転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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あぁ、休みが終わってしまう……これを投稿したら次はいつ投稿できるかわかりません。
今回の話は、主人公が卍解を会得するにあたって被害を受けた話です。
楽しんでくれたら幸いです!


第十四話 尸魂界壊滅の危機

 真に厄介な案件である。

 瀞霊廷どころか、尸魂界全土に広がりゆく雷雲を睨みつける。

 事の発端は3日前である。

 

 突如として、流魂街の方から徐々に天気が悪くなってきたのだ。

 死後の瀞霊廷と言えども、天気も存在するし、四季も存在しておる。

 故にいつものように、天気が崩れただけだと判断しておった。

 

 だが、それも2日目、3日目となると考えが変わった。

 雷雲は徐々に雲を厚くし、遂に瀞霊廷は昼だというのに真夜中と変わらない闇に包まれておる。

 雷鳴が響き渡り、風雨が激しく、強烈な嵐が起こっているのだ。

 そして、その雷雲は徐々に範囲を広げ、今では流魂街全域に及ぶ。

 発生したのは恐らく西流魂街、それが今では正反対の東流魂街まで闇に覆われている。

 

 既に一部の地域では強烈な豪雨による洪水や土砂崩れが起きている。

 一刻も早い対応が必要だった。

 

 故に、緊急対策会議を発令した。

 護廷十三隊の隊長格全てを招集し、今回の対策を検討する。

 隊長格全員が集まったところで、ワシは言葉を投げた。

「全員そろったようじゃな。これよりこの災害への緊急会議を行う。各々意見を述べよ」

「そうはいっても山爺、自然災害相手じゃどうしようもないんじゃない?」

「京楽、だからと言って何もしない訳にはいかないだろう。流魂街出身の死神達も、他の者の安否を案じている」

 春水がため息交じりに外を見て言うが、十四郎の言う通り何もしない訳にはいかんのだ。

 

「四番隊の隊員では移動する事も大変な強風ですね……」

「だが、僕達は動くことができる。それならできることはするべきだ」

「藍染隊長の言う通りです。行動は速やかに行わなければならない」

「私もできることは早急にしたい。この身でも役に立つことはあるだろう」

 卯ノ花隊長、藍染隊長、東仙隊長、狛村隊長のやり取りを聞く。

 確かに四番隊は荒事に慣れておらん。

 自然災害とは言え、やはりもう少し鍛えるべきか……医療部隊でも、迅速に行動できるように歩法を徹底させるか。

 

「剡月を使えば雲を燃やせるかな?」

「……兄は一体何を考えているのだ……」

「いや、空まで登って剡月使えば雲消せないかなーって」

「その前に雷に当たって落ちるのが目に見えてるヨ」

「十番隊の隊長さんは考えることが豪快やなぁ」

「どうでもいいからさっさと終われ」

 志波隊長、朽木隊長、涅隊長、市丸隊長、更木隊長の言葉に、しわが寄る。

 ……わしの卍解を使えば、雲も晴れるのではないだろうか……?

 世界を滅ぼしてしまう力も、今なら問題ないのではないだろうか……?

 いや、卍解は二度と使うまいと決めたのだ。

 ……いや、しかし。

 そんなことを考えていると、涅隊長の一言が耳に入ってきた。

「それにそんなことをしても無駄ダヨ。あの雲は『天相従臨』によって呼ばれた雲だからネ」

 

「何?」

「馬鹿な!? この尸魂界全土を覆うほどの天候操作を可能にする斬魄刀などあるはずがない!!」

 ワシと砕蜂隊長の言葉に、涅は失笑する。

「本当に微かだが、技術部の機械に霊圧の反応があったヨ。本当に微弱で感覚では理解できないほどだが、この雲全てに同じ霊圧が混じっていル」

「まさか、そんなことが可能なのかい……?」

「さてネ、私も流石に目を疑ったヨ。是非とも捕らえて調べて見たいものダヨ」

 涅隊長の言葉に一瞬だけワシを見た春水に、目を細めながら考える。

 この斬魄刀の主は、どのような人物か?

 ワシの様に卍解が世界を滅ぼしうるならば、最悪その主を殺さねばならぬ。

 

「涅隊長、大本は把握できたか?」

「西流魂街が一番霊圧の密度が濃い。恐らくそこだと思うヨ」

「西流魂街だと?」

 ワシの問いかけに答えた涅隊長の言葉に、朽木隊長が食いついた。

 

「朽木隊長、何かを知っているのか?」

「…………少し、卍解に至る可能性の高い人物に心当たりがある」

「へぇ? 六番隊の隊員なのかい?」

「……流魂街の住人だ」

 春水の言葉に、朽木隊長は眉間にしわを寄せながら言った言葉に、ワシだけでなく隊長格全員が目を見開いた。

「流魂街の住人が、卍解に至ったというのか? というか、その心当たりのある人物は斬魄刀を持っているのか?」

「……持っていなければ、言わないだろう」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! その人物は斬魄刀の名前を聞けただけじゃなく、卍解に至るほどの霊力もあるってことか?」

「そうだ」

「……なんや、すごい出鱈目な人やな」

「して、朽木隊長。その人物は危険な人物か否か?」

「否。兄上はそのような方ではない」

 ワシの言葉に即答してきおった。

 少なくとも、瀞霊廷の敵になる人物ではないようだ。

 

「……あれ? 今『兄上』って言わなかった?」

「私の妻の兄だ。兄上で間違いないだろう」

「あ、うん、そうだね……あれ?」

 志波隊長が何やら気になることがあったようだが、それは今気にしている場合ではない。

 

「ならば、この天気は朽木家の縁者が起こしている可能性がある」

「……私が確認に行く」

「なら僕も一緒に行こう。万が一違った場合、戦力があった方が良いだろう」

「なら俺も行こうかな。朽木隊長の兄上って興味あるし」

「ボクも行ってええやろか?」

「あらあら……私も、行ってみたいですね」

「強そうな奴なら、俺も行くぜ。殺し合いをしてみてぇ」

 藍染隊長は良いが……残りの十、三、四、十一の隊長は完全に遊び感覚である。

 

 特に卯ノ花隊長……更木の剣気に紛れておるが、ワシには感じ取れておるぞ。

 ジロリと視線を動かすと、卯ノ花隊長はフイッと視線を外した。

 全く……。

「喝!!」

 霊圧を込めて一喝すると、全員が再び口を閉じた。

「今回の主には、ワシと藍染隊長、朽木隊長の三名で接触する。各々はいつでも動けるように行動せよ」

「「「「はっ!!」」」」

 ……声が少ない……相変わらず協調性のない奴らじゃ。

 

「朽木隊長、これから直ぐに向かう。案内せよ」

「……わかりました」

 朽木隊長について西流魂街へと向かう。

 道中は凄まじい風と雨だ。

 そうして、戌吊へと辿り着いたのだが……。

 

「これは……雨と風の結界か」

 非常に分かり難いが、戌吊の里から山へと続く道全域に結界が張られている。

 藍染隊長が転がっていた石を投げ込むと、雨で穴だらけにされ、風に切り刻まれた。

 その様に、思わず唸る。

「ぬぅ……中々やりおるわ」

「これは最初からあったのかい?」

「いいや、こんなものはなかった」

 

 これは斬魄刀が起点となっているのであろう。

 空を見上げても、雲の中から結界が張られているのであろう。

 そして、見上げた雷雲には常に走る稲妻の姿が確認できる。

 なんとも強力な斬魄刀だ。

 そして、その持ち主も尋常ではない霊力の持ち主だと理解できる。

 四日間。

 常時それほどの期間、この規模の雷雲を尸魂界全土に広げて続けて、なお尽きることのない霊力。

 軽く見積もっても、隊長格を超えている。

 零番隊ならわからぬが……。

 

「やってみるか」

「総隊長?」

 藍染隊長の言葉に答えず、杖から斬魄刀を解放する。

「万象一切灰燼と為せ、流刃若火」

 解放された斬魄刀から灼熱の炎が上がる。

 それと同時に、結界が反応した。

「ぬぅ!?」「総隊長!!」

「……私には出来ぬな、流石兄上、やはり規格外だ」

 何故か朽木隊長だけを除き、大粒の雨が針の様に、風が刃の様に襲ってきた。

 

 流刃若火の火力を上げ、水を蒸発させるが……。

「ぐっ、追いつかぬ!!」

「くっ!! これは流石に……縛道の八十一 断空!!」

 藍染隊長が頭上に断空を張るが、今度は断空を避け、四方八方から水の針が迫ってくる。

「くぅ!! 断空も破られた!?」

 見上げれば、風の刃に切り刻まれ、消えていく霊子が見えた。

 その時に見上げた空は未だに雷雲に阻まれている。

 つまり、ワシの斬魄刀の炎が天に届いていないことを意味する。

「炎熱系最強と呼ばれた、流刃若火を持ってしても消しきれぬか!!」

 

 本来であれば、ワシが始解した時点で雲を消し、自身の周りを火で包み込む。

 だが、この雨にはワシの炎と同等の霊圧が混じり込んでいる。

 これが、ワシの炎でも簡単に消えない原因か!!

「ならば……松明」

 流刃若火に霊圧を込め、振るうことでより強い炎を生み出す。

 瞬間雨の針は周囲に近寄れなくなる……が。

「なんとも厄介な斬魄刀じゃのう!!」

 水が駄目なら風。

 風によって生み出された真空の刃が、炎をものともせずに攻撃してくる。

 真空の刃に込められた霊圧を頼りに、なんとか避けていく。

 

「というか、朽木隊長!! 見ていないでこれをどうにかしてくれませんか!?」

「……どうしろというのだ……」

 瞬歩を駆使して避け続けている藍染隊長も傷ができているが……ただ見ているだけの朽木隊長に苛立つのはワシだけではなかったようだ。

 と言っても、事実このままではどうすることもできん。

 ワシの斬魄刀は……もう使っても良い気がするが、襲われていない朽木隊長に頼るしかなさそうだ。

 

「……そうか……縛道の七十三 倒山晶」

 朽木隊長の縛道で生み出された結界が張られた瞬間、ワシと藍染隊長は途端に狙われなくなった。

「……なるほど、どうやら朽木隊長の縁者というのは間違いないみたいですね」

 小さくため息をつきつつ、これ以上脅威に曝されることのなくなった藍染隊長は疲れたように肩を落とした。

「侵入しようとした者を判別し、害をなす存在を排除する結界か……とんでもない代物じゃのう」

 朽木隊長の結界の外では旋回するように水の槍が飛び回っている。

 ……これは結界が解けた瞬間に再びワシらを狙いに来るじゃろう。

 

「ですが、これはもしかすると斬魄刀の暴走では?」

「……卍解の試練では……」

「……朽木隊長、結界の中に入れるかの?」

 ワシの問いに朽木隊長は首を振った。

「入ろうとしましたが、風の結界に弾かれました」

「……弾かれるだけで済んだんだね……」

 ともすれば、大人しくここで待つしかないか。

 

 そう判断を下した瞬間、この雷鳴に負けないほどの轟音がした。

「む?」「え?」「これは……」

 轟音がしてから直ぐに、結界の周りを回っていた水の槍が形を崩して地面へと落ちた。

「……ふむ、朽木隊長、結界を解除せよ」

「はい」

 キンッという音と共に、結界が霧散する。

 だが、雨や風がワシらを襲うことはない。

「どうやら結界が解けたようですね」

 藍染隊長が、結界のあった場所に石を投げるが何も起こることはなく、地面へと落ちた。

 

 そして、凄まじい霊圧が巻き起こった。

「!!」

「これは凄まじい霊圧じゃのう」

「…………」

 額を抑えている朽木隊長を見やる。

「朽木隊長の縁者で相違ないか?」

「はい、この霊圧は間違いなく兄上の霊圧です」

「……まさか、本当に個人で起こした騒ぎだったなんて……」

 既に豪雨だった雨は小雨に代わり、空を見上げれば雲が一部薄くなっている。

 

 卍解修行……まさか、本当だったとは……。

 先程感じた霊圧も、卍解を行ったものだろう。

「会いに行くとしよう。件の人物にの」

 

 

「……なんともまぁ、これは酷いね」

 藍染隊長の言葉に頷く。

 戦闘が行われていたであろう場所は、多くの木々が倒れ、火が起こり、大地は抉れ、巨大な穴ができている。

 件の人物はその穴の中心で、赤色の槍を握っていた。

 今は霊圧が落ち着いている為、恐らくあの槍が始解状態なのだろう。

 

 人物を観察する。

 髪は青、短髪で前髪が少し垂れておる……後ろに少しだけ長い髪が見える。

 肉体は……凄まじいな。

 着ていた着物はボロボロになったのだろう、上半身は完全にむき出しになっている。

 そして遠目にもわかる、鍛え抜かれた筋肉、だが決して邪魔をすることのないしなやかな実践的な筋肉の付き方だ。

 それに高い身長……まさしく『偉丈夫』と言ったところか。

 

 才能豊か……というよりも底が知れん。

 このような者は初めてじゃ。

 烈や更木隊長に会わせたらどうなるか……。

 烈は剣気を少し出しておった……久方ぶりに血が騒いだのだろう。

 

 今回は相性が悪かったが、彼の斬魄刀はもしかすると史上最強の斬魄刀に成り得る。

 彼をこのままにしておくわけにはいかんな。

 

 

「護廷十三隊の隊長格が何の用だろうか?」

 ほぅ、見事な歩法じゃ。

 あの距離から一瞬でここまで接近し、尚且つ実に滑らかじゃ。

 あの夜一に勝るとも劣らぬ練度と言ったところか。

 

「ワシらが隊長とわかるのならば、話は早い……が、まずは空の雲をどうにかしてもらおうかの?」

「む、わかった。今すぐ払おう」

 彼がそういうと、雷雲が凄まじい速度で消えていく。

 ……恐らく天候操作も思うがままなのだろう。

 なんとも強力な卍解だ。

「これで良いだろうか?」

「うむ、これで嵐に悩まされている者達も安心しよう」

「む、広がっていたのか……それは申し訳ないことをした、すまない」

 そういって頭を下げる彼を観察する。

 性根は善良、礼儀も心得ている。

 なるほど、これは逃すには惜しい逸材じゃ。

 

 元々死神にする予定ではあったが、彼が護廷十三隊に入れば歴代最強の死神になることも夢ではないだろう。

 そうすれば、瀞霊廷はより安定する。

「さて、ここに来た理由だが、お主を死神にする為じゃ」

「私が死神に? それは以前にもお断りさせて頂いたが……?」

 彼が朽木隊長を見る。

 なるほど、既に勧誘済みだったか。

 だが、今回は強制で断ることは許されん。

「お主は斬魄刀を持ち、卍解まで会得した。それほどの霊力を持つのならば、周りの魂魄に良くも悪くも影響を与える。それを許すわけにはいかん」

「……それは、確かにそうだが……私にも家族が居る。突然私が居なくなっては混乱するだろう」

 

 この治安の悪い場所で家族を思える。

 やはり、善良な青年じゃな。

「ならば、家族と相談せよ。場合によっては瀞霊廷で暮らすことも許可しよう」

「っ!? それは本気ですか?」

「無論じゃ。お主ほどの者なら多少は融通して見せよう」

 ワシがそういうと、彼は小さくため息を吐いた。

「家族に相談してからでも良いだろうか? あの子たちの道は自分で決めてもらいたいのだ」

「構わぬ、では後日また伺うとしよう」

「すまない、ありがとう。私の家はあちらの方だ、わからなければ白哉を通して教えてくれれば、こちらから向かう」

「あい、わかった。ではな」

「あぁ……そうだ、隊長殿。私は嵐山響だ。これから迷惑をかけるだろうが、宜しく頼む」

 

「……ホッホッホッホ、気持ちの良い若者じゃ。ワシは護廷十三隊の一番隊隊長山本元柳斎重國じゃ」

「僕は五番隊隊長、藍染惣右介だ。これからよろしく頼むよ」

「……私も言うべきでしょうか?」

「いや、白哉の事はよく知ってるからいい」

「……そうですか……」

「クックック、あぁ。では、失礼します。山本隊長、藍染隊長……白哉隊長」

「!」

 響は一礼すると、その場を去っていった。

 

「……兄上も、意地が悪い」

「そうかな? 僕の目には朽木隊長は結構嬉しそうに見えるんだけど?」

「……気の所為だ」

「珍しいタイプの若者じゃな。力もある、礼儀もある、最後の人間臭い一面もまた面白い」

 この数百年で全く見たことのないタイプの人じゃ。

 うぅむ……我が隊に入れてみたいのう。

 

「総隊長、響君を僕の隊に融通してくれませんか?」

「それだけは絶対に許さん、兄上は我が隊の副隊長を任せる」

「いきなり副隊長を任せたら可哀想だよ? 僕の隊で一からしっかりと面倒見るから」

「ならば決闘だ」

「……君、卍解まで使う気でしょ?」

「桃花が生まれる前から決めていたのだ。兄上が死神になるのならば、我が隊にと」

「それは傲慢じゃないかな? 彼にも選ぶ権利はあるよ?」

「兄上ならば、我が隊を選ぶ」

「それはまだわからないでしょ?」

 

「…………馬鹿者が揃っとるの」

 少し前に考えていたことを棚上げして、ため息を吐く。

「嵐山響の入隊先はアミダで決めるとしよう」

「なっ!? それはないですよ総隊長!!」

「朽木家次期当主として断固抗議します」

「喧しい! 最初だけじゃ! その後は好きにせい!!」

 

「くっ、ならばもし彼がそのまま配属された隊から動かなかったら……」

「その時は諦めよ」

「……アミダに細工を……」

「ワシがやるから細工など認めんぞ」

 そんなやり取りをしながら、彼の入隊は良くも悪くも大きく影響を与えるだろうことを確信した一日じゃった。

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、めっちゃ被害を被ったのは総隊長とラスボス様でした!
流魂街の住民もちょっと被害ありますけどね。
雷神の力なんだからこれくらいなくちゃね?
それにしても、藍染さまのキャラも崩壊している気がする。
ら、ラスボスだよね?
こんな扱いでいいのかしら……?

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