転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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に、日間50位にのりました!?
これも皆さんのおかげです!
夜勤だけど眠らずにもう一本仕上げたので投稿しちゃいます!


第六話 彼の日記 3ページ

 白哉の根回しの早さに負け、緋真がついに結婚します。

 まぁ、もう少し先の話だがな!

 と言っても、緋真がこの家で暮らすのも残り一月。

 ルキアが愚図るかと思ったが

『ねえさまがしあわせなら、わたしはおうえんするぞ!』

 と、なんとも男前な言葉を胸を張って言い放った。

 ただし、若干涙目だったのはご愛嬌。

 

 感極まった緋真は、泣きながらルキアを抱きしめていた。

 

 俺もいつでも帰ってこいと、言葉をかけたらさらに泣き出した。

 号泣である。

 嫁入り前になんという顔をしているのか……緋真の顔が若干滲んで見えたのは、目が悪くなった所為だ、そうに違いない。

 

 

 さて、緋真は残り1ヶ月の内に甘えるだけ甘えることにしたらしい。

 珍しく俺にくっついて歩き、頭を撫でて欲しいとか、あれが食べたいとか我儘を言う。

 共に暮らして10年ほどか……緋真がここまで甘えてくることは全くなかったな。

 その様子が可愛くもあるが……やはり不安があるのだろう。

 

 

 ……白哉と会った日は、不安など微塵も感じさせないがな。

 朽木家の祖父と父親は問題ないだろうが、使用人にはやはり不満に思う輩も居るだろう。

 すべての人に好かれるなど不可能なのだから。

 まぁ、その程度で潰れるほど緋真も弱くはない。

 病弱だった体は、既に健康体になり、儚げな雰囲気は包容力のある優しい雰囲気へと変わった。

 芯にちゃんと強い心も持っている。

 

 緋真なら大丈夫だ。

 それに何かあれば取り返しに行くからな!

 

 

 一月の間に緋真はこの家でたくさんの思い出を作ったようだ。

 そうして、準備も終わり、遂に緋真がこの家を出る日が来た。

 朽木家より届けられた服を着て、ルキアを背負って緋真を抱く白哉の背を追いかけた。

 瞬歩は白哉のやり方を見て、なんちゃってから正しいものへと変えたのだが、こっちの方が疲れる。

 

 朽木家へと着き、緋真は着替えへ。

 俺とルキアは、白哉の祖父と父親に挨拶していた。

 

 うむ、予想外だった。

 銀嶺殿はすごく大らかで、気の良いおじいちゃんといった感じだった。

 てっきり原作白哉みたいにビシッとしてる(内面はともかく)と思ってたが、まんま手紙の時と変わらない人だった。

 蒼純殿も同じく、

 常識人で気配り上手、物腰が柔らかい優しい人だった。

 ルキアがくっついてるが、微笑ましそうに頭を撫でている。

 うむ、やはり原作知識なんてあてにならんな。

 

 考えることを放棄しても、なるようになるのだ。

 

 色々と話していたら死神にならないかと誘われた。

 なにやら霊圧がかなり高く、佇まいに隙がないらしい。

 後見人になるからどうだ? とか言われたが、ルキアのこともあるし、あの家も守らないといけないので断った。

 残念そうにしてたが、気が変わったらいつでも言いなさいと言われた。

 なんとも高待遇である。

 

 まぁ、俺が死神になることはないだろう……ん?

 これって、またフラグか?

 緋真の時もだが、考えた日に大体そのフラグを回収するよな。

 ……念のためにもう一度言うか?

 いや、そこまで行くと『押すなよ!?』みたいな流れになりそうだ。

 触れないでおこう。

 

 そうして御二方と時間を潰していると、花嫁の控え室に呼ばれた。

 不安そうにしているから、声をかけて欲しいとのこと。

 それに頷き、御二方に挨拶してからルキアを連れて控え室へと向かった。

 

 控え室には白無垢姿でほーっと腰掛けている緋真が居た。

 ルキアが飛びついたことで意識が帰ってきたらしい。

 俺とルキアが綺麗だと褒めると少し赤くなって、微笑んだ。

 

 さて、一仕事するとするか。

 緋真の前に腰掛けて、目で話を促す。

 めでたい日に、花嫁が暗い顔なんてするもんじゃねぇ。

 緋真は俺から目を離し少し俯くとポツポツと話し出した。

 

 新しい生活に心を躍らせながらも、保護者の庇護下から出て行く不安感、今までとは全く違う環境で過ごす変化、平民から大貴族になったことで付いて回るだろう貴族としての責務。

 

 それを聞いた上で、俺が言えることは少ない。

 たとえ離れたとしても俺たちは家族であること。

 辛いと思ったら溜め込まずに吐き出すこと。

 そして、最後に世界を敵に回しても俺がお前を護る事に変わりはない。

 

 茶目っ気を出して、俺は世界最強の妹大好きな兄だぜと笑って見せた。

 ルキアもまるで合いの手を入れるかのように声を上げた。

 普段言わない事に衝撃を受けたのか、緋真は目をまん丸にした後声に出して笑った。

 

 もう心配ないだろう。

 緋真に次は婚儀の場で待っているぜと言って、ルキアを伴って外に出た。

 部屋を出てから、さっきから気配を消して話を聞いてた輩に声をかけた。

 縁側の下から1匹の黒猫が出てきた。

 そして、ボフンという音と共に人型になった……裸で。

 

 頭に拳骨を落として、羽織を掛けてすぐに着替える様に言ってから、目を閉じてその場で待った。

 扉の前に来た時は人型の霊圧を感じていたから、近くに服が置いてあるだろ。

 案の定5分もしないうちに俺の羽織を持って戻ってきた四楓院夜一。

 ルキアはさっきから猫を探してる。

 目の前のそいつだが、まぁわからないよな。

 

 夜一……さんの姿は、漫画で一度見た四楓院家の正装だろう。

 流石に外向けではない結婚式でも正装はする様だ。

 

 改めて挨拶した訳だが、拳骨した事に関しては笑っていた。

 まぁ、貴族にそんなことする奴なんて普通は居ないよな。

 しかも当主に。

 

 そんで本題らしき、緋真とのやり取り。

 世界最強とは吠えたなと霊圧をぶつけて来た。

 ルキアを見ても平然としてる様子から俺にだけぶつけてるんだろう。

 

 俺もただ吠えた訳じゃない。

 たとえ死ぬ可能性が高くても、緋真を護って自分も生き残る。

 俺が死んだら結局緋真を悲しませるからな。

 だから俺も霊圧を高めるつもりで睨みつける。

 原理はわからんが、こうすると霊圧が飛ぶらしい。

 そこらへんの感覚はわからん。

 何せもと一般人だからな。

 

 暫くそうしてると、唐突に霊圧のぶつかり合いは終わりを迎えた。

 夜一が大笑いしたからである。

 過保護だと笑われたが、それもまた愛の示し方だろう。

 まだ可笑しそうに笑う夜一は、披露宴では共に酒を飲もうと言って去っていった。

 気紛れな猫さんである。

 

 結婚式は粛々と行われ、無事に婚儀は終了した。

 二人の指輪の交換を見た時は……まぁ、幸せそうで何よりと思った。

 嘘じゃねえ、ほんとだぞ。

 

 いつもよりもさらに綺麗に見える緋真にルキアはキラキラとした目で見ていたな。

 

 どうやらこの結婚は大々的に行わないらしい。

 次期当主は、蒼純であることから大事にしなくても良いだろうと、仲の良い人達だけで行った訳だ。

 それを提案したのは白哉らしい……緋真の事をよく考えてくれているな。

 やはり、緋真を任せられるのは君しか居ない!

 

 なんて考えてた俺はきっと酔っていたのだろう。

 それもこれも夜一(呼び捨てにしろと言われた)の所為だ。

 あの猫やろう……親しい人達だけだからってハメ外し過ぎだろう。

 俺は今日会ったばっかだぞ。

 

 肩組むな、酒を無理矢理飲ますな、俺のペースがあんだよ。

 少しはっちゃけた記憶があるが細部までは思い出せん。

 気が付いたら大広間で雑魚寝していた。

 それで良いのか大貴族。

 

 俺の腹の上にはルキアがグデーっとしていた。

 右膝には夜一、左膝には緋真が居た。

 待たんか、おい、初夜はどうした?

 

 周りをよく見ると、銀嶺殿が壁に背を預けて膝を立てて寝ていた。

 何処ぞの武士の様だ。

 蒼純殿の姿は見えんが、白哉は横になってる緋真の膝で寝ていた。

 兄の目の前で膝枕とは良い度胸だ。

 

 どうしたものかと思っていると、蒼純殿が掛け布団を持ってきた。

 なぜ使用人にやらせないのかと問うと、流石にこの状態は見せられないとのこと。

 まぁ同感である。

 

 蒼純殿が持ってきた掛け布団を全員にかけて行く……蒼純殿、白哉の顔が布団の中だが良いのか?

 白哉の体にも掛け布団をしているが、蒼純殿もやはり酔っているのだろう。

 よく見れば顔が赤い。

 全員に掛け布団をかけた蒼純殿は満足げに頷くと、一度立ち去り、敷布団と掛け布団を敷いて部屋の真ん中で寝た。

 

 うむ、やはり酔っている様だ。

 さて、どうしたものか……俺の身体に自由はない。

 となれば、寝るだけだ。

 

 俺はおとなしく意識を飛ばした。

 

 




朽木家、完全にキャラ崩壊。
白哉だけでなく、銀嶺さんと蒼純さんまでその被害に……
けど、朽木家が幸せになるためだし仕方ないよね!

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