※妄想が炸裂しました。多分もわっとした暑さにやられたんです。気にしないでください。
妖怪の山にあるとある古木。その上にわたしはいた。
「おーい、てんぐー」
わたしは精一杯叫ぶ。しばらく待ってみたが全く持って来やしない。毎年恒例の行事だっていうのにちょっとは遅れないようにしようとか思わんのか、あの天狗め。
そんなことを考えながら待っていると、シュバッと風を切る音がする。わたしの目の前に、散々遅れてきやがったバカラスがいた。
「どうも〜!毎度お馴染み、清く正しい射命丸で〜す!」
「おい」
わたしは実に可愛らしい声でバカラスに声をかける。
「あや、あやや……えっと……どういたしましたか、てゐさん?」
「そんなこと言わなくてもわかっているハズ……だよねぇ……あーやーちゃん?」
わたしは笑顔で文を見る。あ、怖い笑顔じゃないよ? ちゃんと可愛い笑顔だよ?
「ややややだなあ〜も〜。わかってるに決まってるじゃないですかあ〜」
「そっか。じゃ、言ってみ?」
「……すみません。持ってく小道具選んでました」
「……よろしい。まあでも、小道具選んでたんならしゃーないか。それで、何持ってくの?」
そうわたしが聞くと天狗はハイ!と返事をしながら背中に背負っていた大きな唐草模様の風呂敷を広げる。それにしても唐草模様。うん、わたしの中で天狗とどっかの白黒が完全に一致したよ。
「……ね、アンタさ、もうちっと気をつけた方がいいんじゃない?その唐草模様の風呂敷アンタが背負ってるとさ、どっかからくすねてきましたって言ってるみたいだよ?」
「な!失礼ですね〜、どっかの白黒と一緒にしないで下さいよ」
「アハハ、ごめんごめん」
わたし達は改めて風呂敷の中に入っている物を見る。そして、一つずつ順番に太い枝の上に並べていく。
「うさ耳、猫耳、その他つけ耳各種、尻尾各種、ハリセン、鼻メガネ、ニーソ、ストッキング、網タイツ……うん、メジャーなのは揃ってるね。あとは限定の方だけど、どうしよっか?」
「んー、そうですね。あ、抱きまくらとかどうでしょう?」
「ウサ?抱きまくら」
「はい、その辺に置いておけば誰かしら引っかかるはずです。眠ってしまえば尚良し。種類を多くできないのは玉に瑕ですが、だからこそ……というのも狙えます」
「なるほど……」
わたしは天狗の提案を聞いて考えを巡らす。労力、リスク、それはそこからなる利益と釣り合うか、もしくは利益が勝つか。それらを総合してみれば利益は実に多い。あいつらはあれに関しては信頼できる。そしてわたし達はミスを犯さない。
……決まった。
「文、その案採用。抱きまくらはわたしが用意するから、アンタはメンテナンスと小道具の最終チェックお願いね」
「はい、わかりました!まかしといて下さい!」
「ウササッ、じゃ、博麗神社で」
そうわたしが言うと文はあっという間もなく飛んで行った。まだ包み直していないはずの小道具達もない。
「文は器用だなあ」
そう独り言をつぶやいてハッとする。そうだ、急いで抱きまくらを準備しないと。わたしは急いで古木から飛んで行った。
♢
ここは博麗神社。神社とはいっても神社らしさなんてカケラもなく、寧ろ妖怪が入り浸っている始末だ。いつも妖怪がいるおかげで参拝客はほとんどおらず、『妖怪神社』なんて呼ばれてたりするらしい。わたしも妖怪だけどね。
そして今日、ここで夏の大宴会が開かれる。というかもう開かれている。ここはいつもそんな感じだ。なんとなく始まってなんとなくお開き。今日も例に漏れずそうなんだろう。いつ終わってしまうかわからない、だからこそ一枚でも多く撮らねば。そして一枚でも多く集めるのだ。何かは言わないけど。
「あ、てゐ。あんたもきたの?」
わたしが今宵のビッグイベントに燃えていると、ひょっこりと障子の間からここの巫女、博麗 霊夢が出てきた。ちなみに別名『脇巫女』、我らにとって超重要人物である。
「うん、お酒まだある?」
「ええ、まだまだあるわよ。まあでもすぐ無くなっちゃうと思うから飲むんだったら早めに飲んどきなさいよ」
「うん、わかった」
霊夢はわたしの返事を聞くと部屋の中へ戻って行った。気づけば辺りにはたくさんの人妖がいる。ようやく大宴会本番が始まったみたいだ。ウンウン、みんな夏だからか生地が薄いね! こりゃあこっちもやる気でてくるわ。
「てゐさん」
わたしの背後にシュバッと音を立てて文が現れる。というか気配を全然感じられなかった。コイツはあれか、アサシンなのか。音も立てずに現れて殺し、証拠は残さない! うん、文ならできそう。
「これ、カメラです。で、いつも通りわたしは『一瞬のグッドタイミング班』でてゐさんは『記念撮影系&ロリ目線班』でお願いしますね」
ロリ言うなし。てかわたし千年以上生きてるし。てか文もそんぐらいだし。
「あーハイハイ、それじゃお互い頑張りましょう!」
抗議の視線を向けていたのに文はさっさと行ってしまった。くそ、ちょっとムカッとしたから軽く鈴仙騙してこよう。そうしないと納得できん!
というわけでわたしは鈴仙の近くに座る。そして丁度良くそのへんにあったお酒にたまたま持っていた永琳特製の何かの薬を入れ、よくかき混ぜた。よし、これで準備はバッチリ☆
「ねえ鈴仙」
「にゃによ、てえ」
鈴仙の顔はすでに真っ赤。もうそこそこ酔っているようだ。余計やりやすい。
「いやあ、いっつも鈴仙落としてばかりだからたまには上げてみようと思って。ほら、お酒ついだげる」
「ん〜、そお?それじゃあよろしく……」
鈴仙に許可をもらった。よし、これで鈴仙は文句言わないね! 文句言えなくなる可能性もあるけど。
「はい、どーぞ」
「あ、ありがと……ッグ!?」
急に鈴仙が苦しみだした。乙女にはあるまじき顔である。あ、倒れた。泡吹いて白目むいてる。……まあ鈴仙だし大丈夫か。
「よしよし、成功☆ おーい鈴仙、大丈夫?」
……へんじがない ただのしかばねのようだ
「ただの屍ならしょうがないや。写真とろっと」
というわけでわたしはベストショットを求めて博麗神社何周かの旅を始めた。
酔っ払いめーさくーーパシャ
ワインボトルに入った葡萄ジュース飲むおぜうーーパシャ
三色団子両手に4本持ち幽々子ーーパシャ
うさ耳妖夢と生きていた鈴仙ツーショットーーパシャ
慧音と輝夜に絡み酒もこたんーーパシャ
べったり藍橙ーーパシャ
一気飲み萃香ーーパシャ
追いかけっこバカルテットーーパシャ
小町と泣き上戸えーきーーパシャ
ダンシング衣玖ーーパシャ
などなど。あとパンちら、ドロちら、脇巫女らもチャンスがあったんで撮った。まだまだ宴会は続いているがここらが潮時だろう。さてさて、こっからが本番だ。
わたしはあらかじめ文と決めておいた人里近くの岩へ行く。わたしが行ったのを見ているだろうし、もう少しで文もくるだろう。あ、来た。
「てゐさん、調子はどうですか〜?」
「ん、まあぼちぼちってとこ。あたしゃあんたみたいに速くないし、そんなに枚数撮れてないよ?」
「またまた〜てゐさんが撮ったやつって売れ行き良いじゃないですか〜」
「まあね。んじゃそろそろ行こうか」
「あ、はい。場所はいつものとこです」
「はいはーい」
わたし達は夜の人里に入る。わたし達妖怪が入ってもいいのかって? 明らかに危ない奴しか呼び止められないんだよ。結構人里の警備って緩いよね。
大きな通りから一本曲がって細い道へ入る。そこには少し大きな家屋があった。そこに入ると、ムワァという熱気が伝わってきた。見回すとそこにいたのはたくさんの人里の男どもだった。控えめに言ってむさ苦しい。
男どもはわたし達に気づくと一斉に道をあける。奥にあるちょっとした戸棚、いつもの場所でわたし達は今までの血と汗と涙と努力の成果を並べていく。並べ終わったところにわたしはいつものように男どもに声をかけた。
「今から幻想少女の写真を大安売り!値段はわたしか文に聞いてね。万引きは厳禁だよー」
そういった途端男どもが群がってきた。さっきまで誰も騒いでいなかったのにこれはいくらだそれは俺のだと先程の宴会によ負けないくらいのお祭り騒ぎである。
そう、わたし達の夏といえばコレ。夏といえば暑い、暑いといえば薄着、薄着といえば売れる! というわけで数年前から文と一緒に写真を売りさばいていたのだ。ちなみに売れ行きはかなり良く、売れ残りはいつも数枚程度である。時間的には二時間程度しか開いていないのだが、男どもの間で噂が噂を呼んで結構人が集まるようになった。その分どっかの少女(笑)や慧音や人里の人達に見つかる可能性も上がったが、こいつらのコレに関しての結束力は凄かった。証拠以前に周りの人に疑念すら抱かせなかった。その結束力が妖怪に向いていたらわたしなんて一瞬じゃなかろーか、と思う程に。
そんなこんなで今宵の即売会は終了。いつものように数枚残して売り切れた。
「てゐさん、またこれ残っちゃいました」
文が売れ残った写真をわたしに見せる。やはりいつものだった。
「あーあ、なーんか人気ないんだよねぇ、紫って。なんでだろう……まいっか、いつものことだし。それより売り上げどう?」
「人気ないというか一枚も売れてませんからね〜。あ、売り上げですけど最高記録更新しましたよ!」
「えっ、ホント! どれが一番高値で売れてた?」
「やっぱり抱き枕が結構いい値段でしたね。次点で安定のケモ耳。あ、夏だけじゃなくて四季全部やって欲しいという要望もたくさんありました」
「あ、やっぱり?じゃ今年の冬に一回チャレンジしてみよっか」
「はい、そうですね。でも夏もまだあと数回宴会あるんで」
「んじゃ、抱き枕の種類増やそうか」
「そうですね。てかもう紫さん撮んなくてもいいですよね?どうせ売れないですし」
「あーはいはい、じゃこっちで処分しとくよ。妹紅と姫様の近くに置いとけば一発だと思うし」
かくしてこの夏、残りの宴会でもわたし達は大成功を修めたのでしたとさ。
めでたしめでたしっと。