これはゾンビですか?~純白の翼は飛翔する~《完結》 作:nightマンサー
「説明は後でするよ。とりあえず、こいつをどうにかしなくちゃ」
そう言って俺は〔天翼〕を広げた。
ザリガニは〔天翼〕を出現させたときの突風で黒板に埋まってるが、
腕が動いているのを見る限り、まだ死んではいないようだ。
〔この前歩が倒したメガロ〔こいつらの総称〕は確か、光る粒子になってたな。
それまでは気が抜けない……か〕
俺は気を引き締める。
するとザリガニが復活した様でこっちを見てきた。
「ゲバババ!!貴様もどうやらただの人間では無いようだなぁ!!
ならば、なお更殺してやらんとなぁ!!」
そう言うとザリガニは戦闘態勢に入ったのか、雰囲気が変わった。
身体からは紫色のオーラみたいなのが出ている。
「メガロと戦うのは初めてだが………
ま、どうにかなるだろ」
「ゲババ!!行くぞ人間!!」
その声を合図にザリガニは再び距離を詰めてきた。
ザリガニの右腕が大きく振るわれる………が。
「甘い!!」
ドゴッ!
俺はそれを〔天翼〕で受け止める。
「ゲババ!!受け止めただとォ!!」
「何言ってやがる、お前の目は節穴か?」
「ゲバァ?貴様何を言って……!!?」
パキッパキッ、
言っている途中でザリガニは気づいた。
俺の〔天翼〕に触れている自分の右腕が凍らされている事に……。
俺の〔天翼〕には強度を変える以外にもう一つ能力がある。
それは〔天翼〕自体の温度変化だ。
初めの頃は、少し冷たいか温かい程度にしか操作出来なかったが、
………ユーを守ると決意してから、この温度変化の特訓を密かに続けていた。
まだ瞬時に温度を変えることは出来ないが、さっき〔天翼〕を出したときからしてたから、
随分冷えてたみたいだ。
さらに〔天翼〕は触れたものにそれを伝染させる。
そのおかげで〔天翼〕の触れてる空気は冷え、霰が出来ている。
そして今ザリガニはその〔天翼〕に触れている、となれば当然凍っていくわけだ。
「ゲババ!!腕がぁ!?腕がぁ!!」
ザリガニはいきなり自分の腕が凍った事にパニックしており、右手をブンブン振りまわす。
俺はその間に今度は〔天翼〕の温度を急激に上昇させる。
「この人間ごときがぁ!!」
ザリガニは凍った右腕が使い物にならないと判断し、
歩にやったように右腕を俺に飛ばしてくる……………だが!
「少し判断が遅かったな!」
ジジジジジャッ!!!
そう言って俺は飛んできた右腕を〔天翼〕で文字通り真っ二つにした。
「「「はあぁぁぁ!!!」」」
ザリガニだけでなく歩とハルナも驚いている。
今のも〔天翼〕の温度変化。今度は逆に温度を上げて切り裂く。
熱断切っと言ったところか。
「きっ貴様ぁ!いったい何者なんだ!!
腕を凍らせたかと思ったら次は腕を熱で真っ二つに切るなんて!!」
ザリガニが震えた声で俺に向かって叫ぶ。
そりゃそうだ、ただの人間に自分が追い込まれているのだから。
「よし、アユム!!今の内に魔装少女に変身しろよな!」
ハルナは今がチャンスと言わんばかりに歩に向かって叫ぶ。
……
…………
………………
魔装少女って昨日の晩になってたあれか?
あの歩の姿は………失礼だが気持ち悪すぎる。
でもまぁ、あれにならんと歩は勝てないだろうし………。
それから導き出された答えは……
「呪文の時間は稼いでやるよ、歩」
「いやいや!!飛翔なら倒せるでしょそのザリガニ!!」
「いやね………この温度変化、結構しんどいのよ。
しかも今回全力でやったからね。キツイからバトンタッチ、歩」
そう、〔天翼〕全体の温度を変化させるんなら疲労そこまでせんけど、
今回は〔天翼〕の一枚一枚の温度を変えていたから結構きついんだこれが。
なんせ6枚もあるから集中力を半端なく使う。
「くっ、分かったよ」
どうやら歩は渋々承諾してくれたようだ。
地面に刺さってるミストルティンを手に取り………構える。
「ノモブヨ、オシ、」
そして歩は呪文を唱え始めるが、もちろん………
「ゲバババ!!させるか!!」
ザリガニはこれ以上何かされては困ると歩の邪魔をしようと動く。
今アイツは歩しか見ていない、よって………
「悪役はヒーローが変身するのを待つのが礼儀だぜ!!」
俺は奴の懐に〔天翼〕を振るう。
ドガッ!!
温度操作はしてないから切り裂いたりは出来ないが、
これでも十分な威力だ。ついでに言うと強度を上げる特訓もしてる。
「ゲバァ!!」
ザリガニは本日三度目の激突。これでくたばってくれたらいいんだが、
どうやらそう甘くは無いようだ。
「ハシタワ、ドケダ、」
そろそろ呪文も終わるな。
あきらめろザリガニ…………
「グンミーチャ、デー、」
相手がわるかった………
「リブラ!!」
呪文が終わったと同時に歩の身体が光りだす、
その格好は、以前ハルナが着ていたピンクを基本とする
ヒラヒラの洋服つまり………女物だ。
「この格好だけはなりたくなかったんだがな」
「やっぱ似合ってねーわ、歩」
「当たり前だろ!」
「そう怒るなって、歩。とっととあいつ倒してくれ」
そう言って俺は辛うじて立ち上がっているザリガニを指差す。
「ゲボボ!!俺は変態なんかに殺されたくない!!」
……
…………
………………
「歩ひどいな」
「飛翔がとどめさせって言ったんじゃないか!?」
「いや、ザリガニの言う事が正論すぎて………」
「飛翔!お前も俺の事変態だと?!」
「その格好で言われて納得する奴が何人いると思ってるんだ!」
「それは言わない約束でしょぉ!!こんちくしょうが-!!」
今の会話で自暴自棄になった歩がザリガニに突っ込みつつ、
ミストルティンで切りつける。
当然ザリガニに回避手段は無く………
「ゲバァァァァ!!こんな変態にィィィ!!」
そんな捨て台詞を残して光る粒子となった。
「で?どうすんだこれ…」
戦闘が終わってから俺と歩が見ているのは、
粉々になった机や椅子、傷だらけの壁と黒板、
グラウンドで何事かと話をしている多量の生徒であった。
「これを修復するなんて無理があるぞ、歩」
「ど、どうすれば!?」
歩は唸った。まあ普通こうなるわな………
で、マジでどうしよう。
そんな俺たちの前にアホ毛が顔を出した。
「ハルナ?」
歩が呼ぶ。
「ほら、アユム!とっとと修復しろよな!
魔装少女ならそんくらいできる。あと記憶も!」
「ほ、ホントかハルナ!」
「当たり前じゃん、魔装少女舐めんなよ!」
そう言ってハルナは胸を張った。
〔魔装少女ってのはそんな事までできるのか、
だとしたら、ほぼ連続殺人の犯人は魔装少女で間違いないな。
目撃者がいないのは記憶を消していたからだろう〕
飛翔は1人、歩たちの修復作業を見ながらそう考えていた。
さっきのメガロ〔歩に聞いたところ名前はザリー〕
との戦いが終わり俺と歩、ハルナは相川家に帰宅した。
家ではユーがいつも通りバラエティ番組を見ながらお茶をすすっていた。
「ただいま、ユー」
『!』
俺の声を聞くとユーはこちらを振り返り立ち上がった。
「?どうかしたユー」
するとユーは俺の身体を見回すようにして、
手や足、肩などにふれる。
「えっ、ちょっ、ユー?」
一通りふれてユーがメモを向ける。
『怪我ない?』
そうメモには書いてあった。
そっか怪我の心配してくれてたんだ。
ホントに優しいなユーは………。
「大丈夫だよ、ユー。何処も怪我してないから」
『本当?』
「ユーに嘘なんてつかないよ。
心配してくれてありがとな、ユー〔ニコッ」
そうして俺はユーの頭をなでる。頭をなでるとユーは顔を赤くして俯いた。
ホント可愛いなユーは。
「飛翔、お取り込み中悪いんだがどいてくれ、俺らが入れん」
「あ!!ごめん歩!」
そう言って俺はその場を退く。
「まぁ、微笑ましいが………程々にしとけよ」
「くそぅ、この手の話題で歩に勝てん…」
どうも恋愛話は苦手だ。俺が女性恐怖症だからなのか?
「あぁ、そうだ。今日の晩御飯何がいい?」
そう悩んでると歩からの質問。
「卵焼き以外!!」
『肉がいい』
「何でもいいよ」
各々好きな事を言うな、この家庭……。
「じゃあ、豚キムチでいいか?」
うん、歩、ナイス案だ。
「いいんじゃないか?」
「うん!それがいい!!」
『OK』
「じゃ、作ってくるからちょっと待っててくれ」
「あぁ歩、俺も手伝うよ」
「おう、助かる」
「料理のレパートリー増やしておきたいからさ…」
「?」
ユーにいろいろな料理作ってやりたいからな。
こっちも頑張らないと。
「お待たせ~。出来たぞ」
「それじゃ---」
「「「『いただきます』」」」
今日はいろいろあったから結構腹が減ってるんだよ。
でもあの戦闘のおかげで、現時点での力が分かったから収穫は上々だ。
「お!この豚キムチうまいな」
「まぁ、飛翔のカレーには敵わんがな」
「いやいや、逆言うと俺カレー意外ほとんど料理作れんし」
「得意料理1つあったほうが、いろいろ作れるよりいいと思うぜ」
「そうかな」
そう言ってもらえると結構嬉しい。
クイッ、クイッ、
不意に服を引っ張られた。
まぁ、見なくても分かるけど。
『おかわり』
「うん…はいどうぞ、ユー」
『飛翔ありがとう』
「どういたしまして」
「アユムッ!めっちゃおかわりだ!!」
どうやらハルナもお腹が減っているようだ。
「はいよ…ほれハルナ、おかわり」
そう言って歩はハルナにお茶碗を手渡す。
「そういえば、今日の卵焼き、うまかったぞ」
そう言って歩はハルナの頭を撫でる。
「うっ!あ、当たり前だ。あたしを誰だと思ってんだよ」
ハルナは照れているようで顔を赤くしていた。
そんなハルナを見て歩は微笑んでた。
「うっ、何笑ってんだよ、キモッ、死ね!バーカッ!」
!ハルナその言葉を使っちゃ………!!
パンッ!
そう思ったときだった。ユーが身を乗り出してハルナの頬を叩いたのだ。
歩とハルナは驚いている、そりゃそうだ、大人しいユーがこんな行動に出たのだ。
そうしてユーはメモを突きつける。
『軽々しくその言葉を使うな』
ユーの突きつけたメモにはそう書かれていた。
〔ユー………〕
そう、ユーはこの言葉の重さを知っている。
自分の力でそれを言ってしまえば簡単に奪えてしまう。
だからこそ・・・ユーは命の重さを誰よりも知っている。
「ハルナ………その言葉、そんな簡単に使わないでくれ。
言葉は時としてどんな武器や兵器よりも強力なものになるんだ。
だから………な」
「うっ……」
「飛翔、ユー…………」
それから沈黙、きっと考えてくれているのだろう。
そして………
「だぁぁぁぁ!!」
ハルナはやけ食いしだした。
ユーもいつも通り、食事に戻った。
「アユムッ!!めっちゃめっちゃおかわりだ!!」
そう言って再び歩にお茶碗を渡すハルナ、
歩はハルナのためかかなり大盛りにしていた。
『飛翔、おかわり』
「はいはい、ちょっと待ってくれな。
………はい、どうぞ」
『ありがとう』
〔やっぱ食卓は楽しくないとな…〕
さっきの事が嘘のように、
食事が再開されたのに安堵を感じながら自分の食事に戻った。
「私は味噌汁を頂きたいのですが?」
はい?
気づくとそこには長い黒髪をなびかせた美女が座っていた。
……………誰?