これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
「うちの生徒に何してるんですかぁ~」
おっとりとした声が墓場に響く。
白衣を着た、青髪をツインテールにしている少女が歩の腕をつかんでいる。
「だ、大先生!!」
ハルナが不意に叫ぶ。
〔この人がハルナの先生、
まさかこれだけ離れてるのにここまで力が伝わってくるなんて…〕
ピリピリとした雰囲気がここまで伝わってくる。
至近距離にいる歩は嫌と言うほど感じているだろう。
「大先生、離してくれ。コイツはやっちゃいけないことをしたんだ」
「嘘です!私何もやってません!」
歩の言葉に女は異議を唱える。
〔あの女、ここまで腐ってるなんてな…〕
俺は女を睨みつける。
「大先生!アユムを信じてくれよ!」
ハルナも大先生に向かって叫ぶ。
「でもぉ~、この子は良い子ですしぃ~、
何より---今あなたがしてる事がぁ、いけないと思うんですがぁ?」
そう言って大先生は歩を投げ飛ばし、歩は砂利の上を転がる。
歩が立つと同時に大先生はポケットから日本刀を2本取り出し、両手で構える。
〔まずいな…歩だけじゃ100%勝てねぇ。
加勢に行きたいが…正直もう身体動かすのが精一杯だ〕
「大先生!何で信じないんだよ!…アユムは…こいつ等は、良い奴らなんだぞ!」
ハルナが必死で説得しようとするが、大先生は聞かない。
「んー、信じるにはぁ、材料が少なすぎますねぇ~」
そう言って大先生は京子を庇うようにして立つ。
「三人とも下がってろ。俺がやる」
歩はミストルティンを構え言った。
「あ、アユム!あんた大先生に勝つつもりなの!バカなの!」
ハルナはさっきより大きな声で叫ぶ。
「歩。私まで下げるつもりですか?」
そう言ってセラが瞳を真紅に変えて、手にはいつもの葉っぱの剣が握られていた。
「悪いな、俺も戦えればいいんだが…」
「何言ってんだよ。飛翔は十分戦っただろ?そこにいろって」
歩はそう言ってくれた。正直助かる。
「んじゃ、いっちょ行くか!」
「参ります!」
その言葉と同時に歩とセラが大先生に向かって走り出す。
「秘剣、燕返し!」
一番速いセラが切りかかる。
ガキッ、ガキッ、ガキッ!
大先生とセラの打ち合いが続く。
するとセラが歩の方に飛ばされた。
歩はセラを受け止めて、大先生に突っ込む。
ガキィィィン!
日本刀とチェーンソウがぶつかり合う。
「すごいですねぇ~。アユムさんはぁ、私の授業をちゃんと受けたらー、
きっと最強クラスの魔装少女になりますねぇ~」
大先生の前では歩も子供扱いされているようだ。
それでも、力では限界突破できる歩が少しは有利のはず…
だが-----
「そこまでだ…」
ドシャァァ!
急に発生した黒い霧によって、歩と大先生が吹き飛ぶ。
黒い霧を目で追うとそこには怯えていたはずの女が立っていた。
「そんな…なんで…」
「ユー!?どうしたんだ!?」
隣にいるユーは震え、少しだけど声もだした。
まるで何かにおびえるように…
「安心してくれ、ユークリウッド。何もしないからさ」
女はさっきとはまるで雰囲気が違う。何かが女を通して話しているようだ。
「今日はこれで失礼するとしよう。それでは…」
そう言った女の身体を黒い霧が包む。
「…アユムさんが正解だったんですね。逃がしませんよぉ!」
大先生は消えてく女を追う。歩は力を使いきったのか、その場に座り込む。
俺は歩に近づく。
「大丈夫か、歩?」
「あぁ、なんとかな…」
そこにハルナも来る。
「すごいじゃん!大先生相手にあそこまで戦えるなんて!」
ハルナにしては珍しく歩を褒めている。
「歩、歩きづらいです。松葉杖になってもらいます」
歩の意思は無視なんだ…セラ。
俺はユーの方を向く。震えはもう収まっているようだ。
「なぁ、ユー。さっきの奴は一体誰だ?」
するとユーは少し悲しそうな目をしてメモを向けてきた。
『あれは私が消滅させたはずの…
ゾンビの力』
あの事件から数日たった。
おかげで横腹の傷は完治した。傷が悪化したのをユーに知られた時、かなり怒られた。
まぁ、俺が悪いのだが…
結局大先生はあの女〔織戸の友達で入院してた京子と言う人物だった〕を逃がしてしまったようだ。
でも、これからは俺達に協力してくれるようだ。
京子の捜査も続けるそうだ。まぁ、前にあったエルスと言う女性も言っていたが、
この世界での殺しは魔装少女達の法に引っかかるそうだ。
これで、歩が殺された件はひとまず解決したわけだ。
で、今は数少ない休日なのだが…
「なんでプリン作ってたら石鹸になるんだっ!」
「ハルナが用意した食材に問題があると考えますっ!」
ハルナとセラが絶賛喧嘩中。
あれから知ったのだが、セラはかなり料理が下手だ。
一度お粥を作ってもらったのだが………ガチで意識が飛んだ。
ちなみに今俺はユーとお茶を飲んでる。
「はぁ?ちゃんとこの世界の物に合わせたじゃん!マズイ料理はあってもマズイ食材なんか無いの!」
「みんなでもう一回作ればいいんじゃないか?」
喧嘩を見かねた歩が仲裁に入る。
「………まあ、アユムがそういうなら」
「----そうですね。過ぎたことは忘れましょう」
2人とも歩の登場で落ち着いたようだ。
再びプリン作りに戻る。
「では私は牛乳を唐津焼に……」
「よしセラ、お前は風呂を沸かしてきてくれ」
「早速戦力外通告か、歩。…まぁ、正しいけど」
「飛翔まで……わかりましたっ!」
そう言うとセラは風呂場へ向かった。
〔そういえばユーって料理できるのかな?〕
ふと疑問に思ったので俺はユーに聞いてみる事にした。
「ねぇ、ユーは料理って出来るの?」
するとユーは少し考えてメモを見せてくる。
『飛翔は料理できるほうがいい?』
何故か疑問に疑問で返された。
「ん?いや、それは、料理できるんなら、その…
ユーの手料理も食べてみたいって言うか///」
〔って何言ってんだ俺ぇ!メッチャ恥ず!〕
そう思ったが時すでに遅し。
ユーは俺の答えを聞くと何か考えているようだ。
『〔今度ハルナに料理教えてもらおうかな…〕』
「おーい、2人ともぉ!手伝ってくれ!」
いろいろ考えていると、歩が声をかけてきた。
それからみんな〔セラ以外〕で作ったプリンを皆〔セラ入り〕で食べていると、
ハルナがしゃべりだした。
「そうだアユム!メガロ駆逐作戦に抜擢されたぞ!」
「「メガロ駆逐作戦?」」
俺と歩は同時に首を傾げた。
「最近メガロが大量に出てるから、
ヴィリエから魔装少女がたくさんくるんだぜ!爽快だろうな~」
ハルナは浮かれていたが歩は逆にうな垂れていた。
まぁ大変そうだもんな、駆逐作戦…
ふと隣に視線を移すと、ユーがプリンを食べていた。
少し顔が赤くなっているのがまた可愛い。
「そうだ、ユー。ユーは今の生活どう思ってるんだ?」
唐突に思い出した質問。
ユーはスプーンを置いて、メモを向けてくる。
『嫌いじゃない』