FGOで学園恋愛ゲーム   作:トマトルテ

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5話:先輩と二人で

 デートです。はい、デートです。もう一度言いましょう、今日はデートなのです!

 先輩がどういった意図で、遊びに行こうと言ったかはわかりませんが、紛れもなくデート。

 脳内裁判でも可決されました。今日は先輩とのデートです。

 今度こそ、先輩を私の虜にして見せます。

 

「ですが、どんな風に過ごせば……」

 

 恋愛雑誌『Marie』を穴が空くほどに見ながら、シミュレーションを行う。

 まず、映画の鑑賞を行います。次にランチ。そして2人でショッピング。

 今現在、明確に決まっているのはこの3つです。

 

「ああ…心臓が口から出てしまいそうです」

 

 しかし、残りはアドリブでこなさなくてはいけません。

 正直に言うと、頭が真っ白になってしまいそうです。

 みこーん知恵袋にも尋ねましたが、流れに任せるしかないとのことでした。

 

「それに先輩はちゃんと来てくれますでしょうか…」

 

 待っている時間が長ければ長いほど、不安が重なっていく。

 もしかしたら、ただの聞き間違いかもしれない。

 私の都合のいい夢かもしれない。そんな弱気な気分になった時でした。

 

『誰が来ないって?』

「ひゃっ!?」

 

 頬に当たる温かな感触。

 驚いて振り返ってみると、缶ココアを手にした先輩が立っていた。

 まるで、いたずらに成功した子どものような笑顔を浮かべながら。

 

「もう、驚かせないでくださいよ、先輩」

『ごめん、ごめん。マシュが寒いかなって思ったからさ』

 

 そう言って、笑いながら缶ココアを渡してくる先輩。

 こういう所は、本当にずるいと思う。

 怒っていても、許してしまうから。

 

『そういえば、何をそんなに熱心に読んでいたの?』

「べ、別に大したものじゃありません! そ、それよりも早く行きましょう」

 

 恋愛雑誌を読んでいたのがバレるのが恥ずかしいので、慌てて鞄に押し込む。

 もうここからは、完全にアドリブで行くしかありません。

 マシュ・キリエライト、ファイトです!

 

『そうだね。あ、それと、その服可愛いよ』

「へ…? あ、ありがとう…ございます」

 

 “可愛いよ”その不意打ちには余りにも強い一撃に、顔が真っ赤になる。

 でも、頑張って服を選んだかいがありました。

 白のニットワンピースにチェックのマフラー。

 そして、厚めの黒のタイツに同系色のブーツです。

 

『マシュによく似合ってると思う』

 

 もっと、攻めた方が良いかとも思いましたが、好評のようなのでよかったです。

 初めてのデートで、色気を出し過ぎるのは良くないというのは本当なのですね。

 ありがとうございます、キャス狐さん。

 

『それじゃあ、少し早いけど映画館に行こうか』

「はい、エスコートをお願いしますね、先輩」

『精一杯務めさせてもらいます』

 

 二人してクスクスと笑いながら歩き出す。

 

「……私は悲しい。友の頼みとはいえ、せっかくの休日にうら若き男女を付け回すなど」

「私だけでは公正な判断ができそうにないのだ。帰りにバーに行くのでそれで許してくれ。もし、そこの麗しいお嬢さん。少し道を尋ねたいのですが」

 

 なんでしょうか、すごくイラッとする声が聞こえた気がします。

 でも、気のせいですね。今は先輩と楽しまないと。

 

 

 

 

 

 ポップコーンとジュースを買い、席に座る。

 映画タイトルは“戦場のサンタクロース”です。

 因みにサブタイトルは“俺が…俺たちがサンタムだ!”らしいです。

 

「先輩、どうしてこの映画を選んだんですか?」

『季節に合ってるし、なんか感動ものって聞いたから』

「どうもネタ方向に行く気がするのですが……」

『つまらなかったら、映画批評家みたいに二人で批評しようか』

 

 そう言って笑う先輩。

 

「そうですね、それはそれで楽しそうです」

『うん。あ、そろそろ始まるみたい』

 

 定番のブザーが鳴り、プロローグが始まる。

 

 

【僕はね…サンタクロースになりたかったんだ】

【なんだよ、なりたかったって諦めたのかよ?】

 

 一人の老人が子どもに語り掛ける。

 少年はむくれたように問いかける。

 まるで、あなたはサンタクロースじゃないのかと言うように。

 

【うん、サンタクロースは子どもを笑顔にしないといけないんだ。でも、僕には無理だった。笑顔にしたい子達を泣かせてしまった】

【なんでだよ。普通プレゼントをもらったら笑うだろ】

【プレゼントはね、相手が心から望むものじゃないとダメなんだ。でも、それに気づいたとき、もうクリスマスは終わっていたんだ】

【そっか、ならしょうがないな】

【うん……本当にしょうがない。こんなこと、クリスマス前に気づけばよかった】

 

 夜空に浮かぶ星を見ながら老人は静かに呟く。

 それは、もう戻らない過去を懐かしむ様に。

 

【しょうがないから、俺が代わりに―――サンタになってやるよ】

 

 少年の声に驚く老人。

 真っすぐな瞳は在りし日の自分を思わせるようで、決して折れないと思わせた。

 

【ああ――安心した】

 

 少年に願いを託し、老人は瞳を閉じる。

 そして、もう二度と開くことはなかった。

 時は流れる。少年は青年へと成長し、クリスマスにプレゼントを配り始めた。

 

【想像するのは常に子どもたちの最高の笑顔だ】

 

 初めは自分の身近な子ども達に配っていた。

 しかし、彼は満足しなかった。自分の目に入る世界の子どもを笑顔にする。

 それは簡単なようで、不可能なことだった。

 

 1人にプレゼントを配れば、視野は広がる。

 まだ配られていない子達のことが気になり始める。

 10人に配れば、次は100人に。100人に配れば1000人に。

 その次は……決してプレゼントを配られることがないであろう子ども達だった。

 

【他の誰もプレゼントを届けたがらない場所に行きたいんだ】

 

 恵まれない子ども達。難民キャンプや紛争地帯。

 プレゼントどころか、クリスマスを祝うことすら難しい地域に彼は渡った。

 青年は大人になった。白く染まった髪と真っ赤な服で戦場を駆け回る。

 その姿から人は彼をこう呼んだ。戦場のサンタクロース―――サンタムと。

 

【無茶な真似はやめなさい! あの激戦区に行ったら殺されるわよ!?】

【激戦区? 生憎、私の目に映っているのはプレゼントを待つ子ども達だけだ】

 

 彼は止まらなかった。危険な場所に自ら飛び込み続けた。

 まるで、聖地への巡礼のごとく。まるで、そうしなければ呼吸ができないかのように。

 近しい者はもちろん止めようとした。でも、彼は聞く耳を持たなかった。

 そして、彼の周りから人は消えた。否、自分から彼らを切り捨てた。

 孤独になっても彼はプレゼントを配り続けた。

 

【この世に本当にサンタクロースをがいるはずがない】

【あいつはおかしい。何か危険な目的を持っているに違いない】

【子ども達を洗脳する気じゃないのか】

【俺はただ……子ども達に笑って欲しかっただけなのにな】

 

 人々は彼を疑った。理解できない行動に恐怖した。

 それでも彼はサンタクロースをやめることはなかった。

 そんなある日、彼のもとに一通の手紙が来た。

 

【“戦争に行ったお父さんが帰ってきますように”か……。これはまた、届けがいのありそうなプレゼントになりそうだな】

 

 戦争に駆り出された父の帰りを待つ子どもの手紙。

 生きているかも、死んでいるかもわからない父親。

 だが、彼には関係なかった。彼は平然と、明日の天気を尋ねるように口にする。

 

 

【別に、この戦争を終わらせてしまっても、構わんのだろう?】

 

 

 

 

 

『サンタムぅぅ…ッ。お前だって報われたっていいじゃないかぁ…!』

 

 昼食をとるために入ったファミレスで、サンタムの最後を思い涙を流す先輩。

 戦争を終わらせ、子どもの父親を流れ弾から庇って倒れたシーンには、私も泣いてしまった。

 

『それなのに「これは…とんでもないプレゼントをもらってしまったな」とか…キザすぎるだろ』

 

 決して弱音を吐かずに、撃たれた後もプレゼントを配り続けた姿はカッコよかったです。

 ……聖夜は今日しかない、という言葉も痺れました。

 

『最後は笑う親子に「メリークリスマス」って言って、眠るように息を引き取るとか反則…!』

 

 誰もが報われてほしいという最後。

 ですが、彼の意志は絶えることなく引き継がれていました。

 私としてはあのエピローグが一番良かったです。

 

『プレゼントを配られた子ども達が、大人になって“戦場のサンタクロース財団”を創り上げて、「俺が…俺たちがサンタムだ!」で終わるのは泣いたよね』

 

 ネタだと思っていた、サブタイトルの伏線回収に号泣してしまったのは記憶に新しい。

 私の後ろの方でも思わず「私は嬉しい」と泣いている人もいましたし。

 

「とにかく、すごく楽しめましたね」

『うん。じゃあ、昼食も食べたし、次は買い物に行こうか』

「はい!」

 

 先輩と一緒に立ち上がる。

 そして、先輩の腕に抱きついて胸を当てる。

 

『マ、マシュ……』

「なんですか? さあ、行きましょう」

 

 明らかに戸惑った表情を浮かべる先輩。

 少しだけ悪いことをしているような気持ちになりますが、今日は離しません。

 先輩は私だけのものです。誰にも……渡さない。

 

「マ、マシュがあんな大胆なことをォオ…!」

「待ちなさい、ランスロット卿。今出ていけば、既に底をつきかけている父親への好感度がマイナス方向に振り切ってしまいます」

「ぐぅぅッ! 私はどうすれば…!」

 

 何やら騒がしいですね。

 誰かは知りませんが、せっかくのデートを邪魔しないで欲しいものです。

 

 

 

 

「先輩、この服はどうですか?」

『うん、可愛いね』

 

 先輩と一緒に服を選ぶ。

 普段はあまり試したりはしませんが、今日は別です。

 ガンガン攻めていきます。

 

「これはどうですか?」

『セクシーだね』

「で、では、これはどうでしょうか?」

『ビーストだね』

 

 段々ときわどい服装に変えていき、先輩の視線をくぎ付けにする。

 顔を真っ赤にしているので大成功です。

 すごく恥ずかしいのを我慢したかいがありました。

 

『今日のマシュは……何というか、大胆だね』

「先輩のせいです」

『俺のせい?』

「はい、先輩のせいです」

 

 一体自分が何をしたのかと、首を捻る先輩。

 先輩にはわからないでしょうね。私がどれだけ先輩のことが好きか。

 鈍感なくせに一途だから、他の女の子に目を向けない。

 ……少しは私の身にもなってほしいです。

 

『そっか、なら謝罪しないとね』

 

 分からないままに頷き、何故か歩き出す先輩。

 慌てて私も横にくっついていく。

 先輩はそのまま何かを探しているように、辺りを見回す。

 

『今度はあそこに行こう』

「えっと、アクセサリーショップ…ですか?」

 

 煌びやかなアクセサリーが並ぶお店。

 中には私のような学生には手が届かないような高価なものもあります。

 先輩はここで何をするのでしょうか。

 

『すいません。以前、お電話をした藤丸です』

 

 何やら、店員さんと話し始める先輩。

 なんでしょうか。先輩はここで何かを注文していたのでしょうか?

 先輩に似合うアクセサリーというと、どんなものでしょう。

 

『はい、ありがとうございます』

 

 小奇麗な包装をされた包みを受け取り、お金を払う先輩。

 しかし、どうにも女の子が好むような包みですね。

 

『マシュ、プレゼント』

「……はい?」

 

 笑顔で差し出される包み。

 後ろを見る。私以外に居ません。

 先輩を見る。私のことを見ています。

 包みを見る。確かに私に差し出されています。

 

「こ、これを……私にですか?」

『いつもマシュにはお世話になっているからさ。そのお礼と謝罪かな』

 

 照れくさそうに頬を搔きながら、先輩はもう一度私の方に差し出す。

 う、嘘じゃないんですね。先輩からのプレゼント。

 

「あ、ありがとうございましゅ」

『ん? どういたしまして』

「す、すみません。噛んでしまいました!」

 

 うぅ…こんな場面で噛むなんて、恥ずかしすぎます。

 

「起きてください、ランスロット卿。まだ、指輪と決まったわけではありませんよ」

「…ハッ! 私としたことが……そうだ、まだ決まるには早い」

 

 恥ずかしすぎて、周りの声も聞こえません。

 そのまま先輩に案内されるままに、休憩用のベンチに座る。

 

「あ、あ、開けてもいいでしょうか?」

『もちろん。俺もマシュが着けてる姿を見てみたいし』

「は、はい。では……」

 

 震えて、思うように動かない指で包装を解く。

 もちろん、綺麗に保存して記念品として残すつもりなので丁寧に折りたたむ。

 そして、最後の箱を開けて中身を取り出す。

 

「四つ葉のクローバーのネックレスですか」

『うん。あんまり派手なのは好きじゃないと思ったから。それに、きっと似合うだろうから』

「……先輩、着けてくれませんか?」

『もちろん』

 

 そう言って、先輩はネックレスをかけてくれる。

 色はシルバーで、モチーフは四つ葉のクローバー。

 確かに私にも似合いそうなものです。

 

『はい、できたよ』

「先輩。私、可愛いですか?」

『うん、凄くかわいいよ』

「……えへへ」

 

 好きな人からプレゼントをもらって、可愛いと言ってもらえる。

 ああ、なんて幸せなんでしょうか。ここで全て終わってもいい。

 そう思えるほどに幸せです。でも、もし……もっと幸せになることができるのなら。

 

「先輩は四つ葉のクローバーの花言葉をご存知ですか?」

『ん? えーと……幸福って言われてるんだっけ?』

「はい、正解です」

 

 一般的に知られている花言葉としては、それが最も有名です。

 ですが、四つ葉のクローバーには他にも花言葉があります。

 

「でも、他にもあるんですよ」

『へー、どんなのがあるの?』

「少し、耳を貸してくれますか、先輩」

 

 特に疑うこともなく耳を向けてくれる。

 私はそんな先輩の頬っぺに唇を近づけていき

 

 ―――キスをする。

 

 

 

「“私のものになって”……ですよ、先輩?」

 

 

 





因みに復讐という花言葉もあります。

「俺のものになってよ」
「え? は、はい、よろしくお願いします」
「ごめん、他に好きな人ができたんだ」
「私はこんなに愛してるのに…ッ。あなたを殺して私も死ぬ!!」

こんな感じらしいです(真顔)
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