これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
「全く、役に立たない冥界人だわ~」
そこには両腕両足を切り取られ、赤髪の女に頭を踏みつけられている夜の王の姿があった。
俺は驚きの余り声が出なかった。
「夜の王……セブンスアビスの中でも不死と言うアドバンテージを持ってたから頼んだのに……
まさか丸められるなんて」
そう言う女は何かを持っていた。
眼を凝らしてよく見ると女の手には長剣が握られていた。
「え~~っと………!ありました、ミノリ様!!例の薬です!!」
女は夜の王の服から何かを取り出し叫ぶ。すると後ろからフードを被った謎の人物が出てきた。
「good」
変声期でも使っているのか、機械音が室内に響く。
「さ、早くお飲みに」
「ok」
長剣を持った女がフードを被った人物にさっきの"何か"を渡す。
するとフードを被った人物はそれを一気に口に入れる。
「………あ、あー」
すると次にフードの人物から出たのは透き通った音。
「ミノリ様!!」
「声が……出せる!!」
そう言った瞬間声を出した本人はフードを脱ぎ捨てた。
そこにいたのは、黒色の髪の女性だった。
「あの忌々しい女王め!!この私から声を奪ったこと……10倍にして返してくれるかんな!!」
「ですがミノリ様、今はあいつらを排除しませんと…」
「そうだったね、ノイ」
そう言って2人は俺とユーの方を向く。
「お、お前ら!夜の王に何したんだ!!」
俺は意を決して話しかける。
「な~に、これは取引だ」
「取…引?」
俺の問いかけにノイと呼ばれた少女が答える。
「私達と夜の王は取引をしていた。
私達の望みはこちらの世界に居ることをばれないように居場所を提供すること事、もう1つはこの薬だ」
そう言ってノイは黒髪が持っていたビンを指差す。
「わが主はその力をよく思われない女王によって、
呪いで声を奪われた……だが冥界には壊れた器官を治す薬があった。
そして夜の王はこの街を戦いの渦に巻き込み、自分が死ぬことへの貢献…
これが私達の取引だ」
それで俺はゲーセンの帰りで夜の王の言っていたことを思い出す。
「仕方ない、会ってしまったから…
それが取引でもあるからね…」
そう、確かに夜の王は"取引"と言っていた。
「なるほど……メガロが大量に現れれば魔装少女はそれを退治しに来る、
ハルナが言ってた"メガロ駆逐作戦"みたいなのがあれば、
お前達に眼を配る余裕はなくなるってって事か」
「そういうことだ」
ここで黒髪も会話に参加してきた。
「アンタの性で少し計画に支障がでちゃったんだけどね」
「俺?」
「最初は膨大な魔力で私の喉を治そうと思ってヘレにそこのネクロマンサーを狙わせたんだけど、
アンタに邪魔されちゃったのよね~」
そう言って黒髪はユーを指差す。
「んで二回目私が持ち出したアーティファクトで操ったんだけど……
あっさり限界きちゃって面白くなかったわ~」
そう言って黒髪は針金を見せてくる。
「お前、ヘレは仲間じゃなかったのかよ!仲間にそんな----」
「仲間ぁ?あんな弱い奴"捨て駒"に決まってんだろ?」
黒髪はまるで当然とばかりにヘレの事を捨て駒と言った。
「それに他の奴も使い物にならない奴ばっかりで……まぁ、"魔力補充"には使えたけどね~」
そう言って黒髪はイヤリングに眼を向ける。
「これに十分魔力ためることは出来たし~、もう少し戦力が整ったら女王に復讐決行だね~」
「ならばミノリ様、あの男は私にお任せください。
その後でこちらに来ている魔装少女共をそのアーティファクトで操ればよろしいかと…」
「飛翔!!」
声がした方を向くと、歩とハルナとセラが展望台の中に入ってきた。
「あらら~、なんか虫が増えちゃったわね~。
ノイ、貴方はあの三人の相手をしなさい。私があの男をやるわ~」
「御意」
そう言ってノイと呼ばれた赤毛は歩たちの方へ向き直る。
黒髪も俺の方を向き、腰の辺りから取り出したを槍を構える。
俺は一歩前に出る。
「ユー、歩達の所へ行ってくれ……早く」
ユーは少し考える素振りを見せ『気をつけて』とメモを見せた後、歩足達の所へ行った。
「さぁ~てと、んじゃ散々私の邪魔してくれた"お礼"………たぁぁぁっぷりしないとね~」
そう言いながらズルズルと持っている槍を引きずりながら近づいてくる。
こんな俺でも分かるほど、恐ろしい殺気を放っている。
〔まずいな……夜の王とのダメージがあるのに〕
俺はそう思いつつ〔天翼〕を広げ、いつ攻撃が来てもいいように警戒する。
「そんな軟な羽で私の攻撃を止めれると思ってんの~?」
そう言うと黒髪は槍を一振りする。
「がぁぁぁぁ!!?」
次の瞬間、俺の身体に激痛が走る。
再び口の中が鉄の味でいっぱいになる。
「全くこんな雑魚相手になんで手間取ってたのかな~」
再び黒髪は俺に向かって歩いてくる。
俺の身体が…いや、本能ともいえるのもが逃げろと警告してる。
「い…ま、……なに…を…?」
「私の二つ名ね~『ヴィリエの破壊魔』だったんだよね」
そう言うと黒髪は再び槍を振るう。
とにかく俺は〔天翼〕で前方をガードするが…
ザシュザシュ!!
「なっ!?」
前方をガードした4枚の〔天翼〕が切り刻まれたと言えばいいのか、
今までに無いダメージを受け、ボロボロになっていた。
〔アイツの攻撃は一体何なんだ!?〕
「どうしてって顔してるね~」
黒髪は冷たい笑みを浮かべ、槍を肩にかつぐ。
「私の魔法はどんな周波数でも発生させること。
音でコップが割れたりするのがあるでしょ?私の魔法はそれを応用して強力に出来るの。
だから……」
黒髪は槍を振り上げ……
「私の攻撃は、ぜ~んぶ破壊できるの」
下ろす。
グシャァ!!
「ぐあぁぁぁぁ!!」
ガードなんてもはや紙切れ同然だった。
さっき攻撃を受けた〔天翼〕4枚がほぼ根元から千切れた。
「アハハ!いいよいいよ~、その悲痛な叫び……私、だぁ~い好き」
「……う、……がはっ」
もう声を出すのも辛い。
身体中が悲鳴をあげてるのが分かる。
〔でも……〕
俺は何とか立ち上がる。
「ん、まだ頑張るの~?もうアンタは普通の人と大差無いよ。
頼りの羽は2つしか残ってないしね」
「うおぉぉぉ!!」
俺は残りの〔天翼〕で攻撃する。
必死に集中して片方はフレア、もう片方はフリーズになっている。
「くらえぇ!!」
俺は全力で〔天翼〕を振るう。
「ざ~んねん、そんなんで私を倒せるわけないでしょ~」
黒髪が槍を振るう。
たったそれだけで俺の攻撃は壊されてしまった。
さらに黒髪は槍を振りかぶる。
「ついでにおまけ~♪」
「がっ!!」
俺は槍の柄で腹を突かれて、遥か後方に吹っ飛んだ。
〔まじぃ……意識が、飛びそう、だ〕
俺はその場から起き上がれずにいた。
「飛翔!!」
気づけば歩とセラがこちらに走ってきている。
どうやら赤毛の女は倒したようで、さらに後ろにはハルナとユーが来ている。
「はぁ、全く。なんでこう使えないのかね、部下って」
そう言って黒髪は何か呟く。
「ロイニ、ゴカリト、クシナトオ、ハリト!」
黒髪が呟き終わると歩達の足元に魔方陣が現れ、結界が歩達を包んだ。
「クソっ、こんなの……600%!!」
「秘剣、燕返し!!」
歩とセラが攻撃するが、結界はビクともしていない。
それを見ると黒髪が再びこちらを向いた。
「ね~、何でアンタはこんな命捨てる戦いしてんのさ」
黒髪が呆れたように俺に聞いてきた。
「アンタあいつ等みたいに強いわけじゃないでしょ?
どうしてそこまでしてんのよ」
黒髪が指差した方には今も結界に攻撃している歩達の姿があった。
俺は何とか声を絞り出す。
「確か、に……俺は、
歩みたいに、不死じゃ、無いし……
セラみたいに、何かに、秀でてるわけでも、無い……
ハルナみたいに、自分に、自信持てないし…
ユーみたいな、大きな優しさなんて持ってない…」
俺は足に力を入れて壁を支えに何とか立ち、続ける。
「でもな……
たった一人の……好きな女の子守る為に、命捨てる覚悟くらいは持ってんだよぉ!!!」
俺は黒髪に殴りかかる。
それを黒髪は槍を振るって俺を再び吹っ飛ばした。
「くっだらねぇな~、誰だって自分が一番だろ?
それを他人の為に死ぬとか、マジ笑えるわ~」
そう言って黒髪は俺の倒れている位置まで来た。
そして槍を逆手持ちにした。
「さてと、なんか興が冷めちゃったから殺すわ」
そのまま槍は振り上げられ……
「バイバイ」
ブシャァァァ!!