これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
「キャハハハ!!…んじャとっととその化け物をこっちに渡してくれませんかねェ。
ウァたしィ~待たされるの大ッッッッッ嫌いなんですよねェ」
そう言うが早く、彼女は斧を振り下ろす。
ズシャァァァァァ!!
耳を塞ぎたくなる様な豪快な音の直後、彼女が立っているすぐ横の場所が陥没する。
人が出せる限界をいとも簡単に超えている。あれだけの威力、腕にも相当反動がきているはずだが、
彼女はそれを否定するかのように再度斧を振り回す。
「でェ、どうすんのォ」
「…を……も…て………ねえ」
「はァ?なんて言ったんだ?とにかくそのばけ…」
「ユーを化け物なんて言ってんじゃねぇーぞ!!!!!!」
ゴォォォォォォォォ
俺が出せる最大限の声で叫ぶ。
「ユーが化け物?そんなこと誰が決めたんだ!!言葉の力?不老の血?膨大な魔力?それがどうした!!
ここにいるユーが!!俺が今触れているユーは紛れもない、優しい女の子だ!!!嘘をついてた?人に話したくないことなんてごまんとあるだろうが!!ユーが話さなかったんじゃねえ、俺が聞かなかったんだ!!
それに!ユーのことを化け物としか見てねえお前にユーの何がわかるっていうんだ!!もう一度言う!
ユーは…化け物なんかじゃねえ!!優しい女の子だ!!!!!!!!!」
『〔飛翔…〕』
私は嬉しかった、こんなにも私のことを思ってくれている人がいることが、こんな私を女の子として見てくれている人がいることが、私はさっきよりもたくさん涙を流している。
でもこれは悲しいからじゃない………
『飛翔…』
「心配すんなユー、俺はあんなことでユーを嫌ったりしないよ。
だから…ユーは俺を頼ってくれていいんだよ」
真っ暗な道に温かな手を伸ばしてくれる人がいたから…………。
「くッだらねえェ。そんなんでヒーロー気取りかよォ、偽善者が」
「何と言われ様が関係ない、ユーを傷つけるんなら俺が相手になる」
「はァ、さらに頭の中はお花畑ときてる、さっきの見ただろォ、
偽善者様じゃウァたしは倒せないんだよォ、カスがッ!!」
『飛翔あの子の言うこと正しい、逃げないと』
ユーは不安そうに俺の顔を見る。
「大丈夫だ、ユー。心配すんなって言ったろ?」
そういって俺はユーをおろし、少女の前に立つ。
「あははッ、人の忠告は聞いたほうがいいと思うけどなァ~~」
「なぁ、知ってるか?」
「あァ?」
「そういう台詞は…」
死亡フラグだぜ?
ブワァッ!!!!!!
そういって俺は〔天翼〕を出現させる。
「なァ!?こりャどういう芸当だァ!!?」
「敵に自分の情報与えるかよ、バカ」
そう言って俺は空中へ移動。これで随分とこっちが有利になった。
空を飛べるっていうアドバンテージはなかなかでかい。
さて此処からどうするか「舐めてんじゃないわよ偽善者ァ!!」…って!!
「空飛べるのかよ!!」
「魔装少女舐めんじゃないわよォ!!」
すかさず少女が斧を振るってくる。さっき見たがあの斧が俺の体に当たった時点で俺の負けだ。
そう〔天翼〕以外はそこら辺にいる一般人と変わらない、だが…
ガキィィィィン
「なッ!!!魔装錬器を受け止めただとォ!!」
そうこの〔天翼〕は違う〔天翼〕は翼ではあるが俺が念じればどんな物よりも固く、
どんな物よりも柔らかくすることができる。今あいつの攻撃を受けれたのもこの〔天翼〕のおかげだ
そして
フシュ!!
「なッ!!」
この〔天翼〕は攻撃にも使える!!
ガキィィィ!!
間一髪で少女は迫っていた〔天翼〕を斧でガードする。だが…
「こっちにはまだ5つ残ってる!!」
そう言って残りの〔天翼〕も追撃させる。今の〔天翼〕は鋼鉄よりも硬いので
当たれば相当なダメージになる。
「ちィ!!」
少女も必死に抵抗する、だが武器が悪かった。斧は一撃が強いが小回りはほとんど利かない。
一度振り下ろせばまた振り下ろすまでのタイムラグがある。よって、
ガキィ!!!!
「なァ!!!」
手数に圧倒され武器である斧が手から弾かれた。今だ!!
「おりゃァァァ!!」
渾身の力を込めて〔天翼〕を振るう。
ドゴァァ!!
「げはァ!!!」
〔天翼〕は少女の横腹に衝突し、少女は地面に激突した。
俺はユーの近くに降り立つ。
「やったか?」
フルフルッ
首を横に振るユー。
「…あッ、げほぉ、こんなっ、ぜェぜェ、奴に、ぶへッ、負けっ」
さっき少女が激突した衝撃でできたクレーターから声が聞こえる。
さっきの一撃は相当きているようで少女は立てずにいた。
「まさ…か、これ、を、使うこ、と、にな、る、とは」
何を言っているかよく聞き取れないがこのままにしていてもいけないと思い、
少女のもとに近づこうとすると
ぎゅ!!
服を引っ張られた。
「ユー、どうかしたのか?」
服を引っ張ったのはユーのようで、俯いているため表情はわからない。
もう一度声をかけようとしたところでクレーターが光だした。
「何だ!!」
するとクレーターから光の玉が出てきてそのまま夜空へ消えていった。
「今の光はさっきの少女か」
『移動魔法を使ったと思う』
ユーはメモを俺に見せてきた。
とりあえず危機は去った・・・のか?
「とりあえず大丈夫…か?」
『おそらく』
「そうか」
それからユーはまた俯いてしまった。
「ユー、ほんとどうしたんだ?」
ユーは少し悩んだようにしてメモを見せてきた。
『私は…飛翔のそばにいてもいいの?』
「何言ってんだよ、当たり前だろ。あんな奴の言うことなんて考えるんじゃないぞ。
ユーは誰が何と言おうとも優しい女の子だ。」
それを聞いてユーは少しずつ顔を上げた。
泣いている。目元は涙を流しすぎたためか少し赤くなっている。
『私がそばに居るだけで飛翔の運命は変わってしまう…それで「ユー」!!!!!』
気づけば俺はユーを抱きしめていた。
「ユー、もう我慢しなくていいんだ、俺はユーのそばにいるしユーの事を守る。
運命がどうのこうのって前に俺は、その、ユーと一緒に居たいんだ。
理由がこれだけじゃ不十分かな?」
フルフルッ
『すごく嬉しい』
「そうか」
そういうとユーは肩を震わせた、きっと泣いているんだろう。
もう、ユーに悲しい思いなんてさせない。
それを胸に刻むためか、ユーを抱きしめている手をいっそう強めた。
「はァ、はァ、げほォ!!…くそがァ、このォ、ウァ、たし、がァ…」
暗い森の中、彼女は歩いていた。月明かりは闇夜に飲まれてしまったかのように
彼女の行く手を照らしてくれない。それでも彼女は歩く。
聞こえてくるのは自分の足で草を踏みつける音のみ。
「まさ、か、ジャンプ、を、使う、ことに、なるなん、ウォェ!!」
彼女はさっき使った魔法を口にする。ジャンプとは一種のテレポートで、
所持者の魔力が残り少なくなると所持者の意思で残りの魔力を使い、
できる限り遠くへワープするというもの。
ただし、移動場所を大まかにしか設定できないためあまり使用されない
アーティファクトである。
「とに、かく…ヴィリ、エ、に、戻ら、ない、と、いけないェ、なァ」
彼女は近くにあった木に寄りかかる。
「ま、さか、あんな、わけ、わから、ん、奴、に…グッ!!」
肋骨の2、3本は折れているだろう、それほどに強力な一撃だったのだ。
思い出しただけでも腹が立つ。魔装錬器は弾き飛ばされた時に置いて来てしまっているため
今は残った魔法で作った布切れ1枚だけ身につけている。
「と、にかく、あの、かた、の、もとへ、いそ「ガサッ」…!!」
咄嗟に少女は戦闘態勢に入る。こんな森の奥まで来ている奴だ、
只者でないことは容易に想像がつく。
ガサッ、ガサッ、
一歩、また一歩と近づく足音、少女はこちらから仕掛けるべきかと悩む。
そして近づいてきた人物を見て少女は安堵する。
「OOO様!!」
「OOOO」
「すみ、ません。失敗、しました。途中、で、わけの、わからない、奴に、
邪魔され、まして………」
「OOOOO,OOOOOOOO」
「OOO様…」
「OOO、」
「へ?」
「sleep」
ドンッ
「どう…し…て…〔ドサッ」
少女が最後に見たのは自分をあざ笑うかのような月だった。
しばらくしてそこに3人のフードを被った人物がきた。
「carry」
先ほどヘラと会話していた人物がその3人に指示を飛ばす。
先の人に指示され、3人はヘラを連れその場から消える。
「irregular…」
一人残ったその人は月を見上げるように顔を上げる。
なぜかその顔には、狂ったような微笑がうかんでいた。