自分の思うままに書いているだけの小説ですが今回も楽しんでいただけると幸いです!
「現世に来るのも、研修の時以来か」
最初の研修の時は凄まじい虚に襲われたが、それ以降からは特殊な虚の姿を見ることもなく平和な研修だったな。
そんなことを思いながら、渡された伝霊心機をみる。
そこには桃と恋次がくれたチャッピーの小さなぶら下がり人形がある。
二つのぶら下がり人形はどちらも可愛らしくて頬が緩む。
その人形を買いに行った恋次を思い浮かべるとさらにおかしくなる。
左手には響兄様と緋真姉様が作ってくれた特製のお弁当。
響兄様が竹で箱を作り、その中におにぎりやおかずが入っている。
首には白哉兄様がくれた首巻。
寒い今の時期には嬉しい物を贈ってくれた白哉兄様にもすごく感謝している。
贈ってくれた物を見ているとふと思った。
尸魂界から長く離れるのは初めてだったな。
そういえば、白哉兄様も恋次も穿界門まで見送りに来てくれていたが、隊長と副隊長が揃って抜けても大丈夫なのだろうか?
……まぁ、大丈夫なのだろう。
なんだかんだで、恋次も書類仕事は得意になったようだからな。
……十一番隊で書類仕事をしてくれるのが全然いなかったらしいからな。
戦闘狂である隊長との訓練が日課の十一番隊は怖いな。
さて、そろそろ魂葬して回るか。
長期と言う事もあって、適当に歩き回って迷える霊を魂葬し、時々くる虚を退治するだけで良いらしい。
食事に関しては現地に協力者がいるらしいから、そこから得るようにと言っていたな。
後で挨拶に行くとしよう。
む、早速一人発見。
「そこの霊よ、迎えに来たぞ」
『ひ、ひぃ!! 死神!? わ、私はまだ死にたくない!!』
「既に死んでいる者が何を言っているのだ。大人しく成仏せんか。」
さて、魂葬していくとしようか。
「温かい飲み物はいかがですか?」
「ひぃあ!?…………なんだこの珍妙なる箱は?」
魂魄を探しながら道を歩いていると、突然箱から声がして思わず驚いてしまった。
周りを見渡すが声が誰もいなかったので、小さく息をついて声がした箱を見る。
白を基本とした箱に何かが入っている。
「そういえば、温かい飲み物はいかがですかとか言っておったな……と言う事はこの箱に入っているのは飲み物なのか……?」
硝子の向こう側に丸い棒状のものがある。
下にはパカパカと動く何か……
「ここに飲み物が出るのか……竹の水筒みたいなものが入っているのか……?」
となると竹のようなものと一緒に温めてるのか。
「ふむ……現世は不思議なものであふれてるな」
一通りの考察を終えたので、他の物も見てみるか。
「現世は本当に不思議なもので溢れているなぁ」
温かいお店に、冷気を発する商品棚、自動で開く硝子扉。
十二番隊にならあるかもしないが、見たことのない物ばかりだった。
魂葬しながらも見た回った現世の物は面白いもので一杯だった。
海燕殿に『魂魄ばっかり探してないで現世を見物してみろ、尸魂界にはない物ばかりで面白いぞ』と言われたが、確かに面白い。
長期滞在任務……今の所楽しい事ばかりだな。
それから現地を歩きまわりながら魂魄を魂葬している内にあることに気が付いた。
どうもこの地域にいる魂魄は何かに惹かれるように、どこかを目指しているようだ。
「もしや虚に魂魄を誘うような能力を持っている者がいるのか……?」
伝令神機を見るが虚が見つかったと言う情報はない。
「……壊れたか?」
伝令神機を懐に仕舞いつつ、私は魂魄の後をつけることにした。
……それにしても、この魂魄は凄まじい筋肉をしているな……殺しても死ななそうな顔しているのだが、なぜ死んだのだ?
そんなことを考えつつ、魂魄の様子を見る。
魂魄は目指す先が見えているかのように真っ直ぐ飛んでいる。
その先に一体何があるのか、少し意識を集中させると向かう先に大きな霊圧を感じた。
感じる霊圧の大きさから意図的に発しているのかと思ったが、いつまでたっても霊圧の大きさはそのまま。
「……まさか、無意識に流れ出ているだけだと言うのか?」
流れ出る霊圧の大きさは席官レベル。
つまり潜在的な霊圧は最低でも副隊長以上になる。
現世にそれほど大きな霊圧を持つものがいるとは思えないが……
そしてようやく目視できる距離に霊圧の持ち主が見え、私は唖然としてしまった。
少年の背後には列になるようにして並ぶ7体の魂魄、そしてその列にさらに一人加わった。
そのことに気が付いたオレンジ色の髪をした少年が天を仰ぎ見ながら「……また増えた……」と呟いていた。
だが、私はそれよりも少年の顔立ちに驚いていた。
なぜならその少年の顔立ちは私の上司である海燕殿に似ていたのだ。
パッと見た所違いと言えば、髪の色と長さくらいだろうか?
それくらい海燕殿に似ていた。
もしや志波家の血族なのか……?
気になる……実に気になる……尸魂界に戻ったら海燕殿に現世に血族がいるかどうか聞いてみよう。
そう思いながら、私は未開放の袖白雪を構えた。
とりあえず、海燕殿に似た少年の後ろにいる魂魄たちを魂葬しよう。
一体ならともかく八体もいる魂魄の目の前に現れたら逃げられる。
なので、瞬歩を使って近づき全員を魂葬する。
少し力が入ってしまうかもしれないが、逃げる方が悪いと言う事で諦めてもらおう。
そう決めて、私は瞬歩で魂魄の傍へと移動して、瞬時に判子……ではなく、魂葬していく。
『いててててて!?』「なんだ!?」
無事八体目まで無事魂葬を施した所で魂魄が痛みに声を上げた。
やはり少し力が入ってしまって最後の魂魄だけ痛みを感じてしまった様だ。
その魂魄に少し申し訳なく思いながらも少年の方に目をやれば、私に気が付いたのか驚いた様にこちらを見る少年がいた。
やはり死神まで見えるのか、そう思いながら私は鞘に斬魄刀を納めつつ、少年へと向き直った。
いつもと変わらない日常だった。
魂魄の話を聞いて、何とか一人祓ってもまたすぐに新しい霊が憑く。
ようやく一体祓ったと思った帰り道、ふと後ろを振り返れば筋肉もりもりのマッチョマンが最後尾に憑いているのを見て、思わず天に目をやる。
「……また増えた……」
なんでこうも俺は霊媒体質なのか。
明日……また明日祓うために話を聞こう……それとも神社で祓ってもらえないか……
そう思いながら帰路についていると、突然後ろから悲鳴が聞こえた。
「なんだ!?」
後ろを振り返れば、痛みを訴えながら光に消えていくマッチョマンの姿とその隣に立つ日本刀を持った黒い着物を着た女の子がいた。
その女の子は鞘に刀を納めながら俺の方へと向き直り、ゆっくりと近づいてきた。
その顔は何の感情も浮かんでおらず、完全なる無表情だった。
「……なんなんだテメェは……」
いつでも動けるように体に力を入れながら睨みつける。
そいつは俺の少し前で止まった。
「私は水無月ルキアと申します。職業は死神です。よろしくお願いします」
と言って、ぺこりと頭を下げた。
「……お、おう、俺は黒崎一護。職業は中学生です。よろしく……じゃねぇよ!?」
唐突に自己紹介をされて思わず普通に返してしまった。
っていうか、なんだこいつ?
視線を向ければ、さっきの無表情は夢幻だったのかと思うくらいに、困惑の表情を浮かべていた。
「な、なにかおかしい所でもありましたか?」
困惑の表情に不安まで浮かべつつ、首を傾げる自称死神の女の子にさっきまでの緊張が抜けていく。
こいつ、天然だ。
刀を抜いている奴がいきなり現れて、俺に憑いていた霊が悲鳴を上げながら消えたっていうのに、唐突に自己紹介を始める……おかしい所しかないぞ。
「いや、むしろおかしい所しか……っていうか死神?」
「はい、貴方に憑いていた方々は皆成仏させて頂きました」
「マジでか!?」
「マジです」
一日一体しか祓うことができなかった霊が全員成仏した。
何年ぶりだ、こうして霊がいなくなったのは!
「~~~~!」
思わず天を見上げて声なき声を上げてガッツポーズした。
「ねぇ、ママー、あのお兄ちゃん一人でなにしてるの?」
「シッ!見ちゃいけません」
視界の端で、さっさと通り過ぎて行く親子が見えた。
「…………」
「……大丈夫です、私はわかっていますから……その、なんだ……そんなに気を落とすな……?」
水無月の可哀想な人を見る目がいてぇ……
このまま外で喋っていたらまた変人に思われるので、俺の家で話をすることにした。
「おっかえりーーー!いっちごう!?」
「おー、ただいま」
「…………?」
帰宅していつものように襲い掛かってくる親父を撃退して、部屋の扉を開けて水無月を見た。
「俺の部屋だ。入ってくれ」
俺がそういうと水無月は何やら苦笑しつつ、部屋の中に入った。
「? なんだ?」
部屋の扉を閉めつつ、なんでそんな顔しているのか聞いたらまたしても苦笑が返ってきた。
「いえ、出会ったばかりの女性をあっさりと部屋に招くなんて色男だなと思いまして。慣れているんですね」
水無月にそう言われて、顔に熱が集まった。
「ばっ!? そういうつもりじゃねぇし、部屋どころか家に女を招いた事だってねぇよ!! っていうかお前は死神じゃねぇか!! それにガキは俺の守備範囲外だ!! もっと成長してから出直してこい!」
俺が焦ってそう言い切った。
……あれ、俺今大分失礼なこと言わなかったか?
水無月を見れば、些か不満そうな顔で俺を見ていた。
「確かに私の体はあまり発育が良くないですが、これでも既に百は超えています。それに女性相手にそういう発言は失礼ですよ」
「ひゃ、百を超えてる……? いや、そうだな。わりぃ……あ、いや、すいませんでした」
確かにもっと成長してから出直してこいとか、失礼すぎるし、上から目線すぎるだろ。
頭を下げると、水無月は仕方なさそうに笑った。
「まぁ、今回は見逃します。元を正せば、最初の私の発言が原因ですからね。私の方こそ失礼しました。それと敬語は良いですよ。年齢で威張るつもりもありませんし」
「そ、そうか……すまん……そういえば、なんで水無月は敬語なんだ?」
年齢が水無月の言う通りなら、それこそガキの俺に敬語を使う必要はないだろ。
「私は些か古風な喋り方をしていますので、基本的には敬語で話しているだけですよ」
「そうなのか、なら俺も敬語じゃなくていいぜ。水無月には取り憑かれていた霊を成仏させてもらったしな」
俺がそういうと、水無月は可笑しそうに笑った。
「私が霊魂を成仏させるのは仕事ですから……いや、まぁいいだろう。貴様は面白い奴だな一護」
「お、おう」
な、なんだこいつ。
古風とは言ってたけど、しゃべり方が変わっただけで雰囲気までガラッと変わったぞ。
さっきまではまるで何処かのお嬢様みたいだったのが、頼りがいのある姉御みたいになった。
俺が驚いていると、水無月は笑った。
「さて、お喋りもいいが何か聞きたいことがあるなら答えるぞ?」
「……んじゃ、頼むわ」
それから水無月に色々なことを尋ねた。
霊の事や、成仏した先の事、持っている刀や死神について。
ある程度聞くと、今度は水無月から色々と聞かれた。
霊が見えるようになったのはいつごろからか、霊に憑かれるようになったのは、化け物に襲われたことはあるかとかも聞かれた。
そこまで話して水無月は小さく息を吐いた。
「今まで虚に襲われなかったのが奇跡だな」
「虚?」
話の流れ的にさっき聞いてきた化け物の事だとは思うが全く想像がつかない。
「虚というのはそうだな……悪霊の事だ」
そうしてどこからともなく出したノートを見せてきた。
……うさぎっぽい何かとと若干怒った顔をしている気がするクマっぽい何かが書かれていた。
「…………」
え、なんだこれ。
「虚は普通の霊魂や霊力の強い人間を襲い捕食して、その力を強くしていく」
うさぎっぽい何かが口を開けたクマっぽい何かに食われている絵を見せられた。
「そして死神が見える貴様は相当霊力が高い上に霊媒体質だ。今まで虚に襲われなかったのは本当に奇跡的だ。いや、もしかしたら前の担当が気を張っていたか……まぁ、虚についてはこんなところだ。わかったか?」
「あぁ、その絵がなかったらもっとよくわかる」
俺がそういうと、水無月は目を丸くした。
やべ、思わず口に出ちまった。
「みな「貴様もあまり美的せんすというものがないのだな」……は?」
思わず目が丸くなった。
そんな俺に構わず一人うんうん頷きながら水無月が言った。
「これでも私の絵は四大貴族の一人である兄と姉、そして弟にも上手いと言われたのだ」
え、まじかそれ、身内贔屓が入ってないか?
「……まぁ、私が尊敬するもう一人の兄にはもう少し頑張ろうなと言われたが……いや、まて……もしかして私達の方がズレているのか……? く、黒崎!!貴様は!?貴様はどう思う!!現世にも絵画などは多数あるだろう!?」
話している内に唯一尊敬する兄に頑張ろうと言われていることが不安になったのか、すごい焦ったような顔で俺に詰め寄ってきた。
「あー……そうだな……」
俺に縋るような目で見てくる水無月を見ていられなくて、思わず視線を逸らした。
その行為が水無月への答えを示してしまった。
「そ、そんな……!!」
ちらっと水無月を見ると、顔を真っ赤にして涙目になっている。
頼りになる姉御の姿からあまりのギャップに一瞬ドキッとした。
「わ、私は……不格好な絵を……子供の落書き集のような物を……響兄様の昇進祝いに渡した……というのか」
あ、ヤバい、それは心が痛い。
「そ、そういえば恋次は絵の事を聞いた時何やら焦りながら肯定していた……真実を言えなかった……というのか……!?」
「み、水無月!! も、もう考えるな!!」
顔は耳まで真っ赤になって、目がぐるぐるしてる!!
「あ、あは、あははは……きゅう」
「水無月ーーーー!?」
こてんと横に倒れて気を失った水無月にどうすればいいかわからず、外を見た。
……これからどうしようか……
綺麗に見える夕焼けが憎らしく思いつつも、どうにでもなれと俺は考えることをやめた。
安定しない書き方……うーん……とりあえず文にまとめて先を書こう。
それで皆さんが楽しいと思ってくれればうれしいです!
ルキアが恥ずか死ぬ。
ついでに恋次の処刑が決まりましたね!
ここから原作はほとんど崩壊してますね。
原作も大好きですが、二次創作は思うがままに出来るのが楽しいです!
後、感想返しが遅くなってすいませんorz
時間があるときに少しずつ返していきますので、皆さんの感想をお待ちしております!