転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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この度はご迷惑をおかけしました。
非公開したり、撤回したりと大変お騒がせしました。
これからは一覧に表示させないで、楽しんでくれた方々の為に書いて行こうと思いますので、これからもよろしくお願いします。

久しぶりの更新、お待たせしました。


第二十五話 俺の体が!?

 辺りに虚の霊圧を感じないのを確認してから、袖白雪を鞘に納めて小さく息をついた。

 久しぶりに立っているのが辛くなるくらいに動き回った。

 これだけ動いたのは響兄様と耐久組手をした時以来だ。

 力が入らない体をゆっくりと壁に預け、私はそのまま座り込んだ。

 

 何とか無事に危機を乗り越えることができた。

 あまりにもありえない事態だが、こうして私が生きていられるのは一護のお蔭でもある。

 

「一護、大丈夫か?」

 斬魄刀を傍に投げ出して、地面に大の字に倒れている一護に声を掛けた。

「……死ぬかと、思ったぜ……ハハハ」

 息を乱しながら、笑う一護に大物だなと思いながら小さく笑った。

 

「まるで物語の主人公の様な覚醒の仕方だったな」

「あー、タイミングが神がかってたもんなー、俺もそう思う」

 窮地に追いやられた主人公が土壇場で力に目覚める、本当に物語の様だったが……

「フフフ、その後は斬って逃げるという主人公にあるまじき戦い方だったな」

 二人して、近づいてきた虚を斬り付けたら即座に反転、突出してきた虚をまた斬りつけて逃げると言う戦略的にはともかく主人公の戦い方ではないな。

 

「実際に主人公だったら、大軍に突撃して勝つんだろうけどな」

 一護も可笑しそうに笑いながら軽口を叩く。

 先の戦闘は本当に驚きの連続だった。

 

 一護が突然腕の中から消えたと思ったら、目の前に死覇装を着て身の丈ほどの大刀と左目を覆い隠す何かを付けた一護が立って居た。

 その後は一護と共に走りながら向かってくる虚を倒しては引いて、倒しては引いてを繰り返して何とか殲滅する事に成功したのだ。

 せめて私の状態が万全ならもっと楽に倒すことができたのだが、流石に霊力の大半を消費した状態であの大軍は無理があった。

 

 お蔭で月がもう沈みかけている。

 

「しかし私は今でも自分で見ていることが信じられん。白昼夢でも見ている気分だ」

 改めて死神として覚醒した一護を見る。

 身の丈ほどある鍔も何もない大刀。

 斬魄刀から感じる霊圧は隊長格に匹敵する上に、揺らぐ事なく安定している。

 通常の斬魄刀の状態に戻らない所を見るに、常時開放型の斬魄刀か?

 左目だけを隠している何かからはほんの少しだけだが、虚に近い霊圧を感じる。

 肉体を持ちながら死神となった事に起因するのだろうか?

 

「そんなにおかしなことなのか?」

「刀を持った赤子が生まれてきたらおかしいだろう?」

 心底不思議そうにしている一護に、今起きていることがどれだけ異常な事か説明してやりたいが、それよりも確認しないといけないことがあった。

「お、おう……それほどなのか……」

「あぁ。一護、体は問題ないのか?」

 死神に虚の霊圧が混じる……響兄様が言っていた寄生するタイプの虚の影響もあり得あるか?

 

「体力を使い切ったこと以外は、特に問題ねぇぞ」

「ならいいのだが……そうだ、その斬魄刀は……」

「斬月だ。ルキアの斬魄刀もなんか変わってたよな?」

「それについてはまた今度説明しよう。斬月にその目元の何かについて聞いてくれないか?」

 私の言葉に一護は不思議そうに首を傾げた。

 

「どうやってやるんだ?」

「うん? 話しかければ答えてくれないか? 私達が話している内容は聞こえてるはずだが……」

「そうなのか? 斬月、目元のこれって何なんだ? …………ハァ!? 虚の仮面!? 王って俺の事か!? あの真っ白い俺みたいなやつが虚の力? え、どうすりゃいいんだよ……倒せばいい? 精神世界で? え、今から!? まてまてまて!! 俺今めっちゃ疲れてんだけど!? 笑ってんじゃねぇよ!? せめて明日にしろ!! は? 二対一!? どうせだから『ばんかい』修行も一緒に? 待て待て待て!! 『ばんかい』っていうのが何の事かわかんねぇけど、斬月が無茶言ってるってことだけはわかるぞ!? そもそも……」

 

 うむ、どうやら少し時間が掛かりそうだな。

 だがあの目元の何かについてはわかった。

 やはり虚の仮面だったか。

 内心で頷きながらも、あり得ない事態に頭が痛くなる。

 

 小さくため息をついて、一護の様子を見る。

 未だに斬月に向かって叫んでいる所を見るに、まだまだ時間が掛かりそうだ。

 今のうちに一護の肉体を回収してくるとしよう。

 

 

 しばらく歩き回ってようやく一護の肉体を見つけた。

 まさか溝に落ちているとは思わなかった。

 溝が全然汚れていなくてよかったな。

 ……雨が降ってたら肉体も窒息死していたかもしれない。

 

 そんなことを考えながら一護の体を持ち上げると、左側だけ擦り傷だらけだった。

「ふむ……思ったほどひどくはないな」

 ……全力で走っていたからな……このこんくりぃとと言う地面ですり下ろされた大根みたいにならなかっただけマシだろう。

「この程度なら回道でどうにかなるな」

 流石に今すぐ回復させるのは辛い。

 まずは一護の肉体を運ぶことにしよう。

 一護の肉体を背負って、一護の魂が居る場所へ戻る。

 うむ、変な言葉だ。

 死神なら義骸と義魂丸があればどうにでもなる……

「ふむ……一護用に義魂丸を買いに行くか。これから先狙われたらある程度自分で身を守れるようにする必要があるだろう」

 

 危機は乗り越えたが、これからやることが多いな。

 人が死神として覚醒した事は隠さねばならないだろう。

 技術開発局の連中が実験材料にしかねない。

 護身としてある程度戦う術を身に着けてもらう必要がある。

 

「幸いなのは後1年くらいは時間がある事か」

 長期駐在任務の期間は最長で2年くらいだったか……それだけ時間があれば、どうにかなるはずだ。

 斬拳走鬼を一度教えておこう。

 一護の性格から考えるに、誰かが危険に晒されたら躊躇なく助けに行くだろう。

 鬼道を覚えれば、肉体があっても時間稼ぎもできるだろう。

 あれで勤勉な男だ。

 

 これから先の事を考えながら、一護の声がする方へと歩く。

 どうやらまだ斬月と話し込んでいるようだ。

 もう日が昇っている。

 一護も学校があるのだから、早々に治療して戻らなければならん。

 

 また同じことが起こるとは思ってないが、警戒はしておかねば。

 義魂丸を買って、魂魄を抜くための道具も買わねば……あぁ、これからの為に記換神機も念のため買っておかねば。

 他にも何か必要な物はあったか?

 

 これから忙しくなるな。

 未だに斬魄刀と話している一護をしり目に、一護の肉体を治療しながら朝焼けの空を見上げた。

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ!!」

「どうした一護、もう降参か?」

 不敵に笑うルキアに、俺は驚きを隠せなかった。

 

 自分の身を守れるようにって事で、ルキアが色々と道具を揃えてくれて、その上こうして戦う術を教えてくれてるだが……攻撃が全く当たらねぇ!!

 これでも空手やってたし、それなりに強い自信はあったんだが……ルキアが相手だと綺麗に受け流される。

 

 最初は俺より小さい女に殴りかかる事に抵抗があった。

 けどそれも、その場から一歩も動かずに受け流されることから、必要のない考えだと気付いた。

 何せまともに攻撃が当たらない。

 小柄だからと体重を乗せて拳を放っても、まるで流される様に受け流されて体勢を崩される。

 

 死神の身体の身体能力は霊力の高さによって変わるって言ったが、ルキアの経験の前にはただ身体能力が高いだけじゃ無意味だった。

 ルキアから聞いた斬拳走鬼には、柔道みたいなやつもあるのか?

 それとも、良く話してくれる響って奴が教えたのか?

「考え事とは余裕だな、一護」

「うおっ!?」

 

 牽制のつもりで放った蹴りを避けられて、俺はその場で勢い良く回った。

 避けた後に手を添えて加速させやがった!?

 そんなことできるのかよ!?

 無理矢理回転させられて、思いっきり体勢を崩した。

「やっべぇ……!」

 本日最大の隙

 これは、終わらせに来ると思った。

 ルキアの手刀が見えた気がした。

 

 そこで俺は咄嗟に回転させられた勢いを利用して、体を投げ出した。

「ふむ、中々のいい判断だ。だが、次に繋げれなければ意味がないぞ」

「んなこたぁわかってるよ!」

 霊子を足元で固めることができるなら、縦だろうと横だろうと関係ないはずだ。

 足場を壁のように作って、地面に着くよりも早く体勢を整える!

 想定した通りに、壁の様な足場がうまくできた。

 勢いを押し殺すように着……地?……してその足場を蹴って飛び蹴りを放つ。

 これなら受け流しても体勢を崩すことはできねぇだろ!

 

「……昔の私と似たような事を……」

 懐かしそうに、だが呆れたように俺を見るルキアに選択肢をミスったかと焦る。

「あれ?」

 気がついたら、飛び蹴りの体勢のまま更に加速していた。

 地面と平行に飛んでいる。

 足がつかねぇぞ、っていうか、止まらねぇぞ!?

 かなりの勢いがついているから、足場を作ったら逆に強力なダメージを受けそうだ!?

 

 なんてことを考えている内に、俺は公園の木を思いっきり揺らした。

 

 

「お前の兄貴鬼畜すぎねぇ?」

 木に思いっきりぶつかって、組み手は終了となった。

 そして、飛び蹴りの時にルキアが呟いていた事を聞いてみて出た第一声だった。

「普段は優しい人なのだが、鍛錬に関しては厳しい人だったからな」

「お前が厳しいって言うとかどんな奴だ……よ……?」

 ルキアの背後に見えたモノに、思わず目を凝らす。

「うん? どうした一護?」

 ルキアが何かを言っているが、正直俺はそれどころじゃなかった。

 今『俺』が跳んでいた。

 ピョーンと言った感じに跳んでいた。

 

「あ……あれ……」

「???」

 ルキアが首を傾げて、背後を振り向いた。

 それと同時に、また『俺』が跳んでいた。

「「…………」」

「あ」

 落ちていくときに、俺達と『俺』の目が合った。

 

「よし、捕まえに行くぞ一護!」

「一体何が起きてんだよ!?」

 すぐさま再起動して、走り出したルキアを追いかけつつ問いかけた。

「恐らくお前に渡したソウル*キャンディが改造魂魄だったのだろう」

「改造魂魄ぅ!? なんだよそれ!?」

「死体に能力を強化した改造魂魄を入れて、尖兵として使う計画があった……と、習ったことがある。アイツは恐らく脚力強化タイプだな」

「なんでわかる……ってはや!?」

 ルキアの説明を聞きつつ、俺の体を見ると凄い速さで走ってた。

 100mを5秒切るんじゃねぇか?

 

「私達が瞬歩や縮地を覚えててよかったな。そうでなければ体を持ち逃げされていたかもしれん」

「うおぉい!? 今さらっと聞き捨てならねぇこと言ったぞ!?」

 持ち逃げってなんだよ!?

 空に足場を作って、俺の体を追いかける。

「尖兵計画は伊達ではないと言う事だな。あれだけの速度に跳躍力。蹴撃の威力はとんでもないものになるだろうな」

「ヤバすぎんだろ!! っていうか、あんなに速く走って俺の身体大丈夫なのか!?」

「…………まぁ、大丈夫だろう」

「今の間はなんだあああああ!?」

「そんなことよりも早く追わねば持っていかれるぞ?」

「あぁもう!! まてや俺の体ああああ!!!」

 

 

 そうして真夜中の追いかけっこは……あっさりと終わった。

 できるだけ近づいて、縛道で動きをあっさりと止めやがった。

 死神の戦いって素手とか斬魄刀だけじゃないんだよな。

 

 そういや、ルキアがソウルキャンディ相手に色々と喋ってたな。

 捨てるつもりはないとか、何かあれば言えとか……あの状態でも話することできるんだな。

 俺としてはあのキャンディを使うのはごめんなんだが、ルキア曰く反省してもう二度と持ち逃げしないと言っているから使ってくれだと。

 まぁ、持ち逃げされないならいいんだけどよ。

 

 その後、ルキアは話をつけに行くって言って何処かへ行った。

 まぁ、なんだかんだでこれからこいつにも世話になるだろうから、俺も挨拶しておくべきだろう。

 

「なんだかわかんねぇけど、これからよろしくな」

 これから長い付き合いになるだろう改造魂魄に、俺はそう言ったのだった。

 ちなみに俺の肉体は特になんともなかった。

 尖兵計画、凄まじいな。




まさかの戦闘バッサリカット。
そして、早くも出てきたコン。
これからどういった風に話を進めるか……
次回も楽しめるように頑張ります!

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