マヨナカテレビ
「お・・・おぉ!?おわぁっ!?」
ドンガラガシャ~~ン!!
「だ・・・誰か~~・・・。」
「・・・・・・。」
4月13日。
学校へ向かう途中、後ろから自転車が駆け抜けて行き、近くのゴミ捨て場に激突。
自転車の持ち主だろう男は、上半身ゴミ箱に突っ込んだ状態で転げ回っている。
(マンガみたいな事、起こるモノなんだな・・・。)
仕方ないので、男を救出した。
「おおぅ・・・。なんなんだ、昨日の後遺症かっての・・・。」
(・・・あ。)
顔を見た途端、気づいた。
確か、昨日里中に蹴られてたヤツ。
「ありがとな、マジ助かったわ。
えーと・・・確か・・・、鳴上?だっけ?」
「ああ。・・・大丈夫か?」
「ああ、ヘーキヘーキ。
俺、花村 陽介。よろしくな。」
「・・・ああ。」
挨拶もそこまでにして、一緒に登校する事になった。
「どーよ、この町にはもう慣れたか?」
花村が当たり障りのない話をしてきた。
「・・・そこそこ。」
「そっか。・・・良かったら、帰りメシ食いに行かね?
町の案内も兼ねて。」
驚いた。
転校して早々、そんな誘いが来るとは思わなかった。
「遠慮すんなよ。ここの名物『ビフテキ』の安い店、知ってんだ。
助けてくれたお礼におごるよ。」
「あ・・・、でも「その話、乗ったぁー!」
後ろから声が聞こえ、花村と一緒に振り替える。
そこにはVサインをした里中がいた。
「げ・・・。
お前、メシの話題になると飛んでいくよな・・・。」
「アンタに壊された『成龍伝説』、ビフテキで許してもいいよ?」
「う・・・。わ、わかったよ。」
流れ的に、放課後の約束ができた。本人の意思はスルーの形で。
まあいいか、と考えて2人の会話を聞きながら学校へ向かった。
ーー放課後。
悠達は最近開店したという『ジュネス』のフードコートに来て、悠と里中は花村が来るのを待って席についていた。
やがて、花村が帰ってくる。
「ちょ、何コレぇ!?
ビフテキじゃないじゃーん!」
「三人分だと、ビフテキは無理だっつーの!」
テーブルに置かれたのは4人分のたこ焼き。
ビフテキじゃなかった事に里中が声を荒げ、花村が反論する。
「信じらんない!
今完璧に肉の口になってたのにー!」
「肉の口って何だよ・・・。
悪いな鳴上、今回はこれで勘弁してくれ。」
「・・・いや、嬉しい。」
これは遠慮ではなく、本音。
たこ焼きを食べるのは久々だったので、当の悠に不満はない。
悠は2人の口論を聞きながら先にたこ焼きを食べていたが、3つめを食べ終えた所でふとテレビに視線を向く。
テレビは丁度、昨日発生した事件が報道されている。
「あ、これ、昨日の事件のでしょ?」
悠に気づいたらしい里中。
「まさかこんなド田舎に、こんな事件起こるなんてな!
案外、犯人近くにいたりして・・・。」
「ちょ、やめてよ花村!気持ち悪い・・・。」
「冗談だよ、冗談。」
里中はたこ焼きを頬張りながら冗談を言う花村を睨む。
「・・・・・・あ!せんぱーい!」
すると何かに気づいたらしい花村が勢い良く立ち上がり、大きく手を振った。
視線を変えてみるとジュネスのエプロンを付けた女性がいた。
不思議に思って里中に聞いてみると、小西 早紀という人で、一つ上の先輩らしい。
しばらくその様子を見ていると、小西先輩が気づいたようで、近づいてきた。
「君・・・、転校生なんだってね?」
「はい・・・。」
「都会っ子同士はやっぱり気が合うのかな?
こいつ友達いないからさ、仲良くしてやってね。
・・・ああ、でも花ちゃんお節介でいいヤツだけど、ウザかったらウザいって言いなね?」
「い・・・いえ・・・。」
「先輩、ソレ冗談キツイっす・・・。」
「あはは。・・・じゃあ、そろそろ時間だから戻るね。」
「あ、はい、先輩!」
小西先輩は花村に見送られながら去っていった。
そんな花村を里中がからかって、花村が少し赤くして否定する。
(・・・青春だな・・・。)
「あ、そうだ。ねぇ鳴上君。」
里中がふと思いついたように声をかける。
「マヨナカテレビって知ってる?」
・・・マヨナカテレビ?
「・・・?」
「ああ、確か雨の夜の午前0時に消えてるテレビを一人で見る・・・ってヤツだろ?」
首を傾げる悠に代わり、花村が答える。
「うん。
画面に人が移ったら、それが運命の相手だってよ。」
楽しそうに話す里中。
・・・都市伝説ってヤツか?
というか、消えてるテレビに映像って、軽くホラーなんじゃ・・・。
「お前、よくそんな幼稚なネタでもりあがれんなぁ・・・。」
「よ・・・幼稚って言った!?信じてないでしょ!」
「信じられる訳ねーだろ、普通!」
呆れた顔で言う花村に、里中が幼稚と言う単語に過剰に反応して食いかかる。
「ちょうど今晩雨だし、やってみようよ!」
「やってみようって、オメェ自分でも見た事ないのかよ!
アホくせぇ・・・。」
「絶対だよ!鳴上君も!」
「・・・俺も?」
何故か悠も試す事になってしまった。
ーー0時3分前。
外は雨の音が耐える事なく聞こえる。
マヨナカテレビの事を思い出して、暗闇の中テレビの前に立つ。
・・・特に何も起こらない。
(・・・まさかな・・・・。)
そう思った時だった。
・・ガガ・・・、ピーーー・・・
機械音と共に、制服を着た女性の映像が出てきた。
「え・・・!?」
ただの都市伝説だと思ってた分、これには驚きを隠せない。
ーーーーー・・我は、汝・・・。
「・・・っ!?」
突如頭に響く声と酷い目眩み。
思わず片手で頭を押さえ、よろけてしまう。
ーーーーー我は、汝、汝は、我・・・。
(・・・な、に・・・?)
ーーーーー汝・・・、扉を開く者・・・。
声と目眩みが収まり、ゆっくりと顔を上げる。
画面には、遠い所から人影が見えた。
よく見ると、段々こちらに向かっているように見える。
(・・・鉄仮面の、巨人?)
ーーズポォッ!ガシッ!
「うわっ!?」
画面から手が出てきた手が腕を掴んできて、声を荒げてしまう。
(引きずり込まれる・・・!)
そう思うよりも早く、引き縁に足をつけて抵抗する
だが意外と強い力で、腕が半分ほど画面に吸い込まれる。
(は・・・、離れろ・・・!!)
そう思った時、掴んでいた手がビクッ、と震え、腕を離した。
ーーゴンッ!
「ぐっ、!!」
抵抗の元が突然なくなった事により、引力に従って後ろのテーブルに頭をぶつけた。
ぶつかった痛みが強く、悶絶する。
「・・何だったんだ・・・、今の・・・・?」
荒くなった息を整えながら、思わずつぶやく。
ふと、強烈な眠気に襲われた。
まだ心臓がバクバク動いているにも関わらず、疑問に思いながらも悠はベットに横になり、眠気に任せて目を閉じた。
ーーー夢を、見た。
足首が水に浸る空間の中、一人立ち尽くしている夢。
霧の向こうから、巨大な人影が見えた。
まさか、さっきの・・・!?
そう思って身構えたが、目の前の人影はこちらに視線を向けたまま何もしてこない。
その様子に警戒を感じない。むしろこちらを見てくる視線に、穏やかさを感じる。
ーーー誰なんだ。
思わず、そう問いかける。
ーーーーー我は汝、汝は我・・・・。・・・我、汝の目覚めを感じる。
ーーー目覚め?・・・何を言っている?
ーーーーー汝、目覚めの時なり。我は汝の敵を葬る剣とならん。
ーーーーー我が名は・・・・・・・・。
何か言っていた気がするが、意識が遠のいていく。
段々目を開けるのが辛くなり、目が閉じていく。
ーーーーー汝、まだ目覚めの時にあらず。我、汝の目覚めを待ちし者・・・・・---
最後にこの声を聞いて、完全に意識は暗闇へと落ちた。