ペルソナ4~真実を追う者~   作:メイプルメモリーズ

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魔術師の涙

(…ペル…ソナ……。)

 

今自分の背後で剣を構える“ソレ”は、かつて危険視した鉄仮面の巨人。

しかし、イサナギと言う鉄仮面の巨人は敵ではなく、ペルソナという『力』。

そして今初めて気づく、手に握られた刀。

刀の柄には白と黒半分に分かれた顔の紋様があり、刃は銀色に輝いている。

 

 

 

『プロローグだぁ?ウゼェんだよ!!』

 

 

 

花村のシャドウが襲い掛かるが、イサナギが前に出てきてそのまま突撃した。いや、悠自身がイサナギにイメージを送り、そうさせたのだ。

 

 

『うぉわ!?』

 

 

突撃された花村のシャドウはバランスを崩し、後ろに倒れる。その隙を突いて悠は花村のシャドウへ近づき---

 

 

「…フッ!!」

 

『ぐぁ!!』

 

 

力を送り、刃が青い光を帯びた刀で花村のシャドウを切る。シャドウの方も刀のダメージを受けて傷口から黒いモヤが溢れている。

どうやら、力を送れば武器でも効き目があるようだ。

 

 

『っクソがあ!調子乗るんじゃねえよ!!』

 

「ぐあ…!!」

 

 

シャドウの巨大な手に吹き飛ばされ、壁に激突する。さらに追い打ちをかけるようにシャドウが拳を目がけてきた。

 

 

「っ、イサナギ!」

 

 

 

間一髪イサナギに抱えられる形で避けられ、さっきまでいた所から激しい轟音と煙が出てきた。

 

 

(戦えそうではある…。だが、気が抜けない!!)

 

 

体中が叩き飛ばされたダメージで、決して自分は無敵になった訳ではない事を思い知らされる。これは文字通りの真剣勝負だ。

 

 

「ユー!聞こえるクマか!?」

 

 

 

不意にクマの声が聞こえてきて辺りを見回してみると、物陰にこちらを覗いているクマとぐったりしている花村がいた。

 

 

「落ち着いて聞くクマ!シャドウには弱点がある奴がいるクマ!ユーの力で色んな事、試してみるクマー!」

 

「弱点…?」

 

 

攻撃を変えろ、って言う事か?だが、どうやって…!?

 

 

(…いや、分かる。)

 

 

イサナギが、もう一人の俺が、教えてくれる。イサナギに宿る『技』が------!

 

 

「イサナギ!<ジオ>!!」

 

『ぐあっ!?』

 

 

俺の叫び声と同時に一筋の雷がシャドウの足元に落ち、激しい音と同時にシャドウが後ろに転がった。

 

 

「<スラッシュ>!!」

 

『ウギャアッ!!』

 

 

尻もちをついて体制を崩した所をイサナギで斬撃をし、ダメージを喰らったシャドウは後ろに激突した。

 

 

「や…、やったか……?」

 

 

煙で視界が遮られている中、体の力が抜けてくる。

 

 

「!!ユーー!構えるクマーーー!!」

 

 

クマの叫び声が聞こえてきた時だった、

 

 

『ふ…、ざけんなあああああああ!!』

 

 

「うわあああああああああ!!!」

 

 

突如の緑色の光を帯びた豪風が襲い掛かり、壁に激突した。

 

 

「…うっ…ぐ……っ!」

 

「ユーー!」

 

「来るな!!」

 

 

駆け寄ろうとしたクマに悠の鋭い声でビクッ、と震えたが、クマは泣きそうだ。大きな瞳に今にも溢れそうな涙が浮かんでいる。

 

 

(アイツの風…イサナギの雷と力が似ていた…。シャドウも魔法技が出せるのか!?)

 

 

激痛が回る体を耐え、再び立ち上がる。しかし足は震えており、一歩足を出すだけでも痛みが走る。

 

 

『ヒャッハア!そんなモンかよっ!?』

 

「ク…!」

 

 

シャドウの拳の連打を避け続けながら、再び距離を取る。

 

 

(長くは戦えない…。このままでは……!)

 

 

『ちょこまかウゼェんだよ!!』

 

「…!」

 

 

上からシャドウの拳が降ってくる所を即座にイサナギにイメージを送り、抱えられて横に避ける。

刹那、悠がいた場所から大きなガラスの破壊音が響く。

 

 

『うぶっ!んだよコレ!?』

 

 

見ると、何かの液体がシャドウを濡らしていた。鼻にくすぐる香りから、アルコールだと判断できた。

そして気づく。ここは酒屋。あのシャドウのように自身が出した大ぶりな攻撃なら、収納された酒類が破壊され中身を自身に被ってしまう。

辺りを見回してみると、周りはアルコールで床が濡れている。中には破壊された棚からアルコールが床へと流れ落ちているのもあった。

この光景を見て悠の脳内に一つの策が浮かんだ。

 

うまくいくか分からない。しかし、それでも------

 

 

(この策に、賭ける!!)

 

 

「クマ!花村を連れてできるだけ離れろ!!」

 

「ク、クマ!?でもっそれじゃユーが……!!」

 

「行け!!!」

 

 

クマは悠を置いていく事に戸惑っていたが、悠の鋭い声に体を震わせるも急いで花村を抱えて出口へ走る。

 

 

『逃がさねぇよ!ソイツは俺が殺すんだ!!』

 

「させない!イサナギ!!」

 

『グフォア!?』

 

 

シャドウがクマ達に気づいて襲い掛かるも、より早く回り込んだイサナギがシャドウを蹴り飛ばした。クマ達が部屋から出て行ったのを確認して、再び向き直る。

 

 

『消えろぉーーーー!<忘却の風>!!』

 

 

シャドウの言葉と同時に緑色の光を帯びた烈風が吹き荒れ、周囲が壊されていく。

 

 

『ハァー…、ハァー…。』

 

 

視界を遮る煙が晴れていく。シャドウは周りを見渡す。

 

 

『…いない!?』

 

 

敵である悠がいない。いくら辺りを見渡しても見つからない。

 

 

『どこだ!!どこにいるんだよ!?』

 

「…ここだ。」

 

 

悠の声が、上から聞こえた。悠はイサナギに抱えられた状態で自分の真上に浮かんで見下ろしていた。あの攻撃を受ける寸前、攻撃範囲外である自分の真上に避難する事で逃れられたのだ。

目の前の敵である悠に恐怖を覚え、思わずへたり込んでしまう。

 

 

「…これで、エンディングだ。」

 

 

その言葉にさらに気づいた。今の自分は酒で濡れている。そんな状態で“アレ”を喰らえば---

 

 

「<ジオ>っ!!」

 

『グギャアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

イサナギが出した雷がシャドウに落ちた。濡れていた床が電気を伝染してさらにシャドウを襲い、シャドウの悲鳴が空間を支配する。

 

 

『フッ、フザケンナアアアアアッ!!』

 

 

シャドウの悲鳴と同時に、黒い煙が自身を包み、姿を消していく。やがて、黒い煙が晴れた場所には、力尽きて倒れた人間態の“シャドウ”が残った。

 

 

「お…っ、終わった……?」

 

 

静寂が戻ったのを確認して地面に降りる。着地した途端に痛みが走ったが、耐えられない程ではない。

 

 

「ユーーーーー!!」

 

 

後ろからクマの声が聞こえる。振り向くとクマが花村を抱えてこちらに向かってきた。恐らく、シャドウが弱ったのを感知して戻ってきたのだろう。

 

 

「さっすがセンセイクマ!シャドウを倒すなんて、なんてスゴイ力クマ!」

 

 

「うっ…、あれ、俺…?」

 

 

センセイと言う言葉にひっかかっていたが、花村の目が薄く開いた。どうやら意識を取り戻したらしい。

 

 

「どう、なってんだ…?化け物は…?」

 

「倒した。」

 

「倒したって----鳴上!?そのケガ……!!」

 

 

花村の声でクマも悠の状態に気づいた。

悠の体はあちこち泥などで汚れていた。よく見れば、悠の整った顔にいくつかかすり傷が出来ている。文字通り、ボロボロの状態だ。

 

 

「お…俺の、せいで…っ?」

 

「違う。花村のせいじゃない。」

 

「で、でも---」

 

 

ふと花村の声が途切れた。よく見ると、花村は自分ではなく、後ろに目がいっている。視線を辿ると、花村のシャドウがジッと見ていた。まるで、遠い場所から傍観するように。

 

 

「お…お前のせいで、鳴上が……。

お前は……お、お前は、俺じゃない……。」

 

『…。』

 

 

花村は力なく首を横に振り、否定した。気のせいか、シャドウは悲しそうに眉を歪んでいる。

 

 

「ヨースケ…。あれは元々、ヨースケの中にいたものクマ。ヨースケが受け入れなかったら、シャドウは暴走するしかないクマ…。」

 

 

クマが悲しげな声で話す。その言葉に花村は目を見開いてクマを見る。

 

 

「んだよ、それ…?あんなのが、俺…?」

 

 

最初は呆然と嘆き、次第に花村の表情が歪んでいく。

 

 

「あんなのが…、あんなのがっ!俺だって言うのかよ!?

こんなの…認めろっていうのかよ!!」

 

 

 

信じたくない。

 

 

周りの物全部を否定し、己の心を弄び、挙句ーーーー鳴上まで傷つけた。

 

 

こんな醜い存在が、自分?

 

 

嘘だ。こんな汚くて、醜くて。

 

 

こんなの、知らない------。

 

 

 

 

花村は頭を抱え、首を横に振る。強烈な拒絶感を抱えて。

 

 

 

「花村。」

 

 

不意に、悠の声が聞こえた。恐る恐る顔を上げる。

悠は傷だらけの顔で自分を見ている。感情が見えないあの灰色の目に、心を見透かされそうな錯覚が生まれる。

 

 

「1つ、答えろ。

…小西早紀への想いは、偽物だったのか?」

 

「…え?」

 

「花村は、本当に小西早紀を好いていたのか?」

 

 

やっと理解する。

 

 

一体こいつは、何を言っている?

 

 

「…ふざけんなよ……。お前だって、知ってるだろ?

俺は先輩を---」

 

 

 

 

『…好きだった。』

 

 

 

 

自分の言葉が遮られた。後ろを見ると、シャドウが悲しそうに顔を歪ませてこちらを見ていた。

 

 

『好きだった!本気で好きだった!!

ウザがられてるって分かってても!……それでも好きだった!!

なんでっ!なんで…死んじまったんだよぉ…っ!!』

 

 

シャドウは涙を流して叫び、最後は俯いてただ泣いていた。

 

 

「お前…」

 

「…花村、お前の目はどう映っている?」

 

 

花村はジッとシャドウを見つめた後、困ったように頭をかいた。

 

 

「…ムズいな、自分と向き合うって……。」

 

 

花村はシャドウの目の前まで歩いていき、金色の瞳から目を逸らさずに手を差し伸べた。

 

 

「本当は…分かってたんだ。でも、みっともねーし、どーしようもなくって…、……認めたく、なかった。

お前は俺で、俺はお前か…。全部ひっくるめて、俺なんだよな…。」

 

『…気づくのが遅いっての。』

 

 

シャドウは小さく悪態を尽く。しかしその顔は清々しい。

 

 

『仕方ねーから、もう少し付き合ってやるよ。…お前、俺がいねーとウザいだけだもんな……。』

 

 

シャドウが微笑んだ直後、その姿に青い光が包み込んだ。直後、----ペルソナが現れた。

白いツナギと風になびいた赤いマフラーを纏い、シャドウの面影が残るもヒーローのような、巨人。

 

 

「……これからは一緒だ。」

 

 

花村の声と同時にジライヤはタロットカードに変わって、花村の目の前に降りて花村に溶け込んだ。

迷いのない、清浄な光と共に…。

 

 

 

---我は汝、汝は我…。我は汝の心の海より出でし“動の者”…、『魔術師』の戦士……。

---我が名は、『ジライヤ』なり……。




お…遅れてスイマセン……。戦闘シーンが思った程思い着かなくて伸びに伸びました。
で、やっとできたと思ったら今度は文字数との戦い……前途多難です。
しかも予告通りに書けてないという……。
こんな私でも読んで下さる皆様に感謝が尽きません…。


『次回予告』


「千枝ね、スッゴク頼りになるの。いつも引っ張ってくれて……
千枝なら、きっとあなたとうまくやっていけると思う……。」


雨の中、儚げな空気を纏う天城。


「雪子がっ!……雪子がいないの!!」


天城の失踪に困惑する千枝。


「鳴上、頼む…。
…もう一度だけ、力を貸してくれ……!」



次回、『魔術師の決意』。
お楽しみに!!
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