転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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藍染様視点で巻いて行きます。
編集が遅くなってすいません……!


第二十二話 藍染様が見ている

 @月@日 

 

 遂に明日からあの不可解な男が来る。

 嵐山響

 瀞霊廷に来る前から卍解を取得していた警戒すべき対象だ。

 彼の情報を改めて整理してみよう。

 

 嵐山響 身長2m12cm 体重98kg

 斬魄刀名は雷公と言っていたか、卍解が常時開放型という恐ろしい斬魄刀だ。

 属性は今までにあった流水系や炎熱系のようにカテゴライズはできないな。

 朱い神槍、自在に行える天候操作、天候操作で生み出した風、雨、雷を操る。

 神の名を冠す斬魄刀

 それが彼の強さ……いや、彼自身も非常に強い。

 手にした情報では更木剣八が本気になってなお怪我を負っていないとか……。

 

 実力に関しては、明日軽く模擬戦をしてみればわかるだろう。

 

 今まで入手した情報では斬拳走鬼全てにおいて高い実力を持っている。

 もしかすると私に並ぶかもしれない。

 それでいて、速さにおいては私よりも上だ。

 私の鏡花水月で催眠状態にしたとしても、彼が本気で逃げれば害をなすことは……難しいが、不可能ではない。

 だが、崩玉を手に入れ万全な状態になるまで戦いは避けるべきか。

 更木剣八以上の警戒対象だ。

 

 弱点がないわけではない。

 彼は家族を非常に大事にしている。

 そこをうまくつけば、彼の隙をつくこともできるだろう。

 だが、家族の存在は同時に彼の逆鱗でもある。

 何も考えずに手を出してしまえば、逆鱗に触れられた龍は激しく暴れまわるだろう。

 だからこそ、慎重にならねばならない。

 

 

 

 @月ω日 

 

 危険だ。

 彼は非常に危険だ。

 まさかこの私が、知能比べで負けるとは……いや、更木剣八の様に勘で指していた可能性も……

 勘にしろ、彼の頭脳にしろ、非常に危険な存在だ。

 下手を打てば、私の計画が露見してしまいかねない。

 彼を五番隊に引き込んだのは失敗だったか。

 

 だが、布石は打った。

 鏡花水月の始解を見せて、五感を支配する事には成功した。

 しかしそれでも、彼ならばこの縛りから抜けることもできるだろう。

 だからこそ、気付かれてはならない。

 今までよりもより慎重にならねば。

 

 最後に、いつも定時までに終わらせている仕事が、午前中で終わった。

 彼は非常に有能な死神だ。

 

 

 д月●日

 

 彼の力を図るために、流魂街の一角で虚による事件を起こさせた。

 私達が担当になるように、うまく誘導して、下級死神を派遣し、その死神を虚に食わせることで危険度を上げ、私と彼が行かざるを得ない様にした。

 私の普段の仮面から、万全を期すためと言えば元柳斎も首を横には振らなかった……決して最近私達が暇をしているから提案したわけではない。

 元柳斎の暇を持て余しておるのだな、という目に内心で怒りを覚えながらも笑顔で流しておいた。

 

 彼に事件の事で私達が出ることになった事を言うと、一瞬だが警戒した目で私を見た。

 勘づかれたか……?

 本当に一瞬だったが、あの目は間違いなく私自身を警戒していた。

 やはり、彼の頭脳や勘は侮れない。

 様子を見て彼から離れるつもりだったが、予定を変更して共闘することになったが、彼の力の一端は知れた。

 やはり速度においては私でも勝つことは不可能か。

 

 雑魚の虚では相手にもならない。

 改造した虚か、もしくは最低でも中級大虚を当てねば戦闘力はわからないな。

 学生時代ですら下級大虚を一撃で分解している。

 時間は幸いにもかなりある。

 改造した虚を当てることも可能だろう。

 あの斬魄刀を無効化する虚を作ることができるか……?

 

 

 ☆月±日

 今年の卒院生を何名か確保した。

 その中に学院時代に目を付けていた娘がいたが、うまく使えば彼への駒として使えるか。

 あの時は彼の行動によって私の駒にはできなかったが、他の方法もあるか。

 あの娘の憧れをうまく誘導して恋心と誤認させ、私が協力者という立場になれば、私の言う事にもある程度は従うだろう。

 彼も妹と親しい友人を見捨てることはしないだろう。

 

 改造した虚も数がそれなりに増えてきた。

 奴らとあの娘を使って、うまく動くとしようか。

 

 

 ★月★★日

 あの娘の心をうまく誘導し、恋心と誤認させることができた。

 実力もそれなりにある為、後数年たてば三席まで問題なく上げることができるだろう。

 だが、その前にうまく使わせてもらわなくてはな。

 既に仕込みは終了している。

 彼に怪しまれないために少々時間が掛かったが、これで彼がどう対応するかがわかる。

 既に人格などについては把握しているが、実力だけは未だ図り切れない。

 隊長である私と副隊長である彼が、瀞霊廷で全力を出すわけにはいかない。

 そうなるとどうしても戦力を図る機会が減ってしまう。

 さて、見せてもらうよ。

 君を慕う娘を、君が殺せるかどうかね。

 

 

 -----

 

 

 監視させていたウルキオラの能力で、その時の事の次第を見ていた。

 

 あの娘に虚を憑かせることには難なく成功した。

 下位席官となっていたあの娘に部隊を率いさせて虚の討伐に向かわせ、あの娘に虚が憑依し、部隊の何名かを虚の力で傀儡として死神を襲わせた。

 逃げろと叫ぶ傀儡となった死神に、生き残らせた死神を逃亡させる。

 後は、瀞霊廷近くまで逃げてきた彼らの存在に彼が気づくだろう。

 聞いた情報から、一刻を争うと理解し私の判断を待たずに、憑かれた死神達の元へ行くだろう。

 そこまでは私の計画通りだった。

 

 死神を喰らっても良いと許可していたから、すぐに食べ始めているかと思ったが、死神達の死体を斬魄刀で木に串刺しにしていた。

 後から来る死神を煽る為か、単純にゆっくりと食べようとしていたか、今では知り様がない。

 そこに現れた彼、泣きながらやめてくれと懇願する傀儡となった死神の声に嗤う虚。

 

 彼は一瞬で事の次第を理解したのか、鋭い目付きで一瞬だけウルキオラの方を見た。

 そしてすぐに、穏やかな顔に戻り、隊員達に声をかけていた。

 隊員達も彼が来たことで安心し、一瞬で虚の傍から響の後方へと移動させられていた。

 ウルキオラの視力をもってしても、彼がどうやって隊員達を移動させたのかわからない。

 彼らを操っていた傀儡の糸も切られているようだ。

 既に自由の身となった隊員達に、彼は戻るように言って、虚の元へと歩み寄る。

 

 虚は全く知覚できずに、隊員達を失ったことに怯えた。

 彼はただ死神へと歩み寄る。

 何を狙っているかはある程度予想がつく。

 あの娘が憑かれたと言う事から、あの娘の体から虚を祓おうとしているのだろう。

 事実、彼は虚からあと少しという距離で『雛森の体を返すなら、見逃してやろう』と言った。

 だが虚は彼の速度から、糸で操ろうにも避けられるし、逃亡することは困難だと判断し『ならば、お前の体をよこせ』と言った。

 

 私は知らずに笑みを浮かべる。

 彼はあの娘を護るために当然了承するだろう。だが虚に憑かれた程度で彼がその存在を失うとは全く思わない。

 だが、どのような手段でそれを回避するか。

 それだけが気になっていた。

 

 案の定彼は即答していた。

 そうして、虚は彼の手を握りその体へと侵入し、次の瞬間には反対側の手に鬼を模した仮面を手にしていた。

 視界が揺れた。

 ウルキオラの驚愕がわかる。

 よもや、あの平子真子達が死に瀕しながらもコントロールした虚化を一瞬で制御した。

 そこでウルキオラは此処に居るのは危険だと判断したのか、黒腔を開いたところで映像は終了した。

 

 

 なるほど、最近あの娘が彼の傍にいるのは操られている時にも意識があったのだろう。

 そして彼に励まされたか。

 しかし敵になった仲間でも、助ける手段があるなら助ける。

 それはごく普通の事だった。

 故にどうしようもなくなった時、仲間だった人を殺すか、逃がすかと言う事がわからなかった。

 前者なら色々と手を打てたのだが……まぁいい。

 後者だったとしてもやり様はある。

 

 しかし……彼を追い詰める策が彼を強化することにつながってしまうとは……

 しばらくは彼に手を出すのはやめておいた方がいいかもしれないな。

 

 あぁ、ウルキオラ。

 危険な監視を引き受けてくれてありがとう。

 その腕の傷はしっかりと治しておくように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




藍染様って……こんな人でしたっけ?
原作の藍染さまが凄すぎるよ……
今回も楽しんでいただけたら幸いです。
次の話は少し時間を飛ばしてルキアの現世での話になります。
原作の1~2年前って所でしょうか。
巻きましたが、ようやく原作に行けそうです。

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