふためいた。

 

しかし、本人は大してあわてた様子もなかったが、顔がかなり引きつった笑みを浮かべていた。

 

「フフッ・・・・フフフ、期待どおりだよ、さすがはやつの息子だ・・・・だがまだ決着はついてないぞ」

 

相当な衝撃だったがエヴァンジェリンにはそれほど大きなダメージが与えられなかった。

エヴァはまだ戦う意思を捨てず呪文を唱えようとした。

 

しかし次の瞬間、茶々丸があることに気づいた。

 

 

「いけないマスター予定より停電の復旧が早い!!」

 

「な!?・・・・・・・ぐわ!!」

 

 

突如学園に光が戻ってきた。停電によりエヴァンジェリンの封印は弱まっていた。

しかしそれが復旧したことによりエヴァはただの子供に戻ってしまった。

この状況をネギとアスナは理解できなかった。

二人が混乱する中、上空にいたエヴァンジェリンが地上に向かって落下してくる。

 

「しまった間に合わない!!」

 

茶々丸があわててエヴァのもとへ向かうが届かない。

魔力が使えたらまだしも、今のエヴァはただの子供。

この高さから落ちればただでは済まない。

間に合わない、そう確信してしまったネギたちは思わず目を瞑ってしまった。

 

(・・・・ダメだ・・・・落ちる・・・・・・そういえば前にもこんなことが・・・・・)

 

エヴァンジェリンは過去を思い返した。ひょっとしたらこれが走馬灯なのかもしれない、

かつて自分を助けてくれた男・・・・光に生きてみろ、と言った男

 

 

(そうだ始めてナギに会った時・・・・私を助けたナギは・・・・・最初にこんなことを言ったな・・・・

 

「危なかったなーガキ!」

 

(そう・・・・・それがあいつの最初の言葉・・・・・・・ん!?)

 

 

エヴァは思いのほか衝撃がなかったことに気づいた、そして自分の体にまったく痛みが無いことに。

あの高さから落ちて無事?そんなはずはない!!

あわててエヴァが目を開けるとそこには、エヴァの嫌いな気合バカがいた。

 

 

「急に落ちてびっくりしたぞ、でも無事でよかったな!」

 

「ななななな!?」

 

 

エヴァは自分の状況に気づいた。

今自分がいるのはシモンの腕の中、どうやら自分はシモンに受け止められたようだ。

裸だった自分の体にはシモンのコートが巻かれている。

どうやらコートで裸のエヴァを包み込むように受け止めたようだ。

 

 

「ええーーい!!とっとと降ろせキサマーーー!!」

 

「はは、元気で何よりだ!」

 

 

笑いながらシモンはエヴァを降ろす。するとネギ達が駆け寄ってきた。

 

 

「シモンさーん、ありがとうございます!」

 

「シモンさん、マスターを助けていただき、ありがとうございます」

 

「ホントホント!無事でよかったわ」

 

 

先程まで全員争っていたが、今は皆クラスメートの無事に喜んでいた。

 

 

 

 

「えへへー僕の勝ちですよーもうこれから悪いコトもやめて授業にも出てもらいますからね!」

 

「・・・・・わかったよ・・・・約束は守る・・・」

 

 

戦いを終え解散しようとしている中、はしゃぎながら言うネギにエヴァはしぶしぶ了解した。

そしてネギはそのままシモンに向き合い、

 

「ありがとうございますシモンさん!僕出来ましたよ!」

 

するとシモンはかつてしたように、ネギの頭をくしゃくしゃ撫でた。

 

 

「俺は何もしていない、壁を壊したのはお前自身の力だネギ!そして俺の無茶な言葉に応えてくれて・・・・・ありがとな、ネギ!!」

 

 

ネギはその言葉がとてもうれしかった。自分のことを最後まで信じてくれたこの男がネギにはとても輝いて見えた。

シモンは「何もしていない」と言っているが、もしシモンがいなかったら自分は勝てなかったのではとネギは思っていた。

そんな、シモンたちのやり取りにアスナは笑っていた。

シモンが何者か、実はこの場にいる者は誰も知らなかった、しかしアスナはすでにそんなことを忘れ、ネギを救ったシモンに感謝していた。

 

「しかしマホウってすごいなー!みんなお前たちのようにすごいのか?」

 

 

突如感心したように言うシモン。その言葉でネギとエヴァはシモンが魔力のない一般人だったことを思い出した。

もっとも、一般人かどうかは不明だったが、

 

「ふん、私とぼーやは特別だ、ぼーやは親譲りの巨大な魔力を、そして私は最強種の吸血鬼の魔力を持っている。」

「キュウケツキって何だ?」

「・・・・・普通存在を信じていなくても名前ぐらい知らないのか?ようするに・・・・・私のようなバケモノのことさ」

 

シモンの質問にエヴァンジェリンは自嘲気味に答える。

 

「バケモノ?子供に負けてるのにか?」

 

シモンは嫌味ではなく本当に不思議そうに聞く、しかしエヴァはそのシモンの言葉に少しカチンと来た。

 

「ふん、キサマは知らないだろうが私は魔法使いの間では、かつて闇の福音、最強無敵の悪の魔法使いとして名を轟かせた」

「へえ、よくわからないけど、すごそうだ!でも闇とか悪とかそんな根暗なあだ名はやだなー」

 

―――ブチッ

 

 

何かが切れる音がした。

 

「キサマ・・・・私が好きで闇の中を生きていたとでも思っているのか・・・・?」

 

体を震わせながら怒気を含んだ声でエヴァが言った。

ネギたちも恐らくふれてはいけないことにシモンが触れたのだと思い、エヴァの怒気に震えていた。

しかしシモンは大して震えることもなく、

 

 

「なんだよ・・・闇がいやなら光に生きればいいじゃないか・・・・」

 

 

それは言ってはならないことだった。

 

 

[光に生きてみろ]

 

 

かつてその言葉と共に自分の前から姿を消した男、だからこそ、何も知らないシモンにその事をエヴァに言ってはいけなかった。

 

「いてっ!?何で殴るんだ!?」

 

魔力のない姿にもかかわらずエヴァは渾身の力を込めてシモンを殴った、

 

シモンがエヴァを非難しようとしたら、エヴァの目には涙が溜まっていた。

 

 

「キサマが・・・何も知らないキサマが・・・あいつと同じことを言うなーーー!!!!私だって最初は求めたさ・・・・しかし光あるところは私を・・・バケモノである私を受け入れなかった!!」

 

 

エヴァは涙を流しながら叫んだ。ネギたちも黙ってエヴァを見つめる。

 

「私は・・・闇の中で生きるしかなかった・・・・・・でも、そんな中・・・・ようやく見つけたと思った光は・・・・・やつは私をこの学園に閉じ込め・・・私の前から消えた・・・・光に生きろだと?・・・もう遅いこの学園は・・・・私には眩しすぎる・・・私は闇の中でしか生きることは出来ないんだ・・・・」

 

ネギたちは何も言えなかった。

それがおそらくエヴァの本音。闇の世界で生きてきたエヴァには未来を輝かせる学生たちの世界が眩しすぎたのだ。

 

エヴァが嗚咽を出しながら自分の思いを打ち明けた、そして少し間を置いてシモンは口を開いた。

 

 

「俺には、この世で最も尊敬するアニキがいた・・・」

 

「なんだ・・・・いきなり?」

 

 

突如シモンは語り出した。

 

 

「いいから聞け。俺は昔、薄暗い穴倉の中に住んでいた。そこは狭く壁に囲まれ、天井の所為で空を見ることも出来ない暗い所だった」

 

 

シモンの話を全員黙って聞いている。

 

 

「夢や希望も無く、あるのは薄暗さだけ。でもそんな暗闇の中にいつだって熱い魂をもつ男がいた。それが俺のアニキ。どんな絶望の状況にいようと絶対にあきらめない、まるで太陽のような男だった。アニキはどこにいたってアニキだった」

 

 

「・・・・何が言いたい・・・」

 

 

「お前の言ってるその人がどういう人かは知らないけど、光は明るい場所とかそういう意味じゃなくて、おまえ自身が光り輝け!そう言いたかったんじゃないか?」

 

 

「!?」

 

 

「明るい場所にだって、暗い奴はいる。でも俺のアニキはどんな暗い場所や状況にいようが俺には輝いて見えた・・・・・」

 

 

「・・・・うるさい・・・」

 

 

「さっき光に生きたかったて言ったよな、あれがお前の本心だろ?自分を偽ったりしないで本当のお前になったらどうだ?」

 

 

「うるさい・・・・・」

 

 

「心の狭い人間に何を言われたって気にするな!!」

 

 

「ええーい!!黙れ黙れ黙れーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

エヴァは大声で叫び、そのままその場所から駆け出した。

茶々丸も一度ネギたちに軽く会釈をしてエヴァの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

うるさい。黙れ。何も知らないくせに。何を分かったような事を言う。

それでいて、なぜ、誰も触れなかったことに触れる。

そして、何故その言葉が・・・・・・・

 

「はあ、はあ、はあ、・・・・・・・くそ・・・・・あの男・・・・どうして今頃あんなことを言う・・・・・・・・どうして今更現れた・・・・・・・もう・・・・遅い・・・・私には・・・・・・うっ・・・・・・・・えっぐ・・・・・ぐす・・・うわーーーーーーー!!」

 

エヴァは久しぶりに泣いた。

サウザンドマスターが死んだと聞かされたとき以来に。

 


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