転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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み、皆さんのおかげで日間一位、週間4位まで上がりました!?
今回は話を作るのが大変で時間が掛かってしまいました。
これからもこの作品を宜しくお願いします!


第七話 私の嫁入り

 白哉さんに求婚されてから数日で私の嫁入りが決まりました。

 兄様が白哉さんに条件を出したらしいのですが、細かいことは教えてくれませんでした。

 

 白哉さんと共に居られる……そう考えるととても嬉しいのですが、同時に小さな不安を感じました。

 まだ心の準備ができていなかったのでしょうか……?

 銀嶺様も蒼純様もお優しい方で、ルキア共々凄く良くしてもらいました。

 あの方達の娘になる事に不安はありません。

 では、私は一体何に不安を感じているのでしょうか……?

 

「だが最低でも一月後だ。それを守れないなら緋真はやらん」

 兄様の言葉に残念に思いつつも、安堵している……そんな私の心を読んだのでしょうか?

 兄様は私を一瞥すると小さく微笑んでました。

 

 どうやら、お見通しみたいです。

 

「ねえさまはどこかへゆくのですか?」

「私はね、白哉さんと一緒になる為に引越しするの」

「ねえさまはでていかれるのですか!?」

 ルキアがすっごく驚いた顔をしている。

「ルキア、緋真は幸せになる為に白哉へと嫁ぐのだ」

「とつぐ……?」

「好きな人と生涯を共にする事、それはとても嬉しい事だ……ルキアにはまだ難しいかもしれんな」

 兄様が頭を撫でながらルキアに説明してくれました。

 

 ルキアは兄様と私を交互に見たあと、じっと私を見上げてきました。

「ねえさま!」

「なぁに?」

 しゃがんでルキアに目線を合わせると、瞳がウルウルと潤んでいた。

 やっぱり止められるかしら?

 そんな事を考えた私の思考を、ルキアは振り切った。

「ねえさまがしあわせになるなら、わたしはおうえんするぞ!」

 力強いルキアの言葉に涙がこぼれそうになった。

 この子はまだこんなに小さいのに、人の事を思いやれる優しい子になっていた。

「ぜったいしあわせになるのだぞ!」

 ルキアが胸を張って、私を激励してくれた。

 

 私はもう涙をこらえる事ができなかった。

「うん、幸せになるね……! いっぱい、いっーぱい幸せになるからね……ッ!」

「ねえさま……うぁぁぁぁあん!」

「ありがとうっ! ルキア!」

「わたしを、おいていぐんだがら! じあわぜにならないどおごるのだがらな! ヒグッ」

 ルキアをぎゅっと抱きしめて私達は大泣きしました。

 私は世界で一番幸せな姉です。

 

 泣いているとふと頭を撫でられるのを感じました。

 ボヤけた視界で見上げると、兄様が小さく笑いながらも泣きそうな顔をしていました。

「いつでも帰って来い、ここはずっとお前の居場所だ」

 その言葉に、完全に涙腺が崩壊しました。

 今までにないくらいに大きな声で泣きました。

 

 兄様は卑怯です。

 こんな時に、そんな顔で、そんな言葉をくれるなんて、最低です。

 けど、私の世界で一番最高の兄様です。

 

 

 

 ルキアと兄様に泣かされた翌日から、これからどうしようかと考えています。

 あと一月もすれば、わたしは大貴族の朽木家へと嫁ぎます。

 お爺様方は貴族の責務なんて気にしなくていいと、仰られましたがそうもいきません。

 白哉さんの妻として恥ずかしい行動はできません。

 

 きっと色々と戸惑うこともあるでしょう。

 ですが、朽木家の皆さんは私に良くしてくれました。

 その恩に報いるのです。

 

 ……だから、最後になるかもしれないんですから甘えても良いですよね……?

 

 

 私は、ルキアと一緒に兄様に着いて回りました。

 一緒に農作業したり、お料理をしたり、ちょっと恥ずかしかったですけど、膝枕してもらったりしました。

「そういう事は白哉にしてもらいなさい」

 って怒られちゃいましたけど、家を出る前に如何してもやりたかったのです。

 

 

 今まで私とルキアを護ってくれた大きな背中にぎゅっと抱きついてみました。

 兄様達と離れることを考えると涙が出そうになりました。

 ルキアとも一杯遊んで、家族全員で一緒に寝ました。

 

 そんな楽しい一月はあっという間に過ぎて行きました。

 今日、婚儀を終えたら私は正式に白哉さんの妻となります。

 

 正装した兄様がルキアを背負って、私は白哉さんに抱き抱えられて朽木家へと向かいました。

「ようやく……だな」

「はい」

 白哉さんの腕の中で少し擦り寄ると、ビクッと反応しました。

 その様子がおかしくて少し笑ってしまいます。

「緋真には、格好の悪い所ばかり見せるな……」

 少し落ち込んだ様な声に、私は小さく笑いました。

「そんな貴方でも良いんです。格好の良い姿も、悪い姿も……全部大好き……です」

 言い切ったら顔がすごく熱いです。

 

「……だが、今日くらいは格好付けさせてくれ」

「はい……旦那様」

「ッ!?」

 フフフ、可愛い人ですね……私にもダメージはありましたけど……ふわふわと夢見心地の所為でしょうか?

 こんなやり取りがとても楽しいです。

 ……兄様の視線が痛いので程々にしておきましょう。

 

 朽木家へ着いた私は、使用人の吾妻さんに控え室へと案内されました。

「遂に緋真様が嫁いで下さるのですね! 私は昨夜から楽しみで眠れませんでした!」

「ふふふ、吾妻さんたら本当に眠れなかったんですね、隈出来てますよ?」

 私がそう言うと鏡を覗き込んで、自分を睨みつけてました。

「うーん……白粉が足りなかったかな……って! 私の事はどうでも良いんですよ! それよりも緋真様! 白無垢に着替えましょう! 私も手伝います!」

「お願いします」

 

 吾妻さんに手伝ってもらって私は準備を整えました。

 白無垢に着替え、顔には白粉を塗り、唇に紅を引いて、髪を整える。

 少しして鏡に映る姿は、普段の私からかけ離れた顔をしていました。

「うんうん、綺麗ですよ緋真様。流魂街出身だなんて思えないほど気品があります!」

「あ、ありがとう……」

 

 思わずボーっと自分の姿を眺める。

 ただの緋真から、大貴族朽木家の嫁になる……今更ながらに不安がこみ上げてきました。

 白哉さんと一緒になれる……とても嬉しいですが、私で良いのでしょうか……?

 白哉さんなら貴族の方からもっと相応しい方と出会えたのでは……。

 

「ねえさま!」

「る、ルキア?」

 突然飛びつかれてとっさに抱きとめると、兄様も居ました。

「ねえさますごくきれいだ! おひめさまみたいにな!」

「あぁ、凄く綺麗だ」

「あ、ありがとう……」

 兄様にも褒められると少し照れくさいです。

 

「ふむ……?」

「?」

「おぉ、なんだこれは? てがしろくなるぞ」

「……ルキア、あまり遊ばぬようにな」

「うむ! わかっているぞ!」

 兄様が化粧品に興味を持ったルキアを注意すると、私の正面に腰掛けて私をじっと見てきました。

 

 特に何も言わずにじっと……やっぱり兄様には私が思ってることもお見通しみたいです。

 暖かい炎の様な赤い瞳が、話を促しています。

 その瞳から少し目を逸らして、小さく言葉を紡ぎました。

「白哉さんと一緒に過ごせることは凄く嬉しいんです……けど、本当に私で良かったのでしょうか……? 私は言ってしまえば平民の出で、もっと相応しい方がいらっしゃったのではないでしょうか……? 式を挙げる直前になって……そう思ってしまいました……」

 

「そうか……緋真」

「……はい」

 視線を上げると、兄様が優しく微笑んでいました。

「緋真の不安に答えられる言葉は少ない、だが忘れるな、白哉は緋真を選んだのだ、他の誰でもない緋真をな」

「……はい」

「フッ、言っただろう? 離れていても緋真の居場所はずっと家族(ここ)にあると、疲れたらいつでも帰ってこい、緋真は溜め込んでしまうからな」

「……そんなことありません」

 兄様の言葉にツイと顔を逸らしてしまいました。

 

「もし緋真が泣いているのなら、私は世界を敵に回しても良い」

「もぅ、何言ってるんですか……」

「私は本気だぞ? なにせ……」

「?」

 珍しく兄様が悪戯っ子みたいな笑顔を浮かべました。

「世界最強の妹大好きな兄だぞ?」

「わたしもせかいさいきょーのあねうえだいすきないもうとだぞ!」

「おぉ、そうか! なら私達が居れば敵は居ないな」

 ルキアと兄様のやり取りに、笑いが抑えられませんでした。

「ぷっ、あははははは! 兄様もルキアも何言ってるんですか、うふふふふ」

「ふむ、何やら笑われておるぞルキアよ」

「わらわれておりますね、ひびきにいさま」

「も、もうやめてください、ふふ」

 

 こんな素敵な兄と妹が居るのですから、私も胸を張りましょう。

 いつの間にか感じてた不安が何処かへ行ってしまいました。

 本当に二人には敵わないですよ。

 

「……大丈夫そうだな」

「うふふ、お陰様で」

「なら後ほど会おう、ルキア行くぞ」

「はい! ひびきにいさま!」

 去っていく二人の背に、感謝を込めて頭を下げました。

 兄様、今まで本当にありがとうございました。

 

 兄様のおかげで、私は最愛の人と出会うことが出来ました。

 

 これからは白哉さんと二人で頑張っていきますのでどうか見守っていて下さい。

 

 




酔っ払った主人公を入れるつもりだったけど、文字数が倍以上に増えそうだったので断念。
次は銀嶺さんの視点で、朽木家から見た緋真の嫁入りと白哉の様子、主人公との絡みを書いていきたいと思います!

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