FGOで学園恋愛ゲーム   作:トマトルテ
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17話:二人の夜

「ふぅ、食った食った」

『美味しかった?』

「おう、美味かったぜ。ごちそうさん」

『お粗末様でした』

 

 キッチンで皿を洗うぐだ男に答えながら腹を叩く。

 結構な量を食っちまったけど、まあいいだろ。

 あいつも何も言わねーんだし。

 

「そういや、エミヤの奴はどうしたんだ? 今日は居ねぇのかよ」

『エミヤならアルトリア・オルタさんに飯がマズいって言われて、中国に修行しに行ったよ』

 

 なんで中国なのかは知らねぇが、父上に不味いって言われたんなら当然だよな。

 まあ、ただ単に黒い父上は手軽な料理が好きなだけなんだけどな。

 青い父上は雑な料理が嫌いだけどよ。

 

『それはそうと、モードレッドの方はどうしたの?』

「いきなりなんだよ。オレなんか変なことしたか?」

『いや、持ってるバッグが旅行鞄みたいだし。どこかに行く途中かと思って』

 

 食器棚に皿をしまいながら尋ねられる。

 確かに、あのバッグじゃどっかに行くのかって思われるよな。

 

「いや…な。ちょっと父上に課題を出されてよ。それを解決するまで家に帰れねーんだ」

『え? それはまた突然だね。因みにどんな課題なの?』

 

 驚いた顔で尋ねてくるぐだ男にどうしようかと考える。

 まあ、別に言ったらダメだって言われてるわけでもないし。

 第一、こいつはオレの性別を知ってるしな。

 

「王になるには何が必要か考えろってな」

『王様になるのに…?』

「まあ、要は父上がオレに足りないって思ってる部分を理解しろってことだ」

『結構な難題だね』

 

 エプロンを外し椅子に腰かけ考える仕草を見せるぐだ男。

 

「別にお前が考えなくていいぜ。これはオレへの課題なんだからな」

『純粋にモードレッドの夢の手助けがしたいだけだよ。好きでやってるんだ』

 

 いつかの夜に言ったのと同じように、笑顔で告げられる。

 たく……やっぱり、こいつはどうしようもないお人好しだ。

 ま、まあ、そういうところが良いところだと思うけどよ。

 

『? なんか顔が赤いよ?』

「な、何でもねぇよ! 飯食って体温が上がっただけだよ」

『そう、それならいいけど。でも、そうなってくると泊まるとことかどうするの?』

 

 何とかごまかすことに成功するが、今度は別の問題にぶつかる。

 今日寝るところが決まってないのは事実だ。

 さて、どうすっかな……。

 

『良かったら家に泊まってく?』

「へ…?」

 

 今、なに言ったんだこいつ?

 

『泊まる場所決まってないんでしょ?』

「いやいやいや! め、迷惑だろ…?」

『今日は家には他に人もいないし。前にも泊ったことあるでしょ?』

「そ、そりゃ、そうだけどさ」

 

 前は他の奴も居たし、こんな変な気持ちでもなかった。

 オ、オレの覚悟が決まらねぇ…。

 

『まあ、無理強いはしないよ。一先ずお風呂に入ってきたら? ちょうど沸いてるから』

「そ、そうだな。風呂にでも入って考えるわ」

 

 促されて逃げるように風呂場に行く。

 そうだ。風呂にでも入ってゆっくりと考えよう。

 答えを出すのは後でいい。

 

 でも、その時のオレは気づいてなかった。

 風呂まで入ったらお泊りモードになるってことを。

 

 

 

 

 

 湯船に入ると同時にお湯があふれ出す。

 ついでに、浮いていたカタッシュ村の村長も落ちていったので、拾い上げておく。

 

「にしても、何がオレに足りないんだろうな」

 

 浴槽に身を預けて髪を解き、カタッシュ村の村長をいじりながらぼやく。

 剣の腕に関しては型が汚ないが強い。頭だって悪くねぇ。

 なんなら今すぐにでも、父上の代わりに努められる自信がある。

 

 でも、父上はそれじゃないって言うしなぁ。

 一体オレに何を求めてるんだろうな。

 そもそも、王って何をするものなんだ?

 

『モードレッド、タオルはここに置いておくね』

「おう、サンキュー」

 

 扉越しにそんな声が聞こえてきたので礼を言っておく。

 あいつも結構気が利くタイプだよな。

 

『じゃあ、ゆっくりしていってね。俺は布団(・・)を敷いておくから』

「ああ、頼むぜ」

 

 そのまま歩き去っていく音を聞きながら、顔を洗ったところで気づく。

 

「ん…? あいつさっき布団って言ったか?」

 

 軽く思い出してみるが、確かに布団と言っていた。

 オレ……泊まるって言ってないよな?

 

「ま、いいか。ここまで来たら泊ってもいいよな」

 

 考えるのも面倒なのと、もう少しあいつと一緒に居たいという思いから決定する。

 ……それにしても、二人きりか。こんなことって滅多にないよな。

 そ、それにあいつだって男なんだし、もしかしたら。

 

【モードレッド、一緒にお風呂に入ろう】

【バッ! お前男だろ!?】

【君も男なんだから大丈夫だよね。よし、男同士洗い合おうか】

【や、やめろって。そ、そこはぁ…!】

 

 頭の中でそんな展開を想像してしまい、顔面をお湯に叩きつける。

 何考えてんだよ! 冷静になれ、冷静になれ、モードレッド。

 裸で洗いっことか、あんなところやこんなところに手が伸びてくるとか。

 変なことを考えてる場合じゃねぇだろう!

 

【顔が赤いよ、モードレッド】

【の、のぼせただけだよ。勘違いすんじゃねぇよ】

【じゃあ、下も洗っていくね】

【よ、よせって……あっ】

 

 相手の許可を得ることなく伸びてくる不埒な手。

 いやらしい手の動きで、情けなく喘ぎ声をあげるオレ。

 そんな妄想を考える自分が恥ずかしくなり、顔を半分まで湯船につけブクブクと泡を吐く。

 考えるな、考えるな、考えるな。あいつのことなんて。

 

『あ、モードレッド? 言い忘れてたけど―――』

「にゃぁあああッ!?」

『えっ! なに!?』

 

 悪すぎるタイミングで、声をかけられたせいで叫んじまう。

 向こう側であいつがビクッと驚いている気配がするけど関係ねえ。

 全部あいつが悪い。

 

『何かあったの、モードレッド!?』

 

 だというのに、オレに何かあったかのかと心配をして扉を開けるあいつ。

 て、ふざけんな!

 

「入ってくんじゃねえよ、この変態が!」

『アヒル村長ッ!?』

 

 あいつの目がオレを捉える前に、カタッシュ村の村長を顔面にぶつける。

 目から星を出してるけど、オレは悪くねえ。

 そのままの勢いで扉を閉めて罵倒を叩きつける。

 

「勝手に人の裸を見ようとすんじゃねえよ、バカが! こ、心の準備ができねえだろ!」

『でも、モードレッドが急に叫ぶから……』

「うるせぇ! 変なこと想像させやがって! 全部お前のせいだ!!」

『えぇ……』

 

 扉の向こう側で訳が分からずに白い眼をしているのが分かる。

 でも関係ねえ。覗こうとした奴が100%悪だ。

 

『とにかく、赤い歯ブラシがあるからそれ使ってって、さっき言い忘れただけだから』

「なんだよ。そんなこと後でもいいだろ」

『普通はこんな状況になるなんて思わないよ……もう上がるまで来ないから安心して』

 

 最後に溜息を吐くように、言い残していくぐだ男。

 そのことにホッと胸を撫で下ろすのと同時に、少しだけ残念な気持ちになる。

 

「て、オレはまた何を期待してんだよ…! ちっ、さっさと洗って上がるか」

 

 顔をしかめてボヤキながら、体を洗い始めるのだった。

 無意識のうちに、いつもよりも細かく、丁寧に(・・・)

 

 

 

 

 

 風呂から上がり、いつものように髪をまとめて一息つく。

 ふとテーブルを見ると、瓶のコーラが置いてあったので拝借する。

 

「ぷはっ! 風呂上がりに用意しておくなんて気が利くじゃねえか」

 

 自分で飲むつもりなら冷蔵庫に入れておくだろうから、これはオレ用のはずだ。

 そう、自己正当化を図りながらソファーに寝そべる。

 あいつは今風呂に入っているので、部屋にはオレ一人だけだ。

 

「………暇だな」

 

 テレビでも見ようかとリモコンに手を伸ばすが、途中でやめる。

 特に見たい番組もないし、何だか気が引けた。

 といっても、暇なのは事実なのであいつの部屋に向かうことにする。

 

「漫画でも読むか。J〇J〇の6部が読みかけだったよな」

 

 乱雑に扉を開けてあいつの部屋に侵入する。

 そして、本棚から数冊ほどひっつかみ近くにあったベッドに寝転がる。

 ギシリ、と軋む音が静かな部屋に響く。

 何故かその音が嫌に気になってしまうが、気のせいだと首を振って枕を引きよせる。

 

「……あいつの匂いがする」

 

 どこか温かな太陽を思わせるあいつの匂いに、気が緩み枕に顔を埋める。

 が、すぐに自分が何をしているのかに気づき、飛び上がる。

 

「な、なななな、何やってんだよ、オレ…?」

 

 余りにも恥ずかしい行動を取った自分が信じられねえ。

 オレはこんなことをする柄じゃねえだろ。

 そもそも、人の匂いを嗅ぐとか引くとか、そういうレベルじゃない。

 ただの変態だ。

 

「そもそも、なんでオレは他人のベッドの上で寝転がったんだよ」

 

 そこまで遠慮のない性格してたか、オレ?

 いや、してるかもしれねーけどさ。わざわざ熱い部屋で寛ぐ必要はなかったろ。

 でも、あいつのベッドに無意識に寝転がった。

 それは……あいつの存在をもっと感じたかったからじゃないのか?

 

「そ、そんなわけねーよなぁ」

 

 自分でその考えを否定しながらも、もう一度ベッドにうつぶせになる。

 暑いはずなのに、全然嫌悪感がない。なんというか、今は温かく感じられる。

 全身が包み込まれるみたいで、あいつに抱きしめられているみたいな感じだ。

 

「て、違う! 違う! あいつのことなんて―――」

『俺のことなんて?』

「ぎにゃぁああッ!?」

 

 またも最悪のタイミングで現れたあいつに枕を全力投球する。

 正直、枕じゃなかったら首が吹き飛ぶ程度の威力で投げたがあいつはケロリとしたままだ。

 なんで、アヒルのおもちゃは効くのに枕は効かないんだよ。

 

『何とも思ってないって言おうとした?』

 

 風呂上がりのせいか、頬の赤いあいつがゆっくりと迫ってくる。

 ギシギシとベッドが音を上げ、二人分の体重を乗せたことを伝える。

 

「お、おい。何で近づいてくるんだよ…?」

『俺のベッドに俺が寝るのはおかしいかな?』

「そ、そういう意味じゃなくて」

 

 怯える様に声を震わせるオレを無視してあいつは近づく。

 そして、何も抵抗を見せないことを確認して、上からオレの顔を覗き込む。

 

『ちゃんと別の部屋に布団は引いてあるけど、今日はここで寝る?』

「ここって……お、お前のベッドじゃねえか」

『……モードレッド』

 

 立香(・・)がさらに身を乗り出して、ほとんどオレを押し倒す形になる。

 抵抗しようと思えば抵抗できる。でも、体は動こうとはしない。

 そんな訳の分からない感覚に戸惑うオレに、立香はゆっくりと手を伸ばす。

 

 ばくんと心臓が跳ねる。

 ただ頬を撫でられただけなのに、全身に甘い刺激が走る。

 

 

『俺だって男なんだよ?』

 

 

 そう告げるあいつの瞳は、獣のような獰猛さを湛えていた。

 

『今すぐにでも襲ってしまいたい』

 

 顔が近づく。熱い吐息がオレの頬を撫で、毛を逆立たせる。

 本気だ。立香はマジでオレのことを襲いたがっているんだ。

 

「それは……」

 

 怖い。だというのに嫌悪感はない。

 それはあいつの心に下種なものがないからだろう。

 純粋にオレという存在を欲している。

 もう隠しようがない。止めようがない。藤丸立香は。

 

『好きだ……モードレッド』

 

 オレのことが異性として好きなんだ。

 こんな、女らしさの欠片もないようなオレのことが。

 馬鹿みたいに好きなんだ。恋焦がれるような目を見りゃ嫌でも分かる。

 

『君が欲しい』

「ほ、欲しいって……どういう意味だ?」

『言わせたい?』

 

 不服そうに、ご馳走を前に我慢させられている獣のような瞳で答える。

 分かってる。ここまで来て分からない程鈍いわけじゃない。

 抱きたいんだ。こいつはオレの全てを欲しがっている。

 そして、その事実に心はどうしようもなく騒めいているんだ。

 

『君はオレのことをどう思ってるの?』

「……嫌いって言ったらどうする?」

 

 もどかし気に内股を擦りながら尋ねてみる。

 無理にでもオレのことをものにしようとするか、と。

 

『何もしないよ。今すぐ君の傍から消えるよ』

「無理矢理はしないのか? オレのことが好きなら力づくでもするんじゃないのか?」

『本気で好きだから。君が傷つくことはしたくない』

 

 そう真剣な顔で告げ、オレが動けるように退く立香。

 その行動に本気で想ってくれていることが伝わり、キュンと胸が締め付けられる。

 

『嫌いなら、お前のことは何とも思っていないと言ってもいい。でも、君の言葉で聞きたい』

「ず、ずりぃぞ……オレに言わせるなよ」

 

 今日一番の真剣な表情を見せる立香に顔を背ける。

 でも、いつまでもこうしているわけにはいかない。

 答えないとな。ずっとごまかし続けるわけにもいかねえ。

 こいつを。そしてオレ自身を。

 

「……だ」

『良く聞こえないんだけど?』

 

 くそ! こいつのこういうところはムカつくぜ。

 何度も言わせるなよ。オレを恥ずかしさで殺す気かよ。

 

 

「オレもその……好き…だよ」

 

 

 全身の血が沸騰してしまったのではないかと思うほど体が熱い。全身が真っ赤になる。

 まともにあいつの顔が見れない。それでも、返事をした以上は反応を見なければならない。

 覚悟を決めてあいつの前に向きなおる。その瞬間。

 

 ―――唇を奪い去られた。

 

 貪るように、それでいてこちらを気遣うような優しさも見せる口づけ。

 突然の出来事に頭がバカになり、呆然と相手を見つめことしかできない。

 

『よかった。俺も君のことが大好きだ、愛してる』

 

 そして、再び激しい口づけをしてくる。

 そこでようやく意識を取り戻し、思いっきりこの変態の頭をぶん殴る。

 

「い、いきなりキスしてくんな! こっちにも準備ってもんがあるんだよ!!」

『いたた…。ごめん、我慢できなかったから』

「そういうのはもっと…こう…順序ってもんが……て、なに抱きしめてんだよ」

『順序って言ったから』

「あのなぁ…」

 

 とぼけた顔で返事をする立香に溜息を吐く。

 こいつと一緒に居て男のフリを続けられるのか。

 父上からの課題をどうやってクリアするのか。

 色々と問題はある。でも、今この時間ぐらいは。

 

「たく、しょうがねぇな……」

 

 安心してこいつに全てを委ねてもいいだろ。

 

「じゃあ、もうちょっとだけ……ギュッてしてもいいぜ」

 

 オレの心をあいつに奉げるように、体を立香の胸板に預ける。

 

『その先はどうかな…?』

「……ばーか」

 

 初めての二人だけの夜は温かくて暑いものだった。

 





注:この小説は全年齢版です。二人のこの後はご想像にお任せします。
さて、ここからラストスパートです。



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