これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》   作:nightマンサー

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第22話 それぞれの思い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛翔が居なくなってから一週間が経った。

騒ぎを起こした魔装少女はハルナの担任の先生が来て連れて行った。

アレから夜の王から何も連絡が無い。

 

『〔飛翔……〕』

 

「ユー」

 

声がしたので振り向くと、歩が料理を持っていた。

 

「ご飯にしよう」

 

『いらない』

 

そう言って立ち上がる。

 

『散歩してくる』

 

私は玄関に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユー、やっぱり飛翔の事が……」

 

「この一週間、ご飯もほとんど口にしていません。

それほど飛翔の事が心配なんでしょう」

 

〔何やってんだよ飛翔……早く帰って来いよ〕

 

俺は奥歯をかみ締めた。

 

ピン、ポーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は外に出てから何処かに向かうわけでもなく、ただただ歩いた。

ふと立ち止まるとそこはよく知ってる場所だった。

 

『〔………ここは〕』

 

そう、飛翔と始めて会ったあの公園だった。

 

『〔あの日は雨が降ってて、飛翔が暖めてくれたんだよね……〕』

 

私はいつも飛翔と話していたベンチに座る。

 

『〔いつも、私に笑顔で話しかけてきてくれて……〕』

 

いつの間にか、私は涙を流していた。

 

『〔大怪我してたのに、私を助けに来てくれて……〕』

 

その涙は溢れて止まらない。

篭手にも涙が零れる。

 

『〔飛翔……つば、さぁ……〕』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユー……」

 

不意に私を呼ぶ声。

それはいつも側で聞いていた声で……

私は恐る恐る声がした方を振り向く。

 

「遅くなってごめん。……ただいま」

 

そこには6枚の純白の翼を持った………私の好きな人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が意識を取り戻すと、そこは知らない天井だった。

 

「気が付いたみたいだね」

 

声がしたのでそっちを見ると、夜の王が居た。

 

「夜の王?此処は一体……」

 

「ここは冥界だよ。とりあえず順を追って説明しよう」

 

俺は夜の王から気絶した後の事を一通り聞いた。

ユー達が無事であった事、俺が瀕死の重体だった事、それで一週間も眠っていた事、そして…

 

「右目を?」

 

「君の身体は強くは無い、ただの人間とそう大差無いからね。

君が望んだこととはいえ、僕には責任がある」

 

右目の改造だ。

夜の王も言ったとおり、俺の身体は強くない。

だから右目を改造して、〔黒翼〕に耐えられるようにしたらしい。

それでも俺の身体自体弱いから、時間にして30分が限界との事。

それと〔黒翼〕発動中は目が深紅に染まる。

 

「いろいろ迷惑掛けたみたいで、ありがと」

 

「さて、君は行かないといけないだろ?」

 

夜の王は部屋のドアを開ける。

 

「ここを出て真っ直ぐ行けば門がある。そこをくぐればあっちの世界へ行ける」

 

「ホント……ありがとな」

 

俺はそう言って〔天翼〕を広げる。

もしかしたらと思ったら、案の定〔天翼〕は治っていた。

俺はそのまま空中に上昇し、全速力で門に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は夜の王に言われた門を通った瞬間、光に包まれた。

次に視界が開けるとそこは……

 

「こう、えん?」

 

そう、公園だ。

ユーと最初に会った公園。俺にとっては忘れられない場所だ。

まさか此処に出てくるとは思わなかった。

それに……

 

「ユー……」

 

いつもユーと話していたベンチにユーが座っていた。

ユーは俺の声に反応してこっちを見る。

泣いていたのか、目が赤くなっていた。

 

「遅くなってごめん。……ただいま」

 

俺がそう言った途端、ユーが俺に抱きついてきた。

 

『遅すぎる』

 

「悪かったよ」

 

俺はユーを抱きしめ返す。

 

『空腹』

 

「まだ約束のカレー作ってないもんな。……明日作るよ」

 

『今食べたい』

 

「え?今から作ったら時間掛かるよ?おなかすいてるんじゃなかったの?」

 

『飛翔のカレーが食べられるんなら待ってる』

 

「……そっか。んじゃ帰ったら大急ぎで作らないとな」

 

他愛も無い会話。

俺はそんな当たり前のことがすごく嬉しかった。

 

『飛翔、少し痛い』

 

「え?あ!ご、ごめん!ユー!」

 

俺はそう言って離れようとしたらユーに袖を引っ張られた。

 

『離れないで』

 

「ユー?」

 

『よかった』

 

ユーの顔を見ると、また涙を流していた。

 

『飛翔が生きてて、本当によかった』

 

文字の最後の方は涙で滲んでいていた。

 

「ユー……俺、ユーに言いたいことがあるんだ」

 

俺はそう言ってユーの顔を見る。

俺の本心を、ユーに伝えるために……

 

「俺は……ユーの事が好きだ。

ユーの笑顔も、優しいところも全部。だから、俺と付き合ってくれないか」

 

前世でも告白したこの無い俺だから、正真正銘の初告白。

暫くするとユーがこっちを向く。

 

「私も……飛翔のことが好き」

 

「ユー、声を……」

 

展望室でも聞いた、透き通るような声。

ユーは声に出している。

 

「この気持ちは、私の声で伝えたかったから……」

 

そう言ったユーの顔は朱色に染まっていた。

そのまま俺達は顔を近づけて行き、唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして唇を離す。

本当は数秒のはずなのに、俺にとっては長く感じられたキス。

 

「「//////」」

 

恥ずかしがるのは仕方ないと思う。

 

「じゃ、じゃあ帰ろうか?」

 

『うん』

 

そう言った瞬間、後ろから物音がした。

慌てて振り返ると、そこに居たのは歩とセラとハルナ。ついでに夜の王も居る。

 

「い、いや、飛翔!俺達は別に覗いてたわけじゃ!?」

 

「先に出たのに僕の方が早く家に着いたからどうしたのかと思えば、

お楽しみ中だったのか。これは悪いことをしたね」

 

「羽の人!帰ってきて早々何やってんだよ!!?」

 

「………飛翔、帰ったのですね」

 

四者四様の意見。

まぁ、ここで俺がとる行動は1つだ。

 

「てめぇら……覚悟は出来てるよなぁ!!」

 

そう言って俺は〔黒翼〕を広げる。

 

「ちょ、飛翔!!?それは洒落にならないって!!?」

 

「うるせぇ!!!せっかくのユーとのムードぶち壊しやがって!!ゆるさねぇ!!」

 

「「「「逃げるが勝ちだ!!!」」」」

 

4人は一斉に逃げ出す。

 

「逃がすかァァァァ!!!!」

 

俺は〔黒翼〕を広げ歩達を追う。

追いかけている時、こんな日常もいいなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~  第一章 完

 




いかかだったでしょうか!
取り敢えず夜の王編はこれで終了です。続きは要望があれば作ろうと思います!
感想待ってます!

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