FGOで学園恋愛ゲーム   作:トマトルテ

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五話:準備

 

 あれから勉強会も回数を重ねて確かな自信を身につけたぐだ男。

 テスト本番も落ち着いて取り組むことができ、手応えはあった。

 そのため最後の授業を終えたぐだ男は晴れ晴れとした気分で靴箱にいるのである。

 

「先輩!」

『マシュ、奇遇だね』

「はい。いつもは中々時間が合いませんので」

 

 まるで飼い主を見つけた犬のように駆け寄ってくるマシュ。

 そんな姿に癒されながら手にしていた上靴を靴箱に入れる。

 

『マシュはテストどうだった?』

「私はいつも通りです。先輩の方は?」

『勉強会を開いたおかげで良く解けた気がする』

 

 何気なく答えると何故か頬を膨らませるマシュ。

 

「……私も先輩と一緒に勉強がしたかったです」

『ごめん。でも、マシュとは学年が違うから習っているところが違うし』

「はい。それは分かっているんですが……」

 

 筋の通った理由は理解しているものの心が納得しない。

 そんな行き場のない感情に振り回されマシュは頬を膨らませ続ける。

 ぐだ男は彼女の姿に少し迷った後に指を突き出し。

 

『えい』

「ぷひゅ…! せ、先輩!?」

 

 マシュの膨らんだ頬を押し込む。可愛らしい音と共に萎むマシュの頬。

 そのことに顔を赤らめて驚く後輩をさらに撫でる。

 

『元気出た?』

「は、はい。あ、ありがとうございます」

 

 未だに顔は赤いままであるが素直にお礼を言うマシュ。

 どこからどう見てもいちゃついているカップルであるが事実は違う。

 ぐだ男にとっては特別な後輩であり、マシュにとっても特別な先輩である。

 ほんの少し背中を押してやるだけで二人は恋仲になるだろうが今の二人にその自覚はない。

 

「よお、坊主に嬢ちゃん。相変わらず仲が良いじゃねえか」

「クー・フーリンさん」

 

 そんな二人に気後れすることもなく声をかけてくるのは三年生のクー・フーリンである。

 まるで獣のような威圧感を持ちながらも頼りがいのある雰囲気を漂わせる。

 一部の後輩からは兄貴と呼ばれて慕われている人物である。

 

「御子殿、お待ちくだされ。荷物は私がお持ちします」

「あ? このぐらい自分(てめー)で運ぶから気を使うなって」

「そうは申されても……。おっと、これはぐだ男殿にマシュ殿、お疲れ様です」

 

 続いてクー・フーリンの後ろから現れたのは一年のディルムッド・オディナ。

 まさに絵に描いたようなイケメンで女子生徒のみならず近所のマダムにすら人気である。

 しかし、本人としてはモテることに興味はなく武術の鍛錬に精を出す毎日である。

 

『二人は今から部活?』

「まあな。やっとテストから解放されたのによ。師匠も偶には休ませろってんだよ」

 

 ブツブツと愚痴を言いながら手にした槍を弄ぶクー・フーリン。

 二人は槍術部に所属しており毎日顧問のスカサハにしごかれている。

 しかしながらそのかいもあり、大会では常に圧倒的な成績を残している。

 

 光の御子クー・フーリン。黄金の騎士フィン・マックール。

 輝く顔のディルムッド・オディナ。

 この三人が揃っている現在はまさに黄金期と言っても差し支えない状態なのだ。

 

 

「だいたいよー。師匠も毎日出張ってたらキツイだろ。いい加減、歳考えろってんだよ」

 

 

 ケラケラと快活な笑いを見せながら冗談を飛ばすクー・フーリン。

 しかしながら、その冗談は自身に対する死刑宣告と同義であった。

 

「ゲイボルク!」

「おごッ!?」

「御子殿!?」

 

 クー・フーリンの眉間にチョークが突き刺さり粉々に砕け散る。

 そのあまりの破壊力に地面に倒れ伏すクー・フーリンに慌てるディルムッド。

 騒然となる場に鬼神のごときオーラを漂わせながらチョークを投げた人物が現れる。

 

「まったく、言うことにことかいてこのバカ弟子は。目の前にいる女性はどう見ても若くてピチピチであろう?」

「いや、ピチピチとかいう言葉の時点で―――ぬおっ!?」

「お止めください、スカサハ殿! 御子殿が死んでしまいます!」

 

 なおも減らず口を叩くクー・フーリンに止めのチョークをお見舞いするスカサハ。

 威風堂々、王者の気風を漂わせた、赤い瞳が特徴的な美しい人物である。

 しかしながら、彼女の前でその年齢を弄ることは自殺行為に等しい。

 

「お前の目が狂っているだけだ。ぐだ男、お前の目から見て私は何歳に見える?」

『ピチピチの十代。まだ若いし、生徒でもいけるし』

「先輩の瞳が心なしかどこか遠くを見つめている気がします……」

 

 絶体絶命のピンチに咄嗟に返すがぐだ男の声には真剣さが欠片もない。

 しかしながら、取りあえずは若いと言われて納得したのか矛を収めるスカサハ。

 だが、クー・フーリンは懲りない男であった。

 

 

「まだいけるわけねーだろ、歳考えろ」

 

 

 空気が凍り付く。ぐだ男は悟る。クー・フーリンはこれから死ぬのだと。

 

「んーそうか、そうかんー、死ぬか。ここで死ぬな?」

 

 言葉だけ見れば若干のジョークが含まれているように見える。

 しかし、実際のところは地の底より響いてくるようなおどろおどろしい空気を纏わせていた。

 

「さて、今日のしごきはいつもの100倍にしてやろう」

「いや、いつも死にかけるのに100倍とか普通に死ぬだろ!」

『兄貴……骨は拾うから安心して逝ってきて』

「安心できる要素一つもねえじゃねーか!」

 

 スカサハに首根っこを掴まれ連れ去られる姿は悲しさを漂わせる。

 だが、現実は非情である。誰も何もすることができない。

 ただただ、彼を見送ることしかできない。

 

「クー・フーリンさん大丈夫でしょうか……」

『兄貴は死んだ! もういない!』

「まだ死んでねえよ!」

 

 廊下の向こう側からクー・フーリンが叫び返してくるがぐだ男の耳には入らない。

 ただ、兄貴の想いを背負い、胸に抱き、真っすぐに歩みを進めていくのだった。

 

「先輩、何事もなかったように下校しないでください」

 

 マシュに困ったような顔でツッコまれるが結局二人して帰ることにする。

 よその部活の事情に首を突っ込むのはお門違いというものだろう。

 昇降口を出てマシュと共に歩いていると見知った姿が見えてくる。

 

『何してるの? 天草』

「おや、ぐだ男君にマシュさんですか」

 

 何やら重たそうな段ボールを良い汗をかきながら運ぶ天草と遭遇する。

 

「見ての通り資材の運搬の最中ですよ」

『もう少し具体的に』

「それもそうですか。はい、これは毎年恒例の肝試しに使うセットの一部ですよ」

『ああ、あれか』

 

 納得がいって頷くぐだ男。

 そんな二人の様子にまだ一年のマシュは何のことかわからずに首を傾げる。

 

「あの、それは一体?」

『そっか、マシュは初めてだもんね』

「その名の通り肝試しですよ。毎年夏休み前に生徒が企画する行事です」

 

 先輩である二人がマシュに説明していく。

 マシュの方も興味津々なのかコクコクと相槌を打つ。

 

『設定されたポイントをスタンプラリーみたいに回りながら肝試しするんだ』

「二人一組のペアで様々な教室を回ってゴールの体育館を目指すゲームです」

『あれ、今年は墓地でやらないの?』

 

 天草の口から出た去年との変更点に驚き尋ねるぐだ男。

 すると、天草は若干渋い顔をする。

 

「ええ、去年私とジャンヌが除霊をし過ぎたせいか出が悪くなってしまって……」

「本物がいたんですか!? というか除霊しながら回ったんですか!?」

 

 衝撃の告白に思わず声を張り上げるマシュ。

 一方のぐだ男はそういえばそんなこともあったなと懐かしそうな顔をする。

 

「去年は私とジャンヌがペアになりまして。恥ずかしいことにどうした意図で行われているのか理解せずについ……」

『良かれと思って除霊したの?』

「はい。仏教徒かキリスト教徒かは分かりませんが少なくとも成仏はできたはずです」

 

 良い笑顔で微笑む天草にマシュは何と言うべきかわからないと言った表情をする。

 ぐだ男の方は彼の性格は分かっているので特に驚きはしない。

 

『それじゃあ今年はどうするの?』

「二年生や三年生、近所の人達から有志を募って驚かす役になってもらいます。因みに私もどういった内容かは知りません」

『つまり変わった肝試しなのか』

「あの……本物が出るのは普通なのでしょうか?」

 

 マシュからのツッコミが入るがぐだ男は笑って流す。

 こんなことで動じるようでは天草の友人は務まらないのだ。

 

『そう言えば去年といえば、夏休み明けから一気に焼けたよね、天草』

「それ日焼けだったんですか!?」

 

 ずっと天草の肌の色は地肌だと思っていたマシュが目を見開く。

 そんな姿に天草は苦笑しつつ理由を語る。

 

「まあ、理由の一つですが…。実は去年の夏休みにある用事があってセミラミスという女性を訪ねたのですが、その時に中東でしか取れない資材を集めて来いと言われまして」

「学生に対してなんという無茶ぶり……」

『それで本当に集めたんだよね?』

「ええ」

 

 まるで近所のスーパーへお使いしに行ったかのような軽さで頷く天草。

 

「もっとも、彼女の方は断るつもりで言ったらしいので酷く驚いていましたがね」

『かぐや姫の無茶ぶりに答えたようなものだからね』

 

 うんうん、と頷くぐだ男に目を丸くするマシュ。

 一方の天草は恥ずかしそうに頭を掻きながら話を続ける。

 

「本当に大変な作業でしたが、全人類を救済するのに比べれば大したことはありませんよ」

『天草、なんだかラスボスっぽい』

「よく言われます」

 

 聖者のような笑顔で笑いながらどこか黒さを感じさせる天草。

 だが、それを感じてもぐだ男は無条件に彼を信頼し共に笑う。

 そんなところへもう一人の知人が現れる。

 

「天草君どうしたんですか? そんなところで立ち止まって」

『あ、ジャンヌ』

「ああ、ぐだ男さんとマシュさんと話していたんですか」

 

 よいしょ、と荷物を下ろしてから汗を拭くジャンヌ。

 その仕草がやけに色っぽく見え、ぐだ男は思わず目を伏せる。

 

「マシュさんに肝試しの説明をしていたのですよ」

「なるほど。これが終わったら広報のプリントも作らないといけませんね」

『大変そうだね、二人とも。手伝おうか?』

「いえ、それが私達の仕事ですので大丈夫ですよ」

 

 ぐだ男の気遣いに対して二人は微笑んで断る。

 それは自分達がやるべきことを誰かに頼ってばかりだと成長しないという考えからである。

 

「後はペア決めのくじの準備もいりますね」

「確か去年の分が残っていたのでそれを再利用しましょう」

「そうですね。では、私達はまだやらないといけないことがあるのでこれで」

『うん、引き留めてごめんね。それじゃあ頑張って』

 

 二人と別れマシュと共に家路につく。

 その中でも二人の話題は先程聞いた肝試しのことであった。

 

「先輩、ペアは学年別なんですか?」

『うん。全学年一緒にすると大変だからね』

「そう…ですか…」

 

 残念そうな顔でつぶやくマシュにぐだ男は首を傾げる。

 しかし、すぐにいつもの表情に戻ったので気のせいかと割り切る。

 

「ところで先輩は去年は誰とペアになったんですか?」

『去年はジークフリート。大変だった』

「大変…? 何があったんですか?」

 

 どこか疲れたように語るぐだ男にマシュが尋ねる。

 

 

『いや、ジークフリートの背中にめっちゃバルムンク飛んできて』

 

「それ本当に肝試しなんですか!?」

 

 

 肝試しとは如何なる手を使ってでも相手を恐怖のどん底に落とす催しなのである。

 

 





マシュ√はジャンヌ二人の√が終わったら解放されます(真顔)
さて、次回はどっちとペアになるか。
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