(・・・ちょっと待て、何だこれは。)
「お・・・俺が・・・、2人・・・?」
「あ、あれ?ど、どっちがどっちだクマ?」
(・・・何だ、この状況は。)
悠は目の前の光景に驚愕の反応よりも、こんな思考が浮かんできた。
一体何故花村がもう1人いる?そういえば、以前読んだ本の中に似たような表現があった気がする。確か・・・・”ドッペルゲンガー”だったか?
『ククククク・・・・・。』
「な・・・何がおかしいんだよ・・・?」
悠がそんな事を考えている傍らで、突如現れた『花村陽介』の不気味な笑みに花村は反応する。
『花ちゃんの事、ウザいと思ってた・・・・か。ハッ、そー言ってる方こそウザいっての。』
「な・・・っ!?」
「っ!こ、この反応・・・!」
「・・・?知ってるのか?」
『てか、何もかもウザいって思ってんのは・・・・・・、自分の方だっつーの!
アハハハハハハハ・・・・・!」
途中でクマが何か気づいたようで、悠が聞いてみるものの、片方の『花村陽介』が狂ったような笑い声が響いた。
「あいつは・・・、『シャドウ』だクマ!!」
「・・・『シャドウ』・・・・?」
クマから出た聞き慣れない単語に悠は首を傾げた。
「・・・何だそれは?」
「抑圧された内面が具現化した存在・・・。それがシャドウだクマ。」
「・・・抑圧・・・?」
とりあえず、アレは花村陽介とは違うのだろうか。よく見れば、不気味な笑みを浮かべている方は金色の目をしており、背後からどこか禍々しい青いオーラが出ている。しかし、抑圧された内面、とはどういう事なのだろうか・・・。
『いつまで媚びへつらってイイヤツ面してんだよ?本当は商店街もジュネスも、全部ウゼーんだろ!?
そもそも・・・こんなド田舎暮らし自体、ウゼーくせになぁ!?』
「な・・・、何言ってんだ・・・!?俺は・・・そんな事思ってない・・・。」
シャドウと呼ばれた『花村陽介』の言葉に花村は反論する。しかし、その声は次第に弱まっていく。
『孤立すんのが怖くて、うまく取り繕ってヘラヘラして。半年前からそうやって誤魔化して。鳴上が来た時だって、そうだ。』
シャドウの『花村陽介』の言葉に花村は肩を震わせる。
(・・・?)
途端、悠は違和感を感じた。2人の花村陽介に対して。何かが、おかしい。
『「助けてくれたお礼に」?
そんなもん、ただの建前。本当はただ誰かといたかっただけ。誰かと話したかっただけだろ!?
転校生のコイツならって、勝手に期待してよ!1人は寂しいもんなぁ、誰かと一緒にいたいもんなぁ!?』
「・・・・・・・っっ!!」
シャドウの『花村陽介』の言葉に、花村は息を飲んだ。その顔には、信じたくない、と言いたいようなーーーー
(・・・・・あ・・・。)
何かが、繋がった。違和感の、正体が。
『小西先輩のためにだぁ?本当はそんなんじゃねぇのによ。
お前はココに来た時からワクワクしてたんだ。大好きな先輩が死んだって言うのに・・・何か面白い事があるんじゃないか、期待してたんだろ!?
こんなクソつまんねーもんが吹き飛ぶようなってなぁ!?』
「っ、違うっっ!!」
シャドウの『花村陽介』の言葉に花村は声を荒げる。
クマは、本当の事を言っていた。比喩でも、例えでもなく、ただ本当の事を。
ココは、偽りのないセカイ。鏡が何かを映すように、このセカイも『ありのまま』を映す。
『カッコつけやがってよぉ・・・。あわよくば、ヒーローになれるとでも思ったんだよなぁ?大好きな先輩が死んだっていう、らしい口実だってあるしなぁ・・・?』
「違う!!なんだよ・・・、なんなんだよお前!!」
抑圧された、心。それは・・・・・認めたくない、知りたくない『自我』。
つまり、あの『花村陽介』はーーーーー
『俺は、”お前”・・・、お前は”俺”・・・。
お前の・・・・・”影”だよ。』
花村の、『知られたくない本心』ーーーー。
「ふざけんな!!お前なんか、俺じゃない・・・・。」
花村はギッ!とシャドウの『花村陽介』を刺すように睨み、そしてーーー
「お前なんか・・・・・俺じゃない!!」
悲痛な『拒絶』が響いた。
『フッ、ククク・・・・、アッハハハハハハハハハ!
ああそうさ!俺は俺だ・・・・お前なんかじゃない!!』
拒絶された『花村陽介』は、狂ったように高笑いし、突如黒い影が彼に吸収され、背後の青いオーラが湧き出してきた。
その様子に悠の中で危機感が走った。
”マズイ・・・・・ッ!”
そう感じ取ったと同時に花村の腕を取ろうと手を伸ばすもーーー
バンッッ!!
「クッ!」
寸での所で影の塊から衝撃波が襲い、まともに受けた悠は地面に背を打つように吹き飛ばされた。体を起こして辺りを見回すと・・・
(あ・・れは・・・・っ!?)
『ジャッジャジャーーーン!!』
黒い影が晴れたその先には、下半身が迷彩のカエルに黒い人型が生えた巨大な異形が現れた。
「ヒッ、ヒエエエエエ~~~~!シャドウが暴走したクマ~~~~!!」
悠と同様に吹き飛ばされていたクマの悲鳴が聞こえた。
(傍観している場合じゃなかった!アイツが出てきた時点で逃げるべきだった・・・!)
『我は影・・・、真なる我・・・・。』
悠が悔やんでいる間にも、目の前の異形はゆらゆらと揺れながら抑制なく呟いた。
『退屈なモンは全部ブッ壊す。まずは・・・』
その言葉に悠はすぐに走り出しーーーー
『お前からだッッ!!』
異形の巨大な手が倒れていた花村に振り下ろされた。しかしーーー
ドッカァァァァァン!!
「ユ、ユー!ヨースケー!?」
間一髪悠が間に合い花村を庇い離脱したが、巨大な手が地面に直撃した衝撃に2人とも吹き飛ばされた。
「ケホッ、ケホッ・・・!」
埃が混じった煙に軽く咳き込むも、体を起こす。花村がいた所は、異形の手によってクレーターが出来上がり、地面の破片が散らばっていた。
(あんなの喰らったら、死ぬ・・・!)
「花村!花村っ!!」
「うっ・・・、な、るか・・・み・・・。」
花村に声を呼びかけても、その返事は弱弱しい。花村は意識を失いかけているようだ。ならば花村を運ぼうと前に回り込む。
ーーー我は汝・・・。汝は、我・・・・。
(っ・・・!こんな、時に・・・!)
突如聞こえてきたあの声と耳鳴りに頭を抱え、膝を着いてしまう。
「ユ、ユー!?何してるクマ!?早く逃げるクマ!!」
悠の様子に慌ててクマが駆け寄って来たが、当の悠は耳鳴りのせいでクマの声が聞き取れなかった。
ーーー汝、目覚めの時が満ちた。我、汝の”力”とならん・・・。
(目・・・覚め・・・?)
異質な、しかしどこか清浄な感覚が体中を駆け巡ってくる。
(・・・?)
「・・・な・・・んだ・・・・?」
頭上から、青白い光が輝いた。異形も、突如の光に警戒して動けなくなる。
よく見ると、1枚のカードのようなものから発光している。光は、ゆっくりと悠の右手に落ちてきた。そのカードには、タロットの『愚者』の絵ーーー。
(・・・ああ、そうかーーー・・・。)
なんとなく、分かった気がする。
この声は、一体何なのか。
この感覚が、何故懐かしいのか。
カードは悠の掌の上でクルクルと回って光を淡く輝かせている。
ーーー汝、我が双眸見開きて・・・・。
あの鉄仮面の巨人は、一体何なのか。
あれは、敵じゃない。
あれはーーーー
ーーー今こそ・・・発せよ・・・!
他ならぬ、『俺』・・・・。
「ペ・・・」
悠の声に答えるかのように、足元から仮面の魔方陣が浮かび現れた。
「ル・・・」
その魔法陣から、光と風が溢れ・・・。
「ソ・・・」
やがて、魔方陣とカードが一際強く輝き出しーーー。
「ナ・・・・!!」
ーーーーパキィィィン!
悠がそのカードを握り潰したと同時に、ガラスのような音と共に魔方陣も砕けた。
すると悠の背後から青白い光とオーラが溢れ出てくる。同時に、悠の身体中に”何か”が出てくる感覚に支配されーーー。
「・・・ウオオォォォォォーーー!!」
悠には似合わない雄たけびに答えるかのように、背後のオーラから巨大なシルエットが徐々に現れる。
「鳴上・・・!?」
「オヨヨヨヨ~~~~~!?」
『な・・・っ、なんだよ・・・これ・・・!?』
それぞれの戸惑いの声を無視し、光とオーラが晴れ・・・・その姿を現した。
それはかつて悠の前に出た、鋭い手で巨大な剣を手にし、白い鉢巻きと黒い長ランを身に纏った”鉄仮面の怪人”ーーーー。
ーーー我は、汝・・・。汝は、我・・・。
悠の背後の怪人から、低い声が響いてくる。
ーーー我は、汝の心の海より出でし”静の者”・・・、『愚者』の剣士・・・。
ーーー我が名は・・・、『イサナギ』・・・・。
「・・・さあ・・・・、」
その声に答えるように、イサナギは剣を構え、悠は目の前の『異形』に顔を上げる。
「これが・・・、プロローグだ・・・!」
『ペルソナ、覚醒』、やっと完成しました。
主人公、やっとイサナギを出しました。次はVS陽介です。
感情を失いかけた主人公は、一体何を見ていくんでしょうかね。はたしてどうなる事やら。
主人公に決め台詞を付けました。身勝手かつノロマな作者ですいません・・・。
『次回予告』
突如覚醒した謎の力、『ペルソナ』でシャドウの『花村陽介』に対抗する悠。しかしーーー
『ヒャッハア!そんなモンかよっ!?』
「ク・・・!」
戸惑いの中で苦戦する悠。まさに、死闘ーーー。
「お・・・俺は・・・・っ。」
己のシャドウに苦悩する陽介。
「あんな・・・っあんな訳分かんねー奴らのせいで・・・、先輩は・・・っ。」
残酷な真実による陽介の涙。
”愚者”鳴上悠はーーーー。
次回、『魔術師の涙』。お楽しみに!