これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
あれからいつも通り授業を受け、今はもう放課後。
今日も今日とて、歩の帰れる時間帯になるまで待って一緒に帰宅した。
歩の家に帰って直ぐに自室のベットに倒れこむ。
「はぁ~……」
昨日の疲れが少し残っていたため、ベットの感触が心地よかった。
しばらくベットで横になってから、俺は学校の宿題に取り掛かった。
「ふざけんなっ!!」
宿題が終わったところで、歩の大声が聞こえた。
俺は部屋から出て、声がした歩の部屋へと向かう。
「なぁ、今の-----」
「ユーの命は任務より軽いのかっ!!」
「その言い方は卑怯です!私達吸血忍者にとって……!!?」
歩の部屋のドアを開けるとセラと歩が言い争っていた。
しかもその原因は……
「なぁ、歩。…今の質問はなんだ?」
「飛翔……」
歩は顔を伏せる。
「なぁ、セラ。……何を話してた?」
「………」
セラの方も歩と同じで何も言わない。
「まぁ、今聞いた会話で大体想像出来る。
………セラ。ユーを殺せとでも任務がきたのか?」
「……その通りです」
セラは肯定した。
「そうか……で、どうするんだ?」
「私は………」
そう言ってセラは黙る。
「………俺はセラを仲間だと思ってる。でもユーの敵になるんなら」
俺は背を向ける。
「俺が相手になる」
そう言って俺は歩の部屋を後にした。
「セラ……」
飛翔が部屋を出たので、俺はセラに話しかける。
「お前はどっちなんだ?ユーを殺したいのか、
それとも……守りたいのか?」
「殺したくないに決まっているでしょう!!」
セラは瞳に涙を浮かべつつ、そう言った。
「……お前はいつも正直だな」
「お世辞は結構です、気持ち悪い………でも」
セラがこっちを向く。
「おかげで吹っ切れました」
そう言ってセラは任務の書かれた紙を引き裂いた。
「そうか……なら、まずはそのユーを殺す原因になった装置を壊しに行くか」
「ええ!!」
〔とりあえず一安心か……〕
俺はそう思いつつ歩のドアから離れ、自室へと入る。
〔正直内心焦ったよ……ホント〕
敵にすら同情してしまうのに、元とはいえ仲間のセラが攻撃してきたら、
正直迎え撃てるか不安だったからである。
不意に部屋のドアが開いた。
「飛翔……馬鹿げた計画を壊しに行くんだ。力を貸してくれ」
「お願いします」
セラと歩がそう言ってきた。
「もう大丈夫か?」
「ええ、ご迷惑おかけしました」
そう言ったセラの目はまっすぐだった。
「…分かった。親友と仲間の頼みだ。聞かないわけ無いだろ?」
ここに来る前にセラと歩からさっきの話を詳しく聞いた。
どうやらセラの任務は吸血忍者の頭領を生き返らせてもらうためだったらしいのだが、
メガロの大量発生がユーの性だと言うことで暗殺命令が来たらしい。
まぁ、俺はユーを守るだけだが…
「これは一体……」
そうこう思考している内に俺と歩はセラに連れられて革新派〔吸血忍者は二つに分かれており、セラは保守派〕の
アジトであるビルに来たのだが……
「全員眠ってるな」
そう…今辺りにはたくさんの吸血忍者が横たわっている。
しかもその中にはトモノリの姿もあった。
「おい、トモノリ!」
歩はトモノリに声をかけるが一向に起きる気がしない。
「どうやら吸血忍者が使う催眠ガスを使ったようですね…」
セラは1人の吸血忍者を確認しながら言った。
「誰かと思えば、セラフィムか」
不意に俺たちに声がかかる。
振り向くとそこには-----学校で歩に黒縁メガネを渡した女子生徒が立っており、
その手には水で出来たような剣を持っていた。
「一体何しに来た、セラフィム」
「サラスバティ……貴方、一体何をしているのですか」
その声には怒りが含まれていた。
「人類吸血忍者化計画を円滑に進めるための作業だ」
サラスと呼ばれた吸血忍者は淡々と答える。
「まさかそんな馬鹿げた計画が我々の派閥から出たものだったとは…」
そう言って奥歯をかみ締めるセラの眼は真紅に染まり、黒いマントが翻る。
「おいおい、私とやりあうつもりなのか?同じ保守派の吸血忍者だと言うのに」
「気の合う話は酒をかわしながら、気の合わない話は------
剣をかわしながらっ!!」
セラが剣を作り出し、一気に距離を詰める。
ガキィィィン!!
セラの木の葉の剣と女子生徒の青い剣がぶつかり合う。
「秘剣、燕返し!!」
剣の重なり、音が反響する。
3回、4回。5回目の音は無い。
そう思った直後、セラがこちらに吹っ飛んでくる。
セラの胸元から血が滴り落ちていた。
俺と歩は今、柱の影に隠れる形となっている。
「強くなったな、セラフィム。まさか4回も耐えられるとは…」
「貴方は何も思わないのですか!!
この任務が矛盾していることにっ!!」
「任務に疑問を持つなど愚かな事だ。私は任務を与えられた。
ならばその任務を実行するまでだ」
「セラっ!!」
2人が言い争いをしていたが、突然歩が柱の影から飛び出した。
「歩っ!!」
グサっ!!
俺は叫ぶと同時に歩の首に女子生徒の持っていた剣が突き刺さる。
しかし歩はその剣を引き抜き、ポケットに手を入れていた。
「ん?今ので何故死なないんだ?」
「人類吸血忍者化計画とか、ユーを殺せとか…
どうしてそう吸血忍者はまとまりがないんだ?」
「そこまで考えれば分かるだろう?
今吸血忍者には絶対な指導者がいないからだ」
そう言って女子生徒は水を歩とついでに俺にも飛ばしてきた。
歩は横に避け、俺は〔天翼〕でガードした。
「ほう、そっちの奴も珍しい技を使うな…」
「なるほど…それでユーに頭領を生き返らせてほしかったわけか」
ブンっ!!
俺が女子生徒と話してると、歩が鉛筆を女子生徒に向かって投げる。
「そんなものが当たるとでも?」
そう言って首を倒すだけで避けられてしまう。
「的中したさ」
そう言って歩は口の端を吊り上げた。
次の瞬間、歩が投げた鉛筆が爆発した。
穴が開いたのは------壁。
「この装置は破壊させん。私が頂いていく」
そう言って女子生徒は水の塊を作り出した。
その塊は空中に投げられ、四散する。
「とくと味わえ----飛剣、百鬼漸殺!!」
水の刃が一斉に俺たちに襲い掛かる。
「歩っ!俺の近くに!!」
「わかった!!」
俺は〔天翼〕で俺と歩をガードする。
降りかかる水の刃はかなり厄介だ。
例えるなら雨に打たれずに戦えって言ってるようなもんだからな。
〔このままじゃ、ジリ貧になるだけだ。
クソッ!やっぱこういう狭いとこじゃ天翼の力が半減しちまう!〕
〔天翼〕を十分広げられないのは、かなりのパワーダウンだ。
「クソっ!こうなったら突っ込んで」
「駄目だ歩!いくら死ななくてもバラバラにされちゃかなわないよ!」
「…っ!じゃどうすれば----」
「最終詠唱を確認した。目標地点の重力を10Gに変更する」
ズゴゴゴっ!!
何か声がすると思ったら、急に俺と歩、ついでに水までもが地面に叩きつけられた。
一体何が、と考える前に俺たちの目に1人の少女の姿が映った。
その少女の後ろには、左半身が炎のように揺らめいている屈強な男が見える。
その少女とは…………
「トモノリ?」
歩が目の前に居る少女を見て呟く。
トモノリはその声が聞こえていないのか、こちらに振り向こうともしない。
「ほう、まだ眠っていない奴がいたとは…」
そう言って女子生徒は水の剣を構える----
ドガァァ!!
---ことができなかった。
ものすごい音がしたと思ったら、女子生徒が壁に衝突していた。
それがトモノリの後ろに出ている男がやったことだと気づいたのは、
その男が腕を振り切っているのを見たからだ。
「……おい!!トモノリ!!!」
「一体何が……」
「クソっ!!」
歩と俺は異常なトモノリにただ驚いている。
女子生徒は起き上がって、距離を詰めている。
「其は命の分岐点」 『第一詠唱を確認、術式解放』
静かに、しかしハッキリと……トモノリは言葉にする。
「我は生の道を、汝は死の道をゆくだろう」 『第二詠唱を確認、衝撃波、発動準備』
女子生徒はトモノリとの距離を詰め、水の剣で一閃するが、
半身炎の男がそれを受け止める。
「噛み砕け、マスティコア」 『最終詠唱を確認した。前方へ衝撃波を発射する』
男がそう言った瞬間、外壁が一斉に吹き飛んだ。
セラは装置の後ろに隠れ、俺と歩は〔天翼〕でガードした。
女子生徒は咄嗟に水の壁のような物を作ったが、それでも至近距離だったため再び外壁に衝突。
女子生徒はそのまま気を失ったのか、ピクリとも動かなくなった。
「相川、歩」
「友紀!!お前どうしたんだ!?」
歩はトモノリに向かって叫ぶが、トモノリは全く反応しない。
すると、トモノリの背後に出てきている男が腕を振りかぶっている。
セラは咄嗟に身を隠していた装置から離れる。
男が振り下ろした手から炎の玉が投げられ、装置に激突する。
『目標の破壊任務を成功した。残存する敵の排除を開始』
そう言って男は俺たちの方を向く。
「クソっ!!」
歩は男に向かってダッシュする。
そして男の頭をぶん殴ろうとしたが、
歩は逆に男に殴り返されて俺の前まで吹っ飛んできた。
「歩!大丈夫か?」
「……なんでだよ」
「え?」
歩は起き上がりながらトモノリの方を向きながら言った。
「なんで、お前泣いてるんだよ」
「あい、かわ……たす、け『母体に異常を確認した。術式限定を解除する』」
トモノリは一瞬意識が戻ったように見えたが、再び攻撃を開始する。
「凍てつく心を解き放て」 『第一詠唱を確認、術式解放』
トモノリは再び呪文を唱えだす。
「其は神々の息吹さえも吹雪へと変えるだろう」 『第二詠唱を確認、冷却準備完了』
「まずい!」
「セラ、飛翔!ここから離れるんだ!」
歩の言葉と同時に、
「駆け抜けろ、アブソリュート・フェンリル」 『最終詠唱を確認した、氷結を開始する』
次の瞬間、部屋全体が凍りついた。
俺はフレアモードにしておいたからよかったものの、歩とセラは足が凍り付いてしまっている。
トモノリは一歩一歩こちらに近づいてくる。
「右に青き炎を持て」 『第一詠唱確認、術式解放』
「このぉ!!」
俺は〔天翼〕を振るうが、男の身体を通り過ぎるだけで全く効いていない。
「左に赤き炎を携えろ」 『第二詠唱確認、火炎放射、準備完了』
攻撃が効かないことに俺が焦っていると、歩がトモノリとの距離を縮めるために走り出した。
男は炎の玉を歩に投げつけるが、俺が〔天翼〕で軌道を逸らす。
歩は無事、トモノリとの距離を詰め……トモノリを抱きしめた。
「やめろ!やめてくれよ!トモノリ!!」
歩がそう言った瞬間、
「と、トモノリ言うなぁ!!!」
1人の少女の叫び声が部屋に響いた。
「全く……今回マジでやばかったな」
「確かになぁ」
俺と歩は壁にもたれかかっていた。
部屋の隅にはトモノリとセラ、後気絶した女子生徒が座り込んでいる。
トモノリはあの後すぐに寝てしまった。
「やはり、生き血をすすらないといけませんね」
セラが傷口を抑えながらこちらに歩いてきた。
「だったら俺の血を吸えばいい」
「貴方の血を吸うくらいなら死んだ方がマシです」
歩がセラに提案するが即行で却下。
「なぁ、セラ。トモノリは吸血忍者なのか?」
俺は思っていたことをセラに聞く。
正直言ってアレは完全に魔法とかの類だと思うんだが…
「昔から任務についてる優秀な吸血忍者ですよ」
セラはそう答える。
〔もしかして、この前京子が言っていた魔装兵器ってのが---〕
~~♪♪~~♪
俺が考えていると歩の携帯が鳴った。
「すまん」
歩はそう言って少し離れて電話に出る。
しばらくして歩が険しい顔で戻ってきた。
「まずい、ハルナと大先生が襲われてるみたいだ」
「?なんで大先生がこっちに?」
「ハルナがこの前怒ったことの埋め合わせで、大先生をゲーセンに連れて行ってるんだよ。
俺はハルナと大先生を助けに行く」
「待て歩!俺も----」
「飛翔はセラとトモノリを頼む。
今この2人が襲われたら戦えないからな」
「すみません、歩、飛翔」
セラは申し訳なさそうに言う。
「……わかった、歩。2人のことは任せろ」
「ああ……じゃ、行ってくる」
そう言って歩はビルから飛び降りていった。
歩と別れてトモノリを家に送り、セラと俺は歩の家に帰って来た。
その後、歩と日本刀を2本抱えたハルナが戻って来た。
歩から話を聞くと、夜の王に大先生が連れて行かれたらしい。
歩は京子を取り逃がしたことをとても悔やんでいた。
ハルナはと言うと……
「絶対に大先生は取り返すんだ!!」
と大声を上げていた。
ハルナは心が強いなっと改めて思った。
大先生が連れ去られたのが昨日。
俺と歩はいつも通り学校に来て、今は放課後。
それまでに俺は歩に聞くことにした。
「なぁ、歩。トモノリのアレ、何か知ってるんじゃないか?」
「……ああ、知ってるよ。大先生から口封じされてたから言わなかったんだけどな」
「そうか…」
「アレは大先生が作った魔装兵器って奴らしい。
なんでトモノリの中にあるのかはわかんないけど」
「すごい威力だったよな」
「1人だけ防いどいてそれ言うか?」
「あんな室内じゃ俺は戦えねぇよ、パワーダウンもいいとこ----」
「アユム~!」
教室のドアを開けて入ってきたのはハルナだった。
「また迎えに来てくれたのか?」
「うっ!……げ、ゲーセンに行きたかっただけだかんな!」
ハルナは顔を赤くしながらそう言う。
「お~い、相川!一緒に帰ろうぜ!」
「全く、買い物のついでにどこに行くと思えば…」
そう言ってトモノリとセラも入ってくる。
なんか歩モテモテなんだが……
「なぁ!羽の人はこないのか?」
「俺は夕食の準備して待ってるよ」
「悪いな、飛翔」
「いいって……んじゃ、先に帰ってるよ」
「ああ、わかった」
そう言って俺は教室を後にした。
「ただいま~」
俺はあれから少しコンビニでお菓子を買って、帰って来た。
俺は居間に入っていつも通りユーの隣に腰掛け-----
「あれ?」
---れなかった。
いつもいるはずのユーがそこにいなかった。
その代わりなのか、いつもユーが使っているメモ帳が何枚か切り取られて置いてあった。
「これは一体……っ!!?」
俺はメモ帳の一枚目の文字を読んで絶句した。
そのメモを持って俺は家を飛び出す。
『さようなら』
そう………メモには書かれていた。
俺は必死でユーを探す。
『ごめんなさい、本当にごめんなさい。
私さえいなければ、この町はこんなことにはならなかった』
「ユーっ!」
俺は叫ぶが返事はない。
『セラもハルナも歩も……飛翔も、皆私に優しい言葉をかけてくれる。
それはとても嬉しくて、私はそれに甘えていた』
ユーが行きそうなところをしらみつぶしに飛んでまわっているが、見つからない。
『でも私は一緒にいてはいけない存在、全て、私が悪いのだから……ごめんなさい』
悪いのはユーじゃないんだ……、俺が、俺が弱いばっかりにユーは抱え込んでしまった…
『いつも大変な思いをさせてしまって、ごめんなさい。
このまま私が側に居ると、いつかきっと、また誰かが悲しむことになる』
あたりはすっかり暗くなっていた。
最後の望みで俺が来たのはユーと出会った公園だった。
でも、ユーはいない。
『私は、死を呼ぶものだから』
俺は歩の家に帰ってきて、庭に目をやる。
そこにはまだ笹が飾ってあった。
俺は最後の一枚を読む。
『だから、さようなら』
俺は笹に飾ってある短冊を手に取る。
『雪をくれ!ここにいるみんなで見られるような大きい奴だからな!小さかったら殺すかんな!』
これはハルナの短冊。
『料理の腕が倍増しますように。私の料理でここにいるみんなが笑顔になれますように』
これはセラの短冊。
『願わくばいつまでも飛翔達と共に』
これが、ユーの………
ポタっ
俺の目から雫が落ちる。
それは止まる事を知らず、ドンドン溢れてくる。
「俺のせいだ、俺の………、ユーが苦しんでたのに何も力になれなくて……
ユー……、ユー……」
俺はひたすらユーの名前を呟く。
「だらっしゃー!!」
「グハっ!!?」
いきなり後頭部に激痛が走る。
後ろを振り返ると、ハルナ、セラ、歩が立っていた。
「いつまで泣いてんだ!羽の人!!」
「事情は残っていたメモでわかっています。
一生会えないわけではないでしょう?」
「そうだぜ、飛翔」
「みんな………」
そうだ、こんなとこで諦めてどうするんだよ。
それに俺は決意したんだ、ユーのために強くなるって……だから、
俺は諦めない!!!!!