これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
「-----で、この超新星爆発により」
どうも、飛翔です。
あの京子襲撃事件から一週間ほど過ぎて、
今はメガロの襲撃もなく、穏やかな日々を送れている。
「んで、百年ぐらい前に内乱を起こしやがった訳。…まぁ、男が魔装少女に勝てるわけないけど」
んで、俺と歩の学校はテストの時期に入り、次の月曜日にテストがある。
「そもそも、魔法が使えない連中集めてクーデターを起こす。って発想が面白いよな」
俺は前世の知識が多少役にたっているため、欠点を取ることはないだろうが歩は違う。
それに今回テストの出来が悪いと夏休みに学校で補修をするそうだ。
日差しの中呼び出されるのは、ゾンビにとってはこの上ない地獄と言えるだろう。
そのため歩はハルナに勉強を教わっているのだが…
「そしてその連中だけで一週間も優勢だったなんて、考えられないよな!」
〔何故数学の勉強がヴィリエの歴史の授業になってんだ?〕
俺は1人で問題を解いているのだが、
歩は訳のわからないハルナの説明でさらに困惑しているようだ。
「…っと、あれ?ここはどうやるんだったっけ?」
と言っても俺も勉強しないといけない。
やったとはいえ、だいぶ日が経っているから所々分からないところが出てくる。
俺が問題に悩んでいるとユーがやってきた。
『どうかした?』
「あぁ、ユー。ちょっと分からない問題があってね…」
『貸して』
「?」
意味が少し分からなかったが、俺はユーに問題集を渡す。
するとユーは俺が分からなかったところの問題をスラスラ解いてくれた。
「すご!?ユーって勉強も出来るんだね」
『他の所は大丈夫?』
「うん、後は1人でも解けそうだよ。ありがと、ユー〔ニコッ」
『////』
俺が微笑むとユーは顔を赤くしていた。
あ、やべ。可愛い。
「あ、そうだユー。出来れば歩に教えてやってくれないかな?
俺よりも歩が危ないし…」
コクッ
ユーは1つ頷くと歩とハルナの所へ向かった。
さっきの俺の時と同じように、歩の問題集を解く。
「おお!!サンキュ、ユー!」
歩は問題が解けてご機嫌だが、反対にハルナの機嫌が悪くなっているように見える。
「し、しゃーなしだ!ヤマ張ったげるよ、アユムッ!」
そう言うとハルナは歩の問題集に次々丸を付けていく。
俺?もちろんハルナがつけているところを自分のにも印付けてるけど?
何処か集中的にやってもいいと思うしね。
俺が印を付け終わると、ふとユーが視線に入った。
ユーはさっきまでの穏やかな表情から、少し悲しむような瞳に変わっていた。
「なぁ、ユー。1つ聞いてもいいか?」
『何?』
「あの黒い霧…ユーは何か知ってるのか?」
これは前から聞こうと思っていたことだ。
あの時のユーは怯えていた。声を出してしまうほど…
「なぁ、ユー。知っていたら教えてくれないか?」
ユーは目をつぶり、少し考えるようにしてからメモを見せてきた。
『冥界には私と同じように強い力を持った者がいる。
彼もその内の1人で、とても強くて頼りになる存在だった。
でも、彼にも死が訪れた。
私は彼をゾンビに変えたが、不死身の身体を手にした彼は悪意が増していった。
彼を止めれたのは私だけだった。だから私は彼に言った。
消えて と
私は彼をその場から消した。
まさかこっちの世界にいたなんて…』
「も、もしかして恋人とかっ?」
ハルナが顔を赤くしてユーに聞く。
フルフルッとユーは首を横に振るのを見て俺は何故か安心した。
「し、心配すんな!天才ハルナちゃんがいるかんな!」
ハルナは立ち上がって声を上げる。
「そうです。私が守ります」
凛とした声でセラも…
「俺も出来る限り力になるよ」
歩も…
「ユー。前にも言っただろ?俺はユーを守るって」
そして俺もハルナに同意する。
『ありがとう』
ユーは今日やっと嬉しそうな顔を見せた。
「って初めてだよ。テストがここまでスラスラ解けるのは…」
そう言った俺のテスト用紙は既に全て埋まっており、見直しも終わっている。
前世ではテストに苦悩していたというのが嘘のように出来た。
〔これで補修は心配しないでいいな…〕
キーンコーン、カーンコーン
チャイムと共に答案用紙が回収される。
すると後ろで座っていた歩が急いで荷物をまとめていた。
「歩どうしたんだ?確かにこれから帰れるけど歩は「メガロが出たらしい!」…!」
俺の問いに歩は焦ったように答えた。
歩は続ける。
「さっきハルナが来たんだが、先に行っちまって…」
「わかった、俺も行く。で場所は?」
歩が固まる。
「まさか……ハルナ教えていかなかったのか?」
「飛翔の思ってる通りだよ、クソッ!」
とりあえず、俺と歩は織戸に「歩が体調悪いから先帰る」と言って学校を出た。
「なら……ユーかセラに電話で聞けば」
「そうか、それがあった!」
そう言って歩は電話する。
しばらく電話していた歩が顔を上げた。
「飛翔、場所がわかった…商店街の裏路地だ!
「見つけた!」
歩が日差しにあたらないようにしてきたからかなり時間がかかってしまったが、
何とか間に合ったみたいだ。
歩の指差す方向にミストルティンを持ったハルナと馬〔?〕が対峙していた。
しかしハルナは力なく地面にへたり込んでいるのを見ると、
まだ魔力は回復していないらしい。
「おらぁぁ!」
歩はハルナを救うために馬に思いっきり殴りかかる。
ドゴッ!
馬はハルナに気を取られていて、歩の攻撃に気づかずにモロに受け、後ろに吹き飛んだ。
「あ、アユム…」
「大丈夫か、ハルナ!…ってぐはっ!〔バタリッ」
「ったく…日差しの事忘れてかっこつけるからだ」
俺は少々呆れたが馬が立ち上がりそうになっているのを見て、
歩にハルナが持っていたミストルティンを投げ渡す。
「早く変身しろ、歩。日差しのあるここじゃそれしかない…」
「し、しゃーなしだな」
歩はそう言うと呪文を唱え始めた。
「ノモブヨ、オシ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャ、デー、リブラ!」
そうして歩はいつものコスプレ姿になった。
「おっしゃ!日差しが気持ちいいぜ!」
「そこまで変わるものなのか?」
少し魔装少女の便利さに呆れつつ、俺は〔天翼〕を広げる。
ウマァァ!
歩が殴り飛ばした馬が距離を詰めてくる。
ガキィィン!
馬のヒヅメとチェーンソウが激突する。
〔このまま、俺も加勢に「羽の人、歩!後ろだ!」…!〕
ハルナが俺らに向かって叫ぶ。俺は咄嗟に飛び後ろを振りかえると、
そこには50匹程のクラゲ〔?〕がいた。
「……って!?この数は反則だろ!?」
ブオンッ!!
俺は〔天翼〕でクラゲに攻撃するが、数が一向に減らない。
するとハルナがクラゲに捕らえられてしまった。
「うわ!こら!あたしに触るなぁ!」
ハルナは抵抗するが、今のハルナでは1人で脱出できない。
するとクラゲは次のターゲットを歩に変更した。
「歩、あぶねぇ!」
「飛翔?どうし…がはっ!」
歩は馬と戦っていて、クラゲの接近に気づかなかった。
身体を触手で貫かれ電流を流されている。
「クソッ!」
ブオンッ、ブオンッ!
〔二人を助けに行きたいが、数が多すぎる!!〕
ウマァァ!
「ちぃ!」
ガキィン!
歩が相手をしていた馬まで俺に攻撃してきた。
〔ただでさえ狭い裏路地で〔天翼〕がまともに使えないって言うのに…!〕
手段がなくなり、俺は防戦一方になっていた。
そんな時…
「お待たせしました!」
裏路地に1人の声が響いた。
俺が振り返って見るとそこには黒いマントを身につけ、帽子を被った奴がいた。
〔ホントに助けが来たのか?〕
俺は少々不安を抱いていたが、その不安は一瞬で吹き飛ぶ事になる。
「よっと!」
黒マント〔?〕は両手に何かを持つ。
アレは……………
----とんこつラーメン。
もはや味方敵以前に何故とんこつラーメン!?
「はぁぁぁ!」
俺の疑問をよそに黒マントはそのとんこつラーメンをクラゲにぶっ掛ける。
するとクラゲはたちまち光る粒子になっていた。
「とんこつラーメンで死ぬのかよ!?」
あまりの衝撃に俺は突っ込んでしまった。
しかし、実際見るとすごい威力だあのとんこつラーメン…
メガロを一瞬で倒しちまうとは
「おりゃぁぁ!」
黒マントのおかげでクラゲは既に壊滅した。残ってるのは…
ウマッ!?
「てめぇだけなんだよぉ!」
ドゴッ、バギッ、グシャ!
強化した〔天翼〕で馬の身体を貫き、馬は消滅。
これでとりあえず一安心かな…
「どうやら少し遅かったようですね…」
「ん?セラか」
丁度地面に降り立つと同時にセラが現れた。
「セラフィム!久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」
すると向こうから黒マントがこっちに走ってくる。
セラはそれを軽くかわし、関節技をかける。
「気軽に近づかないでください」
「い、痛い!セラフィムギブ、ギブって!ギブの大号令だってば!!」
関節技を決められている黒マントは苦しそうにもがく。
「なぁ、セラ。ソイツと知り合いなのか?」
変身を解いた歩がセラに聞く。
「ええ、一応。名はメイル・シュトローム、吸血忍者ですが、
私とは敵対している派閥の者です」
「でも俺とハルナを助けてくれた奴なんだし、放してやれよ」
「まぁ、仕方ありませんね」
そう言ってセラは腕を放す。
「いってぇ~、セラフィム!お前本気で折るつもりだっただろ!」
「まぁまぁ、助けてくれてありがとな」
歩は黒マントにお礼を言う。
「なぁ、アユム。メガロも倒したし帰ろ?」
ハルナが歩に言うが聞こえていない。
「う、うっさいな!キモいんだよ!お前どこ中だよ!」
「いやいや、俺は高校生だ!お前こそどこ中だよ!」
〔何故か知らんが言い争いになっとる~〕
二人が言い争いを始めたのを見てハルナが切れた。
「もうっ!アユムのバカ!あたしを無視すんなよな!」
そう言ってハルナは歩の背中を押した。
予想以上に強い力だったのか、歩はそのまま前にいる黒マントを押し倒し…………
------キスした。
「うわぁ」
思わず声が漏れてしまった。
セラも表情が引いているし、ハルナは口を三角にして顔を真っ赤にしている。
「く、苦しいから早くどけよな!」
そう言って少女は歩を押しのけ……ん?
〔アイツ、女だったんだ………〕
歩はそれを知って固まってしまったようだ、口をパクパクさせてるよ。
そこにハルナとセラが渾身の蹴りを入れる。
俺?俺は……
「んじゃ、先帰ってるね」
逃げる事にした。
馬&クラゲの事件から数日経ち、今日は7月7日。
今歩と家に帰っているところだ。
そろそろ家が見えてきたところで、異変に気づく。
「なぁ、飛翔?俺の見間違いじゃないなら、あそこに笹があるんだが…」
「奇遇だな歩。俺にも見えるよ」
そう、歩の家の庭に大きな笹がさしてある。
こんな物歩の家にはなかったものだ。恐らくハルナ辺りが持ってきたのだろう。
ダッダッダッ!
歩も同じことを考えたのか、ハルナの居る2階へ走っていった。
俺はそのまま居間に入る。
「ただいま、ユー」
『おかえりなさい』
ユーはいつもと変わらぬ姿で居間にいた。
俺が腰を下ろすと、ユーがメモを向けてきた。
『今日はハルナが七夕するって言ってた』
「七夕?……ああ、それでか」
俺はさっき見た笹を思い出す。
〔あれは七夕用ってことか…〕
そう思いつつ俺はお茶を一口飲んだ。
晩御飯を食べ終えて急にハルナが、
「短冊書くかんな!言っとくけど、髪形は必ずポニーテールにするんだぞ!
そうしないと願いが叶わないかんな!」
と言い出したため、今みんなで短冊を書いている。
俺と歩も髪型をポニーテールにしている。
俺は少々髪が長いので、大丈夫だったが、歩のはもう何してるかわからんようなものになっている。
「歩、似合っていますよ?」
「何故疑問系で、しかもこっちを見ないで言うんですかね?」
そう思っているのはどうやら俺だけではないようだ。
ついでに言うと、ユーとハルナもポニーテールにしている。
ハルナは短髪なのであまり変わってないように見える。
ユーはというと……
『どうかした?』
「い、いや!?別になんにも!」
『?』
いつもと違う雰囲気があって可愛い。
「だぁぁ!これも駄目だ!」
ハルナはさっきから書いては投げ、書いては投げを繰り返している。
歩は気になったのか、ハルナが投げた紙を広げて見た。
すると鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
おもむろに歩がこちらに渡してくる。
ユーも興味があるのか顔を覗き込ませる。書かれていたのは……
「平和を愛する心、ですかね?」
………え!?ナニコレ!?
何故に願い事が疑問系であるかを問いたいよ!
隣を見るとユーは小刻みに揺れている。
お笑いに厳しいユーをも笑わせられる物なのかこれは!?
「あー!!羽の人にネクラマンサー見るなよな!他人に見られたら無効なんだぞ!」
初めてルール聞いたよ。
「とにかく、あたしのはいいから歩と羽の人さっさと書けよな!二人待ちなんだぞ!」
ハルナはそう言うと、何処かへ向かった。
〔さて、願い事か………考えることないな〕
俺は迷うことなく短冊に願いを書く----
俺らはそれぞれ短冊に願いを書くと、笹に吊るす作業に移った。
ユーがハルナを手伝い、皆が書いた短冊を吊るしている。
「こうしたイベントをしていると、まるで家族のようですね」
セラが微笑みながら言った。
「確かに……家族行事っぽいもんなこれ」
「まぁ、家に笹を運んだ事はチャラにするかな…」
俺と歩もセラの意見に同意する。
俺は視線をユーたちに向ける。
そこには楽しそうに作業しているユーの姿があった。
〔今日見たいな日をまた皆で送りたいな…〕
俺は心からそう思うと俺が書いた短冊が風になびいていた。
「俺とユーがいつまでも一緒に居られますように…」