転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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評価バーが赤くなってる…だと…!?
感想が嬉しくて何とか今日中にもう一本書き上げてみたら、お気に入りも増えててあわわわわ!?
も、もう投稿しちゃいます!
あ、あと白哉のキャラ崩壊が激しいです


第四話 私の愛しい人

 最初の出会いは、任務の最中だった。

 副隊長でもあり、父である朽木蒼純と共に流魂街の調査に向かっていた。

 

 時折出現する高い霊圧反応を調べる為に、流魂街第78地区『戌吊』へと来た時だ。

 反応は人里離れた森の中からあったとの事で、私と父上が派遣された。

 恐らくお爺様の配慮だろう。

 父上は体が弱く、あまり無理はさせられない。

 

 そこに調査任務が来た故に、気晴らしついでに行ってこいと言うことだろう。

 そうでなければ、副隊長と第三席である私を一緒に行かせはしない。

 公私混同だとは思うが、父上も励みすぎるところがあるのでたまには良いだろう。

 

 森の中を父上と共に歩いていると、声が聞こえた。

 もしかすると、この声の者が捜索対象なのかも知れん。

 

「父上、聞こえましたか?」

「あぁ、東の方から聞こえてくるな……これは、歌か?」

 父上の言葉に、耳を澄ませてみると確かに歌声だった。

 それにしても、この声は……。

「美しい歌声だな」

「そうですね」

 美には疎いが、心に染み込んでくる様な歌声だ。

 

「慈愛に満ちた優しい声だ……母さんのことを思い出すよ」

「母上の事を……ですか?」

 私が尋ねると、父上は目を細め懐かしそうに教えてくれた。

「あぁ、赤子だった白哉を寝かしつける為に良く子守唄を歌っていた……その時の声にそっくりだ」

「……そうですか」

 母上は私が物心つく前に流行病で亡くなっている。

 故に私には母の記憶はないが、この様な声で歌っていたのか。

 

 目を閉じ、声に意識を傾ける。

 記憶に無い母の声に似た、歌の主を思う。

 どの様な表情で、この歌声を出しているのか、それが無性に気になった。

「ふむ、丁度いい。情報収集のついでに歌声の主を見てみるとしようか」

「はい」

 目を開くと、父上が何故か可笑しそうに笑っていた。

 それを疑問に思いつつも、声の主の方が気になって仕方なかった。

「ではゆっくり行くとしようか、この歌声を聴きながらね」

「……そうですね」

 私もこの歌声をもう少し聞いていたいと思っていたので、父上の提案に賛成だった。

 

 程なくして私達は歌声の主がいる場所に着いた。

 小さな泉の周りに様々な花が咲いている場所だった。

 そこに蘭の花が描かれた椿色の浴衣を来た少女が居た。

 

 恐らく、私はその時の緋真に一目惚れしたのだろう。

 

 膝の上で寝ている女児の髪を優しく撫でながら、子守唄を歌う彼女から目が離せなかった。

「……ほう?」

 父上が何かを呟いた気がしたが、それに意識を向けることもできなかった。

 

「白哉」

 唐突に父上に名を呼ばれて、私はそちらへ意識を向けた。

 父上は何やら楽しそうな顔をしていた。

「あの少女は捜索対象では無い様だ、私は周辺を見回ってこよう。白哉は彼女から情報収集しておいてくれないか?」

「……わかりました、お気をつけて」

「あぁ…………白哉にも春が来たか……」

 父上は頷くと、小さく何か言っていたが聞き取ることができなかった。

 そうして、再び森へと入っていく父上を見送り、視線を彼女に向けると瞠目している彼女の姿が見えた。

 

 突然目が合い、どうすれば良いかわからず、立ち尽くしていた私に彼女は軽く笑みを浮かべて会釈した。

 

 それで私はさらに混乱してしまった。

 

 女と言うのは、全てがあの黒猫の様な奴では無いのだな。

 などと、緋真に非常に失礼な事を考えていたものだ。

 

 混乱した私は結局、父上から言われた情報収集をしようと彼女に近づいた。

 近づいてくる私に、緋真は首を傾げていた。

 

「すまぬが、尋ねたい事がある」

 

 何度思い返しても、あの頃の自分の対応には顔が熱くなる。

 何しろ私は……。

 

「貴女を好いてしまったのだが、どうすれば良いだろうか?」

 

 などと言ったのだから。

 

 

 

 その時の緋真は顔を真っ赤にして「え、あ、え!?」と慌てふためいていたな。

 非常に可愛らしかった。

 だが、私も飛び出てきた言葉に顔が熱かった。

 

 結局私は、捜索対象の事は全く聞かずに彼女と共に真っ赤になって固まっていたのだ。

 

 その後、起き出した幼子にある意味救われたものだ。

 幼子は私を見てから、彼女を見て怒ったのだ。

 見知らぬ私に「なにものだー! ねえさまはわたさぬぞ!」と女子にしては古風で男勝りな喋り方だったが、沈黙を破ってくれたのだ。

 

 そこでようやく私は名乗る事ができた。

「私は白哉という、貴女達のことはなんと呼べば良い?」

「私は水無月緋真と申します、この子は私の妹のルキアです」

「ぬー! たわけものだーであえー!」

 そうか、緋真と言うのか……しかし、この幼子はどうしたものか。

「こら、ルキア、ちゃんと挨拶しなさい」

「ねえさまにてをだすものはわたしがやっつける!」

 緋真がルキアの頭に手を乗せて促すも、わたしは完全に敵視されている様だ。

 しかしこの姉妹は顔立ちは似ているが、性格は全く似ていない。

 

「緋真とルキアは性格が大分違うのだな」

「ルキアは兄様が大好きですから」

 困った様に笑う緋真によると、兄の影響らしい。

「にいさまはすごいのだぞ! きさまなどにいさまに「はーい、ルキア〜良い加減にしましょうね〜?」いひゃいいひゃい!」

 ルキアが兄がすごいと言っていると、緋真が少し怒った顔でルキアの頬をぐいっと引っ張った。

 

「さっきから失礼ですよ? 白哉様は私達に悪いことはして無いでしょう?」

「……うー」

「緋真、私は気にしていない、そんなに怒るな」

 幼子の言葉に目くじらたてる必要もあるまい。

 私がそう言うと、緋真は小さくため息をついた。

「もぅ、白哉様に感謝するんですよ?」

「びゃくやにいさまありがとー!」

 緋真がルキアから手を離すと、いつの間にか私にくっついていた。

 変わり身の早さに思わず苦笑する。

 これが我が隊の中だったら間違いなく厳罰ものだがな。

 

 しかし、この治安の悪い地区でも彼女達は活き活きとしている。

 恐らく彼女達を護っている兄のお陰なのだろう。

 その人物に感謝しよう。

 そうでなければ、私は緋真と出会うことはできなかっただろう。

 

 二人と話すのは楽しかった。

 あまり表情や言葉を話す方では無い私の変化を感じ取ったのか、色々と話してくれた。

 気がつけばあっという間に夕暮れになっていた。

 

「すまぬ、そろそろ戻らねばならん」

「びゃくやにいさま、かえるの?」

 私に花冠や花輪を作って渡していたルキアが、涙目で私を見てくる。

「あぁ、すまぬな」

 ここまでゆっくりしたのはいつ振りだろうか……!?

 しまった、父上!

「すまぬ、急いで戻らねば……!」

 ルキアの頭を軽く撫でてやり、私は立ち上がった。

 そして、走り出そうとした私の死覇装の袖を摘んだ緋真が顔を赤くして「あ、あの……また会えますか?」と問いかけてきた。

 

「……あぁ」

 驚いて返事に少しの間が出来てしまったが、緋真は嬉しそうに微笑んでくれた。

「私はここによく来ますから、またここで会いましょう」

「あぁ、必ず、また」

「ウゥ〜……またあおう、びゃくやにいさま!」

「あぁ、二人も気を付けよ」

 私に向かって手を振ってくる二人を最後に私は走り出した。

 

 

 その後、無事に父上と合流できたが、珍しくニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

 

 

 それから、私はよくあの泉のある花畑へ向かった。

 自分でもよくわかっている。

 普段の自分を知る者がその時の私を見たら驚くだろうと。

 

 だが、そのようなことはどうでも良いと思えるくらいに私は緋真を好いているのだ。

 笑顔が見たい、声が聞きたい、四季を共に感じたい。

 緋真に会えば会うほど、私は緋真のことを好いていった。

 

 だからこそお祖父様に言った。

 流魂街に夫婦(めおと)になりたい女性が居ると。

 それを聞いたお祖父様は大笑いした。

「あの白哉がそこまで夢中になる女子か、大いに結構結構! だが、一度くらい連れてきなさい」

 予想外だった。

 私は貴族の掟から反対されると思っていたのだ。

「ん? 不思議か? 確かに貴族として考えるなら好ましいことでは無い。だが……人を好きになるという事は、成長に繋がるのだ。だがまぁ……色ボケはせんようにな!」

 

「はい」

 お祖父様の言葉に頷き、緋真をどうやってここまで連れてくるかを考えた。

 そこでふと気がついた。

 私は緋真に四大貴族のひとつである朽木家である事を教えていなかった。

 

 考えてみた。

 緋真に四大貴族である事を教えた時のことを。

 ……もしも、恐れられたりしたら私は千本桜で自分を斬るかもしれない。

 あの日、姓を名乗らなかった自分を恨む。

 教えないという選択肢は無い。

 お祖父様に紹介せねばならないし、嫁入りするならば言わずともわかる。

 

 覚悟を決めるしか無い。

 今度緋真に会う時に、私の事を話そう。

 そして、お祖父様にも会ってもらおう。

 

 婚姻するとなれば、噂の兄にも挨拶に行かねばならん。

 ……緋真は来てくれるだろうか……。

 

 考え事に夢中になっており、私は気がつかなかった。

 お祖父様のそばに見慣れた黒猫が目を爛々と輝かせてそこに居た事に……。

 

 

 




白哉の喋り方もわからなくなった……けど、甘くするにはもっとキャラを崩していかねば!!(使命感)

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