これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
『夜の…王』
ユーは誰が見てもわかるくらい動揺している。
いつもは崩さない表情が強張って見える。
「ユークリウッド……まさかこんな所で会うなんてね。
そんなに動揺して…そんなに僕には会いたくなかったかい?」
夜の王は少し寂しそうな顔を見せながら言った。
ユーはポケットからいつも使っているボールペンを取り出していた。
俺は二人が話している間にユーの所へ向かう。
「仕方ない、会ってしまったから…それが取引でもあるからね…」
夜の王は右手を空へ上げる。
まるで何かの合図のように……
「今はまだ早すぎる…
また、準備が整った時に会おう。ユークリウッド」
そう言って男は黒い霧に包まれて消えた。
その直後、俺たちを囲むようにして大量のメガロが現れた。
俺は崩れそうなユーの肩を支える
「ユー!大丈夫か!」
『全て…私のせい』
ユーは震えながらメモを見せてきた。
〔クソッ!俺はユーが苦しんでるのに何もしてやれないのかよ!!〕
「飛翔!ここは一旦人気のない場所へ移動するんだ!」
歩はセラと一緒に一点突破でメガロの群れに突っ込む。
ハルナはその後を追いかけていった。
「とりあえず…ユー、ここから離れよう」
そう言って俺は〔天翼〕を広げユーを翼で包んで飛ぶ。
飛行型のメガロはいないようで俺たちを追って来れないようだ。
歩たちはメガロを突破したようで走っている。
「それにしてもメガロにしては弱いような…」
『あれは偽物』
俺がそう呟くとユーがメモを見せてきた。
「偽物?」
『メガロは魔装少女の魂が必要、
メガロシステムを知っている彼なら人間の魂での偽物なら作れると思う』
それはそれで厄介だな。
幾ら弱くても数で押されればマズイ…。
一応メガロたちは俺たちの思惑通り人気のない場所へ誘導されている。
だが……
「ふふ…お久しぶりですね、相川さん」
そこには以前戦った金髪ツインテールの京子がいた。
「よぉ、随分と元気そうだな」
「相川さんもお元気そうで…残念です」
「それはどうも…」
歩は京子を睨みつけ、戦闘態勢をとる。
「また懲りずに来たのか?」
俺はユーをセラに任せて、〔天翼〕を広げる。
京子は俺を見るとビクッと肩を震わせた。
「折角助かった命を捨てに来たのか?」
「確かに、私では貴方には勝てないでしょうね…でも」
そう言った京子の後ろから大量のメガロが現れる。
「目的を果たせれば、それでいいですからね」
「挟み撃ちか…」
ドドドドドドッ!!
後ろから音が聞こえる。
どうやら誘導していたメガロ達が追いついたようだ。
〔まずいな…これだけの数、ユーたちを守りながらは少しキツイ…〕
そう思っていると辺りに吸血忍者と思われる集団が現れた。
その中にはあのトモノリもいた。
「トモノリ!」
「相川!助けに来たぜ!!」
どうやらトモノリは俺たちを助けに来てくれたようだ。
これで少しはマシになった。
「歩!あの女やるか?」
「飛翔駄目だ!ここじゃまだ一般の人に迷惑がかかる!
それにミストルティンが無いから魔装少女になれん!」
歩は俺を見ながらそう叫ぶ。
確かに…メガロは多少弱くなっているとはいえ、
AAA級がこう何匹もいると流石に対処しきれん。
「うぁ!?」
そう考えていると、メガロと戦っていたトモノリが吹っ飛ばされていた。
「大丈夫か!?」
歩がトモノリの所へ向かう。
「なんだよ、アイツ…強いじゃんか!!」
「当然です。貴方は弱そうですし…」
「なんだと!!お前何処中だよ!」
トモノリは挑発されて京子の肩を掴む。
「トモノリ!ソイツに触れたら…!」
歩が叫ぶがすでに遅い。
次の瞬間京子は竜巻を発生させてトモノリを吹き飛ばす。
「クソッ!」
俺は相手しているゴリラを倒して京子を狙う。
しかし…
メェェェェ!!
今度はヤギのメガロが襲ってくる。
〔このままじゃ、かなりヤバイ!!〕
そう思った瞬間だった。
辺りの建物や道路が凍り付いていく。
「飛翔!これお前の仕業か!?」
「ちげぇよ!今の俺の温度変化じゃここまで凍らすのにこんな短時間じゃ無理だ!!」
ここまで凍らすのに10秒と掛からなかった。
今の俺じゃ絶対に無理だ、ならこれは…
「あはっ、やっぱり持ってるじゃないですか!-----アリエル先生の魔装兵器っ!!」
そう叫んだのは京子だった。
〔魔装兵器?一体何のことだ?〕
だが、考える時間は無い。
俺は飛んでいたため凍らなかったが歩やセラ、他の吸血忍者達は違う。
既に足まで凍っているようだ。
助けに行きたいがメガロが複数襲ってきてどうしてもいけない。
「クソッ!皆!!」
その時----
「逃げてっ!!」
その声は透き通るような声だった。
「………あれ?」
気が付くと俺たち全員は歩の家の玄関へたどり着いていた。
「ほぇ?あたし…」
「………」
「どうなってんだ?」
『…』
歩にハルナは状況が理解できていないようだ。
セラはユーの方を見ている。…まさか
「ユー…もしかして言葉を?」
『あの場にいた全員は元の場所へ帰ったはず』
どうやら俺の予測は当たっていたようだ。
今回はユーに助けられたようだ。
「そうだったのか、サンキューなユー」
「歩、とりあえず中に入りましょう」
「だなっ!アユム、あたしお腹すいたんだけど?」
歩はユーにお礼を言ってセラ、ハルナを連れて家に入る。
俺はその場に立ったまま動かなかった。
『飛翔、入らないの?』
心配したのかユーがメモを見せてくる。
「うん、ポスト見たら俺も行くよ。
ユーは先に入ってて」
『わかった』
ユーはそうメモを見せた後、家に入った。
ユーが家に入った後、
〔俺がユーを守らないといけないのに……
最近はユーに迷惑かけてばっかりだ…。
あれから頑張ってるのに、何一つ変わってない……〕
俺はその場でただただ自分の力の無さを悔やんでいた。
次の日の夜、俺は墓地に来ていた。
「おらぁぁぁぁ!!」
ボウッ! ドゴォォォ!
「はぁぁぁ!!」
パキパキッ! シュシュシュ!
「うおぉぉぉ!!」
ブオンッ! ドガァァァ!
温度変化フレア・フリーズへの瞬時の切り替え&強化、〔天翼〕自体の強度の底上げ。
昨日の戦闘で自分の力の無さを痛感したので、
今日はこの墓地で修行しているというわけだ。
「はぁ、はぁ…」
〔流石に飛ばしすぎたか、体中が痛い……
でも、弱音なんて吐いてられるか!俺が守るって決めたんだ!〕
そう思って〔天翼〕を振るおうと「あれぇ~?アユムさんじゃないですねぇ~」…!
声がした方を見ると、そこには青髪のツインテール。
「確か……ハルナの担任のアリエルさんですよね?」
「そうですよぉ~。たしかアユムさんたちと一緒にいた人ですねぇ」
そう言ってアリエルさんは微笑む。
「どうしたんですか?こんなところで」
「それがぁ~、アユムさんに頼んでいた物を取りに来たんですがぁ、
まだ来てないようですねぇ~」
アリエルさんは辺りを見回す。
「俺が今から帰って呼んで来ましょうか?」
「えぇ~、いいんですかぁ~?」
「いいですよ、もう帰るところでしたし…」
そう言って俺はその場を後に…
「そういえばさっき見ましたよぉ~。貴方、すごい力を持ってるんですねぇ~」
「!」
どうやらさっきの修行を見られていたようだ。
「よかったらぁ~、私と組みませんかぁ?」
「組む?」
「はい」
「………謹んでお断りいたします」
俺はそう言って頭を下げる。
「理由を聞いてもいいですかぁ?」
「俺はもう頼もしい仲間がたくさんいますから…
もちろんアリエルさんも入っていますよ」
「そうですかぁ、残念ですねぇ~」
「すみません。でもこれが俺ですから……ではまた」
そう言って俺は墓地を後にした。
アリエルさんと会った後、
歩に伝言を言うと急いで準備して墓地へ向かっていった。
ついでにハルナも。
家には俺、ユー、セラが残された。
「ふぁ~。悪い、ちょっと寝てくるね」
『修行してきたの?』
「うん、それで少し眠くてね…」
『分かった』
「それじゃ」
そう言い残して、俺は自室のベットで眠った。
俺が起きたとき、驚いたことが二つある。
1つは既に朝になっていたこと。
2つ目は歩が口から何かを出しながら死んでいたことだ。
「朝っぱらから何があったんだ?」
「飛翔は寝てたからな……」
そう言って歩は何故か遠くを見る。
「墓地へ向かうときにはメガロに追いかけられるし、
帰ってきたらセラが料理してるし、
朝飯にはセラが作ったお粥を流しそーめんシステムで食わされるし…」
「わかった!俺が悪かった!だからもう何も言うな!」
なんつー不幸な事に……
セラの料理の腕は上がらないのか?希望は無いのか?
「おお、相川!お前こんな早く来てるのか?」
そう言って話しかけてきたのは隣のクラスのトモノリだ。
何故か俺を見たとき少しがっかりした表情をした。
もしかして二人っきりが良かったのだろうか?
「そういうお前も早いだろ?」
「お、俺は、その…相川に合わせただけで……」
………なんか空気が桃色だ。
「歩、俺トイレ行って来るよ」
「ん、わかった」
そう言って俺はその空気に耐えられなかったためと、
トモノリのために教室を後にした。